ー先生sideー
ネルを倒したトキの『武装』、『アビ・エシュフ』の攻略方法。見つけたと言うユズに、全員が目を向けた。
“ユズ、ほ、本当に!?”
「はい、あの時、ネル先輩との最後の撃ち合いの時の本当に一瞬・・・・刹那の瞬間だったんですが。ーーーーネル先輩の攻撃が通ってるのを見ました」
“あの短い時間の中で・・・・?”
「流石ユズだよ! 『UZQueen』! 動体視力の申し子!」
『プラスル!』
「でも何故効いたのでしょう? 会長の言葉通りなら、トキちゃんの『武装』には何も通用しない筈なのでは?」 「そ、ソレは私にも良く・・・・」
アカネの疑問に、ユズは顔を俯かせてしまう。すると、分析班のチヒロが顎に手を当てて思案する。
《・・・・コレは、もしもの話だけど。・・・・あくまで『もしも』、の本当二『仮定』に過ぎない話なんだけど。“トキの『武装』に隙があるとしたら”?》
「・・・・隙?」
《会長は言ってたよね。『エリドゥ』のネットワークからサポートを受ける『武装』は、“『演算』によってどんな攻撃でも撃墜し、回避する事が可能だと”》
“うん。実際もそんな感じだったね”
コチラの攻撃を全て撃ち落としたり、回避してみせた『アビ・エシュフ』の能力を思い返して、先生が答えた。
《そうだけ。この目で見た限りでも、ソレは嘘じゃない。ただ・・・・コレまで、その2つを、“『撃墜』と『回避』を同時にこなしている所を見た事が無いと思って”》
「・・・・! 成る程、そう言う事なのですね」
「え? ん? えっ・・・・?」
「えっと・・・・どう言う意味ですか?」
アカネは察したようにポンッと手を叩くが、モモイは解らないのか目を点にしてしまい、ミドリが聞いてみると、チヒロが説明する。
《『武装』の能力は、確かに『チート』と呼んでも良いくらいだけど。でも、もしかしたらそう見えているだけで、『武装』にも限界が・・・・“できない事があるのかも知れないって話”》
チヒロが更に詳しく説明する。
《ビルから落ちた時、会長はその墜落さえ計算に入れていたと言ってたよね》
「つまり、あの時は“墜落に演算能力を使っていたから”・・・・」
“ネルの攻撃を防ぎ切れず・・・・隙ができた・・・・?”
「あ! そう言う事!」
『プラスル!』
「そ、ソレならあの時みたいに隙を作る事が出来れば・・・・!」
「倒せるかも、知れない・・・・?」
『マイナン!?』
『チュラ!』
カリンと先生が補足すると、『ゲーム開発部』は納得したように声を上げた。
「でもどうやって? 相手がこの弱点を理解して無いとは思えない。その為のあのメガゼラオラなら、屋上から落とす方法は2度と通じないかも・・・・」
「ね、ネル先輩は、近距離なら・・・・勝てる・・・・そう、言いましたよね?」
「・・・・ああ、勝てる。その前に、あのチート能力とチートポケモンをどうにかする必要があるだろうがな」
「そ、ソレなら私にアイデアがあります。チート相手に・・・・与えられたルールの中で、私達が使える・・・・『ハメ技』が」
『???』
カリンが攻略は難しい事を言い、ユズがネルと話し終えると薄く笑みを浮かべ、全員が首を傾げた。
ーネルsideー
「ネル先輩・・・・」
『エリドゥ』の『中央タワー』の正面で佇んでいたトキとメガゼラオラの前に、ネルとエレキブルとギャラドス(色違い)、更に他の『C&C』のメンバーと、『シャーレの先生』がやってきた。
《・・・・何を企んでいるか知らないけど、無駄よ》
映像通信でこの状況を見ていたリオはそう言うと、トキの方を一瞥する
《トキ。ゼラオラ》
「・・・・イエス、マム」
『ゼラ』
リオの指示を受け、トキとメガゼラオラが前に出る。
「ああ、そう来なくちゃな・・・・今度こそお互い、決着をつけようじゃねぇの!」
ソレを見てネルは不敵に笑って『ツインド・ラゴン』を構えた。
ーーーーネル! 頼んだよ!
何処からか、先生の声が聞こえた気がし、ネルは内心「任せろ!」と呟きながら、トキに銃弾を放つ。
ーーーーダダダダダダダダダダダダ!!
が、『アビ・エシュフ』によって弾丸は全て撃ち落とされてしまう。
「・・・・どの様な攻撃であろうと、私の『武装』には通じません。そんな手負いの状態で、コレ以上の抵抗は無意味です!」
「・・・・は、んなの、知るかよ」
トキの言葉に、ネルは若干の苛立ちを込めて返しながら、アカネが懐から『ブレスレット』と『大きな蝶ネクタイ』出して、ネルに渡して、ネルは『ブレスレット』を腕に付け、『蝶ネクタイ』はエレキブルがギャラドス(色違い)に巻いた。
「アタシはもう決めたんだ。ここで、テメェを倒して・・・・アリス‹チビ›を連れ戻しに行くってなぁ!ーーーー行くぞ! ギャラドス!!」
『ギャァァァァッ!!』
すると、2人の『ブレスレット』と『蝶ネクタイ』、『キーストーン』と『メガストーン』が光り輝く。
「吼えろ! ド派手に! メガシンカ!!」
『ギャァアアアアアアアアアアアア!!』
2人の『キーストーン』と『メガストーン』から幾つもの光の線が伸びて繋がり、光の球体となって砕けると、ギャラドス(色違い)が姿を変えた。
龍のような長いフォルムから一転して、胴体が一気に太くなり、背中には2枚の大きな背びれが突出するし、魚類に近い体型となり、頭部の角・ヒレ・ヒゲは長く伸び、赤い部分は更に深い赤色となり、腹部は黒からベージュとなって、更に威圧感をより際立たせている『きょうあくポケモン・ギャラドス(色違い)』。
『ギャァアアアアアアアアアアアア!!!』
「おら、後輩共! アタシらのリベンジマッチだ! アスナ!!」
「・・・・!?」
「はーい! あははっ! 突撃〜〜!」
ーーーーダダダダダダダダ!!
『サプライズパーティー』を撃つアスナだが、トキは全て撃ち落とす。
「ハピナス! 【ギガインパクト】! プリン! 【すてみタックル】!」
『ハァピィイイイイイイイイ!!』
『プゥリィイイイイイインッ!!』
『!』
続いてハピナスとプリンがメガゼラオラに突撃するが、メガゼラオラは雷速で回避した。
「こんな攻撃など・・・・」
『ゼラ!!』
ーーーーガルルルルルルルル!!
ーーーードゴォオオオオンッ!!
トキが『トライ・ポッド』をアスナに向かって撃ち出し、メガゼラオラが【プラズマフィスト】で攻撃した。
が、
「・・・・!? 全部、避けた・・・・!?」
『!?』
アスナはトキの反撃を全て回避し、ハピナスとプリンもメガゼラオラの雷撃をヒラリと回避した。
「うん! 野生の勘?ってやつ?」
アスナには『凄まじい直感力』があり、その直感によって回避してみせた。ハピナスとプリンは身体から無駄な力を抜いて相手の攻撃の流れに乗って回避する事ができるのだ。
「ーーーーカリン」
ーーーーダァンッ!!
ネルが呟くと、何処からともなく狙撃音が聞こえ、トキに襲い掛かる。
「視野外からの・・・・狙撃! その程度でやられる訳ーーーー」
『!』
『ガァアアアアアアアア!!』
『ピィイイイイイイイイ!!』
回避したトキが次に目にしたのは、雷を纏った縦回転の突撃技【ワイルドボルト】を繰り出すレントラーと、鳥のオーラを纏っての突撃技【ブレイブバード】を繰り出すムクホークであった。
『!!』
流石にメガゼラオラも両手を上げて、片手でレントラーとムクホークを捕まえて止めようとする。
『ゼェェェェラオラァァァァァァァァァァァァ!!』
『『!!』』
メガゼラオラは両腕が負傷していくが、何とか2匹を投げ飛ばす事に成功した。
「! ギャラドス! 【ストーンエッジ】!」
『ギャシャァァァァ!!』
ーーーーダダダダダダダダ!!
ーーーードドドドドドドド!!
「!」
『ゼラ!』
カリンの狙撃とネルの銃弾、2方向からの攻撃の『回避』に集中するトキと、少し負傷した両腕をダランとさせたメガゼラオラが移動する。
しかし、ソレがネルの狙いだった。
「ーーーー・・・・アカネ! このまま押し込むぞ! ぶっ壊しちまえ!」
「はい! 部長! ゴローニャ! マルマイン!」
『ゴローニャ!』
『マルマ!』
「っーーーー【じばく】!」
ーーーーチュドォオオオオオオオン!!
アカネがアローラゴローニャとマルマインを、トキとメガゼラオラが離れた中央タワーの正面玄関に移動させると2匹を爆発させて穴を開けた。
「!」
『!』
《ドアを破壊してタワー内部に侵入を・・・・? 一体、どうやって・・・・?》
* * *
話は数十分前。
【《・・・・ソレって、言う程簡単じゃないけど・・・・》】
【そうですね。簡単と言うより・・・・】
【あははっ! 『作戦』と言うより結構滅茶苦茶じゃない?】
【そ、そうですね・・・・やっぱり、私の話は無かった事に・・・・】
チヒロが話を聞いて渋面を作り、アカネとアスナも無謀だと言い出してしまい、ユズが顔を青ざめさせて退こうとしたが、デンチュラが前脚を上げてユズの背中を押さえた。
そして、
【ーーーーいや、やろう】
ーーーークンクン、クンクン・・・・!×3
何と、ネルはやろうと言い出し、エレキブルとギャラドス(色違い)、そしてハイパーボールもネルに同意するように上下に動いた。
【こ、こんな作戦をですか!?】
【『マィィ!?』】
【《・・・・大丈夫なの? さっき話したのは、結局『仮説』に過ぎないんだよ》】
【は、んなもん分かってらぁ。だが、他の誰でもない『おデコ』が出した『作戦』だからな】
【お、『おデコ』・・・・?】
ミドリとマイナン、チヒロが問うと、ネルはおデコ‹ユズ›を見てニヤリと笑みを浮かべながら返し、ユズはネルの呼び名に目をパチクリさせた。
【コイツは、どれだけピンチに陥ってようが、友達の為ならば臆せず度胸を見せる。そんなヤツの『作戦』を、アタシらが気に入らない訳ねぇだろ?】
ネルはエレキブル達が入ったボールを出して、以前『鏡』争奪戦の時に見せたユズの度胸を知っており、その時からユズに一目置いていたのであった。
【ネル先輩ってユズの事を良く知ってるんだね! いつの間に仲良くなったの? やっぱ・・・・普段ユズとゲームでいっぱい戦ってるから?】
【『プラァ?』】
【何で今その話が出てくんだよ!?】
モモイとプラスルが茶化すように言うと、ネルが羞恥から顔を赤くして怒鳴る。この様子では、ユズに1勝も出来ていないのが分かる。
【ーーーーご意向は分かりました。ですが部長、その傷ではやはり・・・・】
【・・・・エレキブル達は先生が補給で出してくれた『かいふくのくすり』で全回復しているけど・・・・】
【あぁ? 何言ってんだ? ここで無茶しないで、いつ無茶すんだよ? コイツらがかけてくれた『期待』には、ちゃんと応えなきゃな。ーーーーこんくらい根性で何とかなっての】
【“ネルの特性は『こんじょう』なの・・・・?”】
アカネとカリンが先程まで負傷で意識を失っていたネルが身体を慮るが、ネルは引く気は無いようだ。
【ーーーーんで、お前らは? 別に無理に手伝えとは言わねぇ】
【私達は・・・・】
【・・・・仕方ないですね。リーダーの決定なら】
【うん! 部長が決めた事だし、従うよ〜!】
ーーーーポンッ×6
【『ーーーー!!』】
ネルが『C&C』のメンバーに問うと、アスナ達もやる気を示し、ポケモン達も飛び出して吠える。
【《・・・・でも大丈夫なの? 『C&C』だけでその作戦を進めるだなんて・・・・》】
【ええ。部長がそう決めたのであれば、私達は従うだけです。・・・・それに、また戦う事になるのでしたら、前回とは少し違う予定ですから】
【“皆がそう言うのなら・・・・分かった”】
チヒロの心配にアカネが応えると、先生も腹を括ったように声を発する。
【《・・・・皆、『作戦』に同意したんだね? 作戦実行に適した場所を見つけたから・・・・ナビを開始するよーーーー行こう!》】
* * *
ートキsideー
ーーーーダダダダダダダダダ!!
ーーーーピシャァァァァンン!!
トキは『アビ・エシュフ』の『トライ・ポッド』で、メガゼラオラは【かみなりパンチ】で攻撃するが、宙を浮くメガギャラドス(色違い)が回避し、ソレに乗っているネル、『直感力』で回避するアスナ、レントラーに乗って回避するカリンはタワーの中を駆け巡る。
「・・・・・・・・・・・・!」
焦りが出始めたのかトキは頬に汗をタラリとし、タワー内を走り回る『C&C』に、先生が声を張り上げる。
“このまま真っ直ぐ・・・・『目標』は目の前だよ!”
ーリオsideー
「(無謀だ)」
監視カメラで戦況を見ているリオが内心で『C&C』と『シャーレの先生』の意図が読めずにいた。
「(コレは絶対に、『合理的な選択』ではない。『C&C』は勿論、『シャーレの先生』も既に1度トキの『武装』とメガシンカしたゼラオラに負けている。ソレは不変の事実。だから、合理的に考えれば・・・・自然と、次に取る作戦は『正面突破』ではなく『搦め手』になる。けれど、もしもコレが・・・・『シャーレの先生』が編み出した『作戦』立ったとしたら・・・・?)」
と、ソコでリオは何か、『嫌な予感』を感じて肩を揺らし、通信機でトキに指示を出す。
ートキsideー
《ーーーートキ! 主砲の使用を許可するわ! ゼラオラも最大出力よ!》
「イエス、マム。ゼラオラ、【プラズマフィスト】、最大出力」
『ゼェラッ!!』
普段から声を張り上げないリオの焦った様な声を訝しげにしながら、トキは『アビ・エシュフ』の肩部にある2門のレーザーキャノンを起動させ照準を合わせ、エネルギーをチャージする。
メガゼラオラも、全身の稲妻を両腕に集中させていく。
《『中央タワー』に電力が集まってる! 皆、気を付けーーーー》
ーーーードシュゥウウウウウウウウウウウウ!!
ーーーーバシュゥウウウウウウウウウウウウ!!
2つのレーザーキャノンと凄まじい雷撃が先生と『C&C』に襲い掛かった。
ー先生sideー
『ーーーーアギャァ!!』
レーザーキャノンと雷撃が襲い掛かる寸前、先生はミライドンを取り出して回避に成功した。
“さっきの・・・・アレは、レーザー・・・・? こんなモノを・・・・まだ隠していたの・・・・?”
すると、巨体ゆえに回避できなかったメガギャラドス(色違い)は直撃し、ネルもアスナ達もポケモン達も、ヨロヨロとなって倒れた。
ーリオsideー
「(今のは一体何だったのだろう・・・・)」
ネルが倒れたのを見ていたリオは『嫌な予感』を感じていた。〈ミレニアムサイエンススクール〉を代表する『天才』のリオは、この感覚に戸惑いを感じていた。
「(勝率やデータに基づく判断ではなく・・・・『嫌な予感』がした・・・・ただソレだけの理由で、判断を変更した・・・・? そんな・・・・私がそんな『非合理的な選択』をする蓮が・・・・単純に感覚を勘違いしただけ)」
論理性かつ効率性、そして何よりも合理性を重んじるリオにとって、そんな感覚に自分の判断を変えた事に対して動揺を感じてならなかった。
“・・・・リオ”
『シャーレの先生』の声を聞いて、リオはポーカーフェイスを貫きながら声を発する。
ーアカネsideー
《・・・・ここまでよ。『武装』を通じて確定した『結果』ーーーーデータで算出された未来は、誰も覆す事等できない。シャーレの先生・・・・貴方なら『武装』に敗れた時点で分かっていた筈よ。私達に勝てる確率なんて、0‹ゼロ›だと言う事を》
既に勝った気でいるリオは、先生に問いかける。
《ソレなのに、何故私達に挑んできたのか・・・・理解できないわ。僅かな勝機と言うものを何処かで見出していたのであれば、そんな物は無意味で、非合理極まりない行動よ》
そしてリオは、何処か冷たい目で先生を見据えながら言葉を続ける。
《もし、そんな些細な錯覚を理由に、満身創痍の生徒にこんな事をさせたのであれば・・・・・・・・心底、失望するよ》
“ソレは・・・・”
「ーーーー先生は、そのような指揮をしておりません」
《アカネ?》
倒れていた筈のアカネが、寸前でマルマインとアローラゴローニャが【まもる】で盾になってくれたお陰で比較的に軽傷だったのか身体を起き上がらせ、いつも通りの穏やかな笑みを浮かべてみせる。
「いえ、そもそもその認識を最初から訂正する必要がありますね。私達は別に、勝率やデータを信じて戦った訳ではありません」
“・・・・何?”
* * *
【ーーーー部長】
【あ? どうした、アカネ】
数十分前、傷だらけの身体を引きずりながら『中央タワー』に向かおうとするネルにアカネが声を掛ける。
【既に申し上げた通り、チヒロさんが仰った作戦が成功する可能性は非常に低いです。なのにそんな身体で・・・・】
【知るか】
アカネの心配をネルは吐き捨てながら、不敵な笑みを浮かべる。。
【『勝率』だの『可能性』だの、そんな細々とした事はどうでも良い。んなモンは、お前か先生に任せれば何とかなる。大事なのは『アリス‹チビ›を助けたいか、否か』ソレだけだろ?】
【!・・・・ふふっ。やはり、以前から思っていましたが・・・・部長、少し変わりましたね。・・・・きっと、ソレは。あの子達と会った、あの日から・・・・少しずつ】
【?】
『ゲーム開発部』と出会ってから、何がとは言わないが、良い意味で変わってきているネルに、アカネは笑みを深くする。
【それにしても・・・・『誘拐された友人を救う為に冒険』に出るだなんて。私達、まるで・・・・ーーーー『ゲームの主人公』みたいですね】
* * *
「ーーーー大切な友人を救いたい・・・・ええ、ただソレだけです」
《・・・・・・・・・・・・》
アカネの言葉に、リオは少しの間だけ黙っていた。
“リオ・・・・君は先程、何か『違和感』を感じていたんじゃないかな? だからトキにレーザーキャノンを使わせ、ゼラオラにと全力全開の攻撃をさせたね?”
《・・・・ソレがどうしたの?》
“その『違和感の正体』を、教えてあげるよ”
《っ・・・・》
“ソレはね、アスナが良く使うーーーー『直感』だよ”
《『直感』、ですって・・・・? あり得ない。そんな『不確実な感覚』で、私が判断を誤ったとでも言うの? くだらない》
先生の言葉に、リオはポーカーフェイスを僅かに崩して聞き返すが、合理主義者のリオにとってソレは否定すべきものであると言いたげに一蹴する。
しかし、先生は止まらない。
“確かにね。ーーーーでもリオ。君のソレはアスナの『神秘』とは少し違う。『ビッグシスター』と呼ぼれるだけあって、君には恐らく私よりも膨大な『知識』がある。そして君が感じた『違和感』こそ、君の『知識』が導き出した『警鐘』なんだ。ソレを手繰り寄せようとせず、軽んじてはならないよ。まぁ、君がソレを軽んじてくれたお陰でーーーー逆転の一手を手にする事ができたんだけどね”
《???》
「あ、そう言えばリオ会長。まさか忘れていませんよね?ーーーーネル先輩の『もう1つの名前』」
先生の言葉に更に訝しげに眉根を寄せると、アカネが声を発する。
「『コールサイン・ダブルオー』。私達〈ミレニアム〉の『約束された勝利の象徴』と言う事を。そして、その名に相応しい『隠し玉』がいる事を」
「・・・・・・・・!?」
『!!?』
その言葉に、トキとメガゼラオラがビクッと身体を震わせると、トキの眼前にニンマリと笑みを浮かべるネルが、メガゼラオラの背後に不敵な笑みを浮かべるエレキブルが立ち、二人の身体を捕まえた。
「とらえた」
『ブル』
《主砲を正面から浴びたのに動けるだなんて・・・・!?》
「生憎、この間も『似たようなの‹アリスの『光の剣』›』を食らったばったでな!」
ーーーーピンポ~ン・・・・。
と、ソコで、エレベーターの到着音が室内に響いた。
《ーーーー『中央タワー』の貨物エレベーターをハッキングしました!》
“ネル!! 今だよ!”
『ピカチュウ!』
そして、チヒロからの映像通信が入り、先生とピカチュウが声を張り上げた。
「!!」
「!?」
『ブゥルゥ!!』
『ゼラッ!?』
ネルもエレキブルが、到着した貨物エレベーターに、トキとメガゼラオラを放り込んだ。
《エレベーター・・・・? まさか、あの子達の目的地って・・・・!?》
ソコでリオも、今さっき自分が否定した『直感』の『警鐘』を理解した。
ーーーー彼女達が何故タワー内部に来たのか。その先にあるモノが何なのか。
『直感的』にソレを察知したからリオは、思わず速やかに彼女達を撃破しようとしていたのだ。しかし、ソレは最早・・・・手遅れであった。
「!? アレは・・・・!」
そして、トキの目が捉えたのは、メガギャラドス(色違い)の頭の上に乗った『ブイの字』を見つけた。
* * *
【も、モモイが前に言ったアイデア何たけど】
【え!? 私!?】
【エレベーターを活用したら・・・・もしかして・・・・】
* * *
エレベーター内に放り込まれたトキとメガゼラオラの前に、コレまたほぼ無傷のーーーーメガギャラドス(色違い)が現れた。
《・・・・!! 『武装の欠点』・・・・! まさか、そんなやり方で・・・・!? トキ! 早くソコから出て!! あの子達は・・・・! 『エレベーターで『武装』の回避システムを麻痺させ、ゼラオラの逃げ道を塞ぐ』つもりよ!!》
「ーーーーいや、遅ぇ」
そして、リオは相手の目論見を理解し、トキとメガゼラオラに逃げるように、冷静さを失ったかのように声を張り上げて言うが、エレベーターの出入り口はメガギャラドス(色違い)が浮かび、その左右にはネルとエレキブルが待ち構えており、凶悪な笑みを浮かべるネルがトキに向けて声を発する。
「ーーーーアタシ、前に言った事あったよな? アタシの間合いに入って勝てるヤツなんか、この〈キヴォトス〉の何処にもいないって」
「・・・・・・・・」
「あ・・・・テメェには言ってなかったか? まぁ、どっちでも良いんだけど。終わらせるぞ。エレキブル、【10まんボルト】。ギャラドス・・・・【はかいこうせん】!」
『ブゥルゥウウウウウウウウ!!!』
『ギシャァアアアアアアアア!!!』
「はぁ・・・・終わりですか」
『ゼラ・・・・!』
ーーーーダダダダダダダダダダダダダダダッッ!!!
ーーーーバリバリバリバリバリバリバリバリッ!!!
ーーーードゴォオオオオオオオオオオオオオン!!!
貨物エレベーターが、ネルの『ツイン・ドラゴン』の弾丸に、エレキブルの電撃に、メガギャラドス(色違い)の口から放たれた光線に呑み込まれ、『中央タワー』の外壁をブチ破ってしまった。
「・・・・ぺっ・・・・」
そして、メガギャラドス(色違い)に乗って、『中央タワー』近くのビルの屋上に倒れ、『アビ・エシュフ』がボロボロになったトキと、メガシンカが解けて気絶したゼラオラを、ネル達は見下ろした。
「ーーーーケッ、大した事ねぇな」
『ーーーービビビビ♪』
不敵な笑みを浮かべるネルの肩に、メガギャラドス(色違い)の頭の上から1匹の小さなポケモンが宙を浮いて肩に乗ってVサインをした。
ウサギのようなつぶらな瞳に愛くるしい見た目をし、額には大きなVの字が特徴的なポケモンーーーー『しょうりポケモン・ビクティニ』であった。
ビクティニは無限にパワーを生み出しソレを相手に分け与え、トレーナーはどんな勝負にも勝てると言われている。勿論、プライドが高く、正々堂々と戦って勝つのが好きなネルは、ビクティニの力をそんな風に使いたがらないが、今回は相手は『チート』を使っているのでビクティニをメガギャラドス(色違い)に付け、先程のトキとメガゼラオラの攻撃に耐える事ができたのだ。
『クティ?』
「はっ! 楽勝だっての!」
ビクティニが「かなり危なかったね?」と聞くが、ネルは不敵な笑みを浮かべてそう返した。
ーリオsideー
「コレが・・・・〈ミレニアム〉最強の・・・・ダブルオー・・・・」
映像越しで見たトキとゼラオラを撃破したネル達を見て、リオはボソリと呟いた。
ー先生sideー
“ネル!”
先生と『ゲーム開発部』はミライドンやアスナやカリンから貸してもらったプリンやムクホークに乗って、近くのビルの屋上に立っているネルの元に向かうと、ボロボロになった『アビ・エシュフ』を纏って倒れているトキと、目を回して気絶しているゼラオラがいた。
「ーーーーあっ! アソコ! 見て!」
『プラァ!』
《・・・・本当に倒すなんて》
先生の後ろでミライドンに乗っているモモイと、映像通信のチヒロ(『ヴェリタス』の部室に戻った)が声を上げる。
「ネル先輩スゴい!」
『プラスル!』
「ユズちゃんもスゴかった! 全部、ユズちゃんの作戦のお陰だからね!」
『マイナン!』
「わ、私は・・・・と、特に何か、した訳じゃ、ないから・・・・////」
『デンチュ!』
照れるユズに、デンチュラが「シャンとしろ!」と言いたげに背中をパンッと叩いた。
「・・・・・・・・・・・・」
“ネル・・・・?”
「・・・・・・・・・・・・(バタッ)」
ネルが何も言わないのを訝しんだ先生が声を掛けると、ネルはその場で倒れ、ビクティニもネルの肩から降りて宙を浮く。
『レイブっ!?』
『ギャッ!?』
『ビクティ!?』
『!?』
“ネル・・・・! 大丈夫!?”
倒れたネルに全員が駆け寄る。
「・・・・痺れる。まるでエレキブルの【かみなりパンチ】をパンチくらったみてぇだ・・・・身体が痺れて・・・・動けねぇ・・・・」
“・・・・え?”
「くらった事あるの!?」
唯でさえ重傷の身体に無理をさせてきたのだ。如何にキヴォトス人と言えど身体が限界だったのだろう。
「クソ、あんま騒ぐな・・・・頭に響く・・・・・・・・大丈夫だ、ちょっと休んでビクティニからエネルギーを受けたら良くなる」
『ビクティ!』
額のVの字を光らせたビクティニは、倒れたネルにオレンジ色のエネルギーをシャワーのように降り注がせた。
「つーか、何でプリンとムクホークだけが? ウチの連中は?」
“皆無事だよ。暫くは動けないと思うけど。ネルの世話を頼んだって言ってたよ”
「・・・・そうか。は、誰が誰の世話をしろって言うのやら」
“・・・・・・・・私がお世話しようかネル?”
「・・・・はぁ!? へ、変な冗談言ってんじゃねぇぞ先生!?////////」
“じ、冗談だよ・・・・1割くらい”
「たくっ・・・・ん!? 1割!!? ソレ、残り9割は本気ってーーーーあいででででっ!!!」
先生の発言に身体を起こして顔を真っ赤にして怒鳴ろうとするネルだが激痛で動けなくなり、エレキブルとギャラドス(色違い)とビクティニはそんなネルを見てケラケラと笑っていた。
「〜〜〜〜だぁ! その話はもう良い!!・・・・おい、チビ共」
「う、うん?」
「アカネやゴローニャやマルマイン、アスナやプリンやハピナス、カリンやレントラーやムクホークと・・・・アタシらがここまで繋いできた。後はもう『1つ』だけだろ」
先生との漫才を中断して、ネルが『ゲーム開発部』に目を向けると、ニヤリと笑みを浮かべる。
「ーーーーソイツ、ぜってぇ連れ戻せよ」
ネルの言葉を聞いて一拍置いて黙っていた『ゲーム開発部』の面々は、すぐに顔を引き締めて力強く頷いてみせた。
「うん!」
『プラ!』
“ありがとう、ネル・・・・皆、行こう!”
『ピカッ!』
先生と『ゲーム開発部』はネルの事をビクティニ達に任せ、アスナのプリン、カリンのムクホークに乗って、『中央タワー』へと戻っていった。
◇
『デンチュ・・・・?』
そしてふと、タワーに戻る途中でデンチュラが辺りを見回して声を発する。
『チュラ、デデンチュラ?』
デンチュラは、「なぁ、デデンネはどうした?」と言いたげに声を上げる。
「えっ・・・・さっきまで先生の肩に・・・・?」
“あれ・・・・そう言えば、いつの間にか・・・・”
「ちょっと待って! デデンネっていつから見なくなった!?」
「えっと・・・・最初にタワーに着いた時はいたけど・・・・」
「そ、そう言えば、撤退する時から見ていないような・・・・!」
“まさか・・・・!!”
全員がデデンネが既に、『中央タワー』の内部にいるのでは無いかと思い至った。
ーデデンネsideー
『ーーーーデデン!!』
その頃、アリスのデデンネは『中央タワー』の隅から隅まで広がっている通気口の中を走り回り、漸くアリスのいる部屋を見つけた。
『デデデデ、デデン!!』
デデンネは【いかりのまえば】で通気口に穴を開けて脱出すると、急いでアリスに駆け寄った。
『デデン♪』
嬉しそうにアリスに抱き着くデデンネ。
しかし・・・・。
『・・・・・・・・・・・・・・・・』
『デデン? デデン! デデン!!』
全く反応を示さないアリスに、デデンネは不安そうな顔となった。
ー先生sideー
「ーーーー着いた!」
『プラスル!』
そして、漸く『中央タワー』にある、リオがいるであろう『司令室』に到着した先生と『ゲーム開発部』。アスナのプリンとカリンのムクホークは『C&C』の皆の所に戻らせた。
「此処が『エリドゥ中央タワー』の最上階・・・・」
「マイナン・・・・!」
「(・・・・ゴクッ)」
『(シュルルルル・・・・)』
ミドリとマイナンが辺りを険しい目で見渡し、ユズは喉を鳴らし、デンチュラは【ねばねばエレキネット】を出す準備をしていた。
『・・・・・・・・』
此処まで温存しておくようにネル達から釘を刺され、漸く外に出たルカリオとイーブイ(色違い)と2代目御三家は、ピカチュウと共に周囲を警戒していた。
《地図によると、此処の何処かにアリスがいる筈だよ》
と、チヒロがそう言った瞬間、コツン、コツンと、ハイヒールの靴音が響いてくる。そんな靴を履いているのは、この『要塞都市エリドゥ』でただ1人ーーーー。
「ーーーーそう、アリスなら此処にいるわ」
調月リオ(生身)であった。後ろにはゴチルゼルが控えている。
「会長・・・・!」
「・・・・!」
『『〜〜〜〜!!』』
『・・・・・・・・』
才羽姉妹とユズが鋭い視線でリオを睨み、プラスルとマイナンが頬に電流を流して威嚇し、デンチュラが静かに糸を小さく伸ばす。
「まだ戦うつもり!?」
「いいえ。トキ達が破れた時点で、私の手札は殆ど無くなったわ。私の手持ちポケモン達で、先生の手持ちポケモン達や貴女達『ゲーム開発部』のポケモン達を相手取って勝てる可能性を算出しても、勝率は3割にもならなかったし、下手をすればこの『エリドゥ』の半分が破壊されるわ。認めましょう・・・・私の負けよ」
“リオ・・・・”
現実主義者のリオは、素直に自分の敗北を認めた。
「本当に・・・・貴女達は此処まで来たのね。近い将来、〈キヴォトス〉の脅威になる事が確定しているあの子を救う為に・・・・遮る物を全て薙ぎ払って・・・・」
「当たり前だよ! 最初からそう決めてたからね!」
「ーーーーアリスが、“〈キヴォトス〉に終焉を招く”としても?」
「急に何? アリスをそんな風に言わないでよ!」
「私は、ただ・・・・」
あくまでもアリスを危険視するリオに、先生が話しかける。
“リオが何を『根拠』に動いたかは分からない。でも、1つだけハッキリと言えるよ”
先生は一拍置いてから声を上げる。
“リオは、誰にも相談せず、1人で全てを判断して結論づけた。そして、君が『正しいと信じる事』を他人に強要した”
「・・・・!!」
その言葉に、リオは動揺したかのように肩を揺らした。先生は知らないだろうが、リオはほんの少し前に、“同じ事を言われたのだ”。
「先生・・・・貴方も、私の行動が『独善』だと言うの・・・・? でも・・・・私は・・・・!! 私、は・・・・」
リオは動揺しているかのように同じ言葉を繰り返していた。
と、ソコに、チヒロからの映像通信が割って入る。
《ーーーー先生、アリスの居場所が分かったよ。その部屋の隅に、電力が集中する施設がある筈。アリスはソコにいる》
「皆!」
「うん! お姉ちゃん!」
チヒロからの報告を受けて、『ゲーム開発部』とイーブイ(色違い)と2代目御三家は駆け出すが、先生とピカチュウとルカリオはリオに向き直る。
“リオ、続きはこの後にしようか”
「・・・・・・・・」
リオは答えなかったが、後ろにいるゴチルゼルがペコリと会釈すると、先生達もアリスの元へと向かった。
新たな『脅威』が待ち受けている事も知らずに・・・・。
はい。ネルの『隠し玉』は気付いていた人もいましたが、ビクティニです!
ーネル&ビクティニー
ネルが2年の修学旅行の際、ビクティニの住処を荒らして捕まえようとしていた不良生徒達を一蹴し、そのまま懐かれ手持ちとなった。基本はネルの肩に乗り、頭に乗るとネルが怒る。