ーユウカsideー
「ーーーーノア、コレって・・・・!?」
「うん・・・・でも、まさかこのポケモンが・・・・!?」
先生達が『要塞都市エリドゥ』で戦っているその間、ユウカとノアは『エリドゥ』の『電力』と『動力』を停止させようと『エリドゥ』の近くに建てられた『発電所』に辿り着いた。昔に廃棄された施設を隠れ蓑にし、リオが『エリドゥ』のエネルギー源の1つにしていたようだ。
『エリドゥ』で先生達が暴れている隙に、チヒロから『発電所』への地図が送られ、サーナイトとエルレイドの【テレポート】を使いながら移動し、漸くその場所に到着するとソコにはーーーー3つの巨大な鳥籠のような『檻』が置かれ、その『檻』にはチューブが幾つも付けられていた。
しかし、ユウカとノアが驚いたのはソコではない。その『檻』の中にいるーーーーポケモン達であった。
大型の薄黄色の体躯の鳥ポケモン、翼に鬣に尾羽が炎を模しているように燃えている『かえんポケモン・ファイヤー』。
青白い羽毛を持った鳥ポケモンで、1組の長い翼と長い尾、3対の鶏冠を持つ綺麗な姿が特徴的な『れいとうポケモン・フリーザー』。
鮮やかな黄色をした大きな鋭い羽ね鳥ポケモン。所々に黒のアクセントが見られ、嘴も長く鋭く、その全身は稲妻や電気が迸る様のように見える『でんげきポケモン・サンダー』。
『伝説級のポケモン』の中でも、最も最初に発見された『三鳥』と呼称される伝説の鳥ポケモン達であった。
「多分、この『檻』が3体のエネルギーを使って、『エリドゥ』のエネルギーに使っていたんだね」
「サンダーが『電力』、ファイヤーが『動力炉』、フリーザーは『冷却装置』、って所かしら? 良くもまぁこの3体を捕まえられたわね・・・・」
「リオ会長ならネットとかで投稿された目撃情報から、3体の移動経路を計算して棲家を見つけて待ち伏せとかをして捕らえたんだと思うけど。ボールに入れないで『檻』に閉じ込めていたから、知られる事が無かったんだね」
〈キヴォトス〉では、モモイ達のような一般生徒は1〜2体、ネルのように『許可』を得た生徒でも3体のポケモンを所持が許されているが、ユウカやノア、そしてリオのような『生徒会』や『風紀委員会』、更に『特殊な役職(シスターフッド等)』に所属する生徒達は4体まで手持ちにして良い。
しかし、それ以上のポケモンを所持すると、各地区にある『ポケモンセンター』の『お預かりシステム』にボールごと転送され、どんなポケモンなのかもシステムの記録にも残るのである。
しかし、こうして『檻』に閉じ込める事で、『預かりシステム』を誤魔化していたという事だ。
「取り敢えず、この3体を解放すれば、『エリドゥ』のエネルギーを遮断できるのね?」
「うん。リオ会長の事だから予備電力くらいは用意しているだろうけど、ソレでも先生達の力になれると思うよ」
「ええ。ソレじゃーーーーサーナイト!」
「エルレイド!」
ーーーーポン×2
『サナー!』
『エル!』
ユウカとノアはパートナーのサーナイトとエルレイドをボールから出すと、2体に『メガストーンが付いた髪飾り』と『メガストーンが付いた腕輪』を付ける。そしてユウカが『キーストーンが付いたカフスイヤリング』を右耳に、ノアも同じく『キーストーンが付いたカフスイヤリング』を左耳に付け、2人が同時に『キーストーン』を起動させた。
「勝利の計算を示すわよ!」
「合理と理性を証明します!」
「「ーーーー『メガシンカ』!!」」
『サァ・・・・ナァーッ!!』
『エル・・・・レィーッ!!』
2人の『キーストーンカフス』から幾つもの光の帯が伸び、サーナイトとエルレイドの『メガストーン』も光り輝き、光の線が幾つも現れ、ユウカとノアの出した光の線と繋がり、光の球体となり砕けると、2体の兄妹ポケモンはその姿を変えた。
元々女性的な印象があったサーナイトには、手には純白のロンググローブのようなものが装着され、胸の赤いプレートもより大きくなり、胸リボン又はハートのような形状となり、スカート部分がクリノリンを着用したドレスのような膨らみを持つようになった「ほうようポケモン・メガサーナイト」。
エルレイドは白を基調としたカラーリングとなり、頭部も兜の様な形状に変化し、背中には優れたマントの様な物が付き、胸にあった赤い器官の大半が特徴的な両肘へと移り、赤く大きな刃を成形している『やいばポケモン・メガエルレイド』。
唯でさえ美しく、優雅で、凛々しいエルレイドとサーナイトが、メガシンカした事により更に磨きが掛かった姿となる。
「はぁぁぁぁ〜・・・・やっぱり素敵ねぇ、私のサーナイトは♡」
「あらあらユウカちゃん。私のエルレイドもカッコいいですよ☆」
自分のパートナーを自慢気に話すユウカとノアだが、気持ちを切り替えて、ファイヤー達を閉じ込めている『檻』へと目を向ける。
「サーナイト! 【ムーンフォース】!!」
「エルレイド! 【サイコカッター】!!」
『サァァァァ・・・・ナァァァァッ!!!』
『エルゥゥゥゥ・・・・レィィィィッ!!!』
メガサーナイトが両手を挙げると月の形をしたエネルギーを3つを生み出し、メガエルレイドが両肘の刃にサイコパワーを込めて巨大な刃を形成し、3つの『檻』に向かってメガサーナイトとメガエルレイドが技を放った。
ーーーードガァアアアアアアアアンンッ!!!×3
『ーーーーファアアアアアアアアッ!!!』
『ーーーーギュイイイイイイイイッ!!!』
『ーーーーヒャアアアアアアアアッ!!!』
『檻』が破壊され、解き放たれた『三鳥』は雄叫びを上げて、【かえんほうしゃ】に【スパーク】に【れいとうビーム】を辺りに放って暴れていた。
「うわっ!? スゴい事になってる!?」
「ユウカちゃん! 他の場所にも行きましょう!」
「ええ!(先生。アリスちゃんの事、お願いします!)」
ユウカとノアは、メガサーナイトとメガエルレイドにそれぞれ抱き締められ、【テレポート】でこの場から消えた。
そして、ファイヤーとサンダーとフリーザーは、『発電所』から脱出すると、自分達をこんな目に合わせた人間‹リオ›に仕返ししてやろうと考えたのか夜空を羽ばたき、『要塞都市エリドゥ』へと向かっていった。
ー先生sideー
先生達が部屋に入るとソコには、全身にコードを取り付けられ、目を閉じて眠っているアリスの姿だけでなく、デデンネがソコにいた。そして、そのアリスの眠っている椅子の更に奥に、大きなカプセルが2つ、壁に設られていた。
『ーーーーデデデ!』
「アリス! デデンネ! お待たせ!」
『プラァ!』
「アリスちゃん!」
『マイナ!』
「アリスちゃん・・・・」
『チュラ!』
「・・・・・・・・・・・・」
デデンネが皆に両手を振り、皆がアリスに呼びかけるが、アリスは全くの反応を示さなかった。
“アリス・・・・?”
『ピカ?』
『???』
と、その時、カチッ、と言う音が部屋中に響き、電気が全て消えた。
『!!?』
「な、何が起きてるの!?」
「あ、彼処のモニターが・・・・!」
突然の暗闇に驚く一同に、ピカチュウとプラスルとマイナン、デンチュラが放電して僅かな明かりを灯すと、ミドリが指差したモニターに目を向けた。
「コレは・・・・!!」
と、ソコで、部屋に入ってきたリオが驚きの声をあげる。
全てのモニターが不気味に光りーーーー『Divi:Sion』と言う文字を表示していたからだ。
ーーーーウィィィィンン・・・・ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・!
更に部屋が、否、『要塞都市エリドゥ』全体が震えているかのように鳴動し始めたその瞬間、
ーーーードゴドゴドゴドゴォオオオオオオオオンン!!
『エリドゥ』てアチコチから爆発が起こり出し、近未来都市だった要塞都市が破壊されていく。
《ぃま・・・・急に・・・・な・・・・が・・・・!? 通信が・・・・に・・・・み・・・・な・・・・応答・・・・!?》
チヒロのドローンからの映像通信が乱れ、最終的に通信が途切れてドローンが床に落ちて機能を停止させた。
“チヒロ・・・・!”
「『エリドゥ』のシステム全体が・・・・ハッキング・・・・いえ、コレは単純なハッキングではない・・・・」
頬に汗を垂らしたリオが、自前のタブレットで現状を解析していた。
「ーーーー“都市全体が『何か』に変質していっている?”」
「こんな事してる場合じゃない! 早くケーブルを外してアリスを・・・・!」
狼狽えている様に見えるリオを他所に、モモイ達はアリスを解放しようとしたその時、
『ーーーーその行為は推奨しません』
突然の声と共に、『何か』がモモイ達に向かって放たれた。
『っカルォ!!』
が、ソレをルカリオが裏拳で弾き飛ばし、部屋の壁を僅かに破壊した。
「!?」
“今のは・・・・【はどうだん】!?”
「まさか、『あのポケモン達』も始動したの・・・・!?」
壁に設られたカプセルが破壊され、ソコから『2体のポケモン』が現れた。
『・・・・プシュ』
【はどうだん】が放たれたであろうカプセルからは、鋼鉄で出来た自動人形(‹オートマタ›のメイドのような姿をしており、スカートとモンスターボールを合わせたような下半身から、昆虫あるいはドールの素体染みている節の目立つ上半身が伸び、頭部は回らない歯車がヘッドドレスのように覆っており、上部にはツインテールとも触覚ともつかない半円型のパーツが伸びている『じんぞうポケモン・マギアナ』。
『ヴォオーッオ!!』
四足歩行の機械で出来たポケモンのような姿で、特徴的なのは背中に背負ったホース状のアームが動き、背中で大きな輪を作ると、そのポケモンの全身からプシュゥ〜、と水蒸気が噴射されている『スチームポケモン・ボルケニオン』。
“マギアナに、ボルケニオン・・・・!?”
「嘘!? 『幻級のポケモン』が2体も!?」
先生とミドリが驚くが、ボルケニオンが背中の輪を外してアームに変えると、先生達に向けて【ねっとう】を放つ。
「『王女』を左右に立つ『守護獣』である2体が同時に・・・・!? 捕獲してからまるで動く気配が無かったのに、一体何故動き出したの・・・・!?」
リオが突然動き出して攻撃してきたマギアナとボルケニオンを見ながら、顎に手を置いて思案を巡らせる。
“っ! 皆!!”
ベイリーフが【つるのムチ】でモモイとプラスル、ミドリとマイナンを回収し、デンチュラがユズに糸を巻きつけ、先生がデデンネを回収して、ルカリオ達と共に後ろに退くと、アリスの椅子の周りに【ねっとう】が当たり、水蒸気で視界を遮る。
『デデン!!』
『アリス(ちゃん)!!!』
『ーーーー!!!』
『ゲーム開発部』が声を張り上げるが、水蒸気が収まると、アリスがゆっくりと起き上がり、その目を開いた。
ーーーーその眼は・・・・真っ赤に染まっていた。
“アリス・・・・なの?”
先生は、先日大暴れした時のアリスと似た雰囲気の『彼女』に問い掛けるように声を投げた。
そして・・・・。
『ーーーー現在『王女』の表面人格は内部データベースの深層部に隔離されています。強制的に接続を解除すると、取り返しのつかない損傷が起こるでしょう』
「アリス・・・・!? 一体何を・・・・?」
『プラァ?』
機械的な会話をするアリス?に、モモイとプラスルだけが首を傾げる。
「お姉ちゃん、コレ『アリス』じゃないよ・・・・」
『マイナン!』
「『アリス』・・・・?」
ミドリとマイナンが怯えるように言うと、アリス? は訝しげな声を発する。
『ソレは、アナタ達が私達の『王女』を呼ぶ際の名称・・・・『王女』に名前は不要です。名前は存在の『目的』と『本質』を乱します』
『デデン! デデンデデ!!』
「何を言ってるの!? ねぇ、『アナタ』は誰! アリスちゃんを返して!」
デデンネとミドリがアリスを返せと言うが、アリス?はソレに構わず名乗る。
『ーーーー私の個体名は〈Key〉。王女を助ける『無名の司祭』達が残した修行者であり、彼女が戴冠する玉座を継ぐ『鍵』〈Key〉です』
“・・・・何?”
『ピカ?』
アリス、否、〈Key〉の言葉の意味が分からず、先生とピカチュウが問い返すが、〈Key〉は構わず続ける。
『彼女は『王女』であり、私は『鍵』。ソレが私達の『存在』であり『目的』。今、我々を妨害していた攻撃が止まった事を確認しました。只今よりエラーを修正し、本来あるべき玉座に『彼女』を導かせていただきます』
そう言って、〈Key〉は1回目を閉じる。
『『AL-1S』に接続された利用可能リソースを確保する為、全体検索を実行。リソース領域の拡大』
ーーーーゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・!!
〈Key〉の呟きのすぐ後に、『エリドゥ』が再び鳴動する。
「リソース名、『要塞都市エリドゥ』の全体リソースーーーー1万エクサバイトのデータを確認。・・・・現時刻をもって、『プロトコルATRAHASIS』稼働」
ーーーーガシャンッ!!
『コード名『アトラ・ハシースの箱舟』起動プロセスを開始します』
「・・・・!! 『アトラ・ハシース』・・・・!?」
ーーーードゴォオオオオオオオオオオオオオンンッ!!
リオが〈Key〉の言葉に肩を揺らすと、凄まじい爆発音が中央タワーに響いた。
『プロセスサポートの為『追従者‹Divi:Sion›』を呼び出します』
《ーーーーせ、先生! 『要塞都市エリドゥ』のアチコチから、目玉ロボットが大量に出現しました!》
“! 何だって・・・・!?”
〈Key〉がそう言うのと同時に、『シッテムの箱』のアロナが慌てた様子で、『エリドゥ』の各所にある監視カメラの映像を送ってくると、『ヴェリタス』が見つけた目玉ロボット、『Divi:Sion』達が『アイアント』の群れのように『エリドゥ』に現れているのが映された。
「・・・・『エリドゥ』各地で、『追従者‹Divi:Sion›』の出現・・・・?」
“リオ・・・・一体コレは何が起きてるの? アリスは・・・・”
「いえ、そんな筈が・・・・私の計算は・・・・でも・・・・! 私は・・・・〈キヴォトス〉に『終焉』が齎される事を懸念して、この『要塞都市エリドゥ』を建設した。私の動員できる〈ミレニアム〉の全ての『技術』と『力』、『三鳥』を使ったエネルギー、そして『資源』をここに集めたと言うのに・・・・けれど・・・・寧ろ、そのせいで・・・・この都市が・・・・『終焉の発端』に・・・・? 私は・・・・」
同じくタブレットで外の状況を見ていたリオは、先生の問いに答えず、否、先生の声が届いていないのか、ブツブツと呟きそしてーーーー。
「ーーーー間違っていた?」
『チルゼ・・・・』
膝から崩れ落ちそうになるリオを、ゴチルゼルが後ろから支えた。
『『箱舟』制作に必要なリソース確保23%・・・・・・・・46%・・・・』
「!」
しかし、そんなリオに構わず、〈Key〉は何かをやろうとしているのを見て、ハッと我に返り、先生に向けて声を張り上げる。
「先生! このままでは・・・・! このまま、『エリドゥ』の全ての資源・供給源‹リソース›を奪われてしまったら、〈キヴォトス〉が終わってしまう。『決断』を下さなければ・・・・!」
“・・・・『決断』?”
先生はリオの言葉に、若干片眉を上げて問い返すが、〈Key〉は口を開く。
『『王女』は『鍵』を手に入れ、『箱舟』は用意された。『無名の司祭』の要請により、この地に新しい『サンクトゥム』を健立する。その到来で初めて、全ての『神秘』はアーカイブされーーーー』
「このままでは、『世界』が滅びる・・・・!! ゴチルゼル!」
『ルゼル!』
「ーーーー『スターミー』!!」
ーーーーポンッ!
『ーーーーヘヤッ!』
リオがモンスターボールを放り出して出てきたのは、鮮やかな青紫の星の形をした身体をし、背面にもう1つの星が回転し、五芒星を2つ重なり、八角形にカットされた美しく輝く赤い宝石のような形状をしたコアをした『なぞのポケモン・スターミー』、ソレも身体とコアの色が深い青となり、コアの周りも黄色から赤褐色になっている『色違いのスターミー』であった。
「皆と一緒に逃げてちょうだい、先生」
“『逃げて』って、リオ・・・・一体何を”
「今からこの都市自体が変貌し、『箱舟』と言う新しい概念に歪曲される。そうしたら・・・・〈キヴォトス〉は・・・・私のせいよ・・・・私がこの都市を作らなかったら、最初からこんな事にならなかったのに・・・・」
リオは申し訳無さそうに目を伏せ、今にも泣き出してしまいそうに声を発する。
「私が・・・・私のせいで・・・・」
そして、涙を堪えて顔を上げると、懐からハイパーボールまで取り出した。
「だから私が、止めないと・・・・」
「ど、どう言う意味ですか・・・・?」
『デンチュ?』
「・・・・私1人で、システムを止めてみせるわ」
“・・・・リオ”
「勿論、ゴチルゼル達を巻き込むつもりはない。私の命1つで・・・・世界の終焉を防ぐ事ができると言うのならそうするわーーーーそうしなければならない」
『『!!?』』
リオが自分を犠牲にしても〈Key〉を止めると言い出し、ゴチルゼルとスターミー(色違い)が、ピクリッ、と反応を示した。
「・・・・早く! コレは極めて論理的な選択よ、先生!」
その時先生は、リオの出した『トロッコ問題』の事を思い出し、リオに向かって声を発する。
“『トロッコ問題』について・・・・話してたよね。トロッコ問題には2つの選択肢しかない。ーーーーリオ。君はソコで犠牲の少ない方を選ぼうとした訳だし”
「私は・・・・」
“・・・・ソレが君の『優しさ』なんだね。リオ”
「?」
リオは分かっていないが、例え悲しみが待っていようと、『犠牲の少ない選択』をし、『犠牲となったもの』に対する責任を背負おうとしていたのだ。
“でも2つの選択は、誰かが犠牲になる結果しかないのであれば・・・・私はその質問自体が間違っていると答えるよ”
「ソレは・・・・問題の『答え』ではないわ、先生。ただの詭弁よ。思考実験の前提条件を否定するのは、ただの『屁理屈』でしかないわ」
“レバーを引く人が、『見落としたもの』があるんじゃないかな?”
「・・・・!?」
先生の言葉は、リオが何か『見落としていた』と暗に告げているものであった。
“本当に周囲に手を差し伸べてくれる人がいなかったのか、とか”
「・・・・!?」
『・・・・73%・・・・・・・・89%・・・・』
リオが先生の言葉に肩を揺らしていると、〈Key〉は構わずリソースを確保していっていた。そしてーーーー。
『ーーーーリソース確保99%・・・・・・・・』
“私は、全員で力を合わせて『全てを救う』選択肢を選びたい”
「そ、そんな選択肢は無いわ・・・・」
と、その時ーーーー。
《ノア! 今よ! 電力と言う電力を全部落としちゃって!》
《は~い、ユウカちゃん。その言葉を待ってました♪ーーーーえいっ!》
ーーーードォオオオオオオオオオンンッ・・・・!!!
中央タワーの外から、凄まじい爆発音が響いた・・・・。
「・・・・リソース確保失敗。システムシャットダウン」
〈Key〉がそう言うと、2体のドローンが飛んできて、ユウカとノアの映像通信が送られた。
《皆、大丈夫!?》
「ユウカ・・・・!」
「ノア先輩!」
「こ、ここには、どうやって・・・・?」
《何でノアは先輩付きで、私は呼び捨てなのよ!?ーーーーって、そんな事よりも、状況が普通ではないという事は良く分かりました、先生!》
《最初は『エリドゥ‹都市›』の位置を伝えるだけで、手を引くつもりだったのですが・・・・ふふっ、ユウカちゃんが、やっぱりソレだけじゃダメだって・・・・最後まで何とかしないと。と言ってましてね?》
“流石ユウカ! タイミング完璧だったよ!”
《コレくらい当然です。サーナイトやエルレイドも頑張ってくれたんですよ》
《エル》
《サナ》
映像通信に、メガサーナイトとメガエルレイドも会釈する。
“うわぁ〜! メガエルレイド、カッコいいね! メガサーナイトもとっても綺麗だよ!”
《エルレイ♪》
《サナサ〜♡》
『『(ジト〜)』』
先生がメガシンカしたエルレイドとサーナイトを褒めると、メガエルレイドはにこやかに返し、メガサーナイトは先生に対してかなり熱っぽい視線(ハートマーク付き)で返し、イーブイ(色違い)とベイリーフがジト目を先生に向ける。
《ソレより、会長!!》
映像がユウカに戻ると、ユウカはリオに向けて、キッと、鋭い視線を向けた。
「!!」
ビクッとなったリオが退こうとするが、ゴチルゼルとスターミーがそうはさせないと後ろを固めた。
《『セミナー』の予算を横領してこんな都市を作るなんて・・・・後で説教ですよ! 覚悟しておいて下さい!》
「・・・・ユウカ」
本当ならユウカもアリスの事で言いたい事や罵倒したい言葉が山のようにある筈のに、ソレを呑み込んでくれていると、リオも何となく気づいたようだ。
「ーーーーリソース確保プロセスエラー。緊急状況発生『Divi:Sion』でんげん、プロトコル実行者を保護する為『エリドゥ中央タワー』に集・・・・」
ーーーードゴォオオオオオオオオオオオオオンン!!
と、更に外部からの爆発音と衝撃が中央タワーを揺らす。
「・・・・邪魔者? そんな事は無い筈です。都市内の残存兵力はゼロ。論理エラー発生。確認の為、画面を表示します」
〈Key〉が『エリドゥ』の各所の監視カメラの映像をモニターに表示させた。
そしてソコにはーーーー。
《ーーーーファアアアアアアアアアアアアッッ!!!》
《ーーーーギュイイイイイイイイイイイイッッ!!!》
《ーーーーヒャアアアアアアアアアアアアッッ!!!》
“『伝説のポケモン』、『ファイヤー』に『サンダー』に『フリーザー』!? 『伝説の三鳥』だっ!?”
何と、『伝説の三鳥』のポケモン達がそれぞれ、『エリドゥ』の東区画、西区画、北区画にいる『Divi:Sion』達に向けて、【やきつくす】、【ほうでん】、【ふぶき】と言った技を放ち、『Divi:Sion』達を燃やし、破壊し、凍てつかせていった。
《ーーーーズズミィイイイイイイイイ!!!》
更に都市の何処かに隠れていたのか、巨大ミミズズが必死に炎から逃げていたが、今はどうでも良い。
「な、何であの『三鳥』が!?」
《リオ会長とトキが、『エリドゥ』の電力としてと捕らえていたみたいよ。私達が解放したんだけど・・・・》
「確かに、トキと共に彼らと戦い、『エネルギー源』として『檻』に閉じ込めていたけど・・・・何故ここに?」
《多分ですけど、リオ会長に『お礼参り』に来たんですけど、あの目玉のドローン達を会長の手下だと思い違いして、攻撃をしているのではないでしょうか?》
「え・・・・?」
ユズが『伝説の三鳥』の登場に目を見開き、ユウカとノアの説明を聞いて、若干顔を青褪めさせたリオが間の抜けた声を漏らす。
そして更に、南の区画では・・・・。
ーーーーキャリキャリキャリキャリ・・・・!!
「あっ、アレはまさか・・・・!」
“ーーーー・・・・『アバンギャルド君』と『エンジニア部』!”
モモイが声を漏らし、映像に現れたのは何と、少し武装が変わり、デザインが加えられていたがーーーー『アバンギャルド君』であった。
更にその機体には、ウタハ達『エンジニア部』が乗っていた。
ー『エンジニア部』sideー
「怪しい気配を事前にキャッチ! 『エンジニア部』が華麗に復活しましたよ〜!」
『パモット♪』
「アチコチに不思議なセンスの機械がいっぱいあるね。更には『伝説の三鳥』までいるし」
『ハラバリ〜☆』
リタイアした『エンジニア部』も、タダでは起きないと言わんばかりに、近くで破壊された『アバンギャルド君』をこの短時間で修復して、何やら不穏な空気になった状況に駆けつけて来たのだ。
「恐らくコレが・・・・会長が言っていた、『廃墟』から溢れた『脅威』なのだろうね」
『カケガ』
「ふふ・・・・ならば私達も負けていられないね。相手が『廃墟』から這い上がってきた『怪物』なら・・・・コチラは宇宙を目指す『技術者』」
ウタハが、眼前に待ち構える『Divi:Sion』達を真っ直ぐに見据える。
「私達には、マキが監修したデザインセンスで武装した味方が出来た所でね」
「はい! 敵の敵は味方! 私達が改造した敵も味方! です!」
「うん・・・・特に、今後の宇宙戦艦でも使える火力兵器を付けたから」
「いくら『廃墟』の『怪物』でも、『アバンギャルド君Mk.2』の敵じゃあない。ソレでは、行こうか! 突進ー!」
「はい! 『廃墟』のザコをお掃除しちゃいましょう!」
「お〜!」
いつもは冷静なウタハまでもが若干はしゃぎ、新たに角やスピーカーが取り付けられ、ボディには『ヴェリタス』のエンブレムが施され、武装も右腕をレールガンに換装。残る上の2本の腕にはドリルが装備された新たな『アバンギャルド君』ーーーー『アバンギャルド君Mk.2』がキャタピラを走らせ、『Divi:Sion』の群れに向かって武装を発射させた。
ーーーードゴォオオオオオオオオオオオンンッ!!!
ー先生sideー
「『アバンギャルド君』を改造して・・・・『宇宙戦艦』を・・・・え? 何言ってるの?」
『プラァ?』
“『宇宙戦艦』なら仕方ないよ! だって皆のロマンだから!”
『ピカチュウ・・・・』
「えっと・・・先生が何をおっしゃっているのか、良く分かりません・・・・」
『マイナ?』
『エンジニア部』の発言に、モモイとプラスルが目を点にしたが、先生だけは何故か熱弁し、ピカチュウ達が半眼で呆れて、ミドリとマイナンも首を傾げる。
『ーーーー理解不能。状況判断不可。命令修正及び再実行。追従者は想定外の兵力と戦闘を避け、『エリドゥ中央タワー』に集結・・・・』
と、〈Key〉も良く分からず、取り敢えず生き残った『Divi:Sion』達をタワーに集めようと命令を出そうとした。
が、
「ーーーー申し訳ありませんが、その子達は此処まで来られませんよ。タワーの入口でしたら、エイミと『C&C』のメンバーが塞いでおりますので」
鈴の鳴く様な声と共に、車椅子に乗り膝にブースターを乗せた、黒を基調としたリオとは対照的な、白を基調とした衣服の少女が現れた。
“えっ? ヒマリ!? 何でここに!?”
そう。『ヴェリタス』の部長にして、行方不明になっていた『明星ヒマリ』が現れたのだ。
「うふふっ、なんだかんだと言われたら〜とでも言いましょうか?」
「ヒマリ・・・・貴女、逃げたんじゃ・・・・」
「逃げるだなんて・・・・何と寂しい事を。この先の状況について、ある程度見当がついておりましたから。『隔離施設』を抜け出した後、急いでここに来たのです。リオの事ですから・・・・また事件を引き起こすだろうと予測していたのです。どうですか? ふふっーーーー当たりましたか?」
『・・・・・・・・・・・・』
戸惑うリオにヒマリは、したり顔でニヤニヤと意地悪く笑うと、リオもバツが悪そうに目を逸らす。ソレで満足したのか、ヒマリは改めて〈Key〉に向けて顔を引き締める。
「さて、コレが〈Key〉・・・・『無名の司祭』の『オーパーツ』を稼働させる為の『トリガーAI』ですね。このまま放っておけば、きっとアリスの人格は〈Key〉に置き換えられ・・・・『無名の司祭』が望む通り『名もなき神々の王女』として覚醒する事になるでしょう」
「! そ、ソレじゃあ・・・・!」
『チュラ・・・・!』
「!! ヒマリ先輩・・・・ソレって・・・・」
『プラ・・・・!』
「アリスちゃんは、このまま・・・・」
『マァイ・・・・』
『デデンネ・・・・!!』
ーーーーこのままでは、アリスが消えてしまう。
『ゲーム開発部』は、『最悪の結末』を想像し、顔を青ざめさせてしまう。しかし、ヒマリはモモイ達を安心させるように優しく笑みを浮かべる。
「勿論ソレを防ぐ方法もあります」
“・・・・一体、何をすれば良いの?”
「事態は一刻を争います・・・・既に、『無名の司祭』は動き出しておりますから」
ヒマリの話を聞いて、ユウカとノア、『ヴェリタス』、チヒロとスミレにも緊張が走り、外で戦っている『エンジニア部』や『C&C』やエイミも聞いていた。
「ですから、『無名の司祭』が到着する前に、先ず私達の手でアリスをーーーー」
ソコで、一拍置いてからヒマリが口を開く。
「ーーーー〈Key〉の起動でデータベースの深部に隔離されてしまったアリスを起こすのです」
はい。リオの手持ちポケモン、メガシンカ枠はスターミー(色違い)です。メガシンカしたあのシュールな姿は、リオの感性に響くと思ったので。