ーアヤネsideー
「セリカちゃん! セリカちゃん帰ってるの!?」
その夜、アヤネはセリカの住んでいる部屋の扉の前に立ち、何度もインターフォンを鳴らし、ドンドンと扉を乱暴に叩いた。
夜遅くに近所迷惑なんてお構いなしの行動。普段のアヤネなら絶対にしないが、今は状況が違う。
『・・・・・・・・』
何故なら、アヤネの腕の中にーーーー“傷だらけになったセリカのワシボンがいたからだ”。
セリカを労いと愚痴でも聞いてあげようと、コンビニで飲み物とお菓子とポケモンフーズを買ったアヤネとビブラーバは、コンビニで会計を済ませた時、外から激しい落雷の音が聞こえ、何事かとコンビニを出ると、ボロボロの姿になって飛んでいるセリカのワシボンを見つけたのだ。
アヤネとビブラーバの背中に冷たい物が広がり、ワシボンを呼ぶと、ワシボンはヨロヨロと飛びながらアヤネの腕の中に入り、すぐに『いいキズぐすり』を使って応急処置をしてから、急いでセリカの部屋に来たのだ。
『ビブラー!!』
と、そこで、部屋の窓から中の様子を見る為に離れていたビブラーバが戻ってきた。
「ビブラーバ!セリカちゃんは!?」
『ビブビブ!』
ビブラーバは首を横に振り、更に嫌な予感がお腹の中に広がるのを感じたアヤネ。
「えっと・・・・スペアキー!」
アヤネはワシボンをビブラーバに持たせて、鞄の中からこんな時の為にお互いに持たせていたスペアキーを取り出して、扉を開けて部屋に入った。
カーテンは開きっぱなし、制服も鞄も銃もない。セリカが帰宅した様子が見られない。何度もスマホロトムで連絡しても繋がらない。
アヤネは不安にかられ、一瞬思考停止に陥りそうになる。
が、
『ビブラー!!(バサササササササ!!)』
「っ! ビブラーバ・・・・っ!」
「しっかりしろ!」と、言わんばかりに声と翅を鳴らすビブラーバに、アヤネはハッとなり、両手で頬を張る。
「っ・・・・そうだね・・・・しっかりしなきゃ、先ずは皆に連絡を入れないと!」
そう言って、アヤネはスマホロトムで先生と先輩達に連絡した。
ー先生sideー
“ーーーーセリカが? 分かった、すぐに向かうよ”
先生は、とあるブロックでアヤネからの連絡を受けていた。
“ーーーーさて、こっちの用事と君達が無関係とは思えないんだ。早く白状してくれないと、私のポケモン達が荒っぽいやり方を行使するよ?”
先生の眼前には先程、落雷が落ちたような轟音を聞き、そこに向かうと、“黒焦げになって気絶していたカタカタヘルメット団とそのポケモン達がいた”。
気絶した子達を起こし、正座させるとそれを見下ろすようにし、ピカチュウとルカリオと御三家達が恐い目で睨みつけていた。
それにビビっているヘルメット団を尻目に、先生は『シッテムの箱』のアロナに指示を出した。
“(ーーーーアロナ。〈連邦生徒会〉のセントラルネットワークにアクセスして、セリカの居場所を割り出してくれるかな?)”
《了解です!》
アロナが真面目顔で敬礼して応えた。
ーシロコsideー
対策委員会の教室にて、先輩達と合流したアヤネ。
「電話してみました?」
「・・・・はい。でも数時間前から、電源が入っていないみたいで・・・・」
「バイト先では定時に店を出たみたい。その後、何者かに襲撃されたって事かな」
「ワシボンの様子から多分そうですね」
ノノミとシロコは、テーブルに寝かせられ『げんきのかけら』を食べて、漸く目を覚ますまで回復したワシボンを見て呟く。
『ワ、ワシ・・・・』
ワシボンが必死に身体を動かし、空を飛ぼうと羽根を動かし、テーブルから飛び立とうとするが。
『(ピキッ)ワシっ!?』
身体が痛み出し、落下するワシボン。
『ワフン!』
『ビブラ!』
が、イワンコとビブラーバが下に滑り込み、受け止めた。
「ワシボン駄目ですよ! まだ治りきっていないのに!」
『ワシ・・・・!』
アヤネが抱きかかえるが、ワシボンが悔しそうに涙を浮かべた。
「それにしても、誰かセリカちゃんを」
「まさか・・・・ヘルメット団の連中?」
「えっ!? ヘルメット団がセリカちゃんを・・・・!?」
「取り敢えず待とう。ホシノ先輩と先生が調べてるから」
と、話し合っていると、ホシノ先輩と先生が教室に入ってきた。
「皆、お待たせー」
「ホシノ先輩! 先生!」
“ただいま”
「どうだった、先輩?」
「先生が自分の権限を使って、セントラルネットワークにアクセスしてくれたみたいだよー。さらにここに来る前に、“落雷で全身黒焦げになっていたヘルメット団の一部隊を見つけて”、セリカちゃんを誘拐したのがヘルメット団だって突き止めたみたいー」
シロコの問いに、ホシノは相も変わらずのほほんとした顔で応えた。その言葉にアヤネが目を少し見開く。
「セントラルネットワークに・・・・。先生、そんな権限までお持ちなのですね・・・・」
「うへ〜、勿論こっそりとだけどね。バレたら始末書だよー?」
「ええっ!? だ、大丈夫なんですか、先生?」
“問題ないよ、セリカの安全が最優先だからね”
『ピカピカ』
「先生・・・・」
《このアロナちゃんがバレるなんてヘマはしませんよ!》
アヤネの言葉に先生とピカチュウがそう答えると、アヤネは少し見入り、アロナがエッヘンと身体を反らす。
「んで、連絡が途絶える前のセリカちゃんのスマホロトムの場所、ここだったよー」
ホシノが『シッテムの箱』に表示された箇所を指差し、アヤネやノノミやシロコが視線を向けた。
「ここは・・・・砂漠化が進んでいる市街地の端の方ですね?」
「住人もいないし、廃墟になっているエリア・・・・。治安が維持できなくて、チンピラ達が集まっている場所だね」
「このエリア、以前危険要素の分析をした際に、サダイジャの縄張りの端で、カタカタヘルメット団の主力が集まっていると確認できた場所です」
“うん。さっきヘルメット団の一部隊から聞いたけど、セリカをここに連れて行ったようだよ。目的は言わなかった、と言うよりも、聞かされていないって感じだったね”
ノノミとシロコとアヤネの言葉に、先生は頷きながらそう言った。
「やはりカタカタヘルメット団の仕業・・・・!!」
「成る程ねー。帰宅途中のセリカちゃんを拉致して、自分達のアジトに連れて行ったって事かー」
「学校を襲うくらいじゃ物足りなくて、人質を取って脅迫してようって事かな」
「考えても仕方ありません! 急いでセリカちゃんを助けに行きましょう!」
対策委員会の皆がカタカタヘルメット団への怒りを露わに、銃を持ち上げる。
「うん。勿論」
「よっしゃー、そんじゃ行ってみよー!」
全員が行こうとしたその時ーーーー。
『ワシィィー!!』
『っ!』
セリカのワシボンが、大声を上げて、テーブルから下りて、おぼつかない足取りで付いて行こうとする。
「ワシボン!? だから大人しくーーーー」
『ワシー! ワシワシボーン!』
アヤネが大人しくするように言おうとするが、ワシボンが首を横に振って拒否を示す。
「う〜ん、これは聞く耳を持たないようだねー」
「ん。ワシボンもセリカを助けたい」
「目の前で拐われたようなものですから、当然でしょうけど」
「で、ですが・・・・」
“ーーーーアヤネ。ちょっと良いかな?”
「先生? あっ、はい」
先生は、アビドスで新しく買った鞄から、小さなサンドイッチを取り出すと、それにーーーー『ピンク色に発光するスパイス』を振りかけ、ワシボンに差し出した。
“ワシボン。お腹空いてるならこれを食べなよ。セリカを助けに行くにしても、先ずは腹ごしらえだよ”
『ワシ・・・・? ワシ!(ガツガツ・・・・!)』
ワシボンは一瞬、首を傾げるが、すぐにサンドイッチに食いつき、それを全部食べ尽くした。
次の瞬間ーーーー。
『ワシ・・・・?ーーーーっ! ワシワシボーン!!』
『っ!?』
先程まで歩くのも辛そうだったワシボンが、突然顔色が良くなり、大声を上げて飛び上がり、宙をバタバタと飛びながら、元気になった事をアピールした。
「えっ? えぇっ!? わ、ワシボン、もう大丈夫なの!?」
『ワシボーン!!』
「・・・・ん。元気」
「先生何食べさせたのー?」
“ちょっとサンドイッチに“スパイスを効かせたんだ””
『あまスパイス』を少し振りかけたサンドイッチを食べて、ワシボンは完全に回復した。ワシボンは先生の肩に止まった。
“取り敢えず、これでワシボンも一緒に行けるね。急ごう”
『はい!』
『ーーーー!』
シロコ達とポケモン達が応え、改めて出発した。
ーセリカsideー
「う、うーん・・・・へ・・・・!?」
暗闇の中、セリカは漸く目を覚ますと、手は後ろに縛られており、ガタンガタンと揺れ、エンジン音から、トラックの荷台の中であると想定した。
「こ、ここは!? 私、攫われた!? あ、う・・・・頭が・・・・」
頭の痛みを感じながら、セリカは気を失う前の記憶が蘇った。ヘルメット団の奇襲でボロボロになり、ワシボンを逃がしてから気を失ったのだ。
「ヘルメット団め・・・・私を何処へ連れて行くつもりなの・・・・」
周りを見ると、僅かに光が漏れている箇所を見つけ、覗き込むと、太陽が昇ったのか少し明るく、外の景色はーーーー砂漠が見えた。
「・・・・砂漠・・・・線路!?」
そこは、砂漠に埋もれてしまった線路であった。
「線路がある場所って・・・・ま、まさかここ、アビドス郊外の砂漠!?」
セリカの心に、不安が広がっていく。
「・・・・そ、そんな、ここからじゃ、何処にも連絡が取れない! もし脱出できたとしても、対策委員会の皆にどうやって知らせれば・・・・」
セリカはポスン、と腰を下ろした。
「どうしよう、皆心配してるだろうな・・・・このまま何処かに埋められちゃうのかな。誰にも気付かれないように・・・・連絡も途絶えて・・・・私も他の子達みたいに、街を去ったって思われるんだろうな・・・・」
顔を俯かせる。
「裏切ったって思われるかな・・・・誤解されたまま、皆に会えないまま死ぬなんて・・・・」
ふと、逃がしたパートナーの事を考えていた。
「・・・・ワシボン、ちゃんと逃げられたかな・・・・?」
中学の頃に出会い、そしてパートナーとして共に過ごしてきたポケモンだ。ヘルメット団ごときに捕まったり、やられたりしたりはしないだろうが、このままではもう二度と会えなくなる。
「そんなの・・・・ヤダよ・・・・」
涙が溢れてくる。
「う・・・・うぐぅ・・・・」
ポタポタと涙が溢れてくる。
「うっ、ううっ・・・・」
今にも、大声を上げて泣き出しそうになるセリカ。
と、その瞬間ーーーー。
ーーーードカァァァァァァン!!!
「う、うわああああっ!?」
突如、激しい爆発音が響くと、トラックが傾き横転し、そのまま動かなくなる。
そしてーーーー。
ーーーーグシャァァァァァン!
「っ!? な、何々!?」
トラックの荷台が外側から引き千切られて孔が開き、外側から太陽の光が入ってきて目が眩むと、孔から大きな影が、バッサバッサと羽が動く姿が入り、さらに孔から人の頭がひょっこりと出てくる。
“ーーーーセリカ! 無事かい!?”
「せ、先生!?」
そこから現れたのは、先生だった。さらに孔からポケモンが入ってきた。先生のルカリオだ。
“ルカリオ! セリカを救出して!”
『カルォ!』
「うわっ!?」
ルカリオがセリカを肩に担いで、入ってきた孔から外に出た。
するとそこでは。
『ピィィィカァァァ!!』
『ワルビー!?』
『リザー!!』
『うわぁぁぁぁ!?』
『カメー!』
『ガァァ!?』
『ソウソウー!』
『シャァァァ!?』
ピカチュウが【アイアンテール】でワルビル達を薙ぎ払い。
濃い赤色で尻尾が燃えている『かえんポケモン・リザード』がカタカタヘルメット団の戦車に【かえんほうしゃ】を放って追い払う。
亀の様な姿に羽のような耳とフサフサとした毛が生えた尻尾を持っている『かめポケモン・カメール』が【アクアブレイク】でメグロコ達を打ち倒す。
カエルの背中に花の蕾を背負った『たねポケモン・フシギソウ』が【リーフストーム】でサダイジャ達を吹き飛ばしていた。
『アギャァスッ!』
「ん。半泣きのセリカの無事を確認!」
『ワンワン!』
「っ!////」
「何ぃー!? うちの可愛いセリカちゃんが泣いてただと! そんなに寂しかったの? ママが悪かったわ、ごめんねー!」
「セリカちゃーん! もう泣かないで!」
「う、うわああ! う、うるさい! な、泣いてなんか!!」
「嘘! この目でしっかり見た!」
「泣かないで下さい、セリカちゃん! 私達がその涙を拭いて差し上げますから!」
『サイドーン!』
『ZZZ・・・・ヤド〜・・・・』
さらに周りを見ると、紫色のトカゲのポケモンのようなバイクに乗ったシロコがヘルメット団を銃で撃ち、イワンコがスナヘビ達を【じゃれつく】で倒していき、サイドンが戦車を持ち上げると、それをヘルメット団やそのポケモン達に向けて投げ、アヤネが運転するバギーに乗ったホシノとノノミが銃を撃ちまくりながら、セリカにそう言う。そして、ヤドキングはバギーの助手席で鼻提灯を出して寝ていた。
すると、セリカは顔を赤くして反発する。
「・・・・そ、それで何この状況!?」
『ウォーッ!!』
「えっ?」
戸惑うセリカに近づいたのは、先程トラックの荷台の一部を引き千切った影だった。
「・・・・!!」
その影の正体を見て、セリカは目を見開いた。
身体の前面は紺色、背面は鮮やかな赤色、頭部の羽はウォーボンネットの様な形をしている。尾羽も先から順に青、黄色といったカラフルな色彩が映える大きな鷲のポケモン。
「・・・・ウォー、グル・・・・?」
そう。ワシボンが進化する『ゆうもうポケモン・ウォーグル』であった。
ただ、普通のウォーグルよりも一回り以上大きい、二メートルはある体躯をしていたが。
“リザード!”
『リザ!』
『ウォーッ♪』
リザードがセリカの縄をその爪で切ると、地上に降りたウォーグルは喜びながら、その大きな羽根を広げて、セリカに近づくと、セリカの身体を力強く抱き締めた。
その時、セリカは何となく察した。
「ーーーーえっ? ウソ、まさか・・・・このウォーグルって・・・・?」
セリカが先生を見て戸惑いながら問うと、先生は笑みを浮かべて応える。
“うん。セリカのワシボンが進化したんだよ”
ー先生sideー
〜三十分前〜
アヤネが学校の倉庫からバギーを持ち出してきた。
「おぉ〜、こんなのがあったなんてね〜」
「前に倉庫の掃除をしている時に、埃だらけで放置されていたんですけど、もしもの時に備えて掃除と整備をしていたんです!」
「うわぁ~☆ アヤネちゃん準備いいです☆」
「ん。これで足が手に入った」
バギーに乗り込むホシノとノノミ。シロコと先生も乗り込もうとしたその時ーーーー。
ーーーーポン!
『ーーーーアギャァ!!』
突如、先生の腰のモンスターボールから、〈アビドス〉に来てから、怯えた様子で閉じこもってたミライドンが、自分から出てきた。
“! ミライドン!?”
『ピカチュウ!?』
「ん? 先生、このポケモンなに?」
“ミライドン。私のライドポケモンだよ”
「わぁ~、まるでロボットみたいでカッコいいですね☆」
「見た事ありませんね・・・・」
「・・・・・・・・」
シロコ達も、それぞれに感想を述べるが、ホシノだけは一瞬ミライドンを“観察するように目を細めた”。
先生はミライドンの頭を撫でる。
“ーーーーセリカを助けるのを、手伝ってくれるのかい?”
『アギャ!ーーーーっ!』
先生の言葉を肯定するようにミライドンは声を張り上げるが、ミライドンはある生徒に目を向けて、目を見開いたように見えた。
ーーーーシロコだ。
ミライドンはシロコに近づき、マジマジとその顔を眺める。
『・・・・・・・・』
「・・・・ん。何?」
『アギャ??』
シロコが首を傾げるが、ミライドンも首を傾げる。
しかし、すぐにミライドンは気を取り直して、先生に「乗れ」と言いたげに身体をかがめた。
“分かった! 行こう!”
『ピカッ!』
『ワシ!』
先生とピカチュウとワシボンが乗り込むと、今度は背中に大きな軍用バックパックを背負ったシロコが先生の後ろにしがみつくように座り、イワンコがシロコの頭にしがみついた。
“えっ? シロコにイワンコ?”
「ん。先生だけじゃ危ないから、私達も乗る」
『ワン!』
「あぁ、シロコちゃんズルいです〜!」
「ノノミだと武器の関係上無理」
「そうですけど〜」
“ーーーーそれじゃ、出発!”
先生がそう言うと、アヤネはアクセル全開にしてバギーを走らせ、ミライドンもドライブモードとなって、アビトスの砂漠を駆け抜ける。
◇
夜が明け始めた頃、砂漠の中をバギーは全力で走っていると言うのに、ミライドンにまるで追いつけないでいた。
「凄いスピードですね、あのポケモン。バギーと同じスピードで走ってますよ?」
「いんや、あれはまだ全力じゃないね。私達に合わせて、緩めているようだよ」
「そうだとしたら・・・・先生! 私達に気にせず先行してください!」
“えっ? でも・・・・”
「大丈夫です! 必ず追いつきますから!」
「先生。今は一分一秒でも速く、セリカの元に」
“・・・・分かった。皆! 先に行ってるよ!”
「はい!」
そう会話をすると、ミライドンのジェットが火を噴き、先程とは比べ物にならないスピードで先行した。
「ん。いい風♪」
『ワン♪』
風と後ろに流れていく周りの風景を見て、シロコとイワンコはミライドンが気に入ったように言った。
そうこうしている内に、セリカの反応がしている数台のトラックと、数台の戦車の一団を見つけた。トラックの運転手は、カタカタヘルメット団だ。トラックの中にある中央のトラックの中には、恐らくセリカがいると思われた。
“見つけた。シロコ、行くよ”
「ん」
先生が二つのモンスターボールを取り出し、シロコも頷いて手に持った機械を操作すると、、背中の軍用バックパックからミサイルポッドを付けたドローンが飛び出した。
そして、丁度一団の近くの丘にミライドンを止め、先生がモンスターボールを投げると、中からルカリオとリザードが出てきた。
『ルォ!』
『リザード!』
“ルカリオ、【はどうだん】! リザード、【かえんほうしゃ】!”
『カァァァァ・・・・ルォォォォ!!』
『リザァァァ・・・・ドォォォォ!!』
「攻撃開始」
ルカリオの波動弾と、リザードの火炎、さらにシロコのドローンがミサイルを発射し、戦車一台とトラック数台を横転させた。
『ワシボーン!!』
突然の襲撃でパニックになるヘルメット団。それを見て、ワシボンがセリカがいるであろうトラックに向かって飛び立った。
「ワシボン!」
“・・・・道を作ってあげよう。カメール! フシギソウ!”
『カメー!』
『ソウソウ!』
ワシボンの心情を察した先生は、すぐに後を追い、カメールとフシギソウを出した。
“カメール、【アクアブレイク】! フシギソウ、【リーフストーム】!”
『カァメー!』
『ソウソウー!』
カメールは頭と手足を甲羅に納めると、そのまま水を纏って横回転し、メグロコを薙ぎ倒す。フシギソウも草の竜巻を起こして、スナヘビ達を薙ぎ払う。
“ワシボン! 行くんだ! 君がセリカを見つけるんだ!!”
『ワシボーン!!』
ーワシボンsideー
先生の言葉を背に受けて、ワシボンはセリカがいるトラックへ向かう。
途中、サダイジャが飛びかかるが、ピカチュウが【かみなりパンチ】でサダイジャの顔面を殴り飛ばす。
ワルビアルが大口を開けて来ると、ルカリオが【ボーンラッシュ】で口をつっかえさせ、【はっけい】をワルビアルの腹部に叩き込み倒す。
別のワルビアル達が、大口を開けて襲い来るが、その口の中にリザードが火炎を、カメールが水を、フシギソウが草を叩き込んで倒れさせる。
ワルビルやスナヘビが襲い来るがーーーー。
「ーーーー到ちゃーく!」
『ヤド〜・・・・ZZZ・・・・』
「ん。皆、ワシボンを援護して」
『ワン!』
「分かりましたぁ☆ サイドン」
『サイドーン!』
「ワシボン! 行って!」
『ビブラー!』
駆けつけてくれた対策委員会の仲間達も協力してくれる。
『ワシー!!』
ワシボンは悔しかった。自分が情けなくて、不甲斐なかった。
自分の身体がもっと頑丈だったらセリカを襲撃から庇えたのに。
自分の翼がもっと大きかったらセリカを連れて逃げられたのに。
自分の足がもっと鋭かったらセリカに迫るヤツ等を倒せたのに。
自分がもっとーーーー強かったら、セリカを守る事ができたのに。
そしてワシボンは、自分以外にもセリカを助けようと頑張ってくれている皆にーーーー感謝した。
先生が来て、皆が受け入れる中、セリカだけは意固地になって孤独になってしまった。そして今、きっと泣いている筈だ。一年前、親友である『ナックラー』と共に、『ドラピオン』の縄張りで『あるポケモン』にご飯を貰いながら過ごしてきた。しかし、遂にボスのドラピオンに見つかり、そのポケモンが戦っている最中に親友と共に逃げ出し、宛もなく歩いている時に出会ったのが、セリカとアヤネであった。二人は傷だらけの自分達の介抱をしてくれて、それで懐いた自分達は彼女達の手持ちとなり、ナックラーはビブラーバに進化し、セリカ達が高校生になった時に、恩人であるポケモンとも再会した。
それから毎日が大変だったけど、それを上回るくらいに楽しかった。そして今、意地っ張りで強がりで騙されやすくて、でも誰よりも努力家で泣き虫で優しいパートナーが、そんなワシボンが大好きなセリカが泣いている。
だからこそ、ワシボンは求める。自分にもっと強い身体を、鋭い爪を・・・・大きな翼を。
『ワシィィィィィィィィィッ!!!!』
ワシボンが叫ぶと同時に、ワシボンの身体、否、もっと正確言うのなら、お腹の中から熱いエネルギーが迸り、身体全体に広がり、全身が発光していった。
メキメキ、と、身体が大きくなり、翼が大きく広がり、爪と足も大きくなった。
朝日がその身体を照らした時、ワシボンが進化しーーーーウォーグルへとなったのだ。
『ウォオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!』
そしてウォーグルは、トラックの荷台を、その大きく鋭くなった爪で掴み、引き千切った。
ーセリカsideー
「嘘!? 本当に私のワシボンなの!?」
『ウォーッ!』
セリカが顔を喜色と驚きが混ざった複雑な色に染めてウォーグルを見上げると、ウォーグルは笑顔で応えた。
“セリカが無事で良かった・・・・!”
「って、そうだ! どうやってここまで来たの!?」
“伊達にストーカーじゃない! それに、攫われたお姫様を助けるのは勇者の役目!!”
『ピカッ!』
『カル!』
『リザード!』
『カメー!』
『ソウフシェ!』
先生の言葉に、ピカチュウ達は集まってポーズを決めた。
「ば・・・・ばっ・・・・!////」
リザードのように顔を赤くしたセリカは。
「バッカじゃないの!?////////」
『フォレトス』よろしく、【だいばくはつ】した。
「だ、誰がお姫様よ!! 冗談はやめて! ぶ、ぶん殴られたいの!?」
“冗談じゃないよ。、それに、お姫様を守る騎士もいるんだし”
『ウォー!』
ウォーグルは先生の言葉に笑みを浮かべ、セリカを抱き締める翼の力を強め、顔に頬ずりまでした。
「ワ、ワシボンーーーーじゃなくて、ウォーグル! 分かった! 分かったからもう離して!! 心配かけてゴメンってば!!////」
「うへー、元気そうじゃん。無事確保完了〜」
「良かった・・・・セリカちゃん・・・・私、セリカちゃんに何かあったんじゃないかって・・・・」
「アヤネちゃん・・・・」
ウォーグルから解放されると、漸く制圧したので。近くに来て止まったバギーからホシノ達も降りてきて、セリカの無事を安堵し、中学の頃からの付き合いの長いアヤネは涙ぐんでいた。
「まだ油断は禁物。トラックは制圧したけど、まだここは敵陣のど真ん中だから」
「だねー。それに・・・・」
『ビブラー!!』
空で辺りを見回していたビブラーバが大声を上げると、ホシノがやっぱりか、と口を開く。
「増援が来ちゃってねー」
「どうやら、包囲網も形成しているようです! さらに巨大な重火器も多数確認しました!」
「敵ながらあっぱれ・・・・。それじゃー、折角だから包囲網を突破して戻りますかねー」
「・・・・気をつけて。奴ら、改造した重戦車に、ボスのワルビアルにサダイジャを持ってるわよ」
『グゥゥゥゥ・・・・!』
セリカとウォーグルの目が物騒な光を放っていた。
「知ってる。『Fkak41』の改良型。先生がワシボンを追いかけていた奴らから聞き出している」
「それじゃ・・・・」
ホシノが、やる気満々のメンバーを見回すと、銃と盾を構えた。
「行こうか?」
“皆、作戦はーーーー”
先生が指示を終えると同時に、改良重戦車隊とワルビアル群れとサダイジャの群れが、砂漠の小山から飛び出してきた。
「先生、お願いー」
“(コクン)ーーーーセリカ。ウォーグル”
「うん。ウォーグル!」
『ウォーッ!!』
セリカはウォーグルの背中に乗ると、ウォーグルは大きくなった翼は羽ばたかせ、すぐに上空へと飛んでいった。
“ノノミ、サイドンで出鼻をくじくんだ!”
「はい! サイドン! 【じしん】!!」
『サァァァァイ・・・・ドォォォォンン!!』
サイドンが思いっきり砂漠を踏みしめると、ヘルメット団の部隊に地震が起き、後ろの砂漠の小山が崩れ、まるで雪崩のように重戦車隊を呑み込んだ。
『うわぁぁぁぁぁぁ!!』
『ワルビアァァァァ!!』
『ジャアァァァァッ!!』
重戦車隊とワルビアル達とサダイジャ達が流され、バランスを崩す。
“アヤネ、撹乱するんだ!”
「はい! ビブラーバ! 全力で【さわぐ】!」
「ビブラー!」
ビブラーバが陣形が崩れた重戦車隊の真上まで飛ぶと、翅をで大きな音を上げると、ワルビアル達は頭を押さえて蹲り、サダイジャ達は苦しそうに蹲り、重戦車隊も動かなくなった。
“良し。アヤネ、ビブラーバを下げて。それと同時に、左はシロコとイワンコ、リザードとカメールにフシギソウが攻めて!!”
「はい! ビブラーバ! 戻って!」
『ビブラー!』
「ん。了解」
『ワン!』
『リザ!』
『カメ!』
『ソウ!』
シロコがイワンコと御三家と共に、左側から攻撃し、ワルビアル達を中央に寄せる。
“ホシノとヤドキング、ノノミとサイドン、ピカチュウとルカリオは右側から攻めて!”
『ピカッ!』
『カルッ!』
「りょうかーい。さ、行くよキンちゃん」
『(パチッ)・・・・クァ〜、ヤド〜』
「分かりました! サイドン、行きましょう!」
『サイドン!』
ホシノが盾を構えると同時に、目を覚ましたヤドキングが欠伸をして立ち上がる。そして、ピカチュウが【アイアンテール】で、ルカリオが【はどうだん】で攻撃し、ホシノの盾に隠れながら、ノノミがガトリングで攻撃し、サイドンが瓦礫とかを投げて攻撃する。
途中、重戦車からの砲撃が飛んでくるが。
『ヤドヤ〜』
ヤドキングが【ねんりき】で砲弾を明後日の方向に飛ばした。
そうしていると、戦車隊とワルビアル達とサダイジャ達が中心に寄せ集められ、ほぼ密集状態で身動きが取りづらくなった。
そして上空からーーーー。
“セリカ!”
「アンタら・・・・もう許さないわよ!!」
ウォーグルが急降下し、背中のセリカが銃を撃ち、ワルビアル達とサダイジャ達を攻撃する。
「ーーーーくっ、くそ! ボスワルビアル! ボスサダイジャ!」
ヘルメット団のリーダーが戦車から顔を出し、モンスターボールを投げると、身体に大きな傷と、通常のワルビアルとサダイジャより一回り大きい体躯をした、ボスワルビアルとボスサダイジャが現れた。
「【すなあらし】!!」
リーダーが指示すると、ボスワルビアルとボスサダイジャが砂嵐を巻き起こす。
「させないわ! ウォーグル、【ふきとばす】!」
『ウォーッ!!』
一旦滞空したウォーグルがその大きな翼が羽ばたかせ、突風を巻き起こすと、砂嵐を吹き飛ばした。
「げぇっ!?」
「行くわよ! 【ブレイククロー】!!」
『ウォォォォォォっ!!!』
セリカが言うと、再び急降下したウォーグルは両足を突き出す姿勢となり、光り出した爪でボス達を攻撃した。
『ワルビアァァァァァァ!!』
『ジャァァァァァァァっ!!』
奇襲により防御が遅れた二匹は、そのまま倒れと、それを見て先生は好機と見た。
“ピカチュウ、【かみなりパンチ】! ルカリオ、【コメットパンチ】!”
『ピカァァァァァッ!!』
『カルォォォォォッ!!』
ピカチュウが巨体のボスワルビアルをアッパーで殴り飛ばし、ルカリオが正面からボスサダイジャを殴ると、二匹はヘルメット団リーダーの乗る戦車にぶつかる。
「うわぁっ!! こ、こうなったらーーーー」
“アヤネ!”
「はい!」
ヘルメット団リーダーが懐から『何か』を取り出そうとするが、それより先にアヤネはドローンを操作し、爆弾をヘルメット団の中心に落とし。
“セリカ!”
「これでーーーーおしまい!!」
ーーーードォン! ドガァァァァァァァンンッ!!
セリカがその爆弾を撃ち抜き、爆発が起こって、煙が晴れると、戦闘不能になった戦車隊とポケモン達が倒れていた。
「・・・・て、撤退! 撤退だぁ! やな感じーッ!!」
ヘルメット団リーダーが、号令すると、ポケモン達を回収して、逃げ出した。
◇
“セリカ。無事で良かった・・・・”
「・・・・うん、まぁねーーーーんん??」
ウォーグルが先生の目の前に着地し、先生が安堵したように言うと、セリカも気まずそうに顔を背けるとーーーー。
『(スンスン・・・・)』
いつの間にかミライドンの顔面が、セリカの眼前におり、セリカの匂いを嗅いでいた。
「うわぁ!? な、何よこのポケモン(ベロン!)うわぁぁっ!?」
驚くセリカを余所に、ミライドンがセリカの顔を舐めた。
『ーーーーアギャ・・・・アギャスッ♪』
ーーーーベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロベロ・・・・。
「ちょっ、一体、何、よ、これ!? やめ、やめて、やめてって、ば! あ、ああああああああああああああああああああああ!!!」
何やら笑みを浮かべたミライドンは、セリカの顔をベロベロと舐め回した。
“・・・・ミライドン、セリカを気に入ったみたいだね”
「・・・・取り敢えず、セリカちゃんは後で保健室に送りましょう」
「『Fkak41』の対空砲を食らったんだもん。ゆっくり休ませてあげよう・・・・」
そう言って、ホシノとヤドキングがチラリと、あるビルの屋上を一瞥したが、すぐに視線をセリカに戻した。
サイドンにミライドンをセリカから離れさせ、ウォーグルがセリカと、付き添いとしてシロコとイワンコを背負って、学校の保健室へと飛んでいき、先生はミライドンに、他の皆はバギーに乗り込み、学校へと戻っていった。
ー???sideー
ホシノが一瞥したビル(アニメでのセリカの狙撃場所)の屋上に、対策委員会を見下ろす『複数の影』がいた。
『『『・・・・・・・・』』』
『影達』は去り行く対策委員会を見届けると、シュバッとその場から去っていった。
ー先生sideー
その日の夜。先生とピカチュウはセリカを心配して保健室に入ると。
「はあ、もう・・・・酷い目にあったわ。特に最後の方・・・・」
『ウォー』
セリカがもう起き上がり、身支度を整えていた。ずっと付きっきりだったウォーグルもだ。
そしてセリカが、先生に気付いた。
「あれ? せ、先生!? ど、どうしたの?」
“お見舞いに来たよ”
「・・・・ああ、私なら大丈夫。いつまでもこうしちゃいられないし。アヤネちゃんや他の皆も心配してるし・・・・バイトも行かなきゃだし」
そう言うと、セリカは大丈夫と言いたげに身体を動かす。
「だ、だから、お見舞いとか良いから! ほら見て元気だし。行き帰りはしばらくウォーグルに乗せて貰う事にしてるし!」
“それは良かったよ”
『ピカピカ♪』
“ーーーーでも、これだけは言わせて欲しい。ゴメン、セリカ”
『ピカ・・・・』
「えっ? 何で先生が謝るのよ?」
“・・・・今は多くを語れないけど、セリカがこんな目に遭ったのは私の責任でもあるんだ。だからーーーー本当にゴメン・・・・”
『ピカチュウ・・・・』
先生とピカチュウが頭を下げる。よく分からないが、とりあえずセリカは口を開く。
「よ、よく分からないけど、もう良いわよ。こうしてさ、無事に帰って来られたんだし・・・・」
“ありがとう、セリカ”
『ピカピカ』
先生とピカチュウが頭を上げた。
「・・・・あ、あの!」
“???”
『ピカ?』
すると今度は、何やら気まずそうに声をかけてくるセリカに、先生とピカチュウは首を傾げる。ウォーグルは頑張れ、と言いたげにセリカを見つめている。
「・・・・え、ええとね・・・・そ、そう言えば、私も、先生にちゃんとお礼を言ってなかったなかったなあって、思って・・・・////」
照れながら言うセリカ。
「あ、ありがとう・・・・色々と・・・・」
『ウォー』
ウォーグルもお礼を言うように頭を下げた。
「・・・・で、でもっ! この程度でアビドスの役に立ったと思わないでよね! この借りはいつか必ず返すんだから!」
“・・・・・・・・”
『・・・・・・・・』
「・・・・・・・・」
『・・・・・・・・』
“・・・・ニヨニヨ”
『ピカピカ〜』
『ウォウォー』
素直じゃないセリカに、先生が微笑ましく笑い、ピカチュウとウォーグルは、「可愛いね、ミライドンが気に入りのも分かるよ」、「だろう?」と、会話しているような気がした。
「な、何よ!? 皆して何ヘラヘラ笑ってんの!?////」
顔を真っ赤にしたセリカが騒ぐが、すぐにクールダウンする。
「はあ、全く。じゃあ・・・・また明日ね! せ・・・・先生」
“うん。また明日”
そう言って、セリカとウォーグルが保健室を出ようとした扉を開けようとしたその時、先生とピカチュウが思い出したように慌てて声を発した。
“あっ! セリカ! 出るなら窓から出て!”
「はぁ?」
“今部屋の外ではミライドンが!”
「へ・・・・?」
セリカが扉を開けると、そこにはルカリオと御三家に抑えられていたミライドンがいた。
『アギャァス♪』
「いっーーーーいぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
笑顔を浮かべたミライドンに、再びペロペロされたセリカの悲鳴が、夜のアビドスに響いた。
セリカのワシボンは通常のウォーグルになりました。ヒスイウォーグルは単独行動をしますが、通常のウォーグルは仲間の為に戦う誇り高く勇猛な性格がセリカに合うも思いました。
そして、セリカはミライドンにお気に入りになりペロペロされました(笑)。