明けましておめでとう御座います。
新年一発目はこちらから。楽しんでいただけると嬉しいです。
『エリア内に潜伏するかくれんぼジャマトを撃破するまでの間に、ドライバーを手に入れていた方が勝ち抜けとなります──』
ナビゲーターよりルールの説明を受け、ライダー達はドライバーの入手に奔走する。
ある者は地道に情報を集め、ある者は自分を慕う者達に呼びかけ、またある者はこの状況が続くことを待ち望む。
「……ジャ」
ふと、モトキは空を見上げた。
回る五つの盤に、一つ二つと
土塊ではなく、狸と猫。どうやら二人の戦士がどこかでドライバーを手にしたらしい。
(ギーツは……まだ、か。何を考えている)
あの戦士はいつだって企みを隠している。あっと驚かせる何かを、どんな逆境も覆す秘策を持っているはずだ。
ならば一番に椅子を取らない理由があるのだろう。
そう納得させて、直後に同族から戦士の一人を見つけたという反応がネットワークに走った。
重畳。ギーツはさて置いても、戦士の数は減らしておくに限る。
足を休ませるのは、ここまでだ。
そこは見通しの良い広場だった。
利用ができそうな地の利は少なく、かつ乱戦をするならば格好の場所だ。
「情けなんているかッ!」
「っ、なんでだよ! 困った時こそ助け合いだろ!?」
広場に集った人間の戦士達は、ジャマトに囲まれている状況にも関わらず、足並みを揃えることなくいがみ合っている。
発端は、ドライバーを持つ景和と袮音が助太刀に入ったことを道長が激昂したことにある。
背中を預けるのではなく、鎬を削る敵に助けられることは彼のプライドが許さなかった。
胸ぐらを掴み上げ、道長は景和を睨め付ける。
「お人好しが……! 俺達がライバルだってこと分かってんのか!?」
「助け合ったってよくない!?」
「……!?」
「たとえ脱落しても生きてさえいればチャンスはあるけど、ジャマトにやられたらおしまいなんだよ!?」
一理ある袮音の言葉に、道長は腹立たしげに景和の裾を手放した。
「時には周りに頼ってもいいんじゃないの? 一人で生きていける人間なんていないわけだし……」
「お前と一緒にするな……!」
「──お前の言う通りかもな」
「えっ?」
「一人でやれるって信じても、どうにもならない時もある。自分を信じすぎることが、裏目に出ることも……誰かの支えがなければ、人は生き残れない」
「……チッ」
ダメ押しの英寿の言葉は果たして道長に届いたか、舌打ちすると目を背ける。
一瞬、場に蟠る熱が停滞した。
「………!」
その時を狙うように、
強力な戦士の登場でジャマト達は奮い立ち、臨戦の姿勢を取る。気付いた景和と袮音は、今度こそ構えたバックルを装填した。
《 SET! 》
「へーんしん!」
「変身!」
《 N.I.N.J.A 》
《 B.E.A.T ! 》
「──ッ!!」
「「「ジャ〜ッ!!」」」
「ハァーッ!」
「ヤァーっ!」
高く跳び上がった風刃と唸る炎斧が、襲い来るジャマト達を薙ぎ倒していく。
「オラッ! はぁっ!」
「よいっしょぉッ!」
負けじと生身の人間達もジャマトに対抗し、混戦が始まった。
そこかしこで同族の断末魔や戦士の雄叫びが聞こえる中、モトキはギーツただ一人を見た。
向こうも同じようで、視線が交錯する。
「お前、
「……っ!」
静かに、息を呑む。
驚いた。一体いつ気付かれたというのだ。
擬態を晒したわけでもなし、ジャマトとしての姿は同族達と何一つ違わないというのに。
だが、英寿の瞳に宿る闘志を見てすぐに些事だと考えを改めた。
以前もいたということは、戦いを生き残ってきたということ。それを分かった上で挑んでくるのならば、面白い。
右腕をもたげ、数度指を折り曲げる。
(かかってこい、人間)
「ッ──!」
「……ッ!」
英寿が肉薄する。
飛びかかられながら放たれた蹴りを片手でいなし、諦めずに放たれる第二、第三の蹴撃も弾く。
そして一連の動きが終わった直後に、右へ踏み込むと腹に武術の発勁にも似た掌底を入れた。
「がはっ!?」
「──ッ!!」
大きく吹き飛ぶ英寿。
ここで手を緩めてはならない。ほんの少し隙があればすぐに覆される。
頭を踏み潰さんと振り下ろした足は横に転がられて躱され、なんとか立ち上がったところに拳を叩き込む。
「がっ、ぐっ!?」
「──ッ!」
脇腹、鳩尾、顎。人体の急所に迷いなくダメージを与えていく。
それでも英寿は随分と頑丈で、ただの一般人であれば既に再起不能な痛みを抱えてなお、抗う気迫を捨てることはない。
「くっ!」
致命傷をどうにか回避しながら逃げていくのを追いかける。
同族達とは引き離されるが、あの戦士を仕留められるなら構わない。
「やっ、はっ、はぁッ!」
「──ッ!!」
蹴りも、拳も、何ら痛痒には値しない。
冷静に防ぎ、途切れたところにハイキックであえて防御させると、回し蹴りを放つ。
「ぐぁ──っ!?」
入った。今のはそう簡単に起きることはできないだろう。
(トドメだ)
ゆっくりと歩み寄って……不意に視界の端から現れた緑へ反射的に防御する。
「くっ!? 逃げてっ!」
「……!」
邪魔が入った。
横槍を入れてきたタイクーンめがけ一撃を繰り出し──直後、背後から甲高い飛来音。
瞬時に察知した彼は迎撃しようと顔を向け、しかしその時にはもう遅かった。
背中に小さな何かが激しく衝突し、吹き飛ばされる。モトキの反応速度を遥かに超えるスピードだった。
「ッ……!?」
「はっ!」
何とか目だけでも中を舞うオレンジの光を追いかければ、それは英寿の手に収まった。
《 COMMAND-TWIN-BUCKLE 》
見たことのない、メタリックなバックル。
新しい力だ。本能でそう察し、体勢を立て直しながら睨み据える。
不適な笑みを浮かべた英寿は、隣にいるタイクーンに向けて言葉をかけた。
「タイクーン! お前に頼がある」
「……?」
「十分……いや、五分でいい。お前のドライバーを貸してくれ。そしたら俺の持ってるバックル全部くれてやる!」
「どうする気っ!?」
「ジャマトに使われたドライバーを、取り返す」
真剣味と少しの焦りを孕んだその言葉に、少しだけタイクーンは逡巡した。
また化かされているのではないか、と考えがよぎって……それでも見捨てることはできないと、頷いて変身を解除する。
「はい!」
コアを抜かれて差し出されたドライバーを英寿は受け取り、自分のものを差し込んだ。
《 ENTRY 》
掲げられる未知のバックル。
ドライバーに装着されると、他の物と同様、光を放ち起動する。
《 SET! 》
「変身」
《 GREAT ! 》
英寿がギーツとなり、釣り上がった眼に水色と橙色の幾何学的な輝きが集まって……バイザーが装着される。
《 Ready...Fight! 》
「えっ、顔だけ!?」
「えぇっ!?」
「マジか……!」
「……!」
シンプルでありながらインパクトのある見た目に景和達が顔を驚かせるが、まだ終わりではない。
どこからともなく鋭い影が現れるとギーツの手の中に収まり、正体は洗練されたフォルムの剣であった。
「このバックルは……? っ、抜けない。こんな武器は初めてだな」
〝レイジングソード〟の鍔に嵌った、コマンドツインバックルに酷似したバックルはびくともしない。
まだその時ではないのだろうと納得したギーツの前に、大量のジャマトがわらわらと現れた。
「まずは……試し斬りだ」
「ジャァ〜ッ!」
「ジャジャーッ!」
ギーツの反撃が、始まった。
「セァッ!」
群がるジャマト向けてレイジングソードを振れば、二条の光が迸る。
光は無形の刃となり、剣身以上の攻撃範囲をギーツに与えるとジャマト達を斬り裂き、爆ぜさせた。
「ハッ! ハッ、ハァーッ!」
「ジャーッ!?」
「ジャジャーァ!?」
一目で武器の力を把握した彼は、勢いを増して次々と敵を打ち滅ぼしていく。
ほとんど丸裸に等しいにも関わらず、トリッキーな動きと鋭い剣筋で圧倒する様は本領発揮と言う他にない。
見る者を圧倒し、あるいは魅了するほどの力が、そこにあった。
「チッ……」
「ドライバーを手に入れる方法ならあるぞ」
「あぁ……?」
あるいは、その快進撃を喜ばない者も……確かにいた。
「ハァーッ、ラァ────ッ!!」
ジャマトが全滅するまで、そう時間はかからなかった。
渾身のひと薙ぎで最後の数体が爆炎と共に消え、何十倍もの差があったにも関わらずギーツは傷の一つもない。
更に、結果を証明するように音を立ててレイジングソードが輝いた。
「おぉ……?」
仮面の中に表示されたポインターが示すのに従い、鍔のバックルのレバーを引き出すと起動する。
《 FULL CHARGE 》
立て続けにバックルを引っ張れば、先程のことが嘘のようにあっさりと分離した。
「おっ、抜けた。ってことは……!」
《 TWIN - SET! 》
ドライバーの空いたスロットに片割れを差し込めば、円環が二色に彩られる。
最後にもう一度、レバーを操作し、眠っている機構を目覚めさせた。
《 TAKE OFF ▶︎▶︎▶︎ COMPLETE 》
《 C.A.N.N.O.N 》
《 J.E.T 》
これまでとは一線を画す光が溢れ出す。
空中に踊る幾何学模様から重厚な鎧が編み出され、ギーツの全身に装着された。
肩に二門の大砲を背負い、腰には推進機。
無機物的なシルエットはあらゆる攻撃を通さないだろうという強い印象を与える、そんな姿。
「おぉー、すげえなこれ!」
まるで少年のような声音で感想をこぼすギーツに、モトキが歩み寄りながら震える拳を握りしめる。
(面白い。とても、面白い)
どこまでも興味深い存在だ。
見ただけでわかる。あれには今の力では到底太刀打ちできない。
だが、
「──ッ!」
「っ!!」
呼びかけるように、甲高い声を上げる。
するとギーツがこちらを見て、待ちきれなくなり左手でジャマトバックルを押し込んだ。
《 JYA! JYA! JYA! STRIKE ! 》
勝機は装備の真価を発揮される前のみ。今度はこちらから仕掛ける!
「フッ!」
ギーツはキャノン砲からエネルギー弾を発射しながら駆けてきた。
空中で軌道を変えて迫る青光へ蔦の鞭をしならせて迎撃するが、相殺したことで視界が爆煙で塞がれる。
「ハァッ!」
「ッ……!」
直後、煙を突き抜けてきたギーツに斬りつけられる。
蔦の半分まで斬り裂かれ、剣圧に後ろに下がるとすかさずキャノン砲での追撃が胸や腕に着弾した。
「グ……!」
(予想以上の性能差……! このまま打開しなければやられる!)
「そらっ!」
「ジャ……!」
息を吐く暇もなく繰り出される剣戟を受け止めた。
睨み合えば、またしても頭上からチャージ音を聞きつける。この近距離で当てられては今度こそ終わりだ。
「
「ぐぁッ……!」
残った蔦で胸に食い込みかけた剣をずらし、頭突きをお見舞いする。
位置の下がった頭の上をエネルギー弾が掠めていき、急死に一生を得たモトキは左の拳を鎧のない腹へと。
「くっ!?」
「ジャ……!」
距離を取り、すかさずバックルを叩いて新しい蔦を生成。
それを足へと巻き付けると、深く膝を曲げ、十分に撓ませた上で真上へ跳躍した。
「っ、一体どこに!」
「ジャッ!!」
「がっ!」
ギーツの背後に降り立ち、背中へ一撃。振り向かれる前に再び空へと逃げる。
攻撃しては退避し、死角に回り込んでまた攻撃、そして退避。
以前公園で見かけた、
「ジャッ、ジャッ……ジャァアッ!!」
「くっ!」
いける。たとえ微々たるものであっても、休まず攻撃を与え続ければ……!
「ラァッ!」
「ッ、グッ!?」
次を仕掛けようとした瞬間、ギーツがその場でぐるりと剣を薙ぐ。
咄嗟に防御し、斬撃を防いだのも束の間、飛んできた大量のエネルギー弾に叩き落とされた。
「ガッ、ァ……!」
「ふぅ、手強いやつだな。だが、そろそろ終わりだ」
その言葉に危険信号が全身を駆け巡る。
今すぐ動かなくては。しかし、肉体が上手く言うことを聞かない……!
ギーツがコマンドツインバックルの右を押し込む。
バイザー上にアイコンが出現し、重なるとモトキに狙いを定めた。
[ ROCK ON ]
「ハァアアァ──……ッ!」
レバーをセット。青い極光がキャノン砲に収束し──!
《 COMMAND ▶︎ VICTORY ◀︎ TWIN 》
「ダァ────ッ!!」
解放される。
極太のレーザーが迫り来る。あと三秒で自分は消し炭と化すだろう。
思考しろ。観察しろ、発見しろ。生き延びるための方法を!
(っ、あの樹!)
「アアァッ……!!」
破壊するほどの力を込めて、バックルを押し込む。
全身から吐き出された蔦が近くにあった街路樹に素早く巻きつき、そちらに体を引き寄せた。
直後、レーザーが到着した。
直前コースから、コンマ一秒差で逃れる。
しかし避け切ること叶わず、掠めた左腕が瞬時に焼け焦げ、次いで太ももが抉り取られた。
凄まじい風圧でドライバーが腰から吹き飛び、変身が解除されながら生垣の中に突っ込む。
「ガッ、ァッ、ジャッ……!?」
生垣の反対側で何度も転がり、ようやく止まった。
ビリビリと、損失箇所が痛みを主張する。
人であれば血に該当する体液が零れ落ちるが、しかし、モトキはまだ生命活動をしている。
(どう、にか……生き永らえた、か)
酷い有様だ。分不相応な戦いに挑んでしまった。
残った腕を震わせ、立ち上がる。
太さの減った片足が折れかかるが、なんとかバランスを保った。
「ジャ、ァ………」
生垣に近寄り、自分の開けた穴から元いた場所を見る。
「威力がありすぎだな……」
ギーツは自分を倒したと思っているようだ。新装備の力に満足している。
地面に転がったドライバーは……残念ながら無事な状態に見える。あのままギーツに取られるだろう。
(……もう少し、あの力を見てみたい。だがまずは、損傷を回復しなければ)
ここでは戦士達にいつ見つかるとも限らない。他に水が摂取できる場所を探すべきだ。
勘付かれないよう、モトキは重くなった体を引きずってその場を離れた。
読んでいただき、ありがとうございます。
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