仮面ライダーギーツ グロウハート   作:熊0803

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続けて更新です。

楽しんでいただけると嬉しいです。


覚醒Ⅱ:ギラギラ

 

 

 

 帷が降りて、しばらくの時が経った。

 

 

 

 その間、至る所で人とジャマトが争いを繰り広げ、いずれかへ勝利と敗北がもたらされる。

 

 さながら森の中は闘技場(コロッセウム)。命の奪い合いを見守るのは果たして神か、あるいは悪魔か。

 

 だが遊戯は必ず終わるもの。ある瞬間を境として、ほとんどの人間がジャマトの毒牙にかかるか、退けて宝箱を得ることができず退()()した。

 

 

 

 見世物は終わりか──そうため息をつくような森の静けさは、程なく開かれた第二幕によって、また破られる。

 

 

 

 始まりは青い光から。

 

 どこからともなく、複数の人間が森に転送される。当初よりも大きく数が減り、たったの七人きり。

 

 狼狽える者もいる中で、彼らの腰の機械に嵌った紋章(クレスト)が輝いた。

 

 

 

《 ENTRY 》

 

 

 

 光は円環に変化し、人間達を変化させる。

 

 漆黒の体へそれぞれが羊面や猫面、狸面、牛面、熊猫面、鳥面を装着し、戦士となった。

 

「へっ、変わった!?」

「えっ、何!? 袮音(ねおん)ちゃん、猫!?」

「……狸!?」

「えっ、俺、狸!?」

 

 互いの顔を見合わせて慌てているのも束の間に、周囲から突然物音がした。

 

 ハッと戦士達が顔を向けると、森の中から大量のジャマト達が現れる。十数を超える数によって包囲陣形をとった。

 

 

 その中から、一体が前に出る。

 他のジャマトとは大きく異なる姿。いくらか上等な衣服を纏い、斧を担いだ姿で威圧感を放っていた。

 頭領ジャマト。そう呼ばれる、この場にいるジャマト達のリーダーである。

 

トビオズグオエインビカカル(タカラヲトリカエセ)!」

「「「ジャーッ!」」」

 

 頭領の命令に勇ましい声を上げ、殺気立ったジャマト達は武器を振り上げた。

 戦士の幾人かは轟く怒号に身を震わせ、頭を抱えるが、フンと鼻を鳴らした牛面、〝仮面ライダーバッファ〟は怖気付くことなくいの一番に走り出した。

 続けて焦りのない足取りで狐面の鼻先を上げる〝仮面ライダーギーツ〟が歩み出し、大ぶりな熊猫面を傾げ〝仮面ライダーダパーン〟が三番手となった。

 

 それを見て戦うしかないと理解したのだろう、〝仮面ライダーナーゴ〟が隣にいる〝仮面ライダーメリー〟の肩を軽く小突く。

 

「頼りにしてるよ、メリーのおじさん!」

「まっかせといて、子猫ちゃ〜ん!」

 

 二人の戦士はそれぞれ桃色の槌の意匠の物体、紺色の盾があしらわれた物……バックルを取り出し、〝デザイアドライバー(腰の機械)〟に装填した。

 

 

 

《 SET! 》

 

 

 

 バックルが認識され、次いで一部が押し込まれて起動する。

 シンボルが出現し、それぞれの意匠に見合った武装が形を得ると簡素な鎧と共に戦士達へ装着された。

 

 

 

〔 Armed Hammer 〕 ▶︎▶︎▶︎

       《 Ready...Fight! 》

 

 

 

〔 Armed Shield 〕 ▶︎▶︎▶︎

       《 Ready...Fight! 》

 

 

 

「っと! 行きましょう!」

「よしっ!」

「たぁーっ!」

「うぉおーっ!」

 

 可愛らしく、あるいは雄々しく声を上げて戦いに身を投じる。

 残されたのは二人。〝仮面ライダータイクーン〟は未だに立ち往生しているが、〝仮面ライダーギンペン〟が震えながらも弓の意匠のバックルを握っていた。

 

「私は、勝たなきゃならないんだ……!」

 

 

 

《 SET! 》

 

 

 

〔 Armed Arrow 〕 ▶︎▶︎▶︎

       《 Ready...Fight! 》

 

 

 

 装填されたバックルの矢が指で放たれ、現れたシンボルから作り出された弓を両手によって受け止める。

 存在を確かめるよう、グリップを握り締める。体を震わせる所以は恐怖か、それとも武者震いか。

 

「お、おおぉおっ!」

 

 いずれにせよ、ジャマト達へ突撃を始めたのだから抗う意志はあるのだろう。

 

「ハッ!」

「ジャァッ!?」

 

 先んじて攻撃を仕掛け、包囲の一部を崩したライダー達は既に何体かのジャマトをのしていた。

 

 うち一人であるダパーンが、ある程度周囲のジャマトの数が減ったところでバックルを取り出す。

 これまでのバックルと違い、大ぶりなそれはまるで銃のような造形。勢いよくドライバーへと装填される。

 

 

 

《 SET! 》

 

 

 

《 M.A.G.N.U.M 》 ▶︎▶︎▶︎

       《 Ready...Fight! 》

 

 

 

 シリンダーが回転され、次いで引き金が放たれる。

 生み出されたシンボルから六発の銃弾が解き放たれ、接近していたジャマト達を蹴散らすと舞い戻り文字を打ち砕いた。

 

 欠片から形成された白の鎧がダパーンの体に纏われ、流麗な造形の銃が握られる。

 

「はっ!」

 

 一振りして銃型武装〝マグナムシューター 40X〟をライフルへと変じさせた彼は、一飛びで木の上に飛び乗った。

 素早く狙いを定めた銃口の先には、二体のジャマト。

 

 

 

 ドシュンッ! 

 

 

 

「ジャガッ!?」

「オジャーッ!?」

 

 迷いなく真紅の引き金が押し込まれた刹那、迸った一筋の閃光が纏めて頭を撃ち抜いた。そしてジャマト達はものの見事に爆散する。

 フ、と仮面の下で愉悦の笑みを漏らし、熊猫は次の標的を探した。

 

 

 

「オラッ!」

「ジャンッ!?」

 

 ダパーンの戦場からほど近く、バッファもまた善戦を繰り広げている。

 まるで今回が初めてではないかのように慣れた動きでジャマトの一体を蹴り倒すと、胸を踏みつけたまま紫の大型バックルを取り出した。

 

「フンっ!」

 

 

 

《 SET! 》

 

 

 

 無機質の中に仄暗さを漂わせる声音が響き、バッファはバックルの端に備わったレバーを押し倒した。

 上下に開かれる胸骨。唸り声を上げて飛び出した大きな爪が、ドライバー中央のコアへと指を伸ばす。

 

 

 

《 Z.O.M.B.I.E...! 》 ▶︎▶︎▶︎

       《 Ready...Fight! 》

 

 

 

 バックルから溢れ出した毒々しい液体がジャマトに降り注ぎ、その体を声も上げさせず侵していく。

 横にあったシンボルもおどろおどろしい気に当てられたように溶け落ち、鎧に形を変えてバッファの上体を覆った。

 右手には巨大なチェーンソー。左手にはジャマトさえも容易く切り裂けるであろう大爪がギラリと輝く。

 

「ハァアッ!」

「グジャーッ!」

 

 早速、近寄ってきた一体をバッファは容赦なく〝ゾンビブレイカー〟によって両断した。

 

 

 

 あれも、強い。

 次々と撃ち抜かれ、薙ぎ倒されていく同族達は、戦士の技量を推し量るのには最適だ。

 それにどうやら、あの機械につけるものは大きな方が優れているらしい。

 ならば、今も五体以上の同族達を一人で相手取り、本来の使い方でもないだろうに圧倒しているあそこの狐面が使えば……? 

 

「? 何あのジャマト、ぼーっとしてる? そ、れ、な、ら〜、ニャーッ!」

 

 背後から敵意を感知。物思いに耽っていたようだ。

 流石に、戦士の武器を直に受けるのはまずい。後頭部めがけて振り下ろされたハンマーを体ごとずらして回避する。

 地面に先端がめり込んだ得物に、猫面が驚いた様子でこちらを見た。

 

「あ、あれっ? 避けられた?」

「…………」

「もう一回! おりゃーっ!」

「……ツームワスキョ(ニブイ)

 

 狐面や牛面に比べると、まだまだ使いが甘い。正面からならいなすのは実に容易かった。

 急所を狙うでもなくがむしゃらに振られるハンマーを右へ左へ、時には後ろへと外させていく。

 

「このっ、ちょこまかとー!」

「子猫ちゃ〜ん、加勢するぜ〜!」

「おじさん! 助かる〜!」

 

 遊ぶように攻防を続けていたら、同族を盾で殴り倒した羊面がこちらにやってきてしまった。

 

「とりゃーっ!」

「……!」

「はっ、やっ!」

 

 戦士特有の跳躍力で落下してきた羊面の盾を避けたのも束の間、硬直した隙を狙って猫面が仕掛けてきた。

 手に持ったマチェーテで弾くが、二度、三度と続けていると横から青い影が現れる。

 それが盾だと気付き、頭を下げると今度は右の視界の端にハンマーが映り込んだ。

 

 間に合わない。

 咄嗟に判断し、そのジャマトは猫面の手首を掴むと人外の膂力により寸前で押し留めた。

 

「嘘っ!?」

ピピゼラロ(ジャマ)チャ()!」

「おおっとぉ!?」

「きゃっ!?」

 

 羊面をマチェーテで斬りつけ、猫面は体ごと振って投げ飛ばす。

 咄嗟に防がれ、盾と刃の間で火花を散らせながら羊面が尻餅をついた。そのすぐ近くに猫面が転がる。

 

「ちょっ、なんかこのジャマト強くない!?」

「見た目は同じだけど、中ボスってか!?」

「…………」

 

 立ち上がり、いくらか油断を無くして構える戦士と睨み合う。

 

 

 

 ……冷静に、戦力差を分析する。

 この二人だけであれば、まだなんとかなる可能性は、ある。数の不利を考慮しても四割ほどか。

 しかしそうしている間にまた増援が、特にあの狐面に来られては、確実に死を免れないだろう。

 

 それは、許せない。

 

 ならば、手段は自ずと一つに絞られた。

 

「…………ジャ!」

「あっ、あれっ?」

「お、おい! どこ行っちゃうんだよー!?」

 

 ジリジリと後ずさると、弾かれたようにその場から離脱した。

 投げかけられる声には気を留めず、戦っている同族達をも置き去りにして、脇目も振らず疾走する。

 

 

 

 逃げて、逃げて、自身の本能からも背を向けるように遠ざかった。

 

 

 

 草木の影を縫うようにして、幸いにも妨害を受けることなく、河原の近くまで辿り着くことに成功する。

 

「ジャ、ァ……」

 

 息は上がっていない。この程度では強靭なジャマトの肉体は疲労しないのだから。

 

 それでも、左手が震えている。

 持ち上げてみると、指にうまく力が入れられなかった。直撃を受けていたら、どうなっていたことか。

 猫面達だったからまだ良かったものの、あれが牛面や狐面であれば腕ごと持っていかれたに違いない。

 

「……ラサルル(ナゼ)スファキョ(ツヨイ)

 

 何があそこまで、戦士達を強くする。

 武器の優秀さもあるだろう。だが、その他に一つ……牛面や熊猫面からは、強固な意志を感じた。

 

 ジャマトの恐ろしさをものともしない精神性。何を相手にしようと貫かんとする、ギラギラとしたもの。

 溢れんばかりのその〝ギラギラ〟が、戦士達にジャマトを打倒する力を与えているように思えた。

 

 

 

 アレが、強さの源なら。

 

 人間が持つアレは、一体──

 

「ぐわぁあぁあっ!!?」

「……!」

 

 人間の悲鳴が響く。

 咄嗟に頭を下げて隠れると、対面の森から河原へ一つの影が飛んできた。

 人影は岩盤に叩きつけられ、痛ましげに呻き声を漏らす。

 

 よく見ると、それは戦士の一人だ。

 傷を負い、立ち上がることもできないのか無防備に四肢を投げ出している。

 

 ……あれなら。

 

 体が疼く。先に劣勢へ追い込まれた本能由来の怒りが、まだ残っていた。

 せめて一人は──マチェーテを握り締め、木陰から出ようとした時、もう一人の影が出てきて思いとどまった。

 

「大丈夫ですか!?」

 

 またも、戦士。狸面だった人間だ。

 

 倒れた一人の戦士に駆け寄って抱き起こす。なされるがままの鳥面だった男は、ドライバーのコアが砕けていた。

 あれはもう()()()だ。自分が手を下すまでもなく、今更どうしたところで助かりもしない。そう漠然と理解する。

 

 男自身も分かっているのか、諦観を顔に浮かべた。

 

「……ここまでのようだ。苦しんでいる息子を、残して逝くなんて……愚かな父親だな…………」

「……戦うしか、なかったんですか…………!?」

 

 感情を抑え込むように問いかける青年へ、男は手に持っていた何かを見つめた。

 それから力を振り絞り、青年の顔を覗き込むと、悔しげに涙を浮かべて告げる。

 

 

 

「息子を……! 救いたいんだ──!」

 

 

 

 最後の一言まで、何かを案じながら。

 赤黒いノイズに支配された男の体は、ふと脱力して塵となった。

 ただその手にあった紙片とバックルだけがはらりと舞い落ちる。崩れ落ちた青年はゆっくりと紙片を拾い上げ、悔しさを指に伝わせながら肩を落とした。

 

「…………ケケオズ(ギラ)…………ケケオズ(ギラ)…………」

 

 退場の間際、男の目に宿ったもの。

 毛色は違ったが、間違いなく牛面や白熊面にも漲っていたものと同じ、激しくも真っ直ぐな熱情。

 

 

 

 ──欲求が、湧き上がる。

 

 

 

 知りたい。アレを。

 人間が持っているあのギラギラがどういったものなのか、無性に気になる。

 

 何故? どうして違いがある。

 

 何故? どこにあそこまでの力が備わっている。

 

 何故? 何故、あそこまで眩しい? 

 

 何故、何故、何故、何故、何故────。

 

 

 

「──戦わなきゃ、世界を変えられない」

 

 

 

 闘志以外の感覚が微かに胸で生まれた時、青年のすぐそばにふらりとあの狐面が現れた。

 息を押し殺すと、ドライバーからバックルを抜き出した狐面は人間へと戻る。男は青年へ向き直り、言葉を投げかけた。

 

「だとしたら、戦う以外に選択肢なんてないだろ?」

「……君は……!」

 

 青年が、やるせなさと悲しみに満ちた声で低く唸る。

 だが男にぶつけることは間違いだと思ったのか、深く深呼吸をして気を落ち着け、それから続けた。

 

「なんのために、戦ってるんですか……?」

「──恵まれない世界中の子どものために」

「……え?」

「子供は未来の宝だろ?」

「……君も、世界平和を願ってるんですね」

 

 ふ、と人間達は笑い合う。

 

 あの狐面も、ギラギラを持ってるらしい。

 どうしたことか、そのジャマトには牛面達ほどありのままには思えないが、それでも感じることはできる。

 

「ハァアァア……」

「「っ!!」」

 

 次は何を見せてくれるかと観察していたら、河原に同族──それも頭領ジャマトが現れた。

 青年が立ち上がって身構え、裏腹に男が頭領ジャマトに向けて歩み出る。

 

「世界を変えたければ、戦うしかない」

 

 

 

《 SET! 》

 

 

 

「変身!」

 

 

 

〔 Armed Water 〕 ▶︎▶︎▶︎

       《 Ready...Fight! 》

 

 

 

「ハッ!」

「ジャジャーッ!」

 

 鎧を纏い、戦士になった狐面が頭領ジャマトへ駆けていった。

 迎え撃つように頭領ジャマトも両手の斧を構えるが、おそらくは負けるだろう。

 

 だって、ギラギラがないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

「……カメン…………ライダー…………!」

 

 

 

 

 

 

 

 もう一度、以前より熱を孕んだ独白をして、そのジャマトは赤い帳から離れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ●◯●

 

 

 

 

 

 

 

 戦士達に狩られる前に帳から脱したそのジャマトは、〝巣〟に戻った。

 

 

 

 

 

 自分や、他のジャマト達が生まれた……()()()()()()故郷であり、家であり、農園。

 

 帰還した時、既にそこには何人かの同族が休んでいた。どうやら自分と同じように逃げ帰ってきたらしい。

 

「おお! よく戻ってきたね!」

「……ジャ…………」

 

 農園の奥から、大きな声をあげて何者かがやってくる。

 年老いた外見の、()()()()()()()その男は安心したように笑い、そのジャマトが五体満足であることに何度も頷いた。

 

「ライダーと戦って疲れただろう! さぁさぁ、休みなさい!」

「ジャ」

 

 頷くと、男は満足そうに他の者達の様子を見にいった。

 大きな広場にはいくつかの(かめ)が置かれ、中から水を掬って同族が摂取している。ジャマトの栄養源は水だけで事足りるのだ。

 既に腕の痺れは取れている。戦いの熱も冷め、今すぐ食事をせずともいい。

 

 

 

 どこかに腰を落ち着けられないかと見回し──ふと、あるものが目に入る。

 そのジャマトはゆっくりと、農園の入り口近くにある台へ歩み寄った。

 固定された視線の先にあったのは、台に乗せられた小さなずた袋。両手で持ち上げると、中から何かのぶつかり合う音がする。

 

「ジャ……!」

 

 蓋を開けて中を覗き、驚く。

 恐る恐る中身の一つを取り出した。天窓にかざすと、円柱形の物体は差し込む光に反射する。

 大量の針を持つ生物を模した顔の刻まれた表面はひび割れているが、間違いない。戦士達のドライバーにあったものだ。

 どうして、ここに。疑問に思いながらも、角度を変えてじっくり眺める。

 

 

 

 さらによく確かめようと顔を近づけて──一瞬、ギラリとコアの内部で何かが輝いた。

 

「……!」

 

 今のは、まさか。

 もう一度覗き込む。しかし壊れたコアは、日の光以上に光沢を放つことはない。

 

「………………」

 

 

 

 ゆっくりと、顔へ近づけていく。

 

 

 

 今度は覗き込むだけに留まらず、ピシリと頭に線が走り、人間のものとは異なる口が開かれた。

 

 

 

 大きく開いた顎めがけ、コアを放り込むとバクン、と勢いよく閉じる。

 

 

 

 そのままガリガリと音を立ててコアを咀嚼し、噛み砕き、三十秒ほどしてゴクリと喉が鳴った。

 ジャマトの消化吸収能力は優れている。水さえ飲めば、手足がなくなろうとも復元が可能なほどに。

 

 更に、このジャマトは他より少しだけ秀でていた。

 

 あっという間に取り込まれ、分解されたコアは──

 

 

 

「──ッ!!?」

 

 

 

 ズグッ!!! と、胸の中央が締め付けられる。

 

 袋を取り落とし、空いた手で押さえながらよろめいた。

 

「ジャッ、ァッ…………!?」

 

 沸る熱が全身に浸透し、沸騰させる。

 

 頭の中に次々と浮かび上がる未知の光景や言葉、記憶、知識の断片。

 

 たまらず台にもう片方の手をついた。しかしそれでも体を支えられず、膝をついてしまう。

 

 止まることを知らずに膨張した熱は、いよいよ体内に収まりきらず──爆発する。

 

 

 

 

 

「ジャッ、ガッ、ァ、ァァアァア──────────ッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 天に向け、絶叫を轟かせた。

 

 

 

 皮膚を突き破って現れた無数の蔦が、体表をみるみるうちに覆い尽くす。

 

 

 

 存在そのものを塗り替えていく不気味な葉音を奏で、それはジャマトを変容させた。

 

 

 

 ザワザワと蠢き、揺れ動く蔦は、しばらくの時を経てほんの少し止まり、直後に光を伴って──弾け飛ぶ。

 

 

 

 解放され、全ての余力を使い果たしたことで両手を地面についた。

 丁度そこへ、雄叫びによって異変に気がついたジャマト達が何事かと周囲から集まってくる。

 

「……ぅ、ぐ…………」

 

 彼らの視線の先で、小さく呻きながら起き上がる影。

 若干ふらついた足取りながらも立ち上がり、その状態でしばらくぼんやりとしていたが、ふと自分の両手を見下ろした。

 

「…………?」

 

 緑がかっていない明瞭な視界に、()()()()()()()()が映り込む。

 触れ合わせると、少し前までとは全く違う感触がした。ただし皮膚の下にある肉体はそのままのようだ。

 

「……これ……は…………」

 

 半ば呆然としながらも、ふと瓶の存在を思い出して、おぼつかない足取りながらもそちらに行く。

 

 

 

 勢いよく縁を掴み取り、覗き込んだ水面に反射した自分の顔を見て──心底驚愕した。

 

 

 

 

 

 揺れ動く水鏡に映り込んでいたのは──最初にそのジャマトが命を奪った、あの少年のものだったのだから。

 

 

 





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