仮面ライダーギーツ グロウハート   作:熊0803

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覚醒Ⅴ:神経衰弱

 

 

 

 

 

 

『私は諦めない。最後の最後まで戦う! 私らしく生きるために!』

 

 

 

 

 

〔 Armed Hammer 〕 ▶︎▶︎▶︎

       《 Ready...Fight! 》

 

 

 

 じっと、小さな箱の中に映る光景を眺める。

 建物から飛び上がった人間の女が戦士に変わり、毒を持った特殊な同族達の中心へ飛び込んでいった。

 

 着地から立ち上がった姿は堂々と、仮面は同族達を鋭く見据える。

 力強い姿は、たとえそれが過去の戦いを映し出しただけに過ぎないとしても十分なギラギラを放っていた。

 

「……ジャ…………」

 

 本来のジャマトの姿で、自分が参加していなかった侵略を見返していた。

 次々と頭を粉砕され、倒れ伏していく同族達にはやはり興味を向けず、猫面ばかりを注視する。

 

 できれば、この目で直接見たかった。

 本による学習に没頭するあまり、貴重な体験を逃してしまったが、知識を得られたことも決して損ではない。

 おかげで、この戦士達は人間が〝願望〟と呼ぶ物のために身を投じているかも知れないと判ったのだから。

 自分達ジャマトに当てはめるとすれば、人間達を害し、この世界を侵すことであろうか。全てのジャマトが持つ均一の、大いなる目的。

 

 だが、人間は個々によって願望が違うらしい。

 そう思うとやはり、呼吸をしたり歩いたりするのと何も変わらない画一化された目的などより。

 

 よっぽど、興味深い。

 

 

 

「お前達、戦いの時だよ! 今回もライダーどもをコテンパンにしてやりな!」

 

 

 

 あの男が、同族を鼓舞している。

 聞こえる勇ましい雄叫びに、彼は〝テレビ〟から視線を移した。

 

「ジャ……」

「ジャー!」

「ジャッ、ジャッ!」

 

 白と黒の服を纏い、長槍を手にした同族達が張り切って〝農園〟の出入り口から戦場へ向かっていく。

 

 残念ながら、今回も〝選抜〟が既に終わっている。

 枠は少なく、もし負けてしまえば以前のような逃走はできずに死ぬ可能性が高いと聞いて断念した。

 

 

 

(まだだ。まだ、知りたい)

 

 

 

 仕方がなし、今回も観察に努める。

 テレビに目線を戻し、逆境を乗り越えて生き残った猫面を見収めるとスイッチをひねる。

()()()()()が変わり、今まさに出発した同族達が人間の街に向かう光景が映し出された。

 

 さて、同族は二度の戦いを潜り抜けた戦士達にどこまで敵うものか。前回も生き抜いた狐面や牛面がいるなら尚更に。

 

 

 

 

 

(今度は、どんなものを見せてくれる──〝仮面ライダー〟)

 

 

 

 

 

 

 

 新しい学びが、始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 ●◯●

 

 

 

 

 

 

 

 海に面した街の一角。

 

 

 

 そこでは人間の男女が何組も行き合い、笑顔で手を繋ぎ、言葉を交わしていた。所謂、デートスポットである。

 幸せで和やかな雰囲気の流れる空間は──突如として破られた。

 

「ジャ!」

「ジャッジャッジャッ!」

「きゃーっ!?」

「な、何だあれ!?」

 

 どこからともなく現れる、異形の兵士達。

 不気味な頭部に帽子を飾り、白黒の衣服を纏った彼らは滑稽な踊りを披露しながら街に侵入した。

 

 手にはギラリと怪しげに輝く長槍が。単なる遊戯が目的の出立ちとは思えない。

 

スビロカカン(ツカマエロ)!」

 

 道化の如く左右に揺れていた彼ら──〝トランプジャマト〟は、恋人達を視界に収めるや声を上げた。

 

 それまでの様子が嘘のように機敏な動きで走り寄ると、悲鳴を上げる恋人達を肩に担いでいく。

 男と女、それぞれ別のトランプジャマトが抱え上げ、互いに手を伸ばす彼らを連れ去っていた。

 

 自分達を害するものだとはっきり認識した周囲の人間は、さらに悲鳴を大きく、必死に逃げ惑う。

 面白がるかのように身振りを派手にしたトランプジャマトらは、勢いを増してカップルを追いかけた。

 

 

 

 幸せに満ちていた空間は瞬く間に惨状へと様変わりしていく。

 笑い声は絶え、乱暴な足音とジャマト達の奇妙な笑い声ばかりが木霊した。

 

 

 

 そんな狂乱は、しかし長く続くことはない。

 

 

 

 存分に〝狩り〟を楽しんでいたジャマトが、不意に何かを感知したように動きを止めた。

 

 彼らの〝狩り場〟からあまり離れてない場所で空間に青いノイズが走る。

 生じたそれが虚空を塗り潰すと、人気の失せた道の上にこれまで存在しなかった二人の人間が出現した。

 

「おおっ!? ま、まだちょっと慣れないな」 

「ふんっ、もう3回目だぞ」

 

 柔和な面持ちの青年と、鋭い目つきの青年。

 〝DGP〟と銘打たれた衣服とドライバーを纏い、〝ジャマーエリア〟に入場した彼らこそ、仮面ライダーであった。

 

「おい、宝箱だ」

「あっ、本当だ!」

 

 地面に鎮座する桃色の箱を見つけ、顎で示した吾妻道長(あずまみちなが)に、桜井景和(さくらいけいわ)が拾い上げる。

 

 蓋を開き、中から現れた真紅のバックルを見て景和が驚きと共に顔を綻ばせた。

 

「おおっ! ブーストバックル、ラッキー!」

「お前、いつもそれ手に入れてないか?」

「まあ、使ったことは一度もないんだけどね」

「運がいいのか悪いのかわかんない奴だな」

 

 呆れと関心をないまぜにした笑いを道長が零す。

 

 その時、近くから悲鳴が聞こえて二人は振り向いた。

 

 見れば、千々に逃げる人間達の間からぬるりとトランプジャマトが姿を見せる。

 敵である仮面ライダー達の姿を認めると、勇ましく槍を構え、一旦獲物を放っておくとこちらに近づいてくる。

 

「まずい、助けなきゃ! 変身!」

「スコアの稼ぎ時だ。変身!」

 

 

 

〔 Armed Arrow 〕 ▶︎▶︎▶︎

       《 Ready...Fight! 》

 

 

 

《 M.A.G.N.U.M 》▶︎▶︎▶︎

       《 Ready...Fight! 》

 

 

 

 掛け声と共に戦士へ変わり、景和改めタイクーン、道長ことバッファが戦闘を開始する。

 

「はぁあーっ!」

「ジャっ!」

 

 まずタイクーンが狙撃を浴びせ、一体が沈む。

 続けてもう片方の振り上げた槍を肉薄しながらレイズアローで弾き返し、引き金を引いて近距離から一撃を喰らわせた。

 

「ジャ、ジャ……」

「フンッ!」

「ジャガーッ!!?」

 

 矢のダメージから回復して立ち上がったのも束の間、トランプジャマトは加勢する間もなくバッファの角に突き上げられた。

 打ちどころが悪ければ並のジャマトならそれで終わりだが、どうやらこの個体は運が良かったようだ。

 どじゃ、と音を立てて地面に落ちると、一瞬体から三つ葉のシンボルが出現し、消えた。

 痛痒を感じた様子もなく再起、バッファに向けて突撃を敢行する。

 

「ジャッ! ジャッ!」

「うわっ、とと!」

 

 距離を取って突き出される穂先をレイズアローを使って弾き、タイクーンは攻め時を伺う。

 逃げ惑っていたばかりの初戦と異なり、ゾンビ狩りゲームを経て動きにも多少のキレが出てきていた。

 

 どうにか応戦しつつ、トランプジャマトの動きを観察していき……。

 

「ジャジャ〜っ!」

「っ、ふっ、はぁっ!」

「ジャッ!?」

 

 大きく腕ごと突き出した一撃を見極め、柄を掴み取ると足を絡めて転がった。

 巻き込まれたトランプジャマトの体が回転し、地面に叩きつけられる。

 

「はっ!」

「ジャ〜っ!?」

 

 体勢を立て直される前にタイクーンは寝転がったまま一撃を放ち、見事にトランプジャマトの胸へ吸い込まれた。

 

 

 

 小爆発が起き、トランプジャマトが転がる。

 

 どうにか転倒せず膝立ちになった体からスペード型のシンボルが蜃気楼のように一瞬揺らめくと、なおも健在の様子に息を呑んだ。

 

「えっ……!?」

 

 何故倒せないのか。タイクーンは困惑した。

 宝探しゲームの時にいた頭領ジャマトのような強そうな個体でもないのに、ここまでタフだとは。

 

「フンッ!」

「ジャァ〜っ!?」

 

 困惑するタイクーンの近く、トランプジャマトをマグナムシューターで殴り倒すバッファ。

 立とうとするのを足で踏みつけ、バックルをドライバーから取り外す。

 マグナムシューターの前部にあるスロットへ装着し、トランプジャマトへ定めた。

 

 

 

《 M.A.G.N.M TACTICAL BLAST 》

 

 

 

 エネルギーを充填されたマグナムシューターの引き金が、容赦なく引かれる。

 熱戦にも等しい一撃が解き放たれ、トランプジャマトはなすすべなく全身で受け止めた。

 

 

 

 ドズン、と腹の底に響く爆音。

 背後の壁を破壊しながら叩き込まれた一撃は、確実にトランプジャマトを倒せる力があった。

 

「フッ、チョロいな」

 

 背を向けるバッファの足元で、倒れたトランプジャマトの衣服がぱらりと捲れる。

 空中に模様が舞い、一瞬中身が見えて──すぐにまた張り付いてしまった。

 

 そして、ゆっくりとトランプジャマトが起き上がった。

 

「ジャ〜」

「……ん? っ、なんだと!?」

「ジャッ、ジャッ、ジャッ、ジャッ」

 

 振り向いたバッファをおちょくるよう手足を振り、トランプジャマトは逃げていく。

 もう一体の方もタイクーンの前から姿を消し、二人は不思議そうに見送ることしかできずにいたのだった。

 

 

 

『──な、何だったんだ……?』

『……次こそはぶっ潰す』

 

 

 

 ……どうやら、すぐカラクリに気づきはしないようだ。

 ツマミを捻って〝視点〟を変えれば、狐面と猫面の二人、また羊面と初めて見る熊面も善戦はしたが、同族を取り逃している。

 

 しかし、やはり強い。

 画面越しでも伝わる気迫に関心する。特に、狸面と猫面の成長は目覚ましい。

 

「……ツオズゼラロピキョ(うらやましい)

 

 本当に、参加したかったものだ。

 だからこそ見逃さない。ただの一つも取りこぼさず、ここから全てを見つめ、学び、吸い取る。

 

 

 

 まだまだゲーム(たたかい)は続く。

 

 

 

 どこまで、何を見ることができるのか。

 

 

 

 彼は、楽しみで仕方がなかった。

 

 

 





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