『オルクセン王国史/二次創作』理想の涙   作:わいるどうぃーぜる

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オルクセンといえば美味しいご飯描写!
というわけで頑張ってみました! 別方向に。


「情報収集」

古びた紙の匂いに包まれた資料室は気が滅入る。

そう思いつつ、ベルガー巡査長はこみ上げてくる眠気をこらえながら、合法のみならずうしろぐらい方法を使ってそろえられた資料を一枚一枚めくり、メモを取っていく。

 

「こら」

 

ついに耐え難く、顎がかくっと落ちた瞬間、頭にガサガサという紙袋の感触がして、続けて上司の声が響いた。

 

「差し入れだ。夕食にしよう」

 

「またあのカフェのサンドウィッチですか」

 

「この時間まで開いているのはあそこしかない。文句を言うなら食わせんぞ」

 

「それは勘弁してください」

 

立ち上がり、うん、と背筋を伸ばす。

廊下に出て食堂に向かい、そこの壁にかけられた時計を見る。

もう夜の11時を回っていた。

 

あの予行演習で駐車場の車が出せず、漫然とパレードを見続けて、本部に帰ってきたのはすでに退庁時間。それから資料室に入ってファイルと首ったけになりながらひたすらメモを取っていく、となると背中とお腹がくっつきそうになる、が、

 

ボソボソと水気がなく、バターすら塗られていない酸っぱい黒パンに挟まれた、これもまたしっとり感など望むべくもない硬く塩辛いチーズが挟まれたチーズサンド。

 

厚さだけはあるが、最安値のものをさらに買い叩いたとしか思えない臭みのある、舌に絡みつく脂だらけのコンビーフサンド。

 

こんなの魔女を挟んで食ってるようなもんだ。

砂と魔女以外は何でもはさんで食べられる、という料理の謳い文句をベルガーは思い出していた。

 

せめてピクルスを挟むかカラシでも塗ってくれればマシになるのに、と思いながらたまらず飲んだコーヒーは冷めきっていて苦く、虚無の味がした。

 

正面では仏頂面で、上司が同じサンドウィッチを頬張っていることだけが唯一の慰めというべきか。

食へのこだわりが強いオルクセン国民にとっては、ある意味拷問とも言える。

しかし、これが捜査中の刑事というものだった。

 

「とりあえず、ガイシャ………、エウレア・メルリンド嬢の司法解剖の結果だ」

 

食事が終わると、シュルツはかたわらに置いていたファイルを開き、写真を抜いた書類を滑らせてよこす。

その気遣いに感謝しつつ、ベルガーは手早く目を通していく。

 

死因は予想通り、拳銃による心臓への一撃。

 

体に残っていた弾頭から、使用拳銃はウォルフFFKと推察される。旋条痕は該当例なし。つまりこれまで犯罪に使われたことはない。

また、女中の証言だと貴重品はおろか、日用品も彼女が把握している限りでは無くなったものはない、というメモもはさまれていた。

 

「護身用拳銃じゃ市中にありふれてますね」

 

「銃だけじゃほとんど何もわからんということだ。それと、例の物件の登記も調べてきた」

 

上司の手際の良さに舌を巻きつつ、ベルガーは差し出された書類を受け取る。

 

「確かにあの家は使われていない。引退した老婦人が別邸として使っていたが、今は病気で伏せている。となると、誰が寄付などと言い出したか、だが……、それを知るのはガイシャだけ、というわけだ」

 

「そっちのほうで調べるのは難しそうですね」

 

「ああ、王妃警護に独立過激派のテロ対策とパンク状態だ。人員も回してもらえんだろう」

 

ベルガーはちらり、と手元のメモを見た。

 

「となるとここから攻めるしかない、というわけですが」

 

「何かわかったのか」

 

軽く尻尾を振りつつ、机を回ってシュルツが近づいてくる。

 

「それが……、あの院長先生化け物ですよ」

 

「俺たち魔族は元から化け物扱いだろうに……、なんだこれは。」

 

軽口を叩きながらのぞきこんだシュルツの顔がこわばる。

丁寧にメモに記された軍務歴、そこには、あり得ないほどの戦果が記されていた。

 

椎葉付蹄勲章授与。

ベレリアンド戦役従軍章授与。

砲撃破章授与5回。

陣地突破章授与3回。

一級狙撃手章授与4回。

部隊感状にいたっては、両手両足の指を使っても足りないほど出ている。

 

「なんだこれは。こんな戦果をあげているのなら寝てても准将だ。起きてたら少将、仕事をしてたら大将だって夢じゃない。そんなやつがなぜ、軍に残らずに見るからに景気の悪い、孤児院の院長なんてやってるんだ? 何か不祥事でも?」

 

まくしたてる上司に閉口しながら、ベルガーはメモをめくった。

 

「いやそれが、戦争が終わったら慰留を振り切ってさっさと除隊して、孤児院を始めたとか」

 

「……変わった黒エルフだったんだな、ガイシャ、いやエウレア嬢は」

 

心底呆れ返り、シュルツは椅子に座り込んだ。その時、上司がつぶやいた言葉をベルガーは聞き逃さない。

 

気持ちは分かるがな。

 

「でまあ、まだ続きが」

 

「よろしく頼む」

 

「エウレア嬢が従軍していたとき、指揮していた部隊なんですが……アンファングリアではありません」

 

「は?」

 

「初期には所属していたのですがすぐ、オルクセンの部隊に転出。つまりオーク連中の部隊にです」

 

「……」

 

何もかも異例すぎる。

確かに、ベレリアンド戦役時に黒エルフは騎兵というかたちで集中運用はされていたが、地理に明るい少人数は参謀というかたちで部隊につけられていた。

しかし、指揮をしていたとは聞いたことがない。

 

「ネニング平原会戦初期、エルフ側の攻勢で正規の士官が戦死し、急遽指揮を取ったエウレア・メルリンド少尉は敵の浸透突破を防ぎきり、味方の攻勢転移まで部隊を保たせることに成功。それから終戦まで指揮を取っているようです」

 

「あそこか……」

 

白い毛皮に包まれた指がタバコを取り出し、ぱちん、と音をたててオイルライターを開く。

ぼ、という音とともに火が灯り、咥えられた紙巻きの煙草に火がつけられた。

安っぽい香りの煙がゆっくりと辺りにただよう。

 

「先輩も従軍してたんですよね」

 

「まあな、あんまりいい思い出はない」

 

「そういう先輩には悪いんですがその」

 

「もったいぶるな」

 

促され、ベルガーはため息混じりにメモに目を落とす。

 

「その時の彼女の部下で、いまでも孤児院にも足しげく通っているオークの牡がいるのですが」

 

「わかった、理解した。みなまで言うな」

 

たっぷりと煙を吸い込み、天井に向けて吐き出す。煙がゆったりと大気に薄れ、消えていく。

 

「軍、か」




院長先生の戦歴は盛りすぎ?
いやなろう系ではフツーフツー。
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