乙女ゲー世界に転生したらラスボス系悪役令嬢(ガチ)の付き人になった話 作:ヤナギ
EP1 〈who are me〉
──俺は現在、”今世”では人生初となる新幹線に乗って新大阪駅に向かっていた。
︎︎隣には不機嫌そうな父親が、腕を組んで座っている。無精髭も剃らずによくもまあ外出できるものだと、半ば呆れつつ視線を窓に移す。
︎︎窓の外の景色は矢のように移り変わっていたが、”前世”でも新幹線への乗車経験は何度かあったので、ある意味見慣れた光景に今更特に関心など湧かない。
「……はあ」
︎俺が生まれ変わったことを自覚したのは、つい最近のことだった。あまり覚えてはいないのだが、俺は学校でいきなり高熱を引いてぶっ倒れて、三日間意識不明の状態で病院にいたらしい。
︎︎兎にも角にも、目が覚めたときの俺は酷く混乱していた。
︎︎なぜか身体は小さいし、ベッドの傍には全く見知らぬ女性が居たからだ。それが母親であることを知るまでそう時間はかからなかったが、それにしてもやはり受け入れ難い現象である。
︎︎まさか自分が転生などという、小説のような出来事を体験するなど一切想像していなかった。
︎︎貴方は転生しました。これから新しい人生を送ってね!──と言われて”はいそうですか”となる方がどうかしているだろう。そもそも神様とやらにあった覚えは無いし、自分が死ぬ瞬間の記憶は強く残っていた。
︎︎だから俺は目が覚めたあとすぐ行われた医者の診断の際、バカ正直に「何も覚えていません」と告げてしまった。加えて、「俺は死んだんじゃなかったんですか?」と質問し返して、周囲を困惑させた。
︎︎結果、俺は最終的に記憶喪失という扱いになり、母親らしき女性は酷くショックを受けた。俺もショックだった。記憶喪失扱いされたことにではなく、生まれ変わりという現実を受け入れられなかったからだ。
︎︎俺は青春真っ只中の大学生だったはずだ。断じて小学生などではない。仲のいいサークル仲間との楽しい旅行だって記憶にある。しかしその旅行中、仲間が運転していた車が歩道に突っ込んでいく瞬間の光景も確かに記憶にあって、否応なしに自分が死んだことを理解させられた。
︎︎高熱による脳へのダメージが原因かもしれない……と医者は神妙な顔で語っていたが、当時の俺は何言ってんだこいつと白い目を向けてしまった。
︎︎母親らしい女性には悪いが、記憶喪失という扱いは俺にとって都合が良かった。今まで通っていた小学校の先生も同級生も、俺は全く知らなかったからだ。
︎︎夏休み中だったから良かったものの、いきなり学校にいけと言われても断固拒否していたであろう。
「将吾。降りるぞ」
「……わかった」
︎
︎︎〈
︎︎何時間か揺られて着いた新大阪駅は、前世の記憶にあるものと寸分違わなかった。相変わらずの人の多さ。しかし父親の目的地は大阪ではなくて京都らしい。
︎︎どうやら俺の実父らしいこの男だが、なぜか家には寄り付かない。母親に聞いてみたところ、曖昧な返事しか来なかったので理由は定かではないが、きっと別居かなにかしているのだろう。
︎︎息子が記憶喪失になってショックだろうに優しく接してくれた母親はともかく、俺はつい昨日初めて会ったばかりの父親を家族とは思えなかった。
︎︎そもそも出会いからして最悪だった。
︎いきなり家に入ってきたと思えば、無理やり俺の手を引いて近場の駅まで強制連行されたのである。
︎︎文句の声を上げても知らんぷり。血相を変えて追いかけてきた母親の口ぶりから、この男が誘拐犯ではなく実の父親であることが発覚したが、そうじゃなかったら大声で叫んで警察を呼んでいた。
︎︎前世の記憶からしても今世の父親が明らかに非常識なのは明白であるが、それはそれとして、今現在の俺が生きるこの世界が本当に以前と同じなのかは未だ分かっていない。
︎
︎︎確かに日本という国で、技術の発展度合いからさても然程時代が離れているという感覚は無い。個人的には古臭い印象が見受けられるスマートフォンなどや、俺からすると幼少期のものというイメージしかないガラケーを周りで見かけることが多かった。
︎︎カレンダーが表すは西暦2014年。それ以前の大まかな事件や災害なども、大半は記憶通りだった。この世界における日本の歴史も大差ないというか、少しの例外を除けば前世の記憶とほぼ同じである。
︎︎明治維新に第二次大戦の無条件降伏、高度経済成長や90年代のバブル崩壊──……また日本国外においてもアメリカでは同時多発テロがやはり起きていたし、朝鮮半島は未だ南北に別れたままだったし、やっぱりリーマン・ブラザーズは経営破綻して世界金融危機を招いていた。
︎とはいえ、未来知識で大儲けができるとは思ってはない。一切記憶にないテロ事件が平成初期の日本で起きていたり、そもそも政治にしたって”自由国民党”とかいう個人的にパチモン感溢れる保守政党と”日本民政党”とかいうよく分からない左派政党が頻繁に入れ替わる事実上の二大政党制が確立されているようで、景気も回復傾向にあるためか、世間の雰囲気もテレビに流れるニュースも結構違っている。
︎︎前世の記憶においては、政権与党は90年代後半や2000年代後半の一時期を除けば特定の政党が戦後ずっと政権を握っていたし、顔ぶれも今世とはかなり変わっていた。
︎︎お馴染みの政治家が全く出てこない事に違和感を覚えども、今世では馴染みのない見知らぬ政治家たちが世間にとってのお馴染みらしい。
︎︎政治状況が違うということは、国の経済も、それに連なる企業活動も違うということ。
︎︎大まかに似ているけれどやはり違っていた。それを強く認識したのは、帰宅したあとに見たテレビの向こう側の世界の状況だろう。アイドルもタレントも芸人も、立ち位置的には「あの人」や「あのグループ」なのだろうなとは思っても、彼ら彼女らの経歴や活動スタイルを調べればやはり少しだけ違っているのだ。
︎︎いわゆる哲学的ゾンビではないが──それを知ったときに俺は世間との乖離に大なる孤独を感じたものだ。まるで俺だけが知らない世界に来たような、そんな感じだ。実際その通りなのだから、世の中科学では解明できない不思議なことがあるらしい。
︎
──今世における生まれ故郷らしい名古屋から出発した東海道新幹線の車両は、約一時間ほどで新大阪駅までたどり着いた。なぜか出会ってからずっと不機嫌な父親と共に下車した俺は、久しく見る新大阪駅の構内を歩いて外に出た。
︎︎用事を済ませてから、再び駅に戻って京都に向かう予定らしい。そもそもハナから京都に行くなら新大阪まで来なくても良かったのではないかと思ったが、用事があるなら仕方がない。
「何しに行くの?」
「……黙ってついてこい」
︎︎気になって訊ねてみたが、こちらに有無を言わさぬ命令口調の言葉が彼の返答であった。
︎︎黙ってついて来いと言われても、こちらは何も知らないのだからある程度は優しくして欲しかった。あの母親を見習って欲しい。彼女は前世の毒親とは比べるのが失礼なくらい優しかったし、俺を気にかけてくれた。そんな彼女の結婚相手がこの男だとはとてもじゃないが想像できなかった。
︎︎結局、大阪での滞在時間は三十分にも満たないだろう。
︎︎黙ったままの父親は、駅近くの路地裏で佇む謎の男に話しかると、これまた謎の茶色い紙袋を貰っていた。
︎︎男に金を渡していた父親の姿は不審そのもの。なにかヤバいのを買っているに違いなかったが、当然袋の中身を聞くことも出来ず、これまた電車に揺られて京都に向かうことになった。
︎︎新大阪駅から三十分ほどして京都駅に到着し、また同じように父親の後を追う。
︎︎駅を出てすぐに父親はタクシーを捕まえた。喉が渇いていた俺はポケットに入っていた小銭を握りしめてコンビニにでも寄ろうかとしたのだが、首根っこ掴まれてロータリーに連行された。
︎︎そろそろ虐待で児相に訴えてもいいんだぞクソ野郎、と叫びたくなるも、最後は大人しく従うことにした。体格差からして抗ったところで無理だと悟ったからである。
「京都には旅行で来られてはるんで?親子二人で良いですねぇ」
「……」
「はは……まあ、そんなもんです。観光ではないんですけどね」
︎︎悪気は一切ないであろうタクシードライバーの爺さんに、俺は乾いた笑いを浮かべた。
︎︎いい歳した大の大人なんだからせめて相槌くらいは打てよ、と横目で父親を睨むも、彼は腕を組んで瞑目していた。
︎︎前世の親を思い出して、その冷たい雰囲気は若干トラウマを想起して辛かったが、俺はその後も必死にタクシードライバーとの世間話に付き合い続けた。
︎……いやこんな気のいいおっちゃん、無視するの可哀想だろ。
「着きました……けど、ほんとに此処で合ってます?」
「ああ。ここでいい」
「……?」
︎︎小一時間揺られてタクシーが停車した。
︎︎京都は京都でも、父親の目的地はかなりマイナーというか、少なくとも前世では見聞きしたことの無い町だ。まあ祇園とか舞鶴とか宇治とか有名どころ以外京都なんて大して知らないが、それにしても人気が少ない。
︎︎こう言ってはなんだが、京都らしさは全くない。市街地から出て片側一車線の長い道を進んだ先が、ここだった。右側の窓の外、反対車線のその先には周りを木々に囲まれている大きな日本屋敷が見える。しかしそれ以外の光景はよくある地方都市のような風景で、ポツポツと一軒家が道沿いに並び建っていた。観光地ではないのは明らかだ。
︎︎タクシードライバーも怪訝そうな顔で父親を見ている。しかし父親は特に何も言わずに料金を支払い、タクシーから下りた。ドライバーに会釈しながら俺も車を下りて、大して舗装もされてなさそうな地面に立つ。
︎︎唸るエンジン音が遠ざかっていくのを眺めつつ、俺は父親に聞いてみた。
「こんな所に何しに来たの?」
「………………俺の、恩人と呼べる人から呼ばれた。お前の今後のことについて話したいんだそうだ」
「……?」
「チッ」
︎︎俺の今後を親でもない奴が話すとは一体どういう事だろうか、と首を傾げる。重ねて疑問をぶつけようにも、鬱陶しそうに舌打ちを返されたので口を噤む。
︎︎ここは京都だ。俺の住む名古屋とはかなり離れている。そんな所に縁があるとは知らなかった。父親は京都出身なのだろうか。
︎︎眉を顰める俺を無視して、父親はそそくさと歩み出した。照りつける日光に汗を流しつつも、その後を追う。
──この知らないはずの風景に対する妙な既視感と、汗ばんだシャツが背中に張り付いていたのもあって、俺は少し気分が悪かった。
■■■
︎︎突然だが、前世で俺が死ぬ直前には〈アンブロークン・リネージュ〉というノベルゲームがネット上で流行っていた。
︎︎迫真極まる名セリフは日本の老舗動画投稿サイトでMAD素材として用いられ、また同作は、アニメや漫画としてもメディア展開していたこともあり、主にアジア圏の中国、韓国、インドネシアなどでも一定の人気を博していたと記憶している。
︎︎このアンブロークン・リネージュ、略してULは至ってよくある乙女ゲーであった。
︎
︎︎あらすじはこうだ。
︎︎ごく普通の女子中学生であった主人公が、親と喧嘩をして家出をしてしまった所から始まる。その先で〈妖怪〉たちの祭りである百鬼夜行を目撃し、彼女は彼らの”妖気”に当てられて半妖半人となった。
︎︎その後、紆余曲折を経て妖怪たちの組織に囲われた主人公は、妖怪と人間が共存する世にも珍しい高校へと進学することになり、妖を嫌う人間側の勢力と妖を守りたい妖怪側の勢力の間に挟まれながら、イケメン妖と共に過酷な戦いに巻き込まれる──そんな話だった。
︎︎俺は昔からゲームよりも外でサッカーや野球をする方が好きなタイプだったので、そこまでアンブロークン・リネージュに興味はなかったが、仲の良い同級生や妹といった身近な人間がハマりこんでいたことや、感想を聞きたいということで妹にプレイさせられたこともあり結構な知識を持っている。
︎︎女性向けゲームとはいえ、重厚かつシリアスなストーリー展開や制作陣の拘りを感じさせるキャラデザもあって、男性からの人気も高かった。
︎︎それはともかく、なぜいきなりこんな事を俺が思い出しているのかというと──、
「……今から俺たちが会う方は西ノ宮家の現当主とそのお孫様だ。仮に無礼を働いてみろ、蹴り飛ばしてやるからな」
︎︎タクシーを降りて十数メートル先にあった日本屋敷の前で、父親がそんな警告を俺にしたからであった。
︎︎〈西ノ宮家〉──前世で多少なりともアンブロークン・リネージュに触れたことのある俺は、その単語は聞き逃せなかった。その瞬間まで俺は、生まれ変わったこの今世は、前世とは似て非なる同じ国だと思っていたものだが、それを聞いて考えを改めた。
「(……ゲームの世界に、転生したってことか?)」
︎︎ありえない、と嫌に冷静な理性が否定する。
︎︎つい最近まで3次元に生きていたはずなのに、2次元の世界に生まれ変わるとは一体どういうことだろうか。物理学に喧嘩を売ってるとしか思えない。転生を自覚してはや半月近く経つというのに、俺は今更ながら自分の頭を疑った。
︎︎
︎︎しかして耳をすませば聞こえてくるセミの鳴き声や、妙に懐かしさを感じる景色、木々や土の臭いは間違いなく現実のものであり、まるでこの世界の方が”此処こそが本物である”と主張しているかのようにさえ思える。
︎︎西ノ宮家──それは確か、アンブロークン・リネージュにおける有名な敵キャラクターの生まれた家だったはずだ。ゲームやアニメ、漫画などのキャラクターと姓が同じなことは大して珍しいことでは無い。
︎︎しかし思い返してみればこの京都という立地や、俺の知らない”存在しない”テロ事件……妹が熱心に読んでいたULのファンブックに記載されていたような気もしなくもなかった。
「入るぞ。もう御二方は客間で俺たちを待ってる」
「……了解」
︎︎段々と青ざめていく自らの顔を自覚しながらも、俺は父親に気付かれないようにと表面上は平静を保つ。
︎︎最悪だ。
︎︎何が最悪かと言えば、ゲーム内において主人公たちと敵対していた西ノ宮家に、この父親が縁がある──恩があるとか何とか言っていたが、俺にとっては恐ろしい話である。
︎︎仮に今後、ゲームと同じように世界が進んでいくのだとしたら、深い関係を持つのは嫌だ。もし深く関わってしまったら俺に待つのは間違いなく破滅。少なくともまた死ぬことは確実だ。
︎︎ゲーム内において主人公たちと敵対関係にあった西ノ宮家は、最終的に戦いに敗れて離散し、一部は死亡している。その一部とは、今まさに父親が口にした西ノ宮の当主とその孫娘だ。
︎︎そのことに気づいた俺は、病院で目覚めて以後、どこか非現実的だった世界が一気に現実的になった気がした。
︎︎まだ前世の死から立ち直れたとはいえないのに、今世でもまた死ぬことになるかもしれない。
︎︎その事実は多大な恐怖を俺に抱かせた。
︎屋敷の使用人だろう着物姿の若い男に案内された客間は広く、そして綺麗だった。真新しい畳の上に置かれたテーブルの向こう側に、やはり前世で見た覚えのある人物が二人座っている。
「──おう、来たか」
「ご無沙汰しております、西ノ宮閣下」
「ええ、ええ、気にせんと座りや。こんな酷暑日に名古屋くんだりから京都まで遥々おおきに。茶でも飲め」
「はっ、御無礼致します」
「……」
──西ノ宮
︎︎家系図を辿れば平安初期にまで遡ることが出来るほど古い、京都の有数の名家であるこの西ノ宮家を率いる男で、ゲームにおいては「闇将軍」と揶揄される立ち位置にあったキャラクターだった。
︎︎原作主人公たちに降りかかる様々な事件を裏で手引きしていた黒幕とされ、立場相応に悪どい顔をしていることからも、俺は強く印象に残っている。
︎︎いざ実際に対面してみると、やはり威圧感が凄まじかった。口調こそ軽やかだが、その双眸は鷹のように鋭い。
︎︎仮に少しでも変な動きを見せればすぐにでも殺されそうな、そんな凄まじいオーラを俺は感じ取り、ゲーム世界への転生というこの不可解な状況に気付いたばかりというのもあって、俺はますます萎縮してしまう。
︎︎けれど部屋に入ってから一切動かない俺に父親がチラっと目を向けてきたので、慌てて頭を下げて挨拶をした。アレはあのままポカンと立っていたら蹴り飛ばされていたに違いない。
「は、初めまして、陸浦 将吾です」
「おう、こうして会うのはキミが生まれたとき以来やね。えらい大きなったやん……今は何歳?」
「十歳です」
「善哉善哉。熱で倒れたって聞いたけど、もう身体は大丈夫なんか?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
︎︎親の前では続けていた子供らしい口調を、この混乱した意味不明の状況になっても取り繕う気力は俺にはなかった。ただ角を立てないよう、姿勢と言葉遣いを正すことに集中する。
︎︎話の内容だけ見れば田舎に来た孫の様子を訊ねる爺さんのようだろうが、目の前に座る公威にそんなつもりは一切ないだろう。
︎︎ゲームの世界とこの世界が全く同じなのかは分からないが、”西ノ宮公威”というキャラクターを多少なりとも知っていれば、俺が彼に怯えるのも当然だ。
︎︎第二次世界大戦後GHQの占領下に置かれて西ノ宮家は資産の多くを失った。日本が主権を回復した後、いち早く西ノ宮を建て直し、関西の復興に大きく携わった超大物フィクサー──の息子が彼である。
︎︎とはいえ世渡り上手だった父親のその才覚は彼に受け継がれており、高度経済成長期には不動産グループの経営で財を蓄え、その後のバブルで西ノ宮家は最盛を迎えた。また、政界……特に霞ヶ関との繋がりもかなり深く、今現在もテレビに出るような名だたる要人が頭を下げるほどの人物である。
︎︎ゲームでもそのコネと財力を総動員し、妖怪との共存を目指す主人公達に対して熾烈な妨害を行っていた。あるバッドエンドルートでは、主人公が彼の実験体として飼われる未来もあったか。
︎︎常人の振りをした狂人。それが、俺の彼に抱く印象だ。
︎︎そして何よりも俺の目を引いたのは、そんな老人の隣にちょこんと座る同い年ほどの少女。
︎︎この男がゲームに登場していた本物の西ノ宮公威であるならば、彼の孫娘であろう彼女は、まず間違いなく──、
「ああ、紹介せんとな。この子はうちの孫の”西ノ宮
「……」
︎︎全ての黒幕である祖父の命令に忠実に従い、原作主人公と真っ向から敵対していた”悪役令嬢”。
──多くのファンから嫌われていたキャラクターだったその少女は、俺と同じ肉体を持つ一個の人間として、こちらを氷のような視線で貫いていた。