ZERO WORLD   作:kaito(カイト

17 / 45
少年の戦う理由

 「七大悪四位…まさか、闘国に行く前に七大悪の一人と会えるとはな。」

「アナタは既ニ七位ト六位ヲ殺シ殺死殺シタ!ソシテ不思議なコトコトコトに!魂ヲ取リ込ンデ異ル!」

 

 不気味な話し方をしており、不快感を感じる。

 ゼロは美悪に鋭い視線を向けながら問う。

 

「あの少女を…ルピナスを出せ。お前と会話をするつもりも無ければ、共にお前が言う美を楽しむつもりも無い。」

 

 美悪は頭を傾げながら、舐め回すような視線で笑みを浮かべ答える。

 

「私の美ヲ!堪能死てくれたら!答えルヨヨヨオ!」

 

 そう言った次の瞬間、建物の天井から巨大なナニカが落ちてくる。

 それは、恐ろしいモノだった。

 子供の顔のようなモノで継接ぎで組み合わされた胴体、それぞれ別個体の魔獣の腕や脚、角を生やし赤く染った肌の悪魔のような形相の少女の顔、5メートルほどの大きさはある巨体。

 

「子供達の身体を使ってこんな化物を作ったのか…美悪!」

 

 怒りで溢れた表情で美悪に龍刀を向ける。

 

「私ハコノ子に名前ヲ付ケタ!美人形!」

「ガ…オ…アァァァァァァァァ!」

 

 巨体の割に猛烈なスピードで拳を叩き込んでくる。

 スピードだけなら強悪に匹敵するレベルだ。

 ゼロは瞬時に龍刀で受け止めるが、龍刀に少しずつヒビが入っていく。

 

「ッ!?スピードだけじゃない…!?」

 

 ゼロは元が子供達の身体で作られたという理由で攻撃を躊躇っていたが、このままでは自分の命も危うくなると確信し、覚悟を決める。

 

「俺が今、楽にしてやる。」

 

 悲しげな表情をしながらゼロは龍刀が砕かれると同時に、拳を避ける。

 そして拳と脚には龍の魔力を溜め、龍刀を一気に二つ創り出す。

 

「ガルァァァァァァァ!!!」

「くっ!」

 

 飛び掛かってきた美人形の下を掻い潜りながら龍刀で一連、二連、三連、と合計十二連斬り裂く。

 

「もう一度だ…!」

 

 美人形の下を掻掻い潜ったことにより、背後を取ることに成功する。美人形がこちらを振り向くより早く背中に龍刀を突き刺し、その状態で龍刀に炎を纏わせ縦におもいっきり斬り裂く。

 

「アガオァァァァァァァァァッ!!!」

 

 苦しんでるのか咆哮を上げる。

 

「くっ…やめてくれ…頼む…!」

 

 美人形の苦しむ声に心臓を締めつけられたような感覚に陥る。

 咆哮を上げながら異人形は爪を突き立てゼロを突き刺そうと拳を振るう。

 

「ガァァァァァァァァァッ!!!」

「ッ…!」

 

 拳に魔力を込め、異人形よりも速い速度で胴体に拳を叩き込む。

 攻撃による衝撃からか、胴体の真ん中の顔の継接ぎが剥がれ、心臓を露わにする。

 

「グ…ガ…ァァァァァァァァ!!!」

 

 美人形はゼロの対応できない速度で飛び掛かり、胴体を押さえつけ押し倒す。

 

「なっ…!?」

「ガルガァァァァァァァァッ!!!」

 

 恐ろしい悪魔のような顔でゼロの眼の前で咆哮を上げる。

 ゼロは龍刀を創り出し心臓に向けて…

 

「終わってくれ…楽に…なるんだッ…!」

 

 龍刀を投げ飛ばす。心臓に突き刺さり、ゼロの方に倒れそうになるが、手を地面につけ身体を支え始める。

 悪の魔力により黒く染まった眼が本来の色に戻っていく。

 

「……は…その…瞳は……」

 

 蒼い宝石のような色をした瞳。まるで、共に楽しい日々を過ごした少女のような。そしてその瞳からは涙が溢れる。

 

「ゼロ…オ…兄…チャン…ありがとう…」

 

 そう言うと美人形は倒れ、息を引き取った。

 

「そんな…嘘だ…やめてくれ…俺は…ルピナスを…」

 

 手の震えが止まらない。声を出すのも苦しい。今にも身体が割れかけのガラスのように崩れそうだ。

 

「アァァッッ!凄くイイイ異異異異異イイ!助けるハズダッタ少女ハ!己ノ手で殺シタ終ワラセタ美二仕上ゲタ!アァァァァァァァ!狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う狂う!」

 

 俺が殺した?俺の手でルピナスは死んだ?助けるんじゃなかったのか?なんで俺はルピナスを殺しているんだよ。なんで俺は…

 

「なんで…なんで俺はルピナスを……殺してるんだ……」

 

 そうだ。殺してしまったのだ。己の手でルピナスを。

 

 美悪は目の前で完成された【美】に歓喜する。素晴らしい…この一瞬、この瞬間に起きている目の前の光景が、美悪には輝かしく、そして生命の価値を身に沁みて感じていた。

 

「彼女ハ、美ニ成ル時にこう語ッテ異魔死タ。「痛い…!痛い痛い痛いッ!私はまだ…ぁ…っ!ゼロさんとイゼさんに…!助け…てっ!痛い痛い痛いッ"!怖い怖い怖いっ"!あ"ぁぁぁぁぁ"ぁぁぁぁっ"!?」どうですー?彼女の言葉ー?響きましたかー?」

 

 ゼロは何も答えない。聞きたくない、耳に入れたくない、彼女の絶望の声が脳に焼きついていく。ゼロは立ち上がり、そして問う。

 

「なんで…こんなことをした…美悪…」

「ナンデ?ナンデナンデナンデナンデナンデ?ソレハソレハソーレハ?人間という薄汚く価値の無い生き物ヲ!美に仕上げる為!存在価値の証明!生の喜び!美の誕生ッ!それ以外に、理由はあります?」

 

 あぁ…そうか…コイツらは…

 

 

 

 

 

 一人残さず苦しめて殺すべき種族だ。

 

 

 

 

 

「美悪…お前は…絶望が生温いほどの苦しみで殺してやる…俺がこの手で…泣いて恐怖して絶望を越える絶望で殺してやる…」

 

 ゼロは悪魔すら恐れる形相で美悪に宣言する。

 

「それは無理!私ノガ!強イカラ!」

 

 背中から触手のようにうねる大量の手を出しゼロに向って放つ。

 

「お前を殺すッ!!!」

 

 放たれた腕を炎を纏った龍刀で力任せにぶった斬りながら急接近する。

 だが、腕は次から次へと放たれる。道を塞がれ、地面から空中から奇襲されるが、それでもゼロは止まることなく目の前にある障壁をぶった斬り目の前まで近づいてく。

 

「美ィ"ィィ悪ゥ"ッッッッッッッッ!"」

「残念!私の勝チ!心臓グサッ!」

 

 龍刀を振り下ろしぶった斬る瞬間、美悪の心臓部分から巨大な手が生えゼロの心臓を貫く。それに続いて背後から生やした大量の手もゼロを貫きまくる。

 

「ガ…ッ…ァ…………………」

 

 血液が止まることなく流れ続ける。脳も何も考えられなくなり、意識が今にも無くしそうな中、ゼロはただ言い続ける。

 

「………てやる…してやる…殺してやる美悪ッ"…!」

 

 次の瞬間だった、ゼロを貫いていた手は全て引き千切られ、ゼロを解放する。

 

「おぉ…!コレガ…!ゼロ本来の力ァ…!」

 

 傷は全て塞がり、腕と脚があの時のような龍の腕と脚になる。

 

「お前は今から狩られる側だ…覚悟しろよ」

 

 そう言った瞬間、美悪が認識できないレベルの速度で激を七回叩き込む。怒りで狂い、殺気だけしか感じない拳だった。

 

「ガァッ!?ゴハァッガァァァァァァァァ!?」

 

 美悪は倒れ、手も脚も動かず抵抗の余地が無いほどの痛みという名の苦しみを受ける。

 そのままゼロは美悪の上に乗り、激をとにかく叩き込む。

 

「苦しめッ!苦しめッ!苦しめッ!」

「コエガァッ!出ォッガ!るほどガハァ!死ガァァァァァ!目前だァァァァァァァァッ!」

 

「お前が苦しんで死ねばみんな喜ぶはずだッ!終わりが近いぞ美悪ッ!お前の全てが終わるんだぞッ!」

 

 身体の全魔力を拳に溜め、魂に最後の激を叩き込もうとする。

 

「死"ね"ェェェェェェェ!"」

 

 

 

 

「やめてッ…!!!」

 

 腕が止まる。ゼロは歯を食いしばりながらイゼに言う。

 

「コイツはルピナスをあんな姿にさせたッ!苦しかったはずだッ!絶望を受けるべきだろッ!」

 

 イゼは今にも泣きそうな眼で、真剣な表情でゼロに伝える。

 

「今のゼロには…誰も殺させない…例え悪種族でも…だって今のゼロは…殺すのを楽しんでるような顔をしている…」

 

 ゼロはふと自分の顔を手で触る。

 笑っていた。満面の笑みだった。

 ゼロは自然と口角が下がっていく。

 

「俺は…なんて…顔を…」

 

 立ち上がり、美悪から引き下がっていく。

 すると美悪は笑いながら伝え始める。

 

「所詮はお前も…己の欲望のために殺しを楽しんでいたに過ぎない!」

「違う…俺は…平和を取り戻したくて…」

「平和ァ!あんな顔したヤツが!違う!お前は今まで!平和のため!助けるため!幸せのため!それらを偽りの願望にして復讐という名の!殺しを楽しんでいたに過ぎない!」

「違うッ!俺はもうあんな過去のような出来事が起こらないために!今までずっと!」

「それは自分の本心を偽るための言い訳だッ!お前は俺達悪種族と同じ!殺しで欲求を満たす化物だァァァァァァァァッ!」

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」

「殺せ!俺を殺せ!復讐に染まった悪魔がァァァ!」

 

 次の瞬間、具現化した魂を火球が貫く。

 

「もう喋らないで。貴方の声、怒りが止まらないの。」

「全ては…美の…ために…」

 

 身体が塵となり消え去っていく。中身の無い空の魂はゼロの身体へと吸収されていく。

 ゼロは自分に呆れたような表情をし、話し始める。

 

「こんなんで…平和を取り戻すなんて…笑えるよな…」

 

 イゼはゼロに近づくと、優しく抱きしめ伝える。

 

「ゼロ…貴方はあちら側に堕ちちゃ駄目…それに、ゼロの本心は決して殺しを楽しんでないわ。だって、貴方はいろんな人の苦しみを理解して、まるで自分のことのように苦しんで、誰よりも人の幸せのために、平和のために頑張る少年なんだから。」

 

 目から涙が溢れそうになる。今にも泣き叫びたい。この辛さを声に出したい。けど、ゼロはそれをグッと抑え込む。そしてイゼに伝える。

 

「俺はもう…あんな風にはならない…約束する…」

 

 それを聴くと、イゼは優しく微笑みゼロの手を繋ぐ。

 

「帰って休もう。ゼロ」

「あぁ…そうだな」




少年は彼女のために決意する。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。