ZERO WORLD   作:kaito(カイト

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真の戦士はすぐ傍に

 「はぁ………」

 

 コロシアムでの宣言の後、三人は一先ず宿に向かった。

 ゼロは溜め息をつく。もっと冷静に考えれば他の方法があったんじゃないか?いいや、無いだろう。

 あの国王の意志は凄かった。戦士祭に出るしか方法は無かっただろう。

 

 「あんな大勢の前で宣言しちゃうとはね〜!」

 「お前、意外と勢い任せなのか?」

 「いいや…そんなことは無いと思うが…」

 「あーでも、太陽国の時も怒りに任せて一人で七大悪七位に挑みに行ったり意外と勢い任せなのかもね〜!」

 「そこを指摘されると何も言えないな…」

 「とりあえず、戦士祭の出場登録をしに行くしか無いんじゃないか?国王もあんなだし、今から交渉で七大悪の情報を得ようとしたとしても、断られるのが目に見えるしな。」

 「確か…この近くの酒場のマスターが登録の手続きを案内してくれるらしいな。」

 「それじゃ早速酒場に行こ〜!お昼ごはんも食べたいし〜!」

 

 ゼロ達はこうして酒場に向かい始めた。

 酒場に着くと、何やら騒がしい声しか聞こえてこない。酔った客がこんな真っ昼間から多いのだろうか。

 

 「「「カンパァァァァァァァァァイッ""!!」」」

 「…なるほど」

 

 コロシアムにいた戦士達の何割かが、この酒場で酒を楽しんでいた。

 だがゼロが入った瞬間、周りは一瞬にして静かになる。それもそのはずであり、コロシアムでのゼロの宣言は他の出場する戦士達に対する宣戦布告だ。

 今やゼロは戦士達の敵なのだ。あんなことをすれば戦士祭開催前から馴れ合う余地も無くなるのも当然の結果である。

 

 「すっごい目線だね〜…」

 「あんな喧嘩売るようなことすればそうなるよな…」

 

 小声で話し合う。二人ともこの空気の中いつもの声量で話し合う勇気はないようだ。

 ゼロは早速、酒場のマスターに出場登録の手続きをお願いする。

 

 「マスター、戦士祭の出場登録を頼む。」

 「いいのか?坊主、戦士祭参加予選でトラウマ植え付けられて退場だぜ?」

 「問題無い。」

 「即答か。恐れを知らねぇのか…戦士として意志が強いのか。どっちにしろ断る理由は俺にはねぇな…いいぜ坊主、すぐにでも登録しよう。」

 

 手続きが行われる瞬間だった。ゼロは頭の上に突然酒をぶっかけられる。

 かけてきたのは一人の異種族、獣人だった。そしてその周りにはゴブリン、オークもいた。三人は通常の個体より身体が大きく、魔物の鱗で作られた鎧のようなモノを装備している。

 

 「ゼロッ!?」

 「なっ…!?おい!やり過ぎじゃないのか!」

 「黙れ女共!俺はコイツみたいな粋がったガキにイラつくんだよ!」

 「全くだ!ガキが俺に勝つだぁ?生意気言ってんじゃねぇぞゴラッ!」

 「今ここで痛みを知って、戦士祭参加予選で死ぬことのないようにしてやるよ。」

 

 オークの戦士がゼロの胸ぐらを掴む。だがゼロは一切恐れてる様子を見せてなかった。ただただこの三人を蔑んだ目で見ていた。

 

 「なんだその目…?あまり戦士をバカにするなよクソガキが…!」

 

 ゼロに拳を振るった瞬間、マスターが素手でオークの戦士の拳を受け止める。そしてその拳を強く握りしめ警告する。

 

 「俺はこの坊主が死のうがどうでもいい話だ。だが俺の店で暴れんのは国王だろうと許さねぇ。殺り合うなら明日の戦士祭参加予選でやれ。」

 「…良かったな。痛みを知らず逃亡するいいチャンスができたぞクソガキ。今夜にでも国出ねぇと殺してやるからな。」

 

 そう言うと異種族の戦士三人は酒場を出て行った。

 マスターは深くため息をつくとゼロに水を用意する。

 

 「ま、これでも飲んでスッキリしろ。うちの水は酒より美味いぞ。」

 「……遠慮なく頂くぜ。」

 

 そう言うとゼロは水を一気に飲み干す。そしてグラスを置き、怒り満ちた眼でマスターに言う。

 

 「最高の水だった。明日はおもいっきりアイツらぶっ飛ばせそうだ。」

 「そりゃ良かった。それじゃあ手続きを始めよう。」

 

 そう言うとマスターは戦士祭出場登録に必要な書類を出す。

 

 「まずはここにリーダーとそのお仲間二人の名前を書け。」

 「チームを組んで勝ち上がる祭だったのか?」

 「国王は言ったんだ。「戦士の右腕となる存在も讃えられるべき強者なのだ」だとな。」

 「そうか…イゼとアルクを巻き込むわけにもいかないしどうするか…」

 

 そう呟いてると、後ろの方からイゼが明るい声で話しかけてくる。

 

 「なーに言ってんのゼロ〜!私達は全然参加するわ!」

 「七大悪の情報掴むためでしょう?私も参加するわ。それともう私は仲間なんだし、たくさん頼ってくれ。」

 「二人とも…ありがとな。ということだマスター。俺達三人で参加するぜ。」

 「OK。あとは注意事項だが、これに関しては生死の保証はできねぇってことぐらいだな。」

 

 ゼロは思う。『この祭、もしかして開催しない方がいい祭なのでは?』

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 戦士祭当日

 

 「戦士達よ!よくぞ集まった!これより行うは戦士祭参加予選!各チームのリーダーがコロシアムに集い、最後まで立ち続けた8人の戦士のみが戦士祭への参加を認められる!闘志を燃やし勝ち上がれ戦士達よ!」

 「「「うおおおおおおおおおおッ"!」」」

 

 コロシアムの真ん中には100人を越える戦士がいた。

 観客達は戦士達の戦いを今か今かと待ち侘びる。

 

 「………」

 

 周りの戦士達の視線をものすごく感じる。真っ先に殺すという意志さえ感じる。

 

 「少年、この祭は正直言って危険すぎる。命でも落としてしまったら…今すぐにでも退場するべきだ。」

 「アンタもいたのか。隊長。」

 「私は七大悪の情報を得なくてはならない。今も苦しむ民達の平和のため。」

 「そうか。ならアンタと俺の望みは同じだな。お互い頑張ろうぜ。」

 「お互い…?ちょっと君!待ちたまえ!」

 

 ゼロはメルドサズから離れるように更に中心の方に移動した。

 

 「……ここだな。」

 

 観客席からはイゼとアルクが観戦している。アルクは少し心配していた。この数の戦士達に喧嘩を売ったのだから真っ先に狙われでもしたらどうするのかと。

 

 「ゼロは大丈夫だろうか…」

 「安心してアルクちゃん〜!こんなの一瞬よ!」

 

 国王は専用の玉座から立ち上がり、戦士達と観客達に緊張が走る。

 

 「それでは、行うとしよう…戦士祭参加予選、開始だッ!」

 

 開始の宣言と同時に周りの戦士のほとんどがゼロに向かっていった。拳を振るい、剣を掲げ、最初の見せ場を作るかのように。

 

 「始めるか。残り8人になるまで。」

 

 次の瞬間だった。ゼロを囲むように襲いかかった戦士達の前衛の者達が一斉にしてコロシアムの壁まで吹き飛ばされていく。

 

 「な、なんだ!?」

 「一気にふっ飛ばされた…!?10人以上を!?」

 

 突然の出来事に、先程まで前衛に続いてた戦士達は一瞬立ち止まってしまう。

 戦士達が立ち止まる中、獣人の戦士が飛びかかるようにゼロに襲いかかる。

 

 「何をしたか知らんが、俺の前では無意味だ!死にやがれッ"!」

 

 剣を振り下ろし、ゼロを斬り裂くより先に、ゼロの拳が獣人の戦士の顔に叩き込まれていた。

 

 「お前に殺されるほど弱くねぇんだよ。」

 「ゴッ…!?グガッ……!?」

 

 獣人の戦士は勢いのままぶっ飛ばされ、失神し倒れる。

 

 「な、なんなんだこのガキ!?」

 「なんであんな強ぇんだ!?」

 「落ち着け!こうなりゃあのガキに狙われる前に他の戦士を…!」

 

 そんなことを言ってるのも束の間、戦士達は一人ずつ失神し次々と倒れだす。

 戦士が倒れる直前、目で追えない速さで動く何かが見えるが、それが何なのかは一瞬で理解した。

 ゼロは戦士の顔面を足の裏で蹴り、そのまま勢いよく反射。そして反射先の戦士の顔面を足の裏で蹴り飛ばし更に反射を繰り返しているのだ。

 

 「クソッ!速すぎて見えねぇ!何処から来やが…ッ!?」

 「背後からだ。バーカ」

 「ゴガァ………!?」

 

 後頭部をおもいっきり蹴り飛ばされ、ゴブリンの戦士は失神する。

 

 「…ッ!」

 「おっと!危ねぇ!?」

 

 黒髪で身体に傷をつけた同年代ぐらいの少年の顔面を蹴り飛ばすより先に、両腕に付けた鉄骨のようなモノで塞がれる。

 ゼロは鉄骨を勢いよく蹴り飛ばし再度反射する。

 

 「なんだアイツ!最高に強そうじゃねぇか!」

 

 遠くから眺めてた騎士団長メルドサズは唖然としていた。

 

 「あれほどの実力者とは…蹴り一つで失神、どれほどの威力なのだ……」

 

 そうこうしているうちに、あっという間に残り人数が僅かになる。

 残り30人…残り20人…残り9人

 

 「残り9人…アイツが最後に狩るとしたら俺だ…なら、殺られるより先に俺が最後の一人を…!」

 「戦士なら勝負から逃げんじゃねぇよ。」

 

 オークの戦士が他の戦士を攻撃するより先に、ゼロは目の前に現れ魔力の込めてない全力の蹴りを胴体に喰らわせる。

 

 「ゴッ…ハァッ!?」

 

 誰よりも高くふっ飛ばされ、コロシアムの中心に墜落し失神する。

 

 「よく残った…8人の戦士よ!」

 

 観客達は歓声を上げ、ゼロに注目する。その視線を受けてゼロは思う。

 

 「やり過ぎた……」




アルク「やっぱり勢い任せになりやすいじゃないか…」
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