ZERO WORLD   作:kaito(カイト

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四章 悪逆の兄妹
悪逆の兄妹


 お───ねが──い──

 

 冷たい…寒い…これが死か…

 

 空は雨雲に覆われ、太陽の光は隠される。一滴、一滴と振り続ける雨は、少年の身体を冷たくさせる。

 

 誰か泣いている……まぁでも……今はそんなこといいか……

 

 ねぇ───起きて───よ───

 

 少年はその身から赤い糸が溢れ出す。壊れたぬいぐるみから綿が溢れ出るように。

 

 あれ………でも誰が俺の………ために………

 

 雨に濡れ、乱れた紅い髪。涙で満たされた紅い瞳。その涙は止むこと無く、少年に流れ落ちる。

 

 「私を……置いていかないで……傍にいてよ………」

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 「……っ…!」

 「……」

 

 隣には何事も無いようにぐっすり眠るイゼの姿。

 

 「どうしたんだ?ゼロ。酷い夢でも見たような顔だぞ?」

 「……あぁ…そうか。夢か。」

 

 機械国ロボを目指している最中、夜が訪れ野宿をすることにした三人。ゼロとイゼが眠っている間、アルクは悪種族の奇襲を警戒し起きていたらしい。

 

 「アルク、少し寝た方がいい。見張りなら俺が交代する。」

 「……私は大丈夫。慣れてるから。」

 「慣れてるとしても─」

 「闘国で一番無理していたのはゼロだ。身体も完全に回復した訳じゃないでしょ?だから今は、私に無理をさせて。」

 

 そう言うとアルクは、ゼロに優しく微笑んだ。

 これ以上交代を勧めるのは、逆にアルクの優しさを否定することになる。ゼロは素直にアルクの提案を受け入れることにした。

 

 「じゃあ…アルクがそう言うなら、ありがたく休ませてもらうよ。すまないな。」

 「大丈夫。その代わり、しっかり休んで完全に回復するのよ。私のこと気にしすぎて全く休めないなんてこと、ないようにね。」

 「あぁ…わかった。おやすみアルク。」

 

 ゼロは再び眠りにつく。もう二度と、あのような夢を見ることの無いようにと願いながら。

 

 翌日の朝

 

 「もう少しで機械国に到着ね〜!初めて行く国だからワクワクする!」

 「ご機嫌だな…俺達の目的は七大悪だぞ。観光とかするにしても、平和を取り戻した後だ。」

 「わかってるわかってる〜!そういえばアルク、眠そうだけど大丈夫?昨日よく眠れなかった?」

 「えっ……?あぁ…少し寝つけなかっただけだから大丈夫。」

 「眠くて倒れそうだったら、私の背中で寝ていいから!」

 「ふふっ…ありがとうイゼ。」

 「……機械国に着いたら、少し何処かで休むか。」

 「…気を使わなくても大丈─」

 「俺も長く歩いて少し疲れた。イゼもそうだろ?」

 「うんうん疲れたよぉ〜!だから機械国着いたら休もう!アルク!」

 「……うん、そうだね。」

 

 俺の代わりに見張りを長く続けた事で寝不足になったんだ。休ませてやらないと申し訳ない…それに、長く歩いて少し疲れたのは本当だからな。

 

 そう思いながら、ゼロは機械国を目指すのだった。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 機械国の城壁が見えてくる。壁は全てが鉄でできており、周辺の地面も自然の大地から鉄へと変わっている。

 

 「なんだか別の世界に来たみたい…!」

 「国の外なのに地面を鉄にしてるのは何故なんだ?」

 「昔、父から聞いたことがある。人や魔物がこの鉄の地面を踏むことで、機械国の騎士や兵士が国の外から何かが近づいてきたことを直ぐ様分かるようにする為だとか。どういう原理で分かるのかは国家機密らしいけど。」

 「見張りとか置いとけばいいのに〜?」

 「少しでもこの国の更なる発展の為、騎士や兵士達にも技術発展のための研究を手伝わせてるらしいの。見張り役に使うことすら惜しむほどに。」

 

 国王としては機械国の発展が大事なのは理解できる。だが、見張りに騎士や兵士すら使うのを躊躇うのは何故だ…?機械国発展のため、そこまで完成させたいものが…?

 

 「あっ!門の前に騎士っぽい人がいるよ!」

 「私達が鉄の地面に足を踏み入れたからね。」

 

 機械国の騎士はゼロ達に機械国にどんな目的で来たのかを問う。

 

 「お前達、機械国にはどのような目的があり訪れた?」

 「俺達は観光でここに来たんです。」

 「え?七大あ─」

 「!……」

 「ムググ!?」

 

 イゼはアルクに手で口を塞がれる。子供みたいに足をバタバタさせるが、アルクは無言でイゼの口を塞ぎ続ける。

 

 「闘国の時のように、国王が七大悪だったらどうする……この騎士がグルの可能性もあるでしょ…」

 「んっんんんん〜!(なっるほどね〜!」

 

 騎士は困惑しながらも、観光に来たと信じゼロ達を通すことに。

 

 「くれぐれも、機械国では問題を起こさないようご協力を。」

 「問題なんて起こしません。お仕事頑張ってください。」

 「…」

 「んっんんん〜ん!(いってきま〜す!」

 「……変なヤツらだな。」

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 機械仕掛けの動物、機械仕掛けの建物、機械仕掛けの城…何処に視線を置いても機械しかない。この光景にゼロは目を点にさせ、イゼは純粋な瞳を輝かせていた。

 

 「本当に…別の世界にでも来たみたいだな…太陽国や闘国とは大違いだ…」

 「ねぇねぇ何あれ!全身機械のデッカい動物がいる〜!しかも背中には人が乗ってるよ!」

 「これは…?鼻が長くて耳もデカい…そして何より巨大だ…何の動物をベースに…?アルクなら何か…ってアルク?」

 

 辺りを見渡すと、武器屋らしき場所にアルクの姿を発見する。

 

 「どうだい?機械国でしか手に入らない武器、銃が種類豊富盛りだくさんにあるよ!」

 「はぅわぁ〜!観たことない形状!これは何ていう種類の銃なの!?」

 「それはStG44という自動小銃でな!軽便さや撃ちやすさを融合させた機械国の兵士も愛用するとっておきだ!」

 

 まるで国の美しいお姫様を観て目を輝かせる少女だ。あんなアルクは滅多に観れないだろう。

 

 「買いまぁす!!!これ買いまぁす!!!お値段いくらですか!?」

 「お値段は…こちらになっています!」

 「………すいません。またの機会にします。」

 

 目を輝かせた少女は、お姫様の魔法が解け老婆になる瞬間を見たかのようにしおらしい顔になっていた。

 

 「わぁ…凄い落ち込んでるね…アルクちゃん…」

 「……お金、全く足りない…」

 「とりあえず…何処かで昼食でも食べるか?」

 

 しおしおアルクちゃんは、ゆっくり頷いた。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 「こちら、当店看板メニューの機械国特製コーヒー、ランチタイム限定のサンドイッチになります。」

 「美味しそう…!このサンドイッチ?って料理初めて食べる!」

 「俺も初めて見るな…お肉や野菜をパンで挟む料理なんだな。」

 「私も父さんとかに話で聞いたぐらいだ。こうしていざ食べるのは初めてだから少しワクワクするよ。」

 「うちのは美味すぎてほっぺが落ちるぜ?」

 「本当に!?それなら早速〜!」

 「いただきま〜す!(いただきます。(いただきます…!」

 

 三人はサンドイッチを口に運び、一口食べる。そしてその味は…

 

 「おいっっっしぃぃぃ〜!」

 「うまっ…!?これは確かに店主の言う通り……」

 「あぁ…ほっぺが落ちそうだよ…!」

 「ふっ、満足してもらえたようで何よりだ!」

 

 三人はその後もランチタイムを楽しみ、充実した時間を過ごした。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 「ごちそうさまでした。美味しかったです!」

 「サンドイッチ、また食べに来ます…!」

 「店主さ〜ん!美味しいサンドイッチありがとう〜!」

 

 三人は店主に挨拶し、カフェを出る。店主はとても嬉しそうな表情で三人に挨拶する。

 

 「またのご来店、心からお待ちしています!」

 

 その様子をカフェ内で二人のゼロと同年代ぐらいの兄妹が眺めていた。妹の方は真っ黒なロングヘアーに黒に染まったドレス、そして黄色の宝石のような瞳をしていた。兄の方は真っ黒のツーブロック、そして腕と胸にのみ黒い鎧を装着しており、下の方は黒のカーゴパンツ、そして紅い右眼に黄色の左眼をしていた。

 

 「ねぇお兄ちゃん。ここのコーヒー、不味くない?」

 「………」

 「私ね、気分悪くなっちゃった。だから…ここの店主、殺したくなっちゃったの。」

 「………行くぞ。」

 「はぁい〜!」

 

 兄妹は席から立ち、兄がお金を払い、カフェを出ると同時に財布を落とす。店主は兄妹がカフェを出てすぐ落とした財布を見つけ、まだ遠くには行っていないと考えすぐにカフェを出て辺りを見渡す。すると近くの路地裏に入っていく兄妹を見つけ、カフェ店主は財布を渡すため店を少しの間店員に任せ追いかけることに。

 

 「少しの間、カフェの方お願いね。」

 「わかりました!」

 

 路地裏に向かうと、兄妹の姿はない。

 

 「おかしいな…見失ったか?仕方ない。もしかしたら取りに来るかもしれないし、うちで預かって─」

 

 次の瞬間だった。カフェ店主は鎖のようなモノで身体を突然縛り付けられ、釣り竿に掛かった魚のように天に上げられる。

 

 「ッ!?」

 

 天に上げられた先、それは高い建物の屋上。そこには先程の兄妹の姿。妹の方は腕から鎖を出しており、その鎖は自身を縛り付けている鎖と繋がっている。

 

 「ッッッ!?」

 「店主さ〜ん口モゴモゴしないで。鎖と私は一心同体なの。擽ったいのよ!」

 「妹はお前の死を望んでいる。だからここで…死んでもらう。」

 

 ファングは空中に石をおもいっきり投げる。そして、右腕を投げ飛ばされた石の方角に掲げ、視線はカフェ店主に向ける。そしてただ一言…

 

        【ワープ】

 

 「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!?」

 

 悲鳴は機械国に響く、カフェ店主は顔から鉄の地面に直撃。潰された果物のような悲惨な姿と化す。

 

 「ありがとう〜!ファングお兄ちゃん!私、嬉しい!」

 「俺は…チェーンの望むことを叶えて幸せにしてやるのが生きる意味だ。例え、罪無き命を殺すとしても、お前が望むなら実行するだけだ。それが……俺の唯一大切な家族にしてやれることだからだ。」




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