ZERO WORLD   作:kaito(カイト

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大三角の星は欠けていく

 午前0時頃 機械国の宿

 

 宿の最上階は夜空の見える屋上となっており、アルクは夜風に当たりながら夜空を眺めていた。

 

 私が唯一、何もかもを忘れ空っぽになれる時間。家族を失った絶望、家族殺した悪種族への復讐心、そして今の仲間を自分の弱さで失うかもしれない恐怖…

 

「このまま…忘れたまま死ねれば…もう押し潰されるような苦しみを…」

 

 けど、それをすれば私はゼロやイゼの共に平和を取り戻すという想いを投げ捨てることになる。それだけはダメだ。二人は私の寂しさを埋めてくれたんだ。それに、命だって救われたりもした。私はまだ二人に何も返せてない。それに、メオは私に幸せに生きてほしいと言った。このまま命を捨てて逃げるなんて二人と弟を裏切る最低の行為だ。だから私はまだ、家族と再会することなんて─

 

「許されない…」

「何が許されないの〜?」

「え…?」

 

 声がした方を振り向くと、そこには明るい笑顔で話しかけてくるイゼの姿があった。

 イゼの笑顔はアルクの中にある負の感情を打ち消してくれるかのように優しく暖かく、冷たくなった心を優しく包み込んでくれるような感覚を覚える。

 

「何でもないよ…ゼロはもう寝てるの?」

「うん!グッスリだよ〜!やっぱり、あの七大悪達と戦った時の疲れがまだ残ってたのかな〜?」

「イゼとデートしたのが嬉しくて、良い意味で疲れちゃったんじゃないかしら?」

「で、デート…///って、私のせいで余計疲れさせちゃった!?」

「ふふっ、普段の疲れ方よりは良いと思うわよ。」

「そ、そっか…///」

 

 頬を赤らめながら夜空を眺めるイゼと安心したような表情で夜空を眺めるアルク。

 

 ふと、過去に弟と夜空を観た時を思い出した。私は何か嫌なことや苦しいと感じる出来事があると、いつも家の屋根で一人で夜空を眺めていた。そしてそういう日は大抵、弟も一緒に夜空を眺めていた。弟は私の心情を察してか、いつも夜空にある星座を教えたりして、私が少しでも辛いことを忘れられるようにしてくれていて…

 

「イゼ…あそこにある星、星座って言うんだけどね。知ってた?」

「星座?何それ何それ!教えてほしい!」

 

 アルクは人差し指を夜空に向け、星と星を線で繋ぐようになぞりながらイゼに教え始める。

 

「例えば、星と星にこうやって線を繋げていくと…ほら、今繋いだこの星達がまるではくちょうに見えない?」

「うーん…?見えない…かも?」

「あ、あはは…そっか。まぁ、そう見えなくても仕方ないよね。」

「ごめんね…!あと、あそこに他の星よりも大きい星が三つもあるけど、アルクは何か知らない?」

「あれは、この時期でしか見れない星達。確か…デネブ、アルタイル、ベガ…だったかな?私も弟に教えて貰ったぐらいで、そこまで詳しくないの…」

「デネブ、アルタイル、ベガ…あの星達、同じ時期に一緒に出てくるなんて、きっと物凄く仲良しなのね!」

 

 イゼは瞳に三つの大きく輝く星を映しながら、『この星達も私達のように仲間なのね!』と考えていた。

 

「っ…あはははっ…!」

「な、何か私おかしいこと言った!?」

「ううん違うの…イゼ、面白い考えしてるなぁって♪」

「そ、そう〜?けどけど!あの星達仲良しそうに見えない!?」

「そうだね…イゼにそう言われてみると、あの星達は仲良しなんだろうなって思えてきたわ。」

「でしょでしょ〜!」

 

 私達もあの星のように、誰ひとり欠けることなく…共に平和を取り戻してみせる。

 アルクは三つの星を眺めながら、そう思うのだった。

 

 

 

「じゃあ…そんな仲良しなお星様達が欠けたら、どうなるのかしらね?」

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 機械国の建物の上を飛び回り、夜空に黒く染まった鎖を靡かせる。

 愛する兄に恥をかかせないために、愛する兄に認めてもらうために、愛する兄に愛してもらうために…

 

「いた…」

 

 ゼロと一緒にいた女が二人、建物の上で談笑している。とっても気が抜けたマヌケな二人、私が今から長く苦しめて殺す二人、ゼロが絶望するために死んでもらう二人。

 最後に楽しく星の話をしている。とっても憎い。なんでアナタ達はそんな楽しそうに会話してるの?私はお兄ちゃんと楽しく会話するどころか、怒られて失望されたかもしれないのに!アナタ達の仲間、ゼロが素直に死んでくれないからこうなった。だからアナタ達も同罪だ!連帯責任だ!私をこんな苦しめてるのはアナタ達三人なんだッ"!

 

 イゼとアルクの幸せそうな声が聴こえてくる。

 

 黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!私に聴かせていいのは苦しみ絶望する声だけだ!

 

「そうだね…イゼにそう言われてみると、あの星達は仲良しなんだろうなって思えてきたよ。」

「でしょでしょ〜!」

 

 だから私が…苦しみ絶望する声を出させてあげるわ…!

 

「じゃあ…そんな仲良しなお星様達が欠けたら、どうなるのかしらね?」

「っ…!?」

「その声…きゃっ!?」

 

 少女はイゼとアルクのいる建物の上に飛び、二人の背後から鎖を放つ。

 鎖は獲物を捕らえる蛇の如く、イゼとアルクを締めつける。

 

「アハハハハハハハッ!最高に可愛くてェ!最高に強くてェ!最高に悪に満ちたァ!七大悪二位鎖悪チェーンちゃんだよぉ!!!」

 

 ここだとゼロが起きちゃうわね…だったら!あのボロッボロ無人街までぶっ飛ばしちゃおう!

 

「こっからあそこまで飛ばされたらどうなるのかしらねぇ!」

 

 大砲を放つかのように、鎖に巻かれたイゼとアルクを機械国の東側にある無人街まで投げ飛ばす。二人は夜空の流星のような速さで飛ばされており、数十秒後には無人街に隕石の如く落ちていくだろう。

 

「うえぇぇぇっ!?何処まで飛ばされるのぉ〜!」

「完全に油断した…!まさか一人で攻め込んでくるなんて…!」

 

 今持ち合わせてるのはナイフと小型拳銃だけ…無事に着地できたとしても、あの悪種族に対抗するのはほぼ不可能に近い…!

 

 無人街が見えてくる。鎖に締めつけられていては、身動きが取れず着地に失敗する可能性が高い。なら、どうやって?この鎖をどう解く?その答えは既にイゼが導き出していた。

 

「このままでは着地に…!」

「焼ーきー溶ーかーせぇぇぇー!」

 

 自身の炎で己を包み込み、鎖を焼き溶かすと、空中で体勢を整える。そして、鎖で締めつけられたアルクを火の縄で引き寄せ抱き抱える。

 

「うわぁ!?」

「ちょっとだけお姫様抱っこしちゃうよ〜!」

 

 お姫様抱っこの状態で、イゼは王子様のような華麗な着地をしてみせた。着地の際、勢いのあまり地面が割れてしまったが愛嬌みたいなものだ。ついでに、アルクを締めつけていた鎖を焼き溶かしていた。

 

「ありがとう…イゼ」

「私、カッコよかったでしょ〜!」

「私は少し恥ずかしかった…ってそうじゃない!鎖悪は!?」

「そうだった!私達、あの子に投げ飛ばされて…!」

「はぁい〜!呼んだ?チェーンちゃんのこと。」

 

 あの宿からこの無人街まではかなりの距離があるのに、チェーンは流星の如く飛んでいった二人に追いついていた。

 

「っ…状況整理する時間すら与えないのね。」

「私とアルク、かなり速く吹っ飛ばされたのに追いつくの早すぎでしょ!?」

「吹っ飛ばされるアナタ達を締めつけていた鎖、実は私と繋がっていたのよ。だから吹っ飛ばされるアナタ達に引っ張ってもらったわ。途中で焼き溶かすんじゃねぇよボケ女!」

「ごめんアルク!私がもっと速く焼き溶かしていれば…!」

「そ、そんなこと謝らなくていいわ。」

 

 コイツら…私という七大悪の前でコントでもしているの!?特にあの赤髪アホボケ女!どう考えても私を舐めている!どれだけ私をお兄ちゃんに相応しくないほど辱めれば…!

 

「アナタ達さぁ…私のこと、舐めてる?」

 

 アルクはナイフを取り出し警戒する。イゼは紅い炎を放つ構えをしながらチェーンに答える。

 

「私の炎怖がってたビビリちゃんなのに、意地って恥ずかしくないのかしら。逃げなくていいの?」

 

 は?何それ…私が?意地張って?負け試合しに来たとでも言いたいの!?違う違う違う違う違う違う違う!私はそんな雑魚じゃない!弱虫じゃない!死に急ぎじゃない!

 

「私は…お兄ちゃんに相応しい妹…七大悪として相応しい絶対的強者だぁっ!」

 

 イゼはチェーンに向かって全力の紅い炎球を放ち、チェーンに直撃すると同時に爆破する。黒い煙が視界を遮り、チェーンの様子が確認できない。ただ、大量の鎖が這いずるような音だけが聴こえてくる。

 黒い煙が晴れ、イゼとアルクの前には…

 

「誰が、炎に怖がっていたですって?」

 

 大量の鎖が集合し、体長17mはある大蛇が二人の前にいた。集合している鎖はまるで一つの生物になったかのように動き回り、生きる大蛇そのものだった。

 

「この大きさ…!?」

「嘘でしょ嘘でしょ嘘でしょ…!?」

 

 黒鎖の大蛇と成ったチェーンは、二人にこれから起きることを告げ始める。

 

「今からグッチャグッチャに噛み殺して、ゼロの前で吐き出してあげる。喜びなさい?七大二位鎖悪であるこの私がテメェ達を醜い死体に変えて!絶望するような最悪の結末にしてあげるんだから!アッハハハハハハハハハハァ!」




ゼロワル豆知識

零世界とこちらの世界の宇宙は全く同一ではなく、似て非なるものである。
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