Re ゼロ最終章 最終局面とその始まり   作:蒼野幽太

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運命の逆転戦略

 ルグニカ王国の王都は、人々の期待と不安が入り混じる独特な雰囲気に包まれていた。王選の最終局面がいよいよ迫り、国中の視線が次の王を決める戦いに注がれている。王候補たちが次々と王都に集まり、最終決戦に向けた準備が進む中、ナツキ・スバルもまたエミリアを支えるべく、玉座を目指す戦いに身を投じていた。

 

 

 

 スバルが歩いているのは、王城へと続く大通りだった。両脇に並ぶ屋敷や商店の窓には、国の未来を決めるこの一戦に期待を寄せる人々が顔を覗かせていた。彼らの視線は、スバルの隣を歩くエミリアに向けられている。彼女は銀髪をなびかせ、いつも通りの優雅な姿で歩を進めていたが、その表情には深い考えが宿っていた。

 

 

 

「大丈夫だよ、エミリアたん。俺たち、ここまでいろんなことを乗り越えてきたんだから」

 

 

 

 スバルが軽く微笑みながら声をかけると、エミリアは少しだけ笑顔を返した。しかし、その瞳には緊張と不安が隠せない。

 

 

 

「ありがとう、スバル。でも、私……自信がないの。みんなの期待に応えられるかどうか……」

 

 

 

 エミリアの言葉に、スバルは胸が痛んだ。彼女はこれまで多くの試練を乗り越えてきたが、目の前に立ちはだかる王選という巨大な壁は、これまでの戦いとはまるで違う。エミリア自身の資質や能力が試されるだけでなく、彼女を取り巻く人々の信頼と忠誠も揺るがされる可能性がある。スバルはそんな彼女を支えたいと思いながらも、自分自身の限界を感じずにはいられなかった。

 

 

 

「エミリアたん、心配するなって。俺たちは最善を尽くしてるんだ。誰が何を言おうと、俺が最後まで君の味方でいる。だから、自分の力を信じてくれ」

 

 

 

 スバルの言葉に、エミリアは小さく頷いた。だが、その不安は完全に消え去ったわけではなかった。というのも、彼女が直面している最大の問題は、プリシラ・バーリエルという存在だった。

 

 

 

 プリシラ・バーリエル——彼女は王選候補の中でも最も異彩を放つ人物だった。彼女は常に「この世はすべて私のためにある」という絶対的な信念を持ち、まるで運命が彼女に味方しているかのような強運に恵まれていた。実際、これまでの戦いにおいても、彼女の周囲では奇跡的な出来事が次々と起こり、彼女を勝利へと導いてきた。

 

 

 

 プリシラは高貴な装いで現れ、そのカリスマ性で周囲を圧倒していた。彼女の存在感は、王選の他の候補者たちをも圧倒するほどであり、彼女に従う民衆や支持者は熱狂的なまでの忠誠を誓っていた。スバルも何度かプリシラの策に巻き込まれ、エミリア陣営はそのたびに苦しい戦いを強いられてきた。

 

 

 

「スバル、プリシラは……本当に強い。彼女の周りでは、まるで運命そのものが彼女のために動いているみたい。どうやって彼女に勝てばいいのか、わからない」

 

 

 

 エミリアがポツリと漏らしたその言葉は、スバルの胸に重くのしかかった。スバル自身も感じていたことだった。プリシラの「強運」はただの偶然ではなく、まるで彼女が世界の中心に立ち、すべてを操っているかのような力を持っているように思えた。

 

 

 

 これまでの「死に戻り」の経験を通じて、スバルは何度も未来をやり直してきたが、どのルートを選んでもプリシラの前ではすべてが覆されてしまう。まるで、彼女の運命があらかじめ定められているかのように、彼女は常に有利な立場に立ち続けていた。

 

 

 

「……だが、それでも俺たちにだって手はある」

 

 

 

 スバルはそう言って、決意を込めた目でエミリアを見つめた。

 

 

 

「プリシラの強さは確かだ。彼女は自分の運命がすべて自分に味方すると信じてる。でも、それは彼女の強運に依存しているからだ。もし、その運命を覆すことができれば、プリシラはただの人間に過ぎない」

 

 

 

「でも、どうやって……?」

 

 

 

 エミリアが問いかけると、スバルは少しだけ微笑んだ。

 

 

 

「そのために、俺には死に戻りの力がある。何度でもやり直して、最適なルートを見つけ出す。どんなに強大な運命であっても、きっとその裏にはほころびがあるはずだ」

 

 

 

 スバルの言葉に、エミリアは少しだけ表情を和らげた。彼の決意に、彼女もまた勇気をもらったのだろう。

 

 

 

 だが、スバル自身も内心では焦っていた。プリシラとの戦いは、これまでの敵とはまるで違う。単なる戦術や戦略では太刀打ちできない、運命そのものとの戦いだ。そして、スバル自身も「死に戻り」の限界を感じていた。何度も繰り返す死と再生の中で、彼の精神は徐々に蝕まれている。

 

 

 

「それに……俺にはまだアルというカードが残ってる」

 

 

 

 スバルは心の中でそう呟いた。プリシラの側近として彼女に忠誠を誓っているアル——彼もまた、プリシラの「運命」に疑念を抱いている人物だ。スバルはアルが鍵を握っていると考え、彼との接触を図ろうとしていた。

 

 

 

 プリシラに最も近い存在であるアルを味方につけることができれば、プリシラの絶対的な支配力に揺さぶりをかけることができるかもしれない。だが、アルがプリシラに対してどれほどの忠誠心を持っているのかは不透明だ。彼を説得するには、スバルの持つ「死に戻り」の秘密さえも話さなければならないかもしれない。

 

 

 

「アルを引き込めれば、プリシラの強運にもほころびが生じる。その瞬間が俺たちの勝機だ……」

 

 

 

 スバルはそう心に決め、エミリアと共に王城へと続く道を進み始めた。彼らの前に待ち受けるのは、プリシラとの最後の戦い。運命に抗うスバルとエミリアの物語は、ここから新たな局面を迎えようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルグニカ王国の街に、夕闇が迫り始めていた。王選の候補者たちが次々と王都に集まる中、エミリア陣営は今後の戦略を練るために、王宮から少し離れた広場に集まっていた。

 

 

 

 スバル、エミリア、ベアトリス、そしてガーフィールが小声で作戦について話していると、突如として、広場の反対側から騒がしい声が聞こえてきた。顔を上げたスバルが見たのは、豪華な装いをしたプリシラ・バーリエルと、その取り巻きの戦士たちだった。

 

 

 

「おいおい、何だよあれは……まさか、こんな場所でプリシラが現れるなんてな」

 

 

 

 スバルは眉をひそめた。プリシラが現れるたび、厄介な事態が起きる。彼女の強運に守られているような、予測不能な出来事がスバルの頭を過ぎる。

 

 

 

「……嫌な予感がするかしら、スバル」

 

 

 

 ベアトリスが、いつもとは違う緊張した声で言った。彼女の目はプリシラを鋭く見据えている。エミリアもその視線に気づき、少しだけ顔を曇らせた。

 

 

 

「スバル、どうする? 今は争いを避けた方が……」

 

 

 

 エミリアが戸惑いながら提案するが、プリシラの側近たちがすでにこちらに気づいている。広場を挟んで、二つの陣営が対峙する形になってしまった。

 

 

 

「おいおい、向こうも気づいたみたいだな……ここで引いたら、かえって舐められるぞ」

 

 

 

 スバルが唇を噛み締めながら状況を見極めていると、プリシラが目を細め、まるで退屈そうに彼らを見下すようにして話しかけた。

 

 

 

「エミリア、そしてその取り巻きたち。あなたたちもこの場にいるとは……」

 

 

 

 プリシラの声は高慢で、まるで彼女がすべてを支配しているかのような響きを持っていた。彼女の戦士たちも、いつでも攻撃を開始できる構えを見せている。

 

 

 

 スバルは即座にエミリアたちに目配せをし、準備を整えた。

 

 

 

「……お前たち、ここで手を引け。今は争いたくない」

 

 

 

 ガーフィールが前に出て、挑発的な態度でプリシラたちを見据える。しかし、プリシラはあくまで余裕の態度を崩さない。

 

 

 

「ふふ……いいえ、私の強運が導くままに。何が起こるか楽しみにしているわ」

 

 

 

 そう言うと、彼女は軽く手を振った。瞬間、彼女の戦士たちが一斉に動き出した。

 

 

 

「くそ、来るぞ!」

 

 

 ガーフィールが鋭く叫び、突進してくるプリシラの戦士たちを迎え撃つ。彼の拳が地面に叩きつけられると、土煙が舞い上がり、その衝撃波が周囲を襲った。しかし、プリシラの側近たちはそれを巧みに避け、素早くスバルたちに迫ってくる。

 

 

 

「ベティー、援護!」

 

 

 

 スバルの叫びに応じて、ベアトリスが魔法を放つ。彼女の手から光の刃が飛び出し、敵の戦士たちを一気に押し戻した。

 

 

 

「これでも喰らうかしら!」

 

 

 

 ベアトリスの魔法が次々と敵を打ち倒すかに見えたが、その中の一人が、彼女の光の刃を紙一重で避けて突撃してきた。

 

 

 

「な……!」

 

 

 

 スバルが驚きの声を上げると同時に、その戦士が彼に向かって剣を振り下ろす。

 

 

 

「危ないっ!」

 

 

 

 エミリアが素早く氷の魔法を唱え、瞬く間にスバルの周りに氷の壁を作り出した。その壁が剣を弾き返し、戦士は少し後退する。しかし、プリシラの強運が働いているのか、相手の動きはまるで神がかっていた。

 

 

 

「……このままじゃキリがない。何か、プリシラを直接止めないと!」

 

 

 

 スバルはそう考え、エミリアに目をやった。

 

 

 

「エミリアたん、俺たちでプリシラに一撃加えるぞ。あいつが指示を出している限り、こっちが不利だ」

 

 

 

 エミリアは一瞬ためらったが、すぐに頷いた。

 

 

 

「わかった、スバル。私が援護する!」

 

 

 

 二人は連携を取ってプリシラに向かって突撃しようとした。だが、プリシラはその動きを読んでいたかのように、微笑んだ。

 

 

 

「そんなもの、通じると思っているのかしら?」

 

 

 

 プリシラが軽く手を振ると、突如として強風が巻き起こり、スバルとエミリアを押し戻した。強運だけでなく、何か魔法的な力も働いているかのようだ。

 

 

 

「くそっ……さすが、強運を持つだけあるな」

 

 

 

 スバルは舌打ちしながらも、再びプリシラに向かって進もうとする。だが、その瞬間、ガーフィールが吼えながら前に出て、プリシラの戦士たちを蹴散らしていた。

 

 

 

「俺がやる! スバル、エミリア様、早くあいつを倒せ!」

 

 

 

 ガーフィールが敵の攻撃を一身に受け止める間に、スバルとエミリアは再びプリシラへと向かっていった。しかし、プリシラの微笑は消えず、その強運は依然としてスバルたちを翻弄し続けていた。

 

 

 

 最終的に、スバルたちはプリシラに一撃を加えることができず、戦士たちの数の前に撤退を余儀なくされた。プリシラの強運は、まるで「勝利が約束されているかのよう」に彼女を守っていた。

 

 

 

「エミリアたん、ダメだ……! あいつの強運、尋常じゃない」

 

 

 

 撤退しながらスバルが悔しそうに呟くと、エミリアも深く息をつき、頷いた。

 

 

 

「そうね、スバル。今は無理だけど、いつか……私たちが勝つ方法を見つけるわ」

 

 

 

 スバルたちは一旦撤退し、再び作戦を練るために集まった。そして、その後のアルとの接触へと物語が進んでいく。

 

 

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