その夜、城内の一室で行われた緊急作戦会議には、緊張感が漂っていた。スバル、エミリア、ラム、ベアトリス、そしてガーフィールが集まり、プリシラとの最終決戦に向けた準備が進められていた。アルがスバルに協力することになったという情報は、エミリアたちの士気を上げていたが、スバルは焦らなかった。
「アルが協力してくれるなんて……ほんとにありがたいわ」
とエミリアが言う。
「ふん、スバルにしては上出来なのよ」
とベアトリス。
「やっぱうちの大将のやることは違うな! 度胸があるぜ」
と盛り上がるガーフィ―ル。
「みなさん、落ち着いてくださいよ」
と岡目八目で冷静なのはやはりオットーだ。
「まず、アルの協力で時間を稼げる。でも、それだけじゃ勝てない。プリシラの強運はまだ健在だ。何かもっと、決定的な一手が必要だ」
スバルは考え込んだ表情で言うと、ベアトリスがその手に小さな光を灯しながら答えた。
「……ベティーが思うに、強運がどうこうじゃなくて、プリシラの運命そのものをねじ曲げるような何かが必要なのかしら、って感じかしらね」
「具体的にどうするか……そこが問題だな」
ラムが腕を組み、冷静に状況を分析する。ガーフィールはやや落ち着きがない様子で床を踏み鳴らしているが、彼もまた作戦の進展を待っていた。
「……そうだ、スバル。決定的な一手って言うけど、私が何をすればいいのか教えて」
エミリアが静かに、しかし真剣な眼差しでスバルに問いかけた。彼女は自分がリーダーとしての役割を果たさなければならないことを理解していたが、どうすれば良いのかはまだ明確に掴めていなかった。
「エミリアたん……君は、君のままでいいんだよ」
スバルは優しい声で答えたが、エミリアはその言葉に少し戸惑った様子を見せた。
「私のままで……?」
「そうだ。プリシラの強運に対抗できる唯一のものは、君の『共感』と『思いやり』だと思うんだ」
スバルは言葉を選びながら説明した。
「プリシラは、自分の運命を信じて疑わない。彼女は、すべてが自分のために存在すると信じている。でも、エミリアたんは違う。君は、みんなのために戦ってる。誰かを支えるために戦ってる。それこそが、プリシラとは違う君の強さなんだ」
エミリアはしばらくスバルの言葉を聞きながら考え込んだ。彼女の中で、これまでの戦いと自分の在り方が交錯する。しかし、スバルの言葉が少しずつ彼女の心に響いていく。
「……でも、私の優しさが戦いに役立つの?」
「もちろんだよ」
スバルは強く頷いた。
「優しさとか、共感とか、そういう感情は弱さじゃない。それがあるからこそ、君はここまでみんなと一緒に来られたんだ。プリシラが持ってないものはそれだ。彼女は自分の運命を信じて、他人を切り捨てる。でも、エミリアたんは誰かを守ろうとする。それが、君の最大の武器になる」
スバルの言葉に、エミリアははっと息を飲んだ。そして、彼の真剣な眼差しを見つめ返し、少しだけ微笑んだ。
「……ありがとう、スバル。私、頑張るわ。みんなのために、そして、私を信じてくれるあなたのために」
スバルも微笑み返し、彼女の肩にそっと手を置いた。
「そうだ、エミリアたん。俺たちは絶対に負けない。君が王になって、この世界を変えるんだ」
ラムがため息をつきながらも小さく微笑んだ。ガーフィールも、スバルとエミリアのやり取りに力強く頷いた。
「よっしゃあ! 今度こそ、あの強運ババアをぶっ倒してやるぜ!」
ガーフィールが叫ぶと、会議室の空気は少し軽くなった。ベアトリスも相変わらず冷静な表情をしているが、その目には決意が宿っていた。
「じゃあ、プリシラとの決戦に向けて、みんなで準備を進めるわよ」
ラムが皆をまとめ、会議は終わりに向かった。エミリアたちはそれぞれ、自分の役割を果たすために立ち上がった。