全知VS全恥 作:釘パンチ
「Oh~良い子は~ねんねしなあ~Ah」
「何やってんの? 子守唄のダサアレンジ大会?」
エイミが特異現象捜査部の部室に忘れ物を取りに来ると、バカな同僚が全知とかいう頭の悪そうなアイマスクを装着して眠っている部長の隣で本当の意味で頭が悪い先輩が子守唄を熱唱していた。
「ヒマリが寝ちゃってるから、よく眠れるように子守唄歌ってた」
制服だけはきっちり着こなしてエアマイクとエアギターを持っている男子の名は宵々々山カズマ。
ミレニアムでは『全知』を一番近くで見ているのに知性を微塵も感じさせない男として通っている。
「寝てるのに子守唄は意味ないんじゃない?」
「……確かに」
それに気づいていない辺りはやはりバカだった。
何故こんな男が特異現象捜査部に配属されたのかはミレニアム七不思議の一つにカウントしても良さそうだとエイミは考えている。
「じゃ、宵々々山先輩も適当なとこで切り上げて帰りなよ」
「おう、また明日な」
忘れ物を回収したエイミを見送って、残されたカズマは残されたヒマリがどうすればより良い睡眠を取れるか無い頭を捻る。
「うーん。毛布は掛けてあげてるから風邪は大丈夫だろ? エアコンも調節したし、目元はアイマスク着けてるだろ? あとは……」
身体暖かくして寝る以上のことは思い付かなかったカズマはスマホで『良い睡眠をとるには』という雑な検索ワードを叩いて調べものを始めた。
アロマが良いとか寝る前の習慣だとかが出てきてしまい、どれも今すぐできることはない。
それでもそういうことを調べていると何となく頭良くなった感に騙されて色々調べている内に小一時間経過していた。
「おはようございます。わざわざ待っていたんですね」
「あ、おはよう。わりぃけど、もうちょい寝ててくれない?」
「はい?」
伸びをしながら起きたヒマリは寝起きでもう一度寝ろと言われて流石に理解が追い付かなかった。
しかし、そこはミレニアムの最高位の『全知』である彼女は瞬時にカズマの思考を予測して答えを導き出す。
「カズマ。私に良いお昼寝をさせてくれようとするのは良いですが、私は程よく眠れたので起きているのです。だから、お気持ちだけで大丈夫ですよ」
「ぐっすりだったならいいか。じゃあこの人肌くらいに温めておいたココアとかもいらないか?」
「それは貰っておきます」
二つマグカップを手に持ったカズマから片方だけ受け取る。二人で飲みながらゆっくりするのかと思いきやカズマはそのままゴクゴクとすぐに飲み干してしまった。
「因みに、寝ている間は何をしてたのですか?」
「子守唄歌ってたらエイミに意味ないって言われた」
「そうでしょうね。せめて眠る前に歌ってほしいものです」
そもそも、子守唄の曲調ではないアレンジを加えていたため、実際に聞かれていたらうるさいと言われるのが関の山である。
「あ、そうだ。この前めっちゃ綺麗な場所あったからめっちゃ綺麗だったから行かない? いつもこの時期になると葉が落ちそうな木を見て、あの葉っぱが落ちたら私も……いえ、私はあの葉っぱよりもか細くとも確かにそこにある一輪の花……て言ってるし」
まだヒマリが行くと返事をしていないのに車椅子を押すカズマの姿から行き先を決める側と委ねる側の二人の関係を示していた。
「貴方がそういうなら綺麗なのでしょうね。その景色すら私を彩る材料にしかなりませんが……」
「ヒマリは元から美人さんだろ」
「ごほっ……!」
不意打ちでストレートな褒め言葉をぶつけられたヒマリは思わず咳き込んでしまう。
「うお、大丈夫かー?」
「そういうこと、あまり他の子にしたら怒りますからね?」
ヒマリの背中を擦りながら彼女の顔を見ようとするが、逸らされてしまった。
「なんで?」
勝敗
-
ヒマリの勝ち
-
カズマの勝ち