全知VS全恥 作:釘パンチ
一応宣言しておくともう一方の作品とちゃんと同一作者です。
「時にカズマ。雪がなぜ白いのか知っていますか?」
部室の隅でカズマ用のスペースとなっている畳の上で彼が『週刊・チュパカブラ』という雑誌を熱心に読んでいると、他の部活から依頼されていた作業を終えて暇になったヒマリが唐突に哲学を語りだした。
「え、知らない」
「特異現象捜査部としては嘘でも知ってる振りをしていてほしいですね」
科学的に解明しがたい現象の解明及び研究をする組織の一員としては、一般よりの科学知識があれば知っている筈の事柄に対して知らないと即答するのは部長としては残念でならない。
「こほん。自分の色を忘れてしまったから……という説がまことしやかに囁かれていますが。
万年雪の結晶と呼ばれている私のイメージカラーは白。つまるところ、私の美しさと雪の白さはイコールです」
「マジかよ」
驚愕のあまりパラリとちゃぶ台の上に雑誌を落とす。
前提として、自他共に認める頭の悪さから『全知』であるヒマリの言うことは基本的に信じることにしているカズマからすれば自然界に及ぼす美貌というのは、彼の脳内に漠然とあるイメージの全員フレームの細い眼鏡を掛けた学者が属している学会に衝撃が走る。
「部長がまた純粋な男を騙す遊びをしてる……」
「エイミ。人聞きの悪い言い方を意図的にするのはお止めなさい」
いつものことであるが、ヒマリが変な知識を刷り込んだ後、その知識を修正するのはエイミなため、仕事を増やされているようなものである。
「で、雪の色がなんなんだ?」
「いえ、それだけですが」
「結局知ってる話だったな」
意味のない会話だとわかるとカズマは普段から持ち歩いているバナナホルダーからバナナを取り出して皮をむいて食べようとする。
「宵々々山先輩、ちょっとこっち」
「え、バナナ皮剥いちゃったんだけど」
「食べながらで良いから……」
エイミがヒマリのホラ話を訂正するために、カズマを呼んでホワイトボードの前で講義が始まる。
(くっ……! これでもですか! というかなんですか! 知ってる話って! どういう意味ですか!)
それをよそに、何事もなく別の作業に戻ったヒマリは内心で地団駄を踏んでいた。
二人はかれこれ何年かの付き合いにはなるが、ヒマリの自画自賛にツッコミを入れることもなければカウンターパンチのような言葉を漏らす。
ヒマリを美少女と認めておきながらそういうアクションすら起こさず、誰に対してもフラットな対応をするカズマに対して謎の敗北感を味わっていた。