全知VS全恥   作:釘パンチ

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二回戦

「ここでお昼にしましょうか」

「女子高生のわりにえらく渋いとこ選ぶな……ヒマリがいいならいいけど」

 

 午前中、シャーレに用があったカズマとヒマリは帰り際に見つけた蕎麦屋で昼食を取ることに決め入店する。

 ヒマリの車椅子を見た店員がカウンター席の椅子を一つ退かしてそこに二人は案内された。

 

「蕎麦も良いですが……カツ丼やカレーうどんも乙なものですね」

「蕎麦屋の蕎麦以外ってなんか美味いけどさぁ。蕎麦食いたくて選んだんじゃないのかよ」

 

 お品書きを広げるヒマリは最初こそ天ぷら蕎麦を食べる気でいたが、ふと思うことがあった。

 

「普段からミレニアムに咲く一輪の純白の花と言われている私がカレーうどんを涼しい顔で服も汚さず食べれることを証明して見せましょう」

「思ったよりくだらねぇ理由だった」

 

 ヒマリがいつもの調子なので、一言だけコメントして自分の注文を考える。

 蕎麦屋に来たのだから蕎麦は食べたい。

 どちらかと言えば冷たい蕎麦派のカズマは盛り蕎麦を頼むことは確定しているが、それだけでは足りない。

 セットとして無難なところで天丼か。タレのかかった白米はそれはそれは食が進むことだろう。

 

 だが、そうではない。

 あくまでもメインは蕎麦であってほしい。だからと言ってカレーという選択肢ではパンチが不足している。

 捻る。

 頭を捻る。

 ミレニアムの中でも無い方と言われている頭を捻って出した答えは──

 

「じゃあ、蕎麦とカツ丼で。すんませーん!」

 

 結局、最初の話題でカツ丼の名が挙がっていたせいで、カツ丼に魂の重力を引かれて、それを選び店員を呼びつけて注文をする。

 

「あ、そうだ。紙エプロンもお願いしまーす!」

「私がカレーうどんを服に跳ねさせるとでも?」

 

 注文を終えた後にどうせヒマリが跳ねさせることを予想して店員に紙エプロンを持ってきてもらうように頼んでおくとヒマリが不機嫌そうに言う。

 

「いや、どうせ跳ねさせるじゃん。跳ねなきゃそれはそれで良いんだし」

「私は天才病弱美少女ハッカーですよ?」

「答えになってねぇ……」

 

 ハッキングスキルはカレーうどんスキルには一切関係の無いスキルツリーなのだが、ヒマリの謎の自信によって活かされるらしい。

 呆れていると注文が届いて二人揃っていただきますをして食べ始める。

 

「うめ、うめ……」

 

 つゆに溶かしたわさびが程よくピリリとした辛味を舌に与えてくる。

 蕎麦で冷えてきた身体に、すかさずカツ丼を口の中に放り込むと甘いタレとカツについた衣がカズマの中の男の子を満足させる。

 

「……ずずずっ」

 

 隣でうどんを啜るヒマリをちらと見ると何滴か彼女の着けた紙エプロンに飛び散ったカレーが被弾していた。

 

「結局ついてるじゃん」

「ままならないものですね」

 

 さっきまでアレだけ息巻いていたのに、いざやったら澄ました顔で食べているヒマリに呆れる。

 

「ちょっとうっかりさんな方が俺は可愛いと思うけどな……」

「か、かわっ……!」

 

 急に顔を赤くしたヒマリが食事の手を止めたので、そういえばコイツ猫舌だったなと思い出したカズマは備え付けのコップにセルフサービスの水を二人分持ってくる。

 

「猫舌なのに無理するから……ほれ、水」

「何でもありません。それよりあっち向いて食べててください」

 

 その後、食べ終わる頃には紙エプロンはカレーまみれになっていた。 

勝敗

  • ヒマリの勝ち
  • カズマの勝ち
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