全知VS全恥 作:釘パンチ
カズマは週一度の楽しみとしてゲームセンターによく通う。
プレイするゲームのジャンルは問わず、気の向くままその日の予算の内の金額を遊ぶ。
ゲームセンター内の奥に進むと、メダル交換所の機械から吐き出されるのをぼーっとしながら見つめる友人を見掛けて声を掛ける。
「よっ、久しぶり」
「ん? あー、久しぶり」
いつも彼は私服を着ていて、どこの学校の生徒なのか初対面から聞きそびれているせいで、未だに彼のことはよく知らない。
ゲームセンターに行くとたまに会える気が合う友人くらいの認識をお互いにしていた。
「ところで……そのクーラーボックス何?」
「ああ、これ? 冷凍エビ」
「……何で?」
友人の足元に置かれたクーラーボックスが気になり、カズマが指摘してみると、眉ひとつ動かすこともなくクーラーボックスを少しだけ開けて冷凍エビを見せてくる。
「昨日まで、ちょっと色々あってね。冷凍エビを八千尾貰ったんだ。皆で手分けして消化してるんだけど、居る?」
「その色々を聞いてんだよ! あと、生臭いから今ここで渡すな!」
公共の場で一瞬開けただけでも海鮮物特有の臭いがして、周囲から視線を集めてしまったので、たまたま持ち歩いていた消臭スプレーを吹いて臭いを誤魔化す。
「まっさんはここ最近何かしてた?」
彼は知り合いの名前をほぼ渾名で呼ぶ癖があり、カズマは一文字だけとってそう呼ばれていた。
カズマ本人的には文句はないのだが、命名規則がバラバラ過ぎて聞く程ではないが気になっていた。
「俺? 俺は自分のとこがやること無さすぎて後輩の居る部活を手伝ってた。あと、一緒にメダルゲーやっていい?」
「バンクにまだ余裕あるしいいよ」
メダル交換所で立ち往生も良くないため、友人の持つメダルケースを持って二人でプレイできるメダルゲームの筐体前に座り、チマチマと二人でメダルタワーを崩し始める。
「なんだっけ……この前のミレニアムの何でもあり大会みたいなやつで特別に頑張ったで賞みたいなの受賞した子達のとこなんだが……」
「ミレニアムプライスの特別賞でしょ。何で現役ミレニアム生徒のまっさんがちゃんと覚えてないのさ」
「お前はお前でよく知ってるな」
彼は普段のほほんとした雰囲気であるものの、彼自身の話より、彼に関係なさそうな話ほど情報を鮮明に覚えていることが多々ある。
メダルゲームのイベントが外れてむしゃくしゃしたのか、雑にメダルを五枚連続で入れて一部のメダルはメダルの上に重なって焼け石に水だった。
「ちゃんとニュースとかSNSはちゃんと朝と夕方はチェックしてるからね」
「そこら辺はしっかりしてるよなぁ。俺はそういうの人に頼ってるし」
カズマのニュースに対する興味は基本的に朝起きて、登校の支度を済ませながら、よく分からない分野の専門家が言っていることを聞き流して、天気と血液型占いになったらちゃんと聞く程度の物で、社会情勢やらの難しいことは自分より頭の良いヒマリに丸投げしていた。
「何でまっさんが僕と友達をしているのか何となくわかった気がする」
「あ、お前、今バカだと思っただろ」
ほんの少し嬉しそうながらも複雑そうな表情をした友人に、遠回しにバカにされたような気がしたカズマは彼のメダルの軌道に被るようにメダルを投入する。
「まっさんは自分で自分をバカだと思ってできないことは人を頼ることのできるタイプのバカなんだし、間違ってないでしょ」
「俺は俺のできることしかできないから、そら誰だってできないことは人に頼るしかないだろ」
「できることの中に人に頼るができない人も居るのが人なんだよ」
それができていれば、キヴォトスで起きた大事件の何件かは比較的スムーズに終わっているのだが、そうはなっていないのが現実である。
その現実を知っているからこそ、彼はカズマのそういう潔さを好ましいと思っている。
「って、ゆきこから呼び出し……ごめん、急用ができたから、先に抜ける。この分のメダルは使って良いのと、あとエビもクーラーボックスごと持って行って」
「約束してた訳じゃないし貰ってるのは俺なんだから謝らなくて良い。こっちこそありがとうな」
彼が振動した端末の画面を見ると、どうやら人から呼び出しがあったようで席を立つ。
こういうことが何度かあって、その度に長期間ミレニアムで見掛けなくなることもあるが、元気にしてるのであれば気にすることでもなかった。