全知VS全恥 作:釘パンチ
「私と勝負をしませんか?」
「え、やだ」
いつものように暇になったヒマリが思い付きをカズマに提案されるとコンマの隙間もなく却下された。
「大体、勝負するって言ったって物理的にヒマリに負ける気はしないし、テーブルゲームは基本的にヒマリが圧勝するだろ」
「いえ、対等な勝負を今日は用意してきました」
ここまではヒマリの計算の内である。
五目並べでもオセロでもゴブレットでもないゲームで今日こそはヒマリの一人相撲に決着を付ける時が来た。
「そう、ポッキーゲームです」
ハロウィンで余って捜査部のお茶請けと化した先端のチョコが削れたポッキーを一本手にとってウィンクするヒマリを、カズマはげんなりした表情で返す。
「……いや、もうそれ遅いって」
「だまらっしゃい。私がやると決めたからにはその日なのです」
大体ヒマリがそういうことを言い出すと最後まで付き合わされることはわかっているため、さっさと終わらせる方が楽だとも思いつつも、やる気はない。
「それに……負けるのが怖いのですか?」
「は? 負けないが? さっさと終わらせる」
「
ポッキーのクッキーのみの部分を口に咥えて余裕そうな表情で、挑発にまんまと乗せられたカズマがポッキーを咥えるのを待つ。
「微妙に距離感難しいな……」
車椅子に座るヒマリの正面からでは微妙な高さに合わせるのに苦戦しながらもカズマはポッキーを口に捉える。
そのまま食べ進めて前に進もうにも姿勢のせいで、ヒマリからポッキーを奪い取ってしまうか、姿勢を崩して倒れそうにならないか不安になりながらも少しずつポッキーを歯で噛んで削っていく。
(ふふふ。私の罠にまんまとハマりましたね。カズマ)
ポッキーを食べることに悪戦苦闘しているカズマを見ながらヒマリは内心でほくそ笑む。
(我ながら、なんと完璧な作戦。あまり頭脳派天才美少女を舐めてもらっては困ります)
ヒマリの狙いは、挑発に乗り、距離が物理的に縮まるように一人で食べ進めたカズマが姿勢を崩したところで、彼を受け止めからかうことを想定していた。
(意外と器用に姿勢を変え……というより、このままでは普通に、キスされてしまうのでは……!?)
不可能だという点に瞑れば完璧な作戦であった。
そもそも、そうなる前にカズマは途中で切り上げる気ではあるので、そんなことにはならないことも含めて不可能であった。
「……へ?」
待っているだけでは不自然がられると思い、クッキー部分を食べた頃、急にカズマが中間地点でポッキーを噛み砕いた。
「かっっっら……!! これロシアンポッキーそのまま混ぜてたのかよ!?」
顔を真っ赤にしたカズマが備え付けの冷蔵庫にぶつかる勢いで走り、中から飲むヨーグルトを取り出してがぶ飲みし始める。
どうやらハロウィンの時に用意していたロシアンポッキーの当たりを引いてしまい、ポッキーゲームどころではなくなった。
「そういえばそんなものも用意してありましたね……」
勝負に勝って、戦いに負けた。
(……もし、ロシアンでなかったら……)
もしものことを想像したヒマリの顔も熱くなるが、きっとロシアンポッキーに塗りたくられた辛味成分が口に入ってしまったのだと、決めつけた。
勝敗
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ヒマリの勝ち
-
カズマの勝ち