全知VS全恥 作:釘パンチ
「綺麗だ……」
ミレニアムの入学式を終えたカズマが帰り道で見たのは、自販機の前で欲しいドリンクが手の届かない最上段にあるせいで困り果てているヒマリだった。
足が不自由なのか、車椅子から腰を上げられず落ちてきた桜の花弁を頭に乗せた彼女は彼からシンプルな感想を引き出した。
「……はい?」
シンプル故に通りがかりった男子にそんなことを言われたヒマリは困惑の声が漏れた。
「あ、ごめん。届かないなら代わりにボタン押すぞ」
「ミレニアム最高の天才清楚系病弱美少女ハッカーの私を綺麗の一言で片付けるとは……それはそうと、では右から三番目のモノをお願いできますか?」
「お安い御用」
ヒマリの言った通りに自販機のボタンを押して排出されたドリンクをカズマが彼女に手渡す。
「じゃ、どこまで送れば良い?」
「そこまでは頼んでいませんよ。というか、貴方、名前は?」
「おっと」
車椅子に乗っているというだけでお節介をしてしまい、初対面の女子に馴れ馴れしかったことと、名乗っていなかったことを思い出してハッとする。
「宵々々山カズマ。そっちは?」
「天才清楚系病弱美少女ハッカーの明星ヒマリです」
やたらながったらしい名乗りを上げたヒマリの容姿は彼女の自信に見合うだけのモノだとはカズマにもわかる。
今まで出会ってきた異性の中では確かに一番綺麗だと思えるし、今後彼女を越える美少女が現れることもないだろう。
漠然とそんな気がした。
「まぁ、綺麗だとは思うけど。これも何かの縁だ、よろしく」
そんな日のことを、いつまでも夢として思い出す。
何も顔に触れてない筈なのに、何かが顔に触れていてくすぐったくなって、カズマは夢から目が醒めた。
「んだよ、もう……」
「あ……」
相変わらずやることがなく、部室で椅子に座って昼寝に耽っていたカズマの前には油性ペンを手に持ったヒマリの顔があった。
いつぞやのポッキーゲームの時よりかは遠いが、他人が見れば勘違いしそうな距離感である。
「……なんだ、美少女か」
数秒前まで見ていた夢のせいか。そんな言葉が無意識に漏れ出る。
「常日頃朴念仁のバカだとは思っていましたが! どこまでバカなんですか貴方は!」
その言葉を聞いてしまったヒマリはみるみる顔を真っ赤にして捨て台詞を吐いて部室を出て行ってしまった。
まだ眠気があるカズマは良い夢が見れるような気がして、そちらを優先した結果、追いかけずにそのまま二度寝に入る。
(そういや……寝る前に、ブランケットなんてしてたっけ……)
勝敗
-
ヒマリの勝ち
-
カズマの勝ち