全知VS全恥   作:釘パンチ

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六回戦

「もう、すっかり寒い時期になってきましたね」

 

 カズマに車椅子を押されながらヒマリはいつもの調子で降り注ぐ雪を見て物憂げな表情を浮かべていた。

 二人は部室で比較的知能指数が戦闘力に直結しない人生ゲームに興じていたが、結局何年も更新も掛けていなかったこともあり、飽きが来て年末で大人数で遊ぶ時のために更新を掛けるついでに、面白そうなボードゲームがあれば調達しておこうと外に出ていた。

 

「そうだなぁ。俺は風邪引かないけど、ヒマリはちゃんと暖かくして寝ろよ」

「バカは風邪を引かないのではなく、風邪を引いたことを理解せずに元気があり余ってるだけなのですよ。カズマ」

「元気だけが取り柄だから」

 

 雪が降っているため、ヒマリの車椅子もホイールブレードと傘を取り付けた冬場仕様に換装していた。

 電動車椅子でもあり、多少の不整地なら問題なく走行が可能であるものの、それはそれとして付き合いの長く、至極個人的かつ秘匿性のあるヒマリの要望でカズマに押されている方が安心できるという理由であまり使われない機能である。

 

「こほん。雪を見ていると寂しい気持ちにさせられますね……」

「強引に戻したな? なんでまた?」

 

 去年も似たようなやり取りをしたような記憶があるが、別にそれが嫌という訳ではないカズマは、再び物憂げな表情を浮かべたヒマリに理由を訊ねる。

 

「雪化粧という言葉の通り。見慣れた日常の景色を美しくしてしまうモノです。

 寒い冬を終え暖かい春が来たら溶けてなくなってしまうのは寂しいと思いませんか?」

「昔、積もりたての雪をかき集めてイチゴシロップかけて食べてたらチヒロとリオに怒られたっけな」

「何をしてるんですか本当に……こほん」

 

 カズマのしょうもない昔話に呆れながら咳払いで話を戻す。

 

「ですが」

 

「私の美しさは春夏秋冬。季節を選びません。それに比べるとあまりにも短くて儚いモノです。

 あ、嘘をついてしまいましたね。常に私は儚い美少女ですので」

「雪にマウント取るやつ初めて見た。というかこの前自分の美しさと雪の白さはイコールとか言ってなかったか?」

 

 ふふん。と得意気なヒマリにカズマのツッコミは届いていなかったが、こういう時の彼女は大体言いたいだけだということは十分に知っている。

 

「ヒマリとこうして見る雪はいつもより綺麗に見える気はするな……」

「……もう、慣れましたからね。ええ。慣れましたとも」

「何が?」

「いえ、こちらの話です」

 

 いつもの流れで赤面してしまいそうになるが、いつまでもカズマの脳死発言に翻弄されるヒマリではない。

 どうせ綺麗なモノは綺麗なモノとして認識しているだけで、特に深い意味はないのだろう。

 

「ふぅん。ま、いつまでもこうしてられると良いよな」

「いつまでも!?」

 

 結局耐えられなかった。

勝敗

  • ヒマリの勝ち
  • カズマの勝ち
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