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このバカ犬!

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ハンドラー・ルイズ概念

 一度生まれたものは、そう簡単には死なない。

 

 それは決してポジティブなだけな言葉ではない、ネガティブな面もある。

 例えば因縁、確執、対立、悪評……無くなって欲しいものばかりが残り続けて、愛情や幸福というもの程簡単に失われていく。

 

 そして絆もまた同じ。

 

 何度この出会いと別れを繰り返しただろうか、どんな使い魔を召喚したとして結末へは辿り着けない。

 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールはいつからか、自分が時の牢屋に閉じ込められている事に気づいた。

 

 色々な者達を召喚した、この世界に無い力を持った強者、異能者、未来人、異邦人……決闘、怪盗、婚約者の裏切り、そして戦乱、様々な困難を打ち倒した、無能王ジョゼフの野望を打ち砕く者が居た、、10万の軍勢を瞬く間に壊滅させ破滅の危機にあったアルビオン王家を救う様な者だっていた、エルフとの共存の可能性を見せた者も居た、だから今度こそ……今度こそはと願っても叶わない。

 

 目が覚めた時にはいつもこの日に戻って来る。

 絆も冒険も全てが夢であり幻、虚無のルイズではなく……ゼロのルイズへと回帰する。

 

 いくら優しく接しようが、いくら正しく進もうが、いくら争いを避けようが……全ては無駄に終わる。

 それは様々な者達と出会って成長したとはいえ、一人の少女が背負うにはあまりにも深い絶望だった。

 

 だが、変わっていく事もあった。

 イレギュラー、例外が現れる様になった。

 

 何度目だったか……召喚した瞬間に赤い光に包まれて即日やり直しとなった次からだった、機械仕掛けのゴーレム……いわゆるロボットがこの世界に現れる様になった。使い魔達の世界との繋がりのない存在。

 

 それは特に自分達に関わる事も無ければ、時には強敵として立ちはだかったり、あるいは自分達の命を奪う事となった。

 ……そしてそいつは現れた、自分と同じように繰り返す世界の記憶を持った宿敵。

 

 何度も、何度も自分の召喚した使い魔を、仲間を、家族を殺した仇敵。

 出会う度にそいつは言う「また新しい犬を飼ったのか」「私が殺したのは誰だったか」

 まるでルイズを挑発する様な言葉をつづけ、打ち倒せば必ず「その犬はやめておけ」と言い残す。

 

 しかしながら、そんなイレギュラーが現れたとしても……結局は全ては振り出しに戻る。

 

 

 ルイズの心は何度も何度も絶望と絆の残骸に焼かれ、止まる事も出来ない。

 召喚してきた者達、あるいは家族、あるいは友人達……その全てとの繋がりをなかった事にはしたくなかった。

 

 

 だから「この物語」を終わらせるべく進み続けた。

 621回目の、召喚の儀で現れたのは何の変哲もない少年。

 

 平賀才人、時々ティファニアやジョゼフ、ヴィットーリオ…あるいはタバサが召喚してたりしなかったり……彼もイレギュラーの一人だとルイズは認識していたが自分が召喚するのは初めてだ、と思いながら記憶を探る。

 

 確かとんでもないバカ犬だった、ハレンチ、スケベ……ついでに喧嘩っ早い……これの手綱を握るのかと内心がっかりしながらもこのめぐり合わせも何かの縁だととりあえずは丁重にもてなす事にはした。

 

 何度も繰り返された「ファーストキス」という矛盾した儀式を追えてガンダールヴのルーンを確認して今後の事を考える、デルフリンガーを早めに回収する事……ギーシュとやりあう事になるかならないか、フーケことマチルダ・オブ・サウスゴータの処遇……そしてワルドとの関係。

 

 まずはこの辺りを越えてくれなければ話にならないと自分を押し倒したバカ犬を蹴り飛ばして折檻しながら溜め息をついた。

 

 

 

 

 

 サイトは、これまあ丁寧にあらゆるトラブルに首を突っ込むことになった。

 もう本人ですら気にもしていない「ゼロのルイズ」という不名誉なあだ名に突っかかってギーシュを殴り飛ばして傷だらけになり、キュルケに目を付けられたり、フーケを捕えたり、そして……違和感にルイズの纏う空気の変わり様に気づいたキュルケとタバサの二人に探りを入れる様に焚きつけられた。

 

 もうこの辺りはルイズにとっては慣例イベントとなっていた、自分が何度も繰り返している事。

 そして誰も彼もが自分が終わらせると意気込んで……時にはその意志によって命を落とす。

 

 

 だから余計な事は言わない。

 

「それはあなたには関係なく……どうしようもない事よ」

 

 前四回は最悪だった、続けて四人……自分の為に犠牲になったのだから。

 

 アルビオンへアンリエッタの手紙を回収する依頼、今回はロボット共の噂はない…だが奴が現れるのは大体戦争が始まってから、どこに息をひそめているかはわからない。

 油断なくルイズはワルドと合流し、サイトが途中で模擬戦によって心を折られている。まさかワルドに負けるとは……という不安な事故に頭を抱えながら式を挙げようという告白を受けていた。

 

 ここでウェールズを助けるか、ワルドを言いくるめるか……そんな事を考えていた時だった。

 

 ニューカッスル城の外で爆発が起こった、レキシントンが沈みレコン・キスタが総崩れとなる、混乱の中でワルドより早くサイトと合流し……聞こえて来たのはあの声だった。

 

 

『わざわざ手紙なんぞを回収する為に命をかけるとは相変わらずだな、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』

「あなた……スッラね……!!」

 

 忘れるものか、何度も何度も辛酸苦渋を舐めさせられた相手だ、そして相手はアーマードコアに乗っている。

 とてもではないがサイトの敵う相手ではない、ここは逃げに徹するべきだと冷静に思考するが……よりもよってアルビオンだ、とてもではないが逃げ場などない。

 

『そこの犬、おまえには同情するぞ……飼い主が違えば長生きできただろうに。まあ……生き残っても結局は無かった事になるがな』

「なんだよてめえはよ!」

『冥途の土産だ……良い事を教えてやる、お前の飼い主は何度もこの世界を繰り返しては結末に辿り着く事なく振り出しに戻る哀れな囚人だ』

 

 

 余計な事を、とルイズは内心頭に来ていた。

 

『無意味な事だ、いい加減に諦めたらどうだ?ルイズ、疲れただろう?』

「……サイト、アレの言葉に耳を貸す必要はないわ。それよりも……この状況を打開する事を考えなさい」

「何とかするって……あのロボットをかよ!?フーケの時みたいにロケットランチャーもないんだぞ!?」

「そうね、どうにかデルフを突き立てても無意味かもしれないわね……けれど……」

 

 そう策は一つだけある、自らの手でスッラを倒す。

 それが生き残る為のただ一つの手段。

 

「私が意味を与えてあげるわ。だから生きて、時間を稼ぎなさい」

 

『ほう?やるつもりか、面白い……ならば望み通り何度でも殺してやろう』

「全部終わったら……聞かせて貰うからな!」

 

 ルイズの覚悟をサイトは信じた、何かを背負ってる事、この世界にやって来て初めて出会ったルイズの印象は燃え滓……あるいは燃え尽きた様なソレだった、だが今また激しく燃えている。

 

 それがルーンを伝って感じられる。

 

 

 結果としてスッラを打ち倒す事は叶った、サイトに狙いを定めた所にウェールズの命を懸けた不意打ち、そしてワルドの援護によって出来た隙に錬金の失敗魔法……あるいはエクスプロージョンの片鱗を何度も叩き込む事で機体を破壊する事に成功した。

 何度も戦っているのだからわかる、スッラの機体、エンタングルは……この世界に来てからロクに修復できておらず常にギリギリのソレ。だからどうにかなる事もある。

 

 

「何か言い残す事はある?」

 破片が突き刺さり今にも息絶えそうな男を、スッラを見下ろしルイズは冷たく言い放つ。

 いつものように「やめておけ」かそれとも憎まれ口か、だが予想とは違う言葉だった。

 

「その犬を大事にしろ……そいつは……お前の……」

 

 最後まで言い切る事なく息絶えた宿敵の最期にルイズは戸惑った。

 

 

 

 

 

「サイト、この仕事をやり遂げられるのは……あなただけよ」


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