どこで間違ったのだろう。
世界は美しいと思っていた。
そりゃあ不完全な所もあるけれど、自分がそれを補うのだと驕っていた。
学校で出会った泉都は、初め暗かった。自分だけしか呪いを見れないのだという。
こんな、襲われるだけのつまらない力。
魔法使いの兄(手品師?)や、いつも飛んでいて(ヤバい人?)リア充な弟には敵わない。
そう嘆く泉都に私は言った。
「いいかい、泉都。私達の力は、人々を救済する為にあるんだよ。見えなくても、そこに呪霊がいる事に変わりはない。襲われはするんだからね」
「救済……! ぼ、俺がにーちゃ、兄さんを救う……!?」
「いいかい、泉都。私達は、同じ呪霊を見ることが出来る仲間なんだよ。私たちだけが、分かり合えるんだ」
「ウルトライケメンで明らかに選ばれしものの夏油くんと仲間……!? お、お友達ってこと!?」
「友達で、仲間だよ」
優しく両手を握ると、「ファー!」と愉快な奇声をあげる泉都。
「しょ、硝子さんとも!? 神様みたいな五条くんとも!?」
「はぁ!?? なんで俺が神様!?」
「だって、綺麗だし、強いし、格好いいし、光のものだし」
「光とかわかんねーけど、どっちかっつったら俺は闇だろ。呪いだし。お前と同じ!」
「お、同じ!?」
「そー! 呪霊が見えて、術式が使えて、それにお前、言うほど不細工でもねーだろ。整ってる方なんじゃね?」「もっと身だしなみに気をつけてごらんよ。変わるから」「私がいい美容室紹介してやろうか?」「ファー!!」
「これが僕……」
鏡を見て感動する泉都に、優しく語りかける。理解者がいない辛さも、仲間に会えた喜びも私は知っていたから、いっぱいの気持ちを込めて。
「君は、生まれ変わるんだよ。いっぱい私達と思い出をつくろうね」
「うん! ぼ、私、生まれ変わるよ!!」
まるで、弟が出来たようだった。
泉都は甘え方を知っていて、私たちを実の兄のように慕ってくれた。懸命に真似をしてくる泉都は可愛かった。
非術師をあからさまに見下すようになったのは困ったけど、そこも含めて可愛かった。なんていうか、ペットの子猫が飼い主の威をかってみゃおみゃお威嚇している感じが可愛かったのだ。
皆で星が降るような流星雨を見た時、このままの時間が一生続けばいいと願った。
本当に光が降ってきてそれが掛かった時は慌てたっけ。
もっとも、祈りは叶わなかったのだけど。
理子ちゃんの死。
泉都は護衛任務に来なくて本当に良かった。あの子の実力だとおそらく、いや確実に殺されていた。
笑えなくて、迷って、自分の中に仄暗い欲望があったのを知って、それを泉都に見透かされて。
非術師を嫌いになりかけてた所に、術師に狙われていた事を知って。
「最強」である悟からの気遣いすら辛かった。
プライドの高い私は、自己嫌悪に耐えられなかったんだ。
強烈な悪意に、自己嫌悪に、置いていく悟に、心配される弱い自分に、自分の汚い所がどんどん凝縮されていくかのような泉都に、ジリジリ追い詰められていって。
皆が私を庇えば庇うほど、辛くて、苦しくて、もがいて。
心から笑えなくなっていって。
あの幼女達がボロボロになって囚われている姿と、「僕と契約して魔法少女になってよ!」「僕と契約して魔法少女になってよ!」などと幼女を追い詰める噂にきいた白き悪魔に、妄言を喚いてくる猿どもに、私の心は崩壊してしまった。
そして、船核や呪力炉としての操作に習熟していたが故に、悟たちと常に通信で繋がっていたが故に、ダイレクトに痛みをまき散らしてしまった。
私を心配していた皆は、即座に反応してくれた。
「傑っ!!!!!」
悟は突如として現れて私を守るように抱きしめて周囲を警戒する。
「さと、る」
驚いたが、情けなさと安堵に声が震えてしまった。本当に私は情けない。
「どうした? 何があった!?」
私などよりよっぽど助けが必要そうなボロボロの幼女達すら目に入らぬ様子で必死に問うてくる五条の必死さと警戒が滑稽で、自分はただ、ただ……人を殺す、決意をしただけだったのに。
ゲェ、と夏油は嘔吐する。
今、自分は何をしようとしていたのだろう。
私を助けようとする悟の善性が今は辛い。
大儀と痛みと建前と正しいこと。それらが私をぐるぐる巡る。
「子供達を助けないと」
『そうだね! 怪我を治さないといけない! 僕と契約して魔法少女になってよ!』
イラッとした私は、きゅっとキューベェを締めた。
「助けないと」
そうだ。今は幼女を助けることが大事だ。それ以外は後で考えよう。
「きゅーべぇが傑になんかしたのか? 許せない! でもエイリアンと敵対か、仕方ない、泉都のお兄さんに連絡するしか!」
悟が先走ろうとして、私が悟を止めようとしたとき。その時、夏油と五条を、いや、村を、巨大な影が覆う。
『夏油くん! 急いで船を構築して助けに来たよ! 硝子さんも連れてきた! もう大丈夫!』
泉都の声が大音量で流れる。
暴れまくってグチャグチャの部屋でドヤ顔で千切れんばかりに尻尾を振る子犬の幻影が見える。
泉都〜!!
携帯電話が鳴る。
『今どこですか!? すぐ助けに行きます!』
『生きていてください!』
「いや、大丈夫。ちょっと取り乱しただけだから。一旦切るよ。取り込み中だし、悟もいるから大丈夫」
珍しく焦った様子の後輩達からの電話を切ると再度電話。
『夏油くん、無事かい? すぐに助けに行くよ! いくら払う?』
……冥冥さん。
これは、ちょっと大変なことをしてしまったのでは。じわじわと焦燥が体を支配していき、私は悟の服の裾をぎゅっと握った。
足元ではきゅっぷいきゅっぷい新たなきゅーべぇーが死体を喰らい、光線が私達を宇宙船に取り込もうと降りてくる。
泉都を追いかけてきた報道ヘリと戦闘機が空を飛び回り、先生からの電話が鳴る。
「傑」
「泉都には、ちょっとお話しようか……」
私の出した声は自然と地の底を這っていた。
私が心配させたのが悪いのかもしれないけどさ。
これはちょっとやり過ぎだろう!?
宇宙船の中に入ると、想像の通りのドヤ顔笑顔で泉都が走り寄ってきた。
マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/lucaluca
今度からマシュマロ返信していくことにしたので、よろしくお願いします!
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