ガールズ&パンツァー/鏡像世界からの奪還   作:ミハイル・シュパーギン

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みほB

鏡像世界の大洗女子学園の学園艦艦内のどこかの船室。

 

「西住隊長。連れて来たぞ」

「ご苦労」

 

鏡像西住みほは、電動式車椅子を回し、西住みほと対面した。

彼女の両脇には、あの鏡像五十鈴と鏡像冷泉が立っている。

 

みほが語気鋭く尋ねる。

 

「一体どういう事か説明してくれる?」

 

鏡像みほは興味深そうに、並行世界の自分を見つめた。

 

「ほっほう?そちらの世界の、か弱い西住みほにはこんな好戦的な性格があったとはねえ?」

「まあ、仮にも隊長って事なんだろう」

 

鏡像冷泉の言葉に、鏡像みほは片眉を上げた。

 

「そうかもね」

「おい、私の質問に答えろ!」

 

鏡像五十鈴の表情が険しくなり、PPKを上げようとしたが鏡像みほが右手を挙げて制止した。

 

「・・・ここがどこだかは分かってそうだね?」

「鏡像世界だろ?よく知っている」

「なら話が早い。私の代わりに試合に出てほしい」

 

みほの目が疑わし気に細くなる。

 

「何だって?」

「見ての通り、車椅子生活なのよ・・・こちらの世界の秋山優花里がね、私を裏切って毒を盛ったおかげでリハビリ生活中なんだけど、試合までには間に合いそうもなくて。で、試合に出られないとなると、私は殺されちゃうの。それが嫌なので、並行世界からあなたを召喚したってわけ」

「なるほど。だが断る」

「貴様に選択権は無いよ?」

「これでもか?」

 

みほは目にもとまらぬ速さで鏡像五十鈴の腕を掴んで引っ繰り返し、その手からPPKを奪い取ると、銃口を鏡像みほに向けた。

 

冷泉が壁に立てかけてあったM1カービンをみほに向かって構えた。

 

「銃を下ろせ」

 

しかしこの好戦的なみほは怯まない。

冷泉の指がトリガーにかかる。

 

「もう一度言う。銃を下ろせ!」

 

みほは鼻を鳴らした。

 

「ふん。どうせ撃てやしない」

「試してみるか?」

 

すると、鏡像みほは背中を反らして高らかに笑った。

 

「フッハハハハハ!ここまで肝が据わってるなんて!いやあ凄いね、分離装置って」

 

それから起き上がろうと身を越した鏡像五十鈴を見ながら、「冷泉、五十鈴を部屋に連れて行って」

 

鏡像冷泉はカービンを鏡像五十鈴に向けた。

 

「ほら、行くぞ」

 

鏡像五十鈴の表情がみるみる強張る。

 

「西住隊長!それだけは許してください!」

「奴に後れを取った罰は受けて貰うから。連れて行って」

 

鏡像冷泉は鏡像五十鈴を立ち上がらせると、カービンで引っ立てて行った。

2人だけになると、鏡像みほは改めてみほと向き合う。

 

「さて、もう1人の私・・・いや、3人目の私、かしら?」

「3人目?」

「さっき、分離装置って言った事、覚えてる?」

「ああ。それが何か?」

「あれは人間を物理的に二人に分ける装置なの、それも・・・二つの人格に綺麗に分けてね」

「はあ?あんまりイミフな事言ってると撃ち殺すぞ?」

「じゃあ、これはどう思う?」

 

鏡像みほは車椅子を反転させると、背後にあった扉を開けた。

その向こう側の部屋に2つの強化ガラスの円筒型のチャンバーがあったが、その中は液体で満たされており、それぞれに1人ずつの人間が液体浸けにされていた。

 

みほは両方を見比べてハッとした。

 

「え?クローン?」

「いいえ。分離装置で分けた秋山さんよ」

 

鏡像みほは車椅子でチャンバーの周りを巡りながら、楽しそうに話す。「毒殺に失敗した秋山さんは分離装置の実験台となり、善の秋山さんと悪の秋山さんに分かれた。でも分離したら、どちらも長くは生きられない。秋山さんは一週間で死んだ。サンプルとして、ホルマリン漬けにして保存したわ」

 

さすがの好戦的なみほでも、これにはショックを隠せない。

自然とPPKが下ろされる。

 

「馬鹿な・・・」

「覚えてるかしら?こっちの世界に連れて来られた時、軽い眩暈を覚えたと思うけど」

「そう言えば・・・」

 

直後にまた軽い眩暈を覚え、みほ・・・いや、みほBはふらついた。

その様子を、鏡像みほは頷きながら観察する。

 

「それは2つに分離した際に感じる症状よ。どういうわけかは分からないけど、秋山さんも同じ症状を何度も訴え、段々と気力体力を失い、やがて衰弱死した。二人は一つに合わさってこそ、一つの人格として、一人の人間として生きて行けるらしいわ」

「どうでもいいけど、もう1人の私はどこ?」

「ああ、それなら元の世界に置いてきたわ。誘拐の発覚を遅らせる為にね?あの連中、意外と行動的だから時間を稼がないと」

 

みほBは再びPPKを鏡像みほに向けた。

 

「で、そんな回りくどい事をやって、どういうつもり?」

「取引をしよう」

「取引?」

「試合に勝ったら、元の世界に返してあげる。ちゃんともう1人のあなたと融合するように手配する。でも拒否したら、それで結構。あなたはここに閉じ込められ、衰弱死する。私も殺されるけど、まあ道連れってとこね?」

「そんな話・・・」

「信じなくても、あなたの体が私の話を証明するわ。それに、2人の秋山さんはどう説明するの?」

 

みほBは数秒迷ったが、選択肢は無かった。

PPKをポケットにしまう。

 

「・・・分かった。試合はいつ?」

「明後日。すぐブリーフィングするわ」

 

その時、鏡像五十鈴の苦痛に叫ぶ声が隔壁越しに聞こえて来た。

 

 

続く

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