ガールズ&パンツァー/鏡像世界からの奪還   作:ミハイル・シュパーギン

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こちら側の世界。

 

翌朝、みほはいつものように起床して支度すると家を出た。

 

「みぽりーん!」

 

住宅街の通学路を歩いていると、後ろから沙織が走って追いかけて来た。

半ば立ち寝している麻子が、沙織に右手を引っ張られてバレリーナのようにステップをトットコトットコと踏んでいる。

 

「沙織さん、麻子さん、おはよう!」

 

その時沙織が、心配そうにみほの顔を覗き込んできた。

 

「どうしたのみぽりん?なんか元気ないよ?」

 

さては昨日の事で何か悟られたか、とみほの心臓がドキリとする。

 

「え?あ、ああ、何でもないよ?」

「ホント?何か悩み事?ひょっとして恋愛ごと?それならいつでも相談に乗るよ!?」

「あいや、そうじゃなくて・・・」

「じゃあ何?」

 

みほはやっと言い訳を捻り出した。

いつもなら返答に困らないのに、どうしたのだろう?

 

「・・・実は昨日、考え事していたら寝そびれて朝になっちゃって」

「あらあら。寝不足はお肌に大敵よ?しっかり寝ないと」

「うん、気を付けるね」

「沙織。西住さんは隊長だぞ。すぴい」

「麻子は逆に寝過ぎね!」

「寝不足なんだ・・・」

「あんた24時間寝てもそう言うと思うよ!?」

「置いて行ってくれ。後で追い付く・・・」

 

と、不意にみほの視界がぐらつき、よろめいた。

 

「みぽりん!?」

 

次の瞬間にはみほの意識は暗転していた。

 

 

みほが目覚めると、保健室のベッドに寝かされていた。

時計を見ると、どうやら1時限目が終わって休憩時間の途中だった。

 

保健室の扉がノックされて開くと、あんこうチームが入って来る。

 

「あ、みぽりん。気が付いた?」

「良かった。倒れた時はさすがに目覚めたぞ」

「西住殿!」

「みほさん!」

 

4人がベッドの周りを囲むように集まる。

 

「暫く安静しておいた方がいいわね。念の為、栄養剤を打っておいたわ」

 

後ろから保健室の先生が言った。

 

「先生。みぽりんは病気ですか?」

「いいえ。病気じゃないわ。多分、疲れじゃないかしら?戦車道の練習、結構忙しかったでしょ?」

「意外と体が応えていたのかもしれませんね」

 

と、華がここ最近の出来事を思い出しながら言った。

 

「我々も1日くらいゆっくりした方がいいかもしれませんね」

 

優花里が肩を交互にゴリゴリ回す。

 

「はあ・・・」

「どうしたのみぽりん?」

 

みほは何か言おうとして口を開きかけたが、首を横に振った。

 

「ううん。なんでもない」

「何か思い詰めているような」

「ああ、華さん。本当に大丈夫だから」

「そうですか・・・」

「そろそろ行かないと次の授業に間に合わないぞ」

 

時計をぼんやり見上げた麻子の指摘で、みほの友人達は保健室を後にした。

ただ、4人とも同じ違和感を抱いていたのだった。

 

 

昼休みに4人は食堂へ集合し、食事しながらその違和感について話し合う事にした。

 

「みぽりんなんかおかしくない?」

「沙織の言う通りだ」

「なんだか、何かを隠そうとしていたような・・・」

 

そう言いながら、華が白飯入りの茶碗を持つ。

 

「でも話さなければいけないって事も自覚しているというか」

「確かに、誰でも話したくない事もあるかとは思いますが・・・」

「でも割と黒森峰時代とか実家での思い出とか話してくれるじゃん?」

 

華は口に運んだ一口サイズの白飯を飲み込む。

 

「う~ん。悪い思い出なら話が別では?」

 

その時、麻子が何かを思い出して顔を上げた。

 

「・・・そういや沙織。西住さん、今朝からおかしくなかったか?」

「ああそういや。なんか・・・必死にごまかそうとしていたような・・・あんなみぽりん初めて見たから不思議だったんだけどさ・・・『考え事していたら寝そびれて朝になったんだー』って感じでさ」

「でも違うとしたら?」

「問題はそれなのよねえ・・・」

「やはりみほさんから直接聞き出した方がいいのでしょうか?」

「西住殿が何か悩んでいるのなら、我々が助けず誰が助けると言うのでありますか!?」

「それなら心当たりがあるにゃ」

 

4人のテーブルの前に立ったのは・・・

 

「猫田さん?」

 

不思議な事に、猫田は何かを気にして周囲の様子を窺っている。

 

「あとでまた会いに行くにゃ。まずはこれを渡しておくにゃ」

 

猫田はそう言いながら、裏向けられた丸い刺繡を置くと、きょとんとする4人を後に食堂を足早に立ち去って行った。

 

「・・・なんだろ?」

 

沙織が表に返した瞬間、4人は絶句して刺繍をまじまじと見つめた。

上からナイフを刺され牙を剥く恐ろし気なチョウチンアンコウ・・・鏡像世界のあんこうチームのシンボルマークだった。

 

「あ~、ゲームの夜更かしはダメだにゃ~」

 

ビクッとして振り向くと、こちら側の世界の猫田と、彼女の友人でありゲーム仲間であるぴよたんとももがーの3人が食堂にやって来たところだった。

 

さっきの鏡像猫田の挙動は、同一人物が食堂に入って来ていないかを気にしていた為だったのである。

 

 

続く

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