ガールズ&パンツァー/鏡像世界からの奪還   作:ミハイル・シュパーギン

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救出チーム編成

「鏡像世界からやって来た事は分かったが・・・」

 

机の上で鏡像あんこうチームのシンボルマークの刺繍をいじりながら角谷は言った。「西住ちゃんが二人になったって全く意味が分からないのだが」

 

机の前には鏡像猫田が立っており、その後ろであんこうチームが聞いている。

角谷の傍らに立つ生徒会副会長の小山柚子が、

 

「どう捉えていいか、分からないだけなの」

 

2か月前にあんこうチームが鏡像世界に迷い込み、入れ替わりに鏡像世界のあんこうチームがこちらの世界にやって来た事、鏡像世界の猫田がこちらの世界にやって来た事を考えると、もはや何を聞いても驚かないつもりだったが、やはりみほが二つに分裂したという話は信じられない事だった。

 

「いや、今言った通りだにゃ」

 

鏡像猫田は体を半回転させると、みほを手招きした。

 

「西住が細胞分裂した痕があるとでも言うのか?」

 

と、鏡像猫田の真横に距離を取って立つ広報の河嶋桃が言った。

 

「ある意味ではそうだにゃ」

 

鏡像猫田は、みほの後ろに立って両肩に手を置いた。「この通り、西住隊長の様子がおかしいと思わないかにゃ?」

 

「なんだか疲れたように見えるね」

「その通りだにゃ。二人に分裂させられたショックで体が弱り始めているにゃ。この西住隊長は・・・この世界でよく知られている西住隊長の性格。でも、決断力や指揮統率が著しく弱体化しているにゃ」

「その能力が、もう1人の西住ちゃんにあると、さっき聞いたが」

「そうだにゃ。何回聞かれても、同じ事を答えるしかないにゃ」

「でも、連日の猛練習で疲れているだけでは?」

 

と、小山が言うが、猫田は引き下がらない。

 

「じゃあ、今から指揮を執らせてみるといいにゃ。きっと誰でも勝てる相手になっているにゃ」

 

角谷は小山を見上げた。

小山も角谷と顔を見合わせる。

 

 

20分後、猫田の言う通りだと分かった。

みほは的確な判断と指示が出来ず、生徒会チームにあっさりと敗北したのである。

 

しかも、誰でも分かるトラップに引っ掛かって。

 

「・・・本当に気付かなかったってマジなのか」

「はい。西住殿は本当に驚いていたであります」

 

角谷から事情聴取された優花里自身も驚きを隠せずにいた。「会長殿からの話を聞く限り、西住殿は絶対に引っ掛かりません」

 

駐車場の車列に紛れ込んでいたのだが、周りの乗用車やトラックに対して明らかに目立つヘッツァーを、みほは見逃したのだった。

鏡像猫田は、予めあんこうチームに敵を見つけても何も報告しないよう言い含めていた。

 

その上で生徒会チームにバレバレのトラップで待ち受けるよう指示し、その通りにしたが、真横を通りかかって撃たれるまで全く気付かなかったのだ・・・角谷もみほの様子を見て唖然としていた。

その上、撃たれて初めてみほはヘッツァーの存在に気付いて悲鳴を上げた。

 

「ただの疲労にしては、あまりに判断能力が落ち過ぎだ」

 

と、河嶋も同意した。

背後では、Ⅳ号戦車の上で呆然と座り込むみほの姿がある。

優しさと共にある、隊長としての威厳もどこへやらと言ったところだ。

 

「このままだと西住ちゃんは・・・」

「鏡像世界に連れ去られたもう1人の西住殿を取り戻さねば」

「信じられない話だが・・・どうも信じないわけにはいかないね」

 

角谷がみほを振り返ると、みほは沙織と華の手を借りてⅣ号を下りているが、どうも足取りがおぼつかないようだ。

 

「西住殿にスランプという言葉は似合いませんし」

「そうだな」

 

河嶋が一歩進み出た。

 

「会長、私が行きます」

 

だが、角谷は首を横に振る。

 

「いや、河嶋はここを頼む。家族も君を必要としているだろ」

 

河嶋の母親は病弱で、長女である彼女が数人いる弟妹の世話や家事を担っている。

今河嶋が離れる事は、彼女の家族にとって痛手なのだ。

 

ただ、同時に角谷は河嶋が鏡像世界に行けばパニックで泣き喚く事も危惧して彼女に残るよう言ったのだが、それは黙っていた。

 

「しかし・・・」

「私が行くよ。小山と一緒に、私が留守の間は頼むよ」

 

河嶋は渋々引き下がった。

本気で鏡像世界に行って来るつもりだったらしい。

 

「・・・会長がそう仰るなら」

「よし。早速救出チームを編成しよう。明日から試合らしいじゃないか・・・向こうの世界では」

「では、さっさとこのミッションを終わらせましょう!」

「よし」

 

結果、あんこうチーム及び角谷、技術班として自動車部全員の10名が、鏡像猫田の先導で鏡像世界に突入する事となった。

 

 

続く

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