ガールズ&パンツァー/鏡像世界からの奪還 作:ミハイル・シュパーギン
鏡像世界への潜入は、みほが体験した方法と同じように、船室の扉を開け放った出入口に張られたエネルギーフィールドを通り抜ける事で行われた。
ただ、エネルギーフィールドの色はイエローを帯びており、みほが鏡像五十鈴と鏡像冷泉に放り込まれた時の色とは異なっていた。
「なんかすっごいSF感」
「だが現実だ」
沙織の感想に麻子がそう応じた。「また来るとはな」
「どうやってこの装置を作ったのですか?」
と、華が鏡像猫田に尋ねると、自動車部も興味津々といった様子で注目する。
「あったものを起動しただけにゃ。原理は分からないにゃ」
「え、じゃあ壊されたらおしまいって事?」
鏡像猫田が持っていたスマホサイズのリモコンのスイッチを押すと、エネルギーフィールドは消えた。
「だから壊されないようにするにゃ」
「不安要素だらけだな・・・」
そんな会話を尻目に、角谷は扉を除いて四方を隔壁で囲まれた船室を見回していた。
「なるほどここが拠点か」
角谷の両脇を通って、自動車部が機材の設置作業を開始する。
「おーいホシノ、通信機はそのテーブルに置こうか」
「なんか埃被ってない?」
「じゃあまずは掃除しよっか」
「私も設置を手伝うであります!」
優花里も自動車部の作業に加わる中、鏡像猫田が角谷に一枚のA3用紙を広げて見せる。
「これがこのデッキの見取り図だにゃ」
「なるほどうちらと寸分違わず同じだねえ」
「これ、通信機です」
沙織がトランシーバーを角谷に差し出した。
角谷はそれを受け取りつつ、
「サンキュ。あーでも、ケータイの方が自然じゃない?こんなの持って歩いてたら逆に怪しまれんじゃない?」
「でも会長はここから指示を出すんでしょ?」
「あーそっか。じゃああたしには関係ないね」
「え、じゃあ実働リーダーは誰にしますか?」
と、華が聞いた。
「そこは生徒会長やってる君達じゃないかな?」
「こんな非常事態って時に会長はもう・・・」
沙織はそうぼやいたが、「ま、逆に落ち着くか」
「そうそう。よく分かってるじゃん武部ちゃん!」
角谷は笑顔で沙織の肩をポンポン叩いた。「ところで・・・猫田ちゃんでいい?」
鏡像猫田は一瞬きょとんとした。
「・・・ちゃん付けされたのは初めてだにゃ」
「んじゃあ猫田ちゃんでよろしく。ここの西住お姉ちゃんとは連絡ついてるの?」
「報告はももがーとぴよたんがやってるにゃ。もうじきここに来ると思うにゃ」
すると扉が叩かれた。
その頃、航行する大洗学園艦の右舷に潜水艇が浮上した。
潜水艇から潜水服とマスクで全身を包んだ1人の人間が出て来ると、学園艦の側面にある開閉式の水密隔壁に取りつき、ロックしている箇所をガスバーナーで焼き切った。
ロックを解除すると水密隔壁を開き、船内に飛び込んだ。
すると、後から同じような恰好の3人の人間が続いて船内に飛び込み、水密隔壁を閉じた。
マスクを取ると、正体はセントグロリアーナ女学院所属の生徒達で、2人はアッサムとルクリリだった。
潜水服も脱ぐと、大洗女子学園の制服を着ていた。
「この制服着ていると反吐が出そうになるわ」
ルクリリが渋面を浮かべながら毒舌を洩らす中、アッサムが潜入に使った開口部の近くで衛星通信機の太いアンテナを立てた。
そのAC-130ガンシップにはサンダース高校の校章がペイントされていた。
機体左側面に105mm砲、40mm機関砲、20mmガトリング砲が並んだC-130輸送機で、地上に対してすさまじい火力を発揮するアメリカ製のガンシップだ。
『こちらアッサム。状況知らせ』
機長のサンダース生徒がコンソールの一部を操作して通信をオンにする。
「目標まで1時間」
『了解。予定通りに』
続く