【ヒックとドラゴン】バーク島のモンスターライダー 作:さざめく葉っぱ
ここはバーク島。ヴァイキング達が暮らす島だ。
……といっても、それは少し正確じゃないかな。
正確には、
ちょっと前まで、ヴァイキング達はドラゴンを敵だと考えて恐れ、退治していたんだ。
でも僕と、僕を理解してくれた人達の努力で、島の皆は変わった。今じゃドラゴンの事を敵だと思う奴なんて居ない。
行き過ぎた対立をせず、ドラゴン達と共生していく道へと舵を切ったんだ!
もちろんそう易々と行く事じゃなかった。僕らはこれまで様々な苦難を乗り越えてきたんだ。
それもこれも、全てはこの相棒が居てくれたお陰だと、僕は思ってる。
そうそう、自己紹介が遅れたね。
僕の名前はヒック。
このバーク島のヴァイキング達を纏める長の息子...なんだけど、その割に性格は気弱だし、筋肉もない。ヒョロガリだ。
こんなんで次期族長なんて務まるのかと、仲間たちにはいつも心配され...或いは、バカにされてる。
まぁそんなことはどうでもいいんだ。事実だし。
それより、今僕が跨って飛んでいるのがさっき言った相棒。
名前はトゥース。小柄で全身真っ黒なドラゴンだ。
ナイト・フューリーという種類の非常に強力なドラゴンで、僕が仕留めた初めての獲物にして、唯一無二の相棒。
僕が仕掛けた罠にかかり尾翼の半分を失った事で飛べなくなってしまったんだけど、それを助けた事が僕らの関係の始まり。
コイツとは色々あったけど、今となってはお互い無くてはならない存在だ。
あぁ、名前の由来はコイツの歯が出たり引っ込んだりするからだよ。
だから“
僕らは今、バーク島でここ数日の間続いていた嵐の被害調査のために、島全体を飛び回っている。
とても酷い嵐だった……。
屈強なヴァイキングの大人たちですら経験したことの無い大嵐。何軒もの家が丸ごと吹き飛ばされた程だ。
やっと嵐が落ち着いたから、僕とトゥースを初めとしたドラゴンライダーの仲間達と手分けしてバーク島を見て回ることになったんだ。
僕らは今、海沿いの森を調べるために上空を回っていた。
「うわぁ、こりゃひどいな。木がこんなになぎ倒されてる」
すでに嵐は止んだものの、その爪痕は想像以上だった。
森は荒れ、土砂は崩れ、海は大荒れだ。
「ドラゴン達の被害も確認しないとな...。トゥース、次は海岸の方に行ってみよう」
「ガウ」
トゥースの動きに合わせてペダルを動かし、それに繋がれたトゥースの人工の尾翼を操作する。
これによってトゥースは、怪我で尾翼が欠けてもなお自由自在に飛翔することができるんだ。
海岸線に到着した僕らだけど、その凄惨な状態に思わず顔を顰めてしまう。
「こっちもめちゃくちゃだな。流木やら船の残骸やらが沢山だ」
これは全部片付けるのに骨が折れるぞ...と、思っていたんだけど。
「...!」
「トゥース? どうした、何か見つけたのか?」
僕とトゥースは流木だらけの砂浜に着地し、トゥースは積もりに積もった流木の中を犬のように掻き分けていく。
「一体なんなんだ...って、え!?」
上空から見た時は影になっていて分からなかったが、それは確かに人間の手だった。
砂浜には船の残骸も漂着していた。まさか...と、最悪の事態を考えた僕は、トゥースと一緒に辺りのゴミをどかしていく。
「女の子だ...」
見たことの無い服を着た子だった。
何かの皮で出来たバックを身につけており、加えて腰にはナイフをぶら下げていた。
しかしとりわけ目に付くのは、左手に付いている不思議な装飾品だ。
タマゴのような形をしたそれは、ただの飾りと言うにはあまりに大きく、中心にあしらわれた青い石が特に目を引いた。
その見慣れない格好を前に僕は少し呆気にとられていたが、不思議な石に興味を持ったトゥースが鼻を近付ける姿が目に入ると、すぐさまやるべき事を思い出した。
急ぎ生死の確認をすると、微かに息が漏れている事がわかった。
安堵のため息をつくも、急を要する事態には変わりない。今すぐ処置をしないと本当に死んでしまうだろう。
僕は彼女を抱き上げ、トゥースの背中に載せる。
「急ぐぞトゥース。でもあまり揺らさないよう慎重に飛んでくれ」
「ガウ!」
僕は彼女が落ちないよう支えながら、バーク島の仲間たちの元へと飛び立った。