【ヒックとドラゴン】バーク島のモンスターライダー   作:さざめく葉っぱ

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未知の図鑑

 

「それで、連れ帰ってきたのがあの子ってワケ?」

 

 僕の説明にちょっぴり怪訝な顔をして聞いてきたのは、長い金髪を三つ編みに纏めたヴァイキングの女の子、アスティだ。

 ヴァイキングとしての才覚溢れる子で、戦いの才能はピカイチ。

 そしてその、面と向かって言うのは気恥しいんだけど、僕が憧れる子というかなんというか……

 

「そ、そうだよアスティ。なんでそんな顔するのさ」

 

「別に〜? またヒックが面倒事を拾ってきたんじゃないかとね」

 

 まただなんて、と口に出かけた瞬間、脳裏によぎるのは今までの冒険の数々。とてもじゃないが反論なんて出来なかった。

 そもそも、アスティと口で勝負して勝てるビジョンなんて初めから無いのだから。

 なんて弱いんだ、僕は……

 

「ヒ、ヒックは悪くなんかないさ。人命救助は立派な事だよ」

 

「あぁ、ありがとうフィッシュ。僕の味方は君だけだ」

 

 ぽっちゃり体型の彼の名はフィッシュ。性格はちょっぴり内向的だけど、ドラゴンに対する知識と愛は誰にも負けないんだ。

 

 この2人は僕の大切な仲間。バーク島のドラゴンライダー達だ。

 もちろん他にもメンバーは居るんだけど。

 

「スノット達は?」

 

「まだ見回り中。私の管轄のとこはあんまり被害無かったからさっさと切り上げてきたわ」

 

「ボクはミートラグがまだ嵐を怖がってて、引き返してきたんだ」

 

 僕らは今、僕の家の部屋の一室で話し合っていた。

 議題は勿論、海岸で倒れていた彼女のことだ。

 

「驚いたわよ。帰ってきて早々、血相変えて迫ってくるんだもの」

 

「仕方ないだろ命に関わるんだから。それで、あの子は?」

 

「濡れた服を脱がせて、ベッドに寝かせてあるわ」

 

「そうか、ありがとうアスティ」

 

「いいのよ。それにしてもあの子、どこから来たの?」

 

 それは今まさに僕が言い出そうしていた言葉だった。

 バーク島近辺の住民の中に、ああいった服装をした民族は居ない。

 

「浜辺に居たのは、本当に彼女だけだったの?」

 

「……分からない。でも多分、彼女だけだと思う。トゥースが反応しなかったからね。そもそも、トゥースが何故あの子を見つけられたのも分からないんだ」

 

 不思議な話で、彼女を見つける前にトゥースは音波で周囲を探知している素振りはなかった。半ば流木に覆われていた彼女を、一体どうやって見つけ出したというのだろうか。

 

 また、仮に彼女の乗っていた船が嵐で沈んだとすれば、他の生存者は絶望的だ。むしろ彼女だけでもこうして助かった事が奇跡だと言える。

 

「まだしばらく目を覚ます様子は無いわ。……そうだ、はいこれ彼女の」

 

 アスティがテーブルの上にどしゃりと荷物を置いた。彼女が身に付けていた物だ。

 

「ナイフ、バック、それとこのよく分かんない石ね」

 

「あの子がどこから来たのか、手がかりを探そう」

 

「えぇ……か、勝手に荷物を調べるなんて悪いよ」

 

 フィッシュの懸念はもっともだけど、身元の分からない人物を匿い続ける事は出来ない。

 最近は島のドラゴン達を狙うヴァイキングが増えている事もあり、そうした不安材料は少しでも減らしておきたかった。

 

「この石……は、ちょっと横に置いておくとして。とりあえずバックを開けてみよう」

 

 意外なことにバックの中はあまり濡れていなかった。

 あの嵐の中で海に揉まれたであろうにも関わらず、これ程の防水性を持っているとは、正直驚きだ。

 

「入ってるのは、水、食料、何かの薬と道具、あと本とペンね」

 

「本か、どれどれ。……う〜ん、フィッシュこれ読める?」

 

「貸してヒック。……まいったな、見た事ないよこんな文字」

 

 その本はどうやら図鑑らしかった。いろんな見た目の動物のイラストと共に、さっぱり分からない言語で説明が書かれているらしい。

 

 フィッシュでも分からないなんて相当だぞとアスティと目を合わせていると、そのフィッシュは図鑑を食い入るように見つめ出した。

 

「ヒック、これすごいよ。この文字も書いてある動物も見た事ないけど、それら全部に詳しい分類や特徴の記載がされてるみたいだ。こんなに完成度の高い図鑑は初めてみた」

 

 未知の知識に興奮している様がありありと見て取れる。こうなったフィッシュはもう誰にも止められない。間髪入れる隙もなくフイッシュは話を続ける。

 

「詳しい意味は分からないけど、よく見ると全ての動物のページの同じ場所、同じ欄に共通の記号が使われている箇所があるんだ。おそらくこれは、これらを系統別に分類しているんだよ。〇〇種とか‪✕‬‪✕‬科とか。まさしくこれは科学的に裏打ちされた学問書だ!」

 

「あ〜……それってつまり、これはドラゴン図鑑ってこと?」

 

 また始まったという顔を隠す気もしないアスティがそう尋ねると、フィッシュはパラパラと図鑑を捲りながら、たぶん違うと答えた。

 

「確かにドラゴンらしき動物の絵は多いけど、ドラゴン以外の動物についても書かれてるみたいだよ。例えば、これとか」

 

 フィッシュが図鑑を捲るのをやめて、こちらにページを差し出してくる。そこには、よく分からない文字の羅列と共に、見たことの無い動物の姿を描いたイラストがいくつかあった。

 

「これ猫、なのか? なんか二足歩行して武器持ってるけど」

 

「こっちは猿? ゴリラ? こんなピンク色したやついるのかしら」

 

 そのままペラペラと図鑑を眺めるものの、一向に僕らの知る動物は出てこない。一体どこに住んでいる動物の図鑑なんだろうか。

 

 彼女の出自を探る目的で始めたものだったのだけど、いつの間にか3人共々その未知の図鑑の虜となっていた。

 

 そして僕は、それを見つけた。

 

「あ、これ、ドラゴンじゃない?」

 

 その(ドラゴン)は、少なくともバーク島では見かけたことの無い種だった。

 

 

 

 

 

 

 

 




はてさて……

ヒックが見つけた女の子のオトモンは?

  • 空の王者 火竜リオレウス
  • 陸の女王 雌火竜リオレイア
  • 絶対強者 轟竜ティガレックス
  • 漆黒の影 迅竜ナルガクルガ
  • 大海の王者 海竜ラギアクルス
  • 無双の狩人 雷狼竜ジンオウガ
  • 爆ぜる双腕 砕竜ブラキディオス
  • 災厄の黒き蝕 黒蝕竜ゴア・マガラ
  • 千塵の烈鱗 千刃竜セルレギオス
  • 灼熱の刃 斬竜ディノバルド
  • 妖艶なる舞 泡狐竜タマミツネ
  • 激怒招雷  電竜ライゼクス
  • 不動の山神 巨獣ガムート
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