【ヒックとドラゴン】バーク島のモンスターライダー   作:さざめく葉っぱ

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襲撃者たち

 

 

 僕らは今、バーク島上空を散らばって飛行している。

 ソフィアはバーク島の海岸に漂着していた。ならば、彼女の相棒であるリオレウス──レウスもきっと近くにいるはずだ。

 

 そう考えた僕はトゥースの後ろにソフィアを乗せて、彼女を見つけた海岸付近を捜索していた。

 

 しかし、視界の開けた海岸にレウスらしき影は見えない。彼女の図鑑によれば、リオレウスというドラゴンはかなりの巨体だ。その派手な体色も相まって、見逃すなんて事はありえない。

 

 やっぱりもう……と頭に過ぎるも、すぐに思考から追い出す。

 弱気になるなヒック。そもそもレウス探しは僕が言い出した事なんだぞ。絶対に見つけてみせるんだ! 

 

 レウスそのものじゃなくても、なにか手掛かりは無いかと目を凝らす。だけど、いくら探してもそれらしき痕跡は見つからなかった。

 

 何か漂着してないか期待したんだけど、前回調べた時と変わらずだった。

 仕方ないから、次は森の方に行ってみる事にする。

 

 バーク島の森には、沢山の動物やドラゴン達が生息している。あの嵐の後で森は荒れてしまい、そうした動物たちも被害を受けてしまった。

 

 本当はそういった事を調べるために調査していたんだけど、まさかこんな事態になるなんて思ってもいなかったよ。

 

 上空から見ても木々に阻まれてよく見えなかったから、着地できそうな広い場所を探して地面に降り立った。

 

 未だに地面はぬかるんでいて、辺りには疎らに霧がたちこめていた。倒木や風で折れた太い枝が散乱する光景は、あの嵐の猛烈さを物語っているようだ。

 生き物の気配の無い森は、不気味な静寂に包まれている。

 

 ……いや、おかしい。いくら嵐が酷かったと言っても、既に過ぎ去ったあと。そろそろ巣穴から出てきてても良いくらいだ。

 なのに動物たちは、全く姿を見せない。

 まるで、まだ何か脅威が続いてるとでも言うようだ。

 

 ソフィアも何か感じ取っているのか、鋭い目で周囲を忙しなく見回していた。

 

「うん? この足跡……」

 

 地面を観察すると、ぬかるんだ土に何か動物の足跡が残っていた。

 見たところシカや狼のような足跡ではなく、何かドラゴンの足跡のようだ。

 でも、こんな足跡は見たことが無い。バーク島に生息するドラゴンの足跡に、こんなやつはいなかったはずだ。

 

 ここにきて新種のドラゴンの痕跡を発見する事になるとはと思っていると、しゃがんで地面を見ていた僕の背中をトゥースがどついてきた。

 

 急に何するんだと顔を上げると、トゥースとソフィアは何かを警戒する目つきで周囲の草むらを睨んでいる。よく見るとガサガサと草むらの中に何かが居るようだ。

 

 ややあって出てきたのは、青い体色に赤いトサカが生えたラプトル型の小柄なドラゴン。それが2匹。

 バーク島どころか、他の島でも見たことの無い新種だ。

 

 鋭い爪と牙を剥き出しにした2匹は、少しずつこちらににじり寄ってきた。

 明らかに警戒心を抱いている様子だ。僕らに敵意は無いことを伝えないと。

 

「ま、まぁまぁ落ち着いてよ君たち。君たちのテリトリーに入ったことは謝るから……」

 

 僕は怖がらせないように手を伸ばして、ドラゴンの鼻先に触れようとする。

 

 僕がドラゴンたちと仲良くするための第一歩だ。

 仲間たちには“いつものやつ”と呼ばれてたりする。

 

 少しずつ慎重に手を伸ばして……よし、向こうも近づいてきてくれてる。このまま──

 

 その瞬間、ソフィアに思いっきり後ろへと引き倒された。

 

 そしてさっきまで僕の手があった空間を、あのドラゴンの牙が空を切った。

 

「OKOK、ちょっと凶暴なヤツみたいだ。トゥース、いったん離れよう」

 

「グルルル……」

 

 僕が攻撃されかかった事に怒ってくれている相棒を宥めて、ソフィアと一緒に再び空へと飛び上がる。

 さっき助けてくれたお礼を伝えようと彼女の方を見たけど、なんだか凄い表情をしてる。

 

 何やってんだコイツって顔だ。

 

 言葉が分からなくても表情で分かる。みんなもよくこんな顔してくるし。

 

 とはいえ彼女もライダーのはずだけど、そんなにおかしな行動に見えたんだろうか……? 

 とりあえず苦笑いをしてその場を濁しておいた。

 

 その後しばらく同じように上空から捜索を続けていると、遠くの空に爆炎が打ち上がるのが見えた。

 

 ラフとタフのドラゴンである、ヴァーク&ヴェルチのガス爆発だ。

 

 ダブル・ジップ種という双頭ドラゴンで、片方の頭から可燃性ガスを吐き出し、もう片方から火花を散らす事で爆炎を起こすという一風変わった攻撃をする。

 

 きっと何か発見したんだ! 

 

 僕とトゥースは大急ぎで彼らの元へ向かった。

 

 

 ──────────

 

 

「ラフ、タフ! どうしたんだ?」

 

「お〜来たな。見つけたぜぇ、赤いドラゴンってやつ」

 

「見つけたのはアタシだっての!」

 

 いつものように言い争いが始まる2人。この2人が役に立つなんて珍しい事もあるものだ。

 

「それで? どこにいるんだ?」

 

 このまま放置しててもどんどん話が逸れるだけ。さっさと僕が聞くと、2人揃ってドヤ顔で向こうの岩場を指さした。

 

 ……何もいない。ただの岩場だ。

 

 なんだ、またいつもみたいに悪戯(ロキ)ったのか。

 急いできて損した。さっきのドラゴン達のところに戻ろう。

 

「まてまてまて! 本当にいたんだって!」

 

「そうだよ信じて!」

 

 白けた顔で踵を返そうとした僕を引き止める2人。悪戯ばかりでその言葉に信憑性の欠けらも無い彼らけど、まぁこの辺りはまだ調べてないし、見てみるか。

 

 騒ぐ双子を分かった分かったと言って宥めながら、その岩場に降り立つ。

 木々に囲まれるようにあるその場所は、剥き出しの地面に大きな岩が幾つも重なり合っていて見通しが悪い。

 

「ゲッヘッヘ、出ておいでドラゴンちゃ〜ん」

 

 気持ちの悪い笑みを浮かべながら、そこら辺の石をひっくり返すラフとタフ。そんな所にいる訳ないだろ……

 

 だけど確かに、この辺りは上空からだと影になって見えない場所がある。探す価値はありそうだ。

 ただもし近くにいるならソフィアが何か反応してるかもしれないけど、特にそんな素振りは見せない。既に去ってしまったのだろうか。

 足跡か、痕跡だけでも……

 

「うわ!?」

 

 相変わらず石をひっくり返し続けていたタフが、驚いた声を上げて尻もちをついた。

 何だ急にと振り返ると、タフがひっくり返した丸い岩が急に動き出したのだ。

 

 いや、石じゃない。巨大な虫だ! 

 人1人程もある大きなダンゴムシのような虫が、何本もある脚をめちゃめちゃに動かして起き上がろうとしている。

 なんとも気色の悪い光景だった。

 

「こ、今度は新種の虫……虫? 一体何が起こってるんだ」

 

 呆気にとられていたその時、岩場に咆哮が鳴り響いた。

 

 聞いた事のない咆哮だ。僕の知るドラゴンのものじゃない。

 岩場に反響しているせいで、何処から聞こえてくるのかも分からない。

 

 一旦隠れようと皆に声を掛けて、大きな岩の影に隠れる。

 すると、さっきまで僕らがいた場所……あの巨大な虫がいた場所に、ドラゴンが現れた。

 

「本当にいた。あれがレウスなのか?」

 

 岩の隙間からだとよく見えなかったので慎重に近づいてみる。

 そこには赤色、というより桃色に近い体色をしたドラゴンがいた。

 

 確かに見たことの無い種のドラゴンだけど……

 

「な、なんか違うような……」

 

 大きなクチバシ、エリマキのような耳、全体的に華奢な図体。

 どこか鳥のようなイメージを抱かせる姿は、図鑑で見た雄々しい姿のドラゴンとは異なっていた。

 

「────!?」

 

「い、いゃんくっく?」

 

 やはり、ソフィアのリオレウスではないらしい。

 そのイャンクックというドラゴン(?)は、さっき僕らが腰を抜かした虫をその巨大なクチバシで突っついていた。虫はその身体をまた丸い玉の形にする。

 

「何をしてるんだろう?」

 

 遊んでいるのかと思った矢先、イャンクックは丸まった虫を咥えてそのまま丸呑みしてしまった。

 どうやら捕食行動だったらしい。

 

 ちょ、ちょっと衝撃的な光景だったな……って!? 

 

「ラフ、タフ!? 何やってるんだ!?」

 

 いつの間にか双子が忍び足でイャンクックの後ろに陣取っていた。今にも飛びかかる直前といった体勢た。

 

「え? コイツが目的のやつだろ?」

 

「さっさと捕まえてやる!」

 

 小声で叫ぶという我ながら器用な事をした僕に反して、双子は大声を上げてドラゴンに飛びかかる。

 どうしてそんな所に限ってヴァイキングらしさを発揮するんだ。

 

 脚としっぽにそれぞれ組み付く2人。驚いたイャンクックは当然大暴れして2人を振り解き、吹っ飛ばした。

 

 食事を邪魔されたと思ったイャンクックは、そのエリマキのような耳を立ててラフとタフを威嚇する。邪魔したのは事実なので言い訳のしようも無い。

 接触するにしてももう少し穏当にいくつもりだったのに、怒らせちゃったら台無しだ。

 

 このままじゃ2人が危ない。僕とトゥース、あと主人達をほっといて呑気に寝始めていたヴァーク&ヴェルチを引っ張って助けに入る。

 

 ……ん? あれ、ソフィアはどこに? 

 

 気付けばソフィアは一足先にイャンクックの前に立ち塞がっていた。だけど武装は相手の体躯に比べれば随分頼りないナイフのみ。

 

 どうして皆さっさと飛び出して行ってしまうんだ。

 

 心の中でそう独り言ちるものの、状況は良くなってはくれない。

 僕らも急いで戦闘に加勢に行くのだった。

 

 

 

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