Re:ゼロ三日月湖モノガタリ   作:蒼野幽太

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月夜の舞踏とレムの幻影

 その後も澄んだ秋の空の下、スバル、レム、エミリア、オットーの四人は三日月湖のほとりで楽しいひとときを過ごしていた。風は少し冷たく、湖面は鏡のように静かに輝いていたが、彼らはバーベキューの準備に夢中だった。

 

 神龍ボルカニカが増やしてくれたたくさんの種類の魚を、エミリアがニンニクとハーブを使って香ばしい肉を焼き、オットーは火の加減を調整しながら、魚を丁寧に焼いていた。スバルはその様子を見守りながら、時折レムに話しかけていた。

 

「やっぱり自然の中で食べるご飯は最高だな! こういう時間が、何より大事だと思うんだ」とスバルは笑顔を見せた。

 

「ええ、スバル。こんな時間がずっと続けばいいのにね」とレムも優しい微笑みを返した。

 

 だが、平和なひとときは突然の出来事によって中断された。空から巨大な青いサンマがボーンとこともあろうにレムをめがけて飛び込んできたのだ。

 

「なんだあれ!?」とスバルは驚いた表情で空を見上げた。サンマは異様に大きく、光沢のある青い体が不気味に輝いていた。

 

 エミリアが少し怖がりながら「大丈夫なのかな?」と不安げに呟いたが、そのサンマはすぐに視界から消えていった。みんなは少し驚きつつも、再びバーベキューに集中し、何事もなかったかのように食事を楽しんだ。

 

 その夜、彼らは湖の宿に泊まり、昼間のバーベキューの疲れもあってか、すぐに寝入るはずだった。しかし、レムだけはなかなか寝付けなかった。昼間のでかくて青いサンマが頭をよぎり、不安な気持ちがじわじわと胸を締め付けていた。

 

 ベッドからゆっくりと体を起こすと、ふらふらと立ち上がったレムは、目の前が揺れるような感覚に襲われた。どうやら、あの青いサンマの鱗がレムの体に触れていて、そのことに気づかぬまま、毒が彼女の体に回り始めていたのだ。

 

「これは……まずい……」

 

 そのままふらつきながら、彼女は何かに誘われるようにして部屋を出た。そして、自然に足は三日月湖の方へと向かっていた。冷たい夜風が頬を撫でたが、彼女の意識ははっきりしていなかった。

 

 湖のほとりに辿り着いたレムは、そこで信じられない光景を目にした。無数の妖精や小人たちが湖の周りで賑やかに宴会を開いていたのだ。色とりどりの光が湖面に反射し、幻想的な光景が広がっていた。彼らは楽しげに歌い、リズムに合わせて踊っていた。

 

 レムはその光景に目を奪われ、気がつくと自分もその陽気なリズムに引き込まれていた。頭がぼんやりとし、まるで自分の意志ではないかのように、彼女は一枚一枚と服を脱ぎ始めた。気づけばパンツ一枚になり、妖精たちの踊りに合わせて身体を揺らしていた。

 

 その様子を偶然見つけたスバルは、慌ててレムの元へ駆け寄った。

 

「おい、レム! 何やってんだ、危ないぞ!」スバルは必死に叫びながら、レムを抱きかかえた。

 

 レムはぼんやりとした目でスバルを見つめ、何かを言おうとしたが、そのままふらりと湖に向かって歩き出そうとした。湖の底には、古い文化財が眠っていると言われており、その神秘的な力が彼女を引き寄せているようだった。

 

「ダメだ、湖に飛び込むなんて危ないんだ!」スバルは力強くレムを引き戻し、ようやく彼女を湖から遠ざけた。

 

 その瞬間、妖精や小人たちの姿は霧のように消え去り、静かな湖畔に戻った。スバルは息を切らしながら、抱きしめたレムを見つめた。彼女の顔色は蒼白で、毒がまだ体に回っているようだった。

 

「しっかりしろ、レム。お前をこんなところで失うわけにはいかないんだ」

 

 スバルはレムを抱きかかえたまま、宿に急いで戻り、エミリアとオットーに状況を伝えた。エミリアの治癒魔法とオットーの素早い手配のおかげで、レムは何とか一命を取り留めた。

 

 その夜、レムはまだ少し弱ったままだったが、スバルの腕の中で静かに眠りについた。彼女が幻覚を見た理由、湖に引き寄せられた原因はサンマの毒だけではなく、湖の底に眠る文化財が持つ神秘的な力だったのかもしれない、とスバルはふと思った。

 

 しかし今は、レムが無事であることに感謝するだけで十分だった。スバルは静かにレムの髪を撫でながら、夜明けを待った。

 

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