異能大戦ソウルギア   作:あさねこ

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カクヨム様にて投稿していた小説です
此方にも少しずつ載せていきます。
現在、忙しいため休載中ですが、そこまでは
全部載せる予定です。



SFもファンタジーも転生も、見るから楽しい

小さい頃にアニメを見て格好いい主人公に憧れた。

 

 自分と似たような年齢の少年少女達が凄い力を手に入れて巨悪と戦ったり異世界に転生したり、ファンタジーに巻き込まれて戦っていく。

 

 可愛らしいヒロインや、素敵なヒーロー。

 

 憎たらしい悪役、格好いい悪役。

 

 自分もこんな風になりたいなんて、子供ながらに願っていた。

 

 布団の中で想像して、空想して、自分が最高の主人公になって活躍する。空想の中の自分は最強で最高の相棒や、素敵なヒロイン達が居てインフレしていく自分だけの世界を想像し妄想していく。

 

 

 でも、それはただの空想、この現実はそこまで甘くはない。

 

 父親の浮気から一気に始まる家庭崩壊。優しかった母はヒステリックになり、父親は暴力を振るうようになった。

 

 そんな現実に自分は何もできなかった。

 

 当たり前だ。まだ中学生になったばかりの自分に何ができるのか。

 

 行動する? 

 

 そんな行動が出来るのなら今の人生もっと良かったんだろうな。いつしか空想と妄想が自分を疲れた心を癒すだけの現実逃避に変わった。その世界でならば、家族は仲が良く、自分は最高で、何でもできて。

 

 そしてそれが終わったら思い知るのだ。

 

「あぁ、これが現実だ」と―――――

 

 

 両親が別れ自分は母の預かりになった。母親は父親の血を引いている自分を疎ましく思っていた。だから、見捨てられて置いていかれるなんてのは最悪として想像していた。

 

 母の最期の言葉を覚えている。

 

「夕飯それで食べなさい」

 

 テーブルの上に置かれていた1000円。

 

 それが自分と母を繋げる最後の証だった。

 

 その後はよくある話だ。親戚にたらい回しにされ、最終的には母方の祖父母の家に厄介になった。

 

 祖父母はとても優しい人だった。

 

 現実を諦めていた自分が、今こうして頑張って生きていられるほどにはとても良くしてくれた。

 

 だから、俺が高校を卒業してすぐに亡くなった時は涙が止まらなかった。葬儀の時に母も父もこなかった。

 

 俺はこの時本当にたった一人になったのだろう。

 

 大学は諦めて俺は直ぐに働けて金になる土木作業の仕事についた。仕事はきついし大変だが金にはなる。頑張った分だけ給料が上がるほどには優良な会社に入る事が出来た。

 

 重機の資格も取り今ではある程度の仕事も任されるほどになった。可愛い後輩や、子憎たらしい後輩も出来たし、尊敬できるような先輩もいる。

 

 俺の様な人間には十分な現実だろう。先をある程度見渡せるような現実だ。貯金もあるし、手に職もある。

 

 俺はもう空想も妄想もすることは無くなった。今の俺にはもう必要のないものだから。

 

 格好いい主人公や可愛いヒロインなどはアニメや漫画、小説を見てれば十分楽しい。家族がバラバラになっただけで俺の人生は大変になった。

 

 それに追加して、異世界転生や現代ファンタジーやらが混ざってきたら許容オーバーだ。もうそれを楽しむだけの若さはない。

 

 物語として楽しむ程度なら兎も角。

 

 だからこそ俺の今の趣味は微笑ましいものだ。

 

「ケーキ作り」

 

 お菓子も満足に食べられなかった俺に俺を引き取ってくれた祖父母は色々なお菓子を食べさせくれたものだ。

 

 そんな中でも、祖母・・・ばあちゃんが手ずから作ってくれたケーキはとてもおいしかった。何度も何度も強請ったものだ。

 

 俺の夢はその時から、主人公になりたいなんて言うバカげた夢から祖父母に「美味しい」と言って食べてもらえるケーキ作りになった。

 

 その為にケーキ作り、パティシエの勉強もしたし、小さな大会では賞も取ったことがある。思えば妥協してでも、あの時に作って食べてもらえば・・・

 

 俺は「プロになってそのケーキを食べてもらおう」と努力しつづけ、その結果、間に合わずにすべてを台無しにしてしまった。

 

 「あぁ、これが現実か」俺は悔やみパティシエの道を諦めた―――――

 

 諦めこそしたが、それでも祖父母との絆だと思うケーキ作りは今も続いている。ただの趣味になったケーキ作りだが、思いのほか皆に人気だ。

 

 高校の時出来た、今でも交友がある友人は俺のケーキを大好きだと言ってくれる。

 

 仕事場の後輩なんて、俺がケーキを持ってきたら「もう店のケーキなんて食えないっスよ!!」なんてべたぼれしてくれた。

 

 いや、あれはタダで食えるから煽ててるのかもだがな。

 

 とまぁ、子供のころの夢は記憶の隅に消えて、一人気ままに自由に暮らしている今、彼女がいないのが寂しいがいざそういうのを作ろうとなると、面倒臭さがまさり結局現状のままだ。

 

 これからもきっと、こんな風に自堕落に暮らして、30も過ぎ40も過ぎ何れは焦りだすのかもしれないが、それはその時の俺に任せよう。

 

 何せ今日はひと月ぶりに高校の時の友人が遊びに来るのだから、その為に用意していたブッシュ・ド・ノエルを振舞ってやらないとな。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

―自宅

 

「相変わらず御堂君のケーキは絶品ですね」

 

「おだててもお替りしかでないぞ?」

 

「おや、ばれましたか。ではもう少し」

 

「へいへい」

 

 俺の数少ない友人がニヤっと笑いながらケーキを頬張る。

 

 今回のケーキは久しぶりの傑作だった、相当美味いだろう?感謝して食らうが良い、土産のビールはありがたく頂いてるからな。

 

「で、仕事の方はどうよ?」

 

「いつも通りですよ、上司に頭を下げて営業先でも頭を下げて、そろそろ疲れてきました。米つきバッタになりそうです」

 

「営業マンは大変だなぁ、でもまぁそれ以外は楽だろ?」

 

「そうでもないですよ、最近なんて暑くて汗の処理とかも大変ですし」

 

「俺等は汗だくなんて当たり前だからなぁ、塩飴持ってくか? 熱中症対策に」

 

「頂けるものは何でも頂くのが僕の主義です、全力で戴きましょう」

 

 そういうと工事現場で余った塩飴の入れ物ごと袋に詰め込んでいく。こういう所がこいつらしい。

 

「あぁ、そういえば知ってます?」

 

「ん? 何かあったのか?」

 

「最近夜に不審な事件があちこちで多発してるらしいんですよ」

 

「あー、なんかテレビで見た気がするな」

 

「僕の住んでいる所でも行方不明者が出たらしくて、気を付けて下さいね?」

 

「俺みたいなのを狙う奴がいると思うか?」

 

「少なくとも僕は遠慮したいですね」

 

「だろ?」

 

 長年この仕事を続けているお陰で、俺の見た目は昔の華奢なぼっちゃんから全身やけて黒いスキンヘッドのいかついおっさんになっている。

 

 俺自身こんなのが歩いてたら脇に逸れるわって言いたくなる見た目だ。そんなのを好き好んで狙う奴がいたら逆に見てみたいもんだな。

 

「とはいえ、何かあってからじゃあ遅いですからね、御堂君のケーキが食べられなくなるのは僕の人生の内で上から3番目位にショックな事です」

 

「そりゃありがとうよ、出来る限り気を付けるさ」

 

「そうしてください」

 

 どこにでもある普通の友人同士の会話。

 

 これがフラグだなんて言ったら、この世界何がフラグになるのかわからねぇよな。強いて言えばあれだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―すまん流川、3番目位のショック、お前に与えちまいそうだわ

 

 

 

 そう自重して諦めたように項垂れた俺は、

 

 今まさに殺される瞬間だった―――

 

 よくわからないバケモノに

 

 

 

 

 

 

―1話了

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