異能大戦ソウルギア   作:あさねこ

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色々言いたい事があるけどとりあえずボコる。

 

―視点 リアリティアクセル

 

 一瞬目の前が白くなった。

 

 全力で殴られた頬がズキズキと痛む。気が抜けていたのもあったが、その一撃は今の俺にも十分な痛痒を与えるものだった。

 

 バランスを崩しその場に頽れる俺を隼人は呆れた表情と怒りの表情をないまぜにしたような顔で俺を見ている。そこには怒りはあっても憎悪は感じられない。

 

「はぁ。よくわからないけど、なんかお前の記憶がある程度入って来てるんだわ」

 

「隼人・・・? 俺は」

 

「馬鹿かお前? ホモかよ」

 

「何故!?」

 

 やめてくれ、それは流石に風評被害だ。俺はちゃんと恵という彼女のいたノーマルだ。反論しようと起き上がろうとするが、隼人はそんなもの待ってもくれずマシンガンの様に矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。

 

「違うだろ? なぁ、違うよな? ここは俺じゃなくて立川を復活させる所だろうが!? そして泣きながらお互い抱き合った後に盛大にお前がしばかれてぼこぼこにされた所を誰かに助けてもらって、女の子怖い、女の子怖いってやる所だろ!?」

 

「後半私怨と恵に対しての評価が可笑しくないか?」

 

「だまらっしゃい!?」

 

「ごふぁっ!?」

 

 隼人のヤクザキックが俺の顔面に命中する。そっちは本気じゃあなかった様でそこまでいたくなかったが、俺が望んでいた様な憎悪による攻撃とは全く違う、なんというかいつものノリそのままだった。

 

「あー、なんだ。なんか色々あったらしいが、俺も、多分立川も、別にお前の事を恨んでねぇぞ?」 

 

「だ、だが俺は、お前達を・・・!」

 

「あのなぁ? 俺達を神聖視し過ぎだっての。お前が好奇心で云々とか言う前に、俺も立川も好奇心でお前に付いて行ったんだよ。思い出せ、寧ろ俺達よりも立川の方がノリノリだったろうが・・・」

 

「・・・・そ、そういえば確かに」

 

 初めはプレイヤーになって喜んで居た俺だったが、それ以上に喜んで居たのは確かに恵だった。大人しくしてたら何処かのお嬢様にも見えるレベルの美少女だったが、中身は俺や隼人よりも性格的にパワフルで、だからこそあんな攻撃特化のソウルギアが似合っていた。

 

 だけどそれは――

 

「はぁ、お前ほんとウジウジする時はどこまでもネガティブだよな」

 

「そこまで、言うか?」

 

「そこまで言わねぇとわからんだろお前は。どうせ、俺がソウルギアとして蘇ったから、俺がお前に対して基本従順だから、とか考えてるんだろ」

 

 確信を突かれて何も言えず俺は頭を俯かせる。

 

 隼人の言葉通りの事を考えていたからだ。

 

「俺が死んだのも、あいつが死んだのも、お前の所為じゃねぇ。俺達が選んで、俺達自身で決めた終わりだったんだ。つっても、信じられないか?」

 

「隼人・・・俺は」

 

「うじうじうじうじと、女かお前は、どうせならもっと可愛い女の子を用意してこい、俺に似合う様なかわいい子を! その点で言うとお前の記憶にあったテルクシノエーさんがドストライクなんだが・・・畜生、俺もあぁいうソウルギアが欲しかった。少名毘古那ってなんだよ、最初は漢字すら読めなかったぞ?」

 

 あの時と変わらないままの姿。

 

 もう見られないと思っていた隼人の姿に目頭が熱くなる。気が付けば俺は、もう流さないと決めていた涙を流し続けていた。

 

 こんな夢物語、ほんとうならあり得る筈がない。

 

 そして同時にとても悲しくなる。ここにもう一人が居ない事を。恵が居ない事を。

 

 逆に恵を蘇生させてたとしても、その時は隼人が居なくて結局俺は泣いていたかもしれない。

 

「透哉。こうやって俺がここにいるんだ、もう一つを探そうぜ?」

 

「それも、分かるのか?」

 

「プライベートの事までは分からねぇけどな。お前がどうしてきたかまで、どういう理由で戦って、ここまで来たかって事も大体わかる。大体って訳だから全部って訳じゃねぇ」

 

 立ち疲れたのか隼人は俺のベッドに座った。

 

「だから色々教えろ。お前がアホな事してた分だけフルボッコにしてやるよ」

 

「・・・・はは、お前らしいよ」

 

 目の前の隼人が本当の隼人なのか、それとも【俺の理想が作り上げた隼人】なのかはまだわからない。だからこそ、色々話をしよう、これまでの事を。隼人自身の事を色々話す事にしよう。

 

 失った時間を取り戻すために――

 

 そしていつか、恵もこの場に――

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「聞けば聞く程、ケーキ屋? が凄く羨ましいんだが? 何だよ、不思議系エロ娘と、存在が18歳未満禁止系清楚美女とギャル二人とか」

 

「ハトメヒトも増えたんだが・・・」

 

「俺特殊性癖は無いんだ。それにカオスにも耐性ないんだ」

 

「あ、あぁ」

 

 確かに、俺ともしてもハトメヒトと一緒に居るのは少々遠慮したい。見た目は可愛らしい少女なのだが、どうしてもその奇行がレイドボスの時のイルカ頭とダブってしまう。

 

 というより常に何かしらよく分からない事をしてはテルクシノエー辺りにどつかれるまでが一連の行動だ。最早解っていてやってるとしか思えない。

 

 その癖、実は意外と含蓄深い事を話したりするのでますます理解が難しい相手だ。

 

 ケーキ屋はよくあのソウルギアを御しているな。

 

 ※【注意】御せてません

 

「で? 疑いは晴れたか?」 

 

「俺も知らないようなお前の話を聞かされればな・・・てか、お前年上好きだったのか」

 

「妹とかいるとさ、そっちの方面の理想が薄れていくんだよな。気が付けば優しいおっとり系お姉さんに憧れるようになった」

 

 あぁ、それなら確かにテルクシノエーは隼人の理想に近いな。とはいえその夢はかなう事はないだろうが。

 

「寧ろお前はよく立川と付き合えたな・・・幼馴染とか無理だろ・・?」 

 

「こういう場合、お前が教えてくれた本だと幼馴染同士で奪い合いとかドロドロしたものになるとか言ってたんだが」

 

「ねぇよ。俺の好みは優しいお姉さま。立川のどこに優しいお姉さま味を感じる?」

 

「いや、意外とあぁ見えて家庭的だし、実は優しいんだぞ?」

 

「それお前に対してだけだからな? 学校で何て言われてた知ってるか? リーサルウェポンだぞ?」

 

 誰だよ、俺の彼女にそんな恐ろしい二つ名付けた奴は。

 

 確かに男勝りだし、口調も結構乱暴だし、口より先に手が出るし、寧ろ足も出るし、しまいにゃ頭突きもしてくるが。

 

「気付け、その時点で平均的な女子と違う事を気付け?」

 

「うーん・・・」

 

「うーんじゃねぇよ。あばたもえく・・・えくなんだった?」

 

「痘痕も靨だ」

 

「そうそうそれそれ」

 

 いつも通りの会話、三人でいた頃は常日頃からこんな他愛もない話をしては笑っていたものだ。気が緩むとつい目頭が熱くなるが、そうそう何度も泣いていられない。

 

 俺は意識を切り替えて、普段の俺【リアリティアクセル】としての顔を出す。

 

「これからについてだが、隼人には俺達の支援を頼むことになる」

 

「だろうな。俺のソウルギアもレベル4に底上げされてるけど、攻撃能力はからっきしのままだった」

 

「寧ろ火力は過多だ。足りないのは前衛の壁と、後方の回復系、特に回復スキル持ちは沢山居る方がいいに決まっている」

 

「それで、俺か。確かに立川じゃ前に向かってぶん殴るしか出来なさそうだしな」

 

 やめろ、俺の彼女を脳筋ゴリラみたいにいうのをやめろ。

 

 反論出来ないから。

 

「俺は構わないぜ? 寧ろ後方待機って事はサイレーンちゃんやテルクシノエーさんに、ショコラさんか? 彼女達が居るんだろ? 役得じゃねぇの」

 

「人様にソウルギアに手を出そうとするなよ?」

 

「んなことするかよ!? 俺が再び殺されるわ!!」

 

 基本人型ソウルギア、特に異性はマスターを深く愛しているらしいからな。それが盲目的ではないとはハトメヒトの言葉だが、ケーキ屋に対しては当てはまらないだろう。

 

 彼女達はケーキ屋の為なら笑顔で命を捨てられるタイプだ。それだけケーキ屋は彼女達を大事にしているし、お互いに想い合っている。

 

「スピネルちゃんは5年後かなぁ。リバティちゃんは、うーん・・・可愛いけど重い気がする」 

 

「お前はメンバー中に不和を持ち込む気かよ・・・」

 

「お前が蘇生した奴だぞ? 責任を取れよ?」

 

 あぁ、これだ。隼人は基本こんな風にチャらい奴だったな。

 

 久々過ぎて懐かしいが、この悪癖は何とかしてもらわないとならんな。恵が蘇ったら抑えてくれると思うが。

 

「つか、本当に俺でよかったのか?」

 

「どういう意味だ??」

 

「いや、今カレンダー見たんだけど、もうクリスマス近いじゃん? 立川と聖夜を過ごそうとか思わなかったのか?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 そんなことすっかり忘れていた。

 

 そうか、もうすぐ今年のクリスマスが近づいてたんだな。

 

 3人生きていた時は3人でクリスマスパーティとかやっていたのを思い出す。他の友人のパーティに行く事もそれなりにあったが、大体は俺と恵と隼人で集まってゲームしたりしながらクリスマスを楽しんでたな。

 

 今年はそれでも隼人と一緒にクリスマスを過ごせるのか。

 

「あ、俺クリスマスは女の子探して出かけてくるから」

 

「え? 一緒にクリスマスパーティしないのか??」

 

「・・・むさくるしい男二人で何を祝うんだよ・・・そりゃもしかしたらサイレーンちゃん達も混ざってくれるかもしれんけど、売り切れてる女の子を見るだけのクリスマスパーティのどこに何を楽しめばいいんだよ!?」

 

 いや、そんなハルペーみたいなことを。

 

「そういえばハルペーだったか? あいつも俺と同じ寂しんボーイだろうし、一緒に誘って女の子誘いに行くかな~♪」

 

 うん、隼人はこういう奴だったな・・・そして結局誰もひっかけられなくて俺達のパーティに戻ってきて愚痴ってたよな。

 

「おい、そこ気持ち悪い笑み浮かべてるんじゃねぇよ? あ、無理だと思ってるな!? 見てろよ! 俺とハルペーの二人で全男憧れの性の6時間クリアしてくるからよ!!」

 

「まず最初に、全員に自己紹介してからにしろ。俺の記憶をある程度受け継いでても、隼人は全員と初対面だろうが」

 

「おぉ、そういえばそうだ。透哉の記憶のせいでつい全員と身内だと思い込んでたわ」

 

 まだ蘇ったばかりで色々覚える事も多いだろうし、まずは慣れてもらわないとならないからな。

 

 恵、すまない。お前もきっと蘇らせて見せる。

 

 またいつか、俺達三人で。

 

 だが、ディザスター。俺はお前達を滅ぼす事を諦めた訳じゃあない。いつかきっと俺の様な愚か者が出て来てしまうのを防ぐためにも、こんなふざけたデスゲームはきっと終わらせてやる。

 

 絶対にだ―――

 

―108話了

 

 

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