異能大戦ソウルギア   作:あさねこ

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世捨て人でも欲しいものはあるものです。

 

 

 田舎にある小さな一軒家。限界集落ではないが、それに近いレベルで人が少なく、来年には最後まで残っていた中学校も閉鎖する事になっている、そんな場所に、彼は住んでいた。

 

 前回のラストミッションに参加していなかったレベル4のプレイヤー。

 

 【レヴォリューション】

 

 いつもの様に墓前にお供え物を乗せ、読経を始める。中学生の子供とは思えないほどのしっかりした読経は、静かに墓前に流れていく。

 

 立てられた写真には、父と母、妹の写真がそれぞれ並べられていた。

 

 やがて読経が終わり、彼の一日が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正直な話、今回のラストミッションは参加できない理由があったのだ。

 

 その日は丁度、彼の家族が事故で亡くなった日。喪に服すためにも前回の参加は諦めていた。普段からほぼ総てのミッションに参加している彼にとって1回程度の休みは何の影響もない。

 

 あともう一つの理由は単純に田舎から遠かった。

 

 基本的に面倒くさがりなのだ。

 

 静かな一軒家、いつもの様に彼の一日が始まる。

 

「毎日毎日、真面目だねぇ本当に」 

 

「煩いな婆さん。寧ろあんたみたいに不真面目なのがおかしいんだよ」

 

「長く生きてると色々適当にやっていかなきゃ、人生疲れちまうのさ」

 

 ぼーっとこたつでみかんを食べているとその後ろに彼の祖母が立っていた。しっかりした体格で、今年で90を超えるとは思えない老人だ。

 

 一人になった彼を受け入れた祖母で、今まで育ててくれた恩のある人間ではあるが、人間性はそこまで尊敬できるものではない。何せ破天荒だし、無神論者なので死んだ人間に魂なんてないし、輪廻転生とかあるわけないだろうと色々な所に喧嘩を売る様な老人である。

 

 最近高くなりつつあるタバコに文句を付けながらも毎日吸っているし、何れ肺炎で死ぬんじゃないかと思えど、目の前のこれが死ぬとは彼も思えなかった。

 

 なにせ、彼女は自分より強いのだ。

 

「折角の最後のミッション、結構稼げたんだから行けばよかったのにねぇ」

 

「それよりも家族との時間を大事にしたかったんだよ」

 

「基本ドライな癖にそういう所は信心深い、あたしの孫とは思えないねぇ」

 

「そりゃどうも」

 

 そう、目の前の彼女もまたプレイヤーなのだ。それもかなり古参のプレイヤーの一人である。レベルも8と言う最上位に属するが、彼女曰く「今のあたしなら5レベル複数に囲まれたら負けるかもねぇ」と笑いながら言っていた。

 

 逆にそのレベル5を全員ぶちのめしそうだろ、と心の中でつぶやく程には彼女は強い。だがそれでも寄る年波には勝てないのか、ミッションも最低限、ディザスターににらまれない程度にしか参加はしていないが。

 

「これからどうするんだい?」 

 

「どうもなにも、いつも通りさ。畑仕事して、鍛錬して、次のシーズンまでいつも通りに」

 

「学校位行かせてやるって何度も言ってるんだがねぇ」

 

「俺が学校? やめとくよ。誰かしら巻き込みたくねぇ」

 

 家族が無くなり、彼女に引き取られ、プレイヤーになった時に彼の人生は変わったのだ。一般人の様な幸せは諦めた。

 

 ならばせめて静かに余生を送れるように、平穏な暮らしをするために強くなって枯れ木の様な人生を送る。勿論それだけだとただの世捨て人だ、子供らしくゲームやらインターネットやらも楽しむつもりだ。

 

 目の前の老婆がそんな感じで人生をエンジョイしているのだから、孫の自分が同じ人生を送っても誰も文句は言わないと、それで怒るような両親はもう既にいないのだから。

 

「ま、好きにしな。あんたの人生だ、あたしが道を示す理由もないし、求めても無いだろう?」

 

「わかってるじゃねぇの。俺は俺の思う様に生きるさ」

 

「こりゃひ孫の顔は見れそうにないねぇ」

 

「寿命で死にそうには見えないけどな?」

 

「流石にあと500年以上は厳しいよ」

 

「俺が結婚できないみたいなこと言ってねぇか?」

 

「する気あるのかい?」

 

「・・・・・・・」

 

「ないんじゃないか。あぁ、最近の若造はそう言うのが多いねぇ。あたしが若い頃なんて結婚なんざ強制だったよ」

 

 両耳を塞いでタバコをすぱすぱ吸いながら愚痴りだす祖母の話を無視する。元々無気力的な感じの彼だが、こんな死生観の狂った生き方をしていたせいか、異性に対する欲求もほとんど残っていなかった。

 

 まだ中学生、20歳にもなっていない子供だからなのかもしれないが、そもそも異性に対する関心が極端に薄い。というよりも他人に対しての興味が薄いのだ。

 

 それでも家族が生きていた頃はまだマシではあったが、簡単にいなくなってしまった家族、そのせいか関わってもいつか死ぬか別れるのなら今のままでいいという感覚になってしまっている。

 

 だから必然的に誰かと関わる事になる学校も止めて、田舎に引き籠った。そこで死ぬまで適当にプレイヤーをやりつつ、祖母の様な自由な人生を送る。それが彼の生きる指針だ。

 

「ったく、人の話もききやしない。可愛げのない孫だよ」

 

「お互い様だろ、偏屈婆さん」

 

「口だけは減らないねぇ。あぁ、エクストラミッションが来てたよ? あんたはどうするんだい? あたしは出ないけどね」

 

「エクストラミッションか・・・どうするかね」

 

 祖母に買ってもらったスマホは今でも現役だ。新しいスマホを買おうとは思うのだが、そこまでアプリゲームに興味はないし、このレベルのスマホでも【ソウルギアGAME】は問題なく起動する。

 

 自分の部屋にはポイントで手に入れたかなり質の良いパソコンもあるので、買い替える意味がない。なにせ電話すらかかってこないのだから。

 

 アプリを開いてエクストラミッションの情報を覗く。大体のエクストラミッションはそこまで報酬が美味しいものではない。参加率も低いし、成功失敗もそこまでこれからに響いてこないので、割とどうでもいいものだ。

 

 稀に報酬が美味しかったりするのだが、大体はスルーされる。今回のも特に美味しい報酬はないのだろうと適当に流し読みしていると、そこにはえげつないものが報酬として載せられていた。

 

──────────────────────────────────────

■エクストラミッション開催 第1回

 

―ミッション内容:【ボスモンスター討伐】

 

―開催場所:◎◎地区 ◎▲地区 ~~~~

 

―適正レベル:3~5

 

―クリア報酬1:【SS以上確定LR30%ガチャチケット1枚】 

 

―クリア報酬2:【10連チケット1枚】 

 

―クリア報酬3:【蘇生薬】or【SSランク相当武具5個】※ランダム

 

―このクリア報酬は【ランダム】で【個人毎に一つ】だけ配布されます。

 

―参加制限:【3レベル】以上のプレイヤーが【6人パーティ】を組む事

 

──────────────────────────────────────

 

 目をゴシゴシと擦ってみたが、書いている事に嘘はなかった。クリア時のポイント報酬こそなかったが、それを無視して余りあるほどの豪華報酬のセットだったのだ。

 

 最低限、10連チケット1枚だけだったとしても3000ポイント分の報酬の様なものだ。多くても1000ポイントしか貰えない筈のエクストラミッションとは思えない破格の報酬。これは参加する意味もある・・・と見続けて最後の一文で冷静になった。

 

―参加制限:【3レベル】以上のプレイヤーが【6人パーティ】を組む事

 

「あ、こりゃ無理だ」 

 

「なんだい、友人や共闘できる奴もいないのかい」

 

「そんな奴なんていな――」

 

 そこでふと思い出す。この前の緊急ミッションの時に一時的にだが共闘した彼等の事を。

 

 人型ソウルギアを二体つれた初心者っぽいおっさんと、自分と似たような年齢のプレイヤー、そして重症を負ってはいたがかなり強そうなプレイヤー。あまり興味はなかったが、あの時共闘したと言う事でそれなりに覚えている。

 

 だが、同時にそこまで深く関わろうとしなかったので、つながり自体はほとんどない。だが唯一、一人だけ連絡が取れるプレイヤーが居た。

 

「バンカーに連絡入れてみるか」

 

 年齢が近かった【ソウルギア:マキシマムバンカー】の使い手である彼とはつい最近、町に買い物に出た時にひょんなことから再会していた。

 

 そこで前回の礼などを言われて食事なども奢ってもらい、喧々諤々あった後気が付いたら連絡先を貰っていたのだ。彼としてはそんなつもりはなかったのだが、意外にもバンカー自身それなりに話しやすく、本当に気が付いたらと言った感じで、自然と知人の様な関係になっていたのである。

 

 だがそのおかげでうまくいけばこのミッションに参加できる可能性が出来た。本来なら全く興味のないミッション、参加しなくてもいい以上基本自堕落な彼なら非参加で通すが、今回のあからさまに狙っているかの様な報酬、出来るならばレジェンドのスキルが出るガチャチケットを狙いたいと考える。

 

 蘇生薬は前にプレイヤーでなければ蘇生出来ないと知っているので一切興味がなかった。家族が死んだのは事故死なので、プレイヤーでもない彼等に使う事など出来ないし、そもそも使うつもりもない。

 

 既にこの年齢で人生は辛い事の方が多い事を理解している彼は、家族をわざわざそんな地獄に戻すのは可哀想だと思っていた。というよりも死んで生き返ったら色々面倒くさい事になる。目の前の婆さんに丸投げでもすれば次はどんなことをやらされるかと身震いした。

 

「レジェンドスキル。手に入れば更に安定するだろうしな、確率3割はそれなりだろ?」

 

「馬鹿だね、100%以外は当たらないのと同じさ」

 

「ほんと嫌な事ばかり言う婆さんだな。早く天に召されちまえ」

 

「はっ。あたしは後100年は生きる予定だよ」

 

 冗談の様に言う祖母だが、これが意外と冗談ですらない。何せ彼女はめったにいない時空魔法の良相性の使い手なのだから。

 

 その気になれば本気で後100年所か、ミッションで殺されでもしない限りは永遠に生きてそうだなと少々辟易する。

 

 何にせよ出来ればこのミッションには参加しておきたい、他の報酬も悪くはないしバンカーに連絡すればうまくいけば6人位集める事も出来るのではと淡い期待を寄せ、連絡先を受け取って以降一度も連絡した事のない、彼に連絡を入れたのだった。

 

―114話了

 

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