異能大戦ソウルギア   作:あさねこ

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急に複数現れると覚えられない現実

 辺りに人は居なかった。

 

 俺達はミッションの現場にやってきている。

 

 辺りには人っ子一人居ない。基本的にミッション中はフィールドの様な物が展開されて、現実世界と隔離されるらしい。

 

 この中でならどれだけ暴れても外部には何も伝わらないそうだ。

 

 つまり内部でどれだけ破壊工作しようとも、ミッション終了後には何事もなかったことになるらしい。便利と言えば便利だがこんな超常の力を持つ奴らが居ると思うと改めて背筋が冷えるな。

 

「ゲームに関しては徹底してるって事か」

 

「流石にディザスターもその辺りは考慮してるのでしょうね」

 

 現在時刻は21時50分。後10分でミッションが開始される。

 

 既にサイレーンの他、ジェミニ達も武器を構えて戦闘準備を整えている。サイレーンは動きを阻害しない程度のプロテクターを身に着け流川の傍に居る。ちなみに流川は防具を装備していない。

 

「お前、大丈夫なのか?」

 

「あ、防具はちゃんと身に着けてますよ。ほら、これです」

 

 そう言うと右手に付けている時計を見せてきた。

 

「これは【ガードバリア】と言うレベル3以上で購入出来る後衛用の防具です。身に着けているだけで全身にバリアが展開されるんですよ。レベル1~2程度のモンスターやソウルギアの攻撃なら全て弾いてくれます。お値段は5000ポイントほど飛びましたが」

 

「ご・・・五千万円」

 

「ど、どうしようマスター。お金マウントだよ、この人お金マウント取ってきた」

 

「畜生、ほんと畜生!!」

 

 ふざけた防具の効果もさることながら、あれ1個で5000万円という現実に無性に悲しくなる俺達二人。

 

 お前、俺だってそこそこ高給取りだが、それでも5000万なんて生涯で貯められるか難しいレベルだぞ。そんな物ポンっと買って――

 

「ジェミニの嬢ちゃんも身に着けてたな」

 

「と言うより全員に装備させてますね。人型は防御面の問題もありますし」

 

 俺が鍛錬でどれだけ頑張っても、あの腕時計がある限り無駄だったのね。

 

「世の中金か・・・」

 

「世知辛い、世知辛いよマスター・・・!」

 

「おにーさん達、意外と余裕そうだねぇ」

 

「いやぁ、あれは寧ろあぁやって誤魔化してる気がするなー」

 

 少年の方、当たりなのでやめてくれ。今のうちに少しでも緊張を解こうとしてるんですよ。

 

「まぁ、ケーキ美味しかったからね。何かあればマスターの次位には助けてあげるよ」

 

「そりゃ本気で助かるよ」

 

 この二人が助けてくれるなら俺がよほどやらかさない限りは今回は死ぬ事はないだろう。

 

 それでも怖いものは怖いが、何時かは流川達の協力も無くなる。いつまでもおんぶにだっこっては良くないしな。だからこそ今だけは全力で助けてもらう。

 

「あそこと、あそこ。ふーん4人位他の参加者いるかなぁ。うん、全員知ってる奴ばかりだから今の所PKは居ないみたいね」

 

「っ! マスターを殺しに来るプレイヤーキラー。私が頑張って見張らないと!!」

 

「寧ろサイレーンの場合は貴女が殺されないようにしないとだけどね? ソウルギアが死んでもマスターは死ぬんだから」

 

「うぐっ・・・き、気を付けるよ」

 

 ソウルギアが破壊、殺されれば同時にマスターも死ぬ。それはソウルギアが自分の魂から出来ているからだ。

 

 それを壊されれば魂が死ぬ、そうすれば残っているのは魂の無い肉体だけ、廃人一直線だ。

 

 一応【複数】所持ソウルギアがある場合は一つでも残っていれば徐々に回復するらしい。武器や乗り物型で複数展開できるタイプのプレイヤーはそれだけ有利って事だ。

 

 ジェミニの場合も、片方が万が一殺されてももう片方は生き残っていればポイントを消費することで回復することが出来るという。

 

「PKに気を付けつつモンスター退治なぁ。実際目にして戦えるかどうか」

 

「ま、だから僕がいる訳ですよ。それに御堂君が失敗してもリカバリーしますから気楽に行きましょう」

 

「気楽に、なぁ。PKが居るかもって考えるとそこまで気楽には考えにくいぞ?」

 

「PKも周辺に他のソウルギア使いが居る中で攻めてくるほど阿呆じゃありませんよ。それにこの辺りは治安の良い方です」

 

「まー、気持ちはわかるっスよ」

 

「っ!? が、学生・・・!?」

 

 俺達の会話に急に割り込んできたのは高校生位の男だった。

 

 まさかそのまま学生服でやってくるとは思わなかった。

 

 髪は金に染めているし、耳には複数のピアス。典型的な不良とかそういう感じだ。俺も見た目云々で人の事言えないが、お近づきになりたくない人種だろう。

 

「うっス、流川さん今日はよろっス。で? この見た事ねぇのは運の悪いご新規さんって所っスか?」

 

「あ、あぁ。と言うか子供まで巻き込まれるのかよこのゲームは」

 

「プレイヤーに【なってしまう】事に対象年齢なんてものはありません。子供でも老人でも、巻き込まれればプレイヤーです」

 

 苦い表情で言う流川。

 

 こういうのは当たり前という事なんだろう。俺が学生の頃にこんなものに巻き込まれたら、喜んで居ただろうかそれともふざけるなと喚いていただろうか。多分後者だろうな。

 

「そしてこんばんは佐伯君。彼は僕の知り合いでね、ついこの前巻き込まれたんだよ」

 

「あーまぁ、なんだ? ご愁傷様って事で」

 

 佐伯と呼ばれた学生が何とも言えなさそうな表情で俺を見ていた。そしてスっと視線を流川の、ではなくその隣にいるサイレーンに移す。

 

「てことは其処の美女がソウルギアかよ、いいなぁ、俺も人型が良かった」

 

「割と大変なんだよ?」

 

 流川が真顔で言い返す。

 

「マスターラブの美女ソウルギアとか勝ち組じゃないっスか!?」

 

 佐伯少年、君とはいい酒が飲めそうだ。

 

 この戦いがなければサイレーンが傍に居るだけで俺の人生バラ色だしな。

 

「それにしても君がこっちの方に参加してくれるとはね。戦闘特化の君が居てくれて助かったよ。後でポイント融通するから出来れば彼のフォローを頼んでもいいかな?」

 

「んー。 ポイントは嬉しいんスけど今回は別にいいっスよ。流川さんにゃあ、俺がなり立ての時から色々助けてもらいましたから、ここで少しでも返さねぇとふがいねぇつーか、なんつーかで」

 

 頭を掻いて苦笑しながら言う佐伯少年。

 

 流川は大体以外だ何だと言うがこう見えてとても面倒見がいいのだ。

 

 あいつが言うには俺と一緒に居たせいでお人好しが移っただのなんだの言ってたがこいつのそれは、俺なんかいなくてもきっと佐伯少年や俺を助けた時みたいに誰かに手を伸ばすんだろうと確信している。

 

 佐伯少年が一言気合を入れると俺の傍に近寄ってきた。

 

「んじゃおっさん。俺が護ってやるから適当に稼ぎな? かませ! 俺の【ソウルギア】!!」

 

「うぉっ・・!?」

 

 誰がおっさんだ―

 

 等と言う間もなく、佐伯少年の全身がまばゆい光に覆われた。俺や流川がソウルギアを展開するときの光と同じ物が、彼自身から放たれている。

 

 その光は徐々に収まって行き、そこには全身が銀色のメタリックなアーマー。それこそ特撮とかそういうのに出てきそうなヒーローの様な出で立ちの彼が立っていた。

 

「こいつが俺のソウルギア! 何れ掴む勝利の手【ヴィクトリーハンズ】!!」

 

 まるで特撮ヒーローの様にポーズをとる佐伯少年。

 

 勝利の手と言うか、全身覆ってるよな? とか色々突っ込みたい所はあるがまずなによりも俺は声を大にして言いたい。

 

「なにあれ格好いい!?」

 

 アニメやゲーム大好きな俺だが、勿論ヒーローものやレンジャー物だって大好きだった。

 

 今はあまり見ることも無くなったが、特撮ヒーローがバイクに乗ったり怪人と戦ったり、レンジャーヒーローが巨大ロボットを呼び出して巨大化怪人と戦ったりする姿には心を躍らせ楽しんでいたものだ。

 

 それを実際に目の当たりにするこの感動よ。それに学生がこういうヒーローになるってのは王道中の王道だろう。これに感激しない男の子は居ない筈だ。勿論俺も大好きです。

 

「はっ! おっさんわかってるじゃねーの!」

 

 おっさんではない、せめてお兄さんと呼んでくれないか。

 

「てか、おっさんは流川さんタイプだよな? ソウルギアに武器とか買ってやれば、ってあぁ、ポイントねぇのか。まずはレベル2だろうしな」

 

「ん、あぁいや。大丈夫だ、最低限の銃器と防具は身に着けてもらってる」

 

 俺は一歩前に足を踏み込む。

 

 時間は21時59分。あと1分だ。

 

 来ていた革ジャンを脱ぎ捨てる。軽く動けるように揃えた防具は体の動きを阻害せず、腕に巻きつけているのは対刃性能が高いバンテージ。その上に革製の腕防具を身に着けてある。

 

「それに、戦うのは俺だからな」

 

「始まります、皆さん準備は良いですか?」

 

「サイレーン!!」

 

「うん!! 行こう、マスター!! 【ブレイブシャウト】!!」

 

 

 

 

──────────────────────────────────

 

 

―MISSIONSTART!!

 

―CLEAR条件―モンスターを2500体撃破せよ!

 

―CLEAR報酬―各自1000ポイント

 

 

──────────────────────────────────

 

 

―オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

 

 大地が震えるほどの轟音が響く。

 

 サイレーンのスキルで強化されていなければ、あれだけで泣き叫んでいたかもしれない。そしてそれ以上に目の前の光景に絶句する。

 

 何もない所から溢れる程這い出して来るモンスター達。俺が初めて見たモンスターとは違う、見た目的にはなんとなく人型に見える。

 

 人型ではあるが全身が黒色か何かのヘドロみたいなものに覆われている。大きさはそのまま人間大位だろうか?

 

 それぞれが俺達を視認した瞬間這いずりながら襲い掛かってきた――

 

「なんだよこの数は!?」

 

「オラオラオラァ!! くたばりやがれ雑魚どもがあああああああ!!」

 

 俺が止める間もなく佐伯少年がいつの間にか手にしていた大剣を振り回しながら化け物達の海に突撃していく。

 

「やめろ!? 死ぬ・・・ぞ・・・!?」

 

「おおおおおりゃあああああああああ!!」

 

 突撃した佐伯少年がその場で大剣を回転しながら薙ぎ払う―

 

 その豪快な一撃は周りにいるモンスター達を紙切れか何かのように薙ぎ払っていった。

 

 まるで某無双系のゲームの様に一瞬で蹴散らされていくモンスター達。

 

「マジかよ・・・」

 

「佐伯君はあれでレベル3ですからね。あのモンスターは【レッサーグール】という名前です。数で押し切るしか得意の無い、レベル1のいわば雑魚ですね。余程の事がない限りは彼は負けませんよ」

 

 俺が呆けている間にも、辺りで戦闘が開始されていた。

 

 ジェミニの二人も銃撃したり、白兵戦闘でレッサーグールと呼ばれたモンスター達を軽く蹴散らしていた。

 

 その周りにもいつの間にかほかのプレイヤーたちが個人個人で戦っている姿が見える。

 

「にしても、数多くねぇか?」

 

「戦隊もので言うなら雑魚戦闘員ですからねぇ、数は多いですがそれだけですよ。寧ろ沢山居ないと今回のミッションは効率が悪いです。あいつらでも1体倒せば1~5ポイント位は貰えますから早い者勝ちですよ」

 

「早いもの勝ちと来たか。確かに勢い込んだはいいが、あいつらこっち迄流れてこないしな」

 

 レッサーグール達はそれこそ湧いて出てくるのだが、それを根本的からぶちのめしていくプレイヤー達の前に再生の方が追い付いていない。

 

 出てきては殺され出てきては殺されてるので、俺達の方に来れる奴の方が少ないのだ。まさしく雑兵、蹴散らされるのが役目と言わんばかりに。

 

 一応それでも数は多いので何体かは此方に向かってくるのだが。俺が動く前にジェミニの嬢ちゃんが一瞬でハチの巣にしてしまうので、本気で俺ただ立っているだけになっている。

 

「今回はかなり簡単なミッションで良かったです。これなら御堂君も無理をせずに済みますからね。多い時は5千とか1万とか出てきますし、レベル2のモンスターになればこんな簡単にはいけません」

 

「もうその時点でお腹いっぱいなんだが?」

 

「更に言えば防衛系だと目も当てられません。時間までどれだけ倒しても無限に湧いてきますし、防衛できなくて見逃したあいつらは、外で人を襲いますから。この前御堂君が襲われた時のモンスターが正にそれです」

 

 意外と世界やばいんじゃねぇの? 守り切れなかったら簡単に世界終わるだろ。

 

「一応ディザスタ―は長く遊びたい様で、外に出たモンスター達は一定時間で消えるようにはなっています。後は権力を使ってもみ消せば行方不明者が出たとか、そういう感じで押し切れる感じです」

 

「もう少し違う所に力入れてくれよ。で、実際の所、今回のこれクリアできるのか?」

 

「こちらが全員レベル1で数人しかいない、とかなら全滅でしょうね。相手は人外でこちらを殺しに来る化け物です、油断なんかしようものなら1分持たずにミンチでしょう。生き残れても精神が病むでしょうね。これはゲームですが、イージーモードなんてありません」

 

 流川達が身に着けているようなレベル1~2のモンスターならほぼ無敵の防御力があるとかなら大丈夫なんだろうが、レベル1―今の俺の様な奴らしかしなかったら、俺達は押しつぶされて全滅するのが目に見える。

 

 今こうして驚くほど気楽な状態なのはここにいる全員が俺よりずっと強いからに他ならない。

 

「お? あの子が1体わざと見逃してくれましたよ。御堂君、初実戦です」

 

「マジかよ、有難くて涙が出るね!!」

 

 一匹のレッサーグールがこちらに突っ込んできた。その速さは下手な自転車よりずっと早い。このままならあと数秒で俺と接敵する――

 

「マスター・・・頑張って!」

 

「ここまでお膳立てしてもらったんだ、これで怯えて負けてられねぇよなぁ!!」

 

 飛び掛かってくるレッサーグールに向かって俺は全力で拳を叩き込んだ―――

 

 

 

 

―12話了

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