―第1層
御堂達が踏み入れた場所は四方が壁で覆われている典型的と言わんばかりのダンジョンだった。石の壁を直線にどこまでも続いており、後ろには下がれない様になっている。ダンジョンに入ってすぐに脱出はさせないという感じなのだろう。
周囲はとても薄暗く、真っ暗闇という訳ではないがとても視認性が悪い。直ぐに片桐がドローンを飛ばし備え付けてあるライトを照らす事である程度見える様になった。
「お約束っちゃお約束だよな」
「だぁねぇ・・・んじゃさっそくあーしの出番か。【明光】っと」
ドローンのライトでもそれなりに明るかったが、クレアがセットしておいたコモン魔法の一つ【明光】を発動させる。直ぐにクレアを起点として半径6メートル弱が淡い光で包まれよく見える様になった。
光属性の魔法の一つであるコモンスキルであるこの魔法は説明文を見る限り【生活魔法】と記されており、ほとんど精神力の消費もせずに何度でも使用できる。
自身の【マジック】時間の間は、自分の意志で解除しない限り周囲を蛍光灯と同レベルの明るさで周囲を覆ってくれる魔法だ。範囲もマジックに比例する。
「・・・ずるいよなぁ、魔法。一応私も暗闇を考えて準備してたのに」
「そんなことないわよ。ここはまだ魔法が使えるから良かったけど、ダンジョンという以上魔法が使えない場所もあるかもしれない。そういう時は貴女に頼る事になるわ」
「そうか、ダンジョンだしなぁ・・・あるよなぁ」
テルクシノエーのフォローにやはりそういう場所もあるなと頷く片桐。
「まーちゃん、ここに居ても仕方ないしささっと次に行こ?」
「だな。ショコラとクレアは探索を頼むぞ?」
シーフ系のスキルをセットしてある二人が前衛に立ち、周囲を索敵しながら進んでいく。二人でも探し切れない部分やおかしい部分を見つけるために、後列でサイレーンとテルクシノエーに守られながら片桐がドローンからの情報をマシン・ザ・リバティのゴーグルの先に見える複数展開された画面から確認していた。
こうなると御堂の役目は戦いの時以外は基本付いて行くだけなので手持ち無沙汰になるが、ケーキ作り以外の時は基本的におおざっぱなので、トラップ探しや解除には致命的に向かないので仕方ないだろう。
石畳の道は歩く度にカツン、カツンと音が響く。
今の所モンスターも他のプレイヤーも見えず、怪しい気配もないので最初の階層には流石に面倒な仕掛けはないのだろうと油断していた所に、クレアが左手で全員を制した。
「タンマ。スキルに反応在り、近場にトラップあるっぽいわ」
「ま、マジか!?」
「まーちゃん達は動かないで、ここはショコラとクレアで探すから」
スキルを総動員させ何処かにセットされているだろうトラップを探し出す二人。地面や壁、天井などを事細かに探していく。
その時ショコラが地面に怪しい何かをあるのを発見した。同時に脳裏に目の前にあるものがトラップであることをスキルが教えてくれる。
「みーっけ。えーとこのトラップは・・・と」
起動条件やどういう効果があるのかを【トラップ感知】を用いて調べ上げていく。ミューズがセットしているスキルのランクは【中級】だ。【上級】スキルはSレアとなりランクアップも購入も流石に割高だったので今回はこれで行くしかなかった。
一応使い続けていればランクアップするスキルとの事なので、何度も使い続ける事でランクアップを狙っている。
「よっし、トラップ名判明っと! 【I LOVE YOU】トラップランクは下級で効果は・・・うわ」
次々と判明するトラップの名前と効果にドン引きするショコラ。
「や、やばいトラップなのか?」
「やばいというか発動したら致命的な奴・・・効果はね?」
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下級トラップ【I LOVE YOU】
感知難易度:下級 解除難易度:下級
発動条件:トリガータイプ ※今回の場合、解除せずにこのトラップを踏んだ場合
発動効果:トラップを発動させた対象を赤色の液体が包み込み融解する。
全て融解された後、その液体は常に【I LOVE YOU】と泣き続ける存在と化す
この液体は敵性を持たず、融解した存在の声帯を真似てただ朽ちる迄泣き続ける。
これによって死亡した場合、機能を使っての埋葬は出来ない
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「えぐい・・・」
起動してしまえはその時点で死亡するえげつないトラップに身震いする御堂。隣では片桐が吐きそうな表情でトラップから全力で遠ざかっている。
発見難易度も解除難易度も緩いとはいえ、その効果ははっきり言って極悪そのものだった。やはりこの辺りディザスターは難易度をはき違えてるんじゃないかと言葉を漏らす。
「一応あーしらならソウルギアだし、直ぐ復活出来るけど、ごしゅ達は絶対にちかよらないでよね」
「・・・開幕おっそろしいなぁ、解除任せるね?」
「任せて、こんなグロいのはない方が世界の為だし」
クレアとショコラが共同でスキル【トラップ解除:中級】を発動させ、見る見るうちにトラップを解除した。
解除されたトラップはそこに何もなかったと言わんばかりに消滅していく。
「ポイントがやばいと思って中級で止めてたが、上級に今からでも変えた方がいいかもしれんな」
「・・・背に腹は代えられません、脱出しないのであればそれも選択肢になりますね」
斥候系のスキルは中級まではレアで購入できる。それも基本的なミッションでは使われないので値段も安く簡単に揃えられたのだが、上級まで行くとSレアスキルとなり、ランクアップや購入費が急激に上がる。
中級からランクアップさせるだけで4000はかかるし、購入となれば7000以上するものばかりだ。ディザスター側ももしかしたらこれを見越していた可能性がある。いずれ使うかもしれないスキルではあるが、戦闘には役に立たないと言う事でこれをガチャで手に入れた以外で持っているものは極まれにいるかどうかだろう。
勿論と言ってはなんだが、流川もレヴォリューションもそれ等のスキルは何も持っていない。御堂は知らないが、強いて上げるとすればスピネルが追跡系のスキルを持っている程度である。
トラップ感知と解除、二つともを上級にするとなれば15000弱のポイントは消費する事になる。現状払えないポイントではないのだが、今回の報酬と釣り合うかと言われれば難しいので、中級で妥協していたのだ。
だが開幕からこれほどの即死トラップともなれば、ポイント惜しさに妥協などできず、直ぐにスキルショップを開こうとするが、なぜかショップを開く事が出来なかった。
「は? ショップを開けねぇ・・!? 他のページは全部移動できるのに、ショップだけダメだ!?」
「おそらくは主殿と同じ体験をしたプレイヤー達も同じであろう。ディザスター側としては、道中でお気軽に難易度を下げてもらいたくない、という所かもしれぬ。何せ、このミッションは【ダンジョンアタック】色々なゲームやTRPGなどで、行く前に買い物は出来たとしても、道中は必要な物を知った所で買う事は出来ぬであろう? 恐らくはそれを考えて、このミッション中は買い物が禁止になっているのであろうな。分かりやすく言えば、とびっこといくらは痛風にはなり辛く、白子やレバーの食べすぎは痛風待ったなしという奴だ」
最後のどうでもいい雑学はともかくとして、ハトメヒトの言う事がどうやら当たりの様で、現状同じくトラップの脅威を知ったプレイヤー達が挙ってショップや掲示板などで情報を探そうとしていたが、それに関しての閲覧と購入がすべて禁止されていた。
何度も試すとアプリに【閲覧できません】という文字が表示され。それでも何度も調べようとすると【ペナルティ】を課せられると表示されている。
御堂はショップが使えない時点で直ぐに諦めたのでその表示はまだ出ていないが、それはともかくとして、ショップが利用出来ない以上、このミッションをクリアするまではトラップに関しては今まで以上に良く調べなくてはならない事になった。
「くそ・・・厄介な事に」
「万が一のためにショコラが【帰還】の魔法使えるし、今はこれで進むしかないと思うよ」
「そうするしかないか・・・悪い二人とも負担を増やす事になっちまった」
そう言うとミューズ達に頭を下げる御堂。
「大丈夫だよまーちゃん。それにショコラ達なら万が一トラップに嵌っても」
「片方残ってれば直ぐ復活するしね~」
「というより、私達はソウルギアだから、マスターとソウルギアが1体でも残ってれば割と乙女探知が行ける」
「なるほど、我の出番であるな」
「やめい」
ガッツポーズをして我が世の春と言わんばかりにハトメヒトが躍り出た。確かに彼女なら割としょっちゅう普段の生活でもぼこぼこにされては秒で回復してたりする上、本気で死んでもギャグ体質の所為なのか、そういう存在だからなのか御堂に何のデメリットすらなく、復活してくるので単体対象のトラップで解除できない場合は本気で彼女が役に立ちそうではあった。
あと時々増えてるが、ギャグシーンだからではなく、ガチで増えているらしい。ミューズと違って戦闘力もないおまけ程度らしいが、レイドボスとして出てきた時のスキル【増えるハトメヒト】が劣化スキルとして残り続けているからと彼女が反復横跳びをしながら言っていたのを御堂達は聞いていた。同時にそのよく分からない様子に頭痛も感じていたが。
「解除は出来たし、どんどんいこっか。まーちゃんは戦闘時以外は前に絶対に出ちゃだめね?」
「こういう時はあーしらソウルギアにまかせといてよ」
開幕から不穏な状況になりつつあるが、それでもまだミッションは始まったばかりだった。
―125話了