異能大戦ソウルギア   作:あさねこ

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ピンチに次ぐピンチとか言うゲシュタルト崩壊

 

 ―消えた。

 

 そう錯覚させるほどその動きは誰の目にも捉えられない。

 

 進化させた小剣を構えながら一瞬にして倒れているイレギュラーナンバーの心臓部まで到達し、少年は全力を開放しスキルを発動させた。

 

「【百花繚乱】――!!」

 

 ―SSレアスキル【百花繚乱】

 

 1日に使用できる回数が3回までと限定されているスキルだが、それ以外にデメリットが無くとても使いやすいスキルだ。

 

 その効果は【1秒を《速剣術の連鎖スキル》を発動させるときに限り、全て使い終わるまで引き延ばす】と言う使い幅がかなり限定されているものだが、その効果は計り知れない。

 

 超高速で相手を刺突する攻撃スキル【蓮華】を発動させる。

 

 小剣に更に青白いオーラが発生し物理的な長さに攻撃速度と貫通力、そしてある程度だが攻撃力を高められる。残念な事にこのスキルの威力はそこまで高くない。だがその素早い一撃は確実に急所目掛けて自動的に放たれた。

 

 スキルによって強化された小剣の一撃が寸分違わず心臓部に突き刺さる。だがそこまでだった。この程度の威力では硬質化した表皮をある程度貫くしか出来ていない。

 

 しかしその程度の事は彼も理解している、これは【次への布石】なのだ。

 

―この攻撃【蓮華】が命中した事で次の攻撃スキルの【連鎖】が可能になる。

 

「【三散華】!!」

 

―連鎖スキル【三散華】

 

 【蓮華】を遥かに超えたスピードと貫通力、更に長さと攻撃力を追加する蓮華の上位スキル。更に蓮華から派生させた場合【絶対命中】の追加効果と相手の防御力をある程度貫通させる効果を持つ。

 

 突き刺さった小剣が更に強力なオーラを放ち表皮を貫いていく。

 

 今度は更に奥深くに刃が突き刺さる。だがそれでもその一撃はコアに届かない。

 

 故に彼はもう一連鎖発動させるのだ。

 

「【四奏蓮華】ぇええええ!!」 

 

 【三散華】からの連鎖攻撃、Sレアスキル【四奏蓮華】が発生する。先ほど以上の超高速での刺突攻撃が発生し質量を持った残像の3連撃が追加で発動し、四連撃となる。これは連鎖での攻撃の場合、更に確率で麻痺やスタンの追加効果も発生するが、それはイレギュラーナンバーには流石に届いていない・・・だが― 

 

 先ほどを遥かに超える一撃がついに表皮を完全に突き破り肉を抉り抜き貫通しコアを貫き破壊する―――

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 一瞬の連続攻撃に肉体が悲鳴を上げる。レベルが高くなったとは言え人間が繰り出せる攻撃と威力ではない。その代償として小剣を持っていた腕の血管が破裂し血飛沫が舞う。更にはスキルの連続使用によって体力と生命力が一気に消費され、彼はその場で膝をつく。

 

 ここまで僅か一瞬。ほんの数秒にも満たないが、彼の放った攻撃は一転集中の

【一撃】となり確実にイレギュラーナンバーのコアを打ち砕いた。

 

【ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!】

 

 コアを打ち砕かれたことによるイレギュラーナンバーの断末魔の叫び。脳への激痛を遥かに超えた致死の一撃による激痛が襲いその場で何度ものたうちまわる。

 

「う、うわぁぁ・・・」

 

「なんて速さだ。俺でも何も見えなかった、が・・・言った通りやってくれたな」

 

 そのまま暴れていたイレギュラーナンバーだが、やがてゆっくりと動きを止め、そのまま動かなくなった。

 

 荒い息を吐きながらもレヴォリューションが小剣を杖に立ち上がる。疲労困憊だがその目は力強く倒れているモンスターを見つめ続けている。

 

「はぁ、はぁ・・・」

 

 あの連続攻撃はレヴォリューションの必殺技だ。本来ならばもう一連鎖更に威力の高い攻撃が出来るが、その場合、今以上の消費でほとんど動けなくなる。

 

 【百花繚乱】を使用しての超高速攻撃も同時に放った事で、体力のほぼすべてを使い切ってしまっていた。一応四連鎖で留めた事で、今程度の状態で何とか立ち上がる事が出来ているが、それでも極度の疲労が襲い暫く動けずに居る。

 

『動けるまでに後2分位はかかるな―――』

 

 彼が一息つこうとした時、濃密な殺気と共にギョロリとモンスターの目が動く―

 

【ゴギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!】

 

「っ!?」

 

 完全に止まっていた筈のイレギュラーナンバーが一瞬にして起き上がり、目の前で動けずにいるレヴォリューション目掛けて正確に突撃する。

 

『まずい、硬直で動け―――』

 

【ガアアアアアアアアアアアアアアア!!】

 

 極度の疲労で動く事が出来ず、向かってくるイレギュラーナンバーの前で彼は棒立ちするしか出来ずにいた。疲労の回復までは全力で発動中の回復スキルを用いても後1分以上はかかり、この間彼はまともに動く事すら出来ない。

 

「こ、りゃ――」

 

 「終わったな」―と彼が呟こうとした瞬間、横からリアリティアクセルがイレギュラーナンバーに特攻した。

 

「これ以上やらせるかあああああああ!!」

 

 両手の剣を穿たれている弱点部分に投げつける。

 

 1本は外してしまったが、もう1本はその部分に突き刺さり、一瞬だが動きが鈍る。その間に彼は高速移動を使ってレヴォリューションの傍まで走る―

 

「アクセルの兄さん!?」

 

「捕まれえええええええ!!」

 

 リアリティアクセルが手を伸ばす。

 

 その手を無事な方の手で何とか握るとそのまま引きずられるようなその場から引き離される。その後すぐにイレギュラーナンバーの巨体がその場を走り抜けた。轢き殺そうとしていた人間が居なくなった事でバランスを崩し、それはそのまま倒れ込んだ。

 

「もう!! いい加減に!! 倒れろおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 イレギュラーナンバーが倒れ込んだ先にはチャージを終えたマキシマムバンカーが必死の形相で穿たれた弱点部分に向かって渾身の一撃を放った―

 

【ガアアアアアアアアアアアアアアア!!】

 

 回避する事も出来ずまともに攻撃を受けるイレギュラーナンバー。

 

 既に死にかけているのか一向に回復しない弱点部分が更に爆ぜた。血と肉が巻き散らされるが、それでも動きを止めるには至らない。暴れ狂いながらまだ起き上がろうと藻掻いている。

 

「これでもまだ倒れないのかっ!?」

 

 悲痛な叫び声を上げるマキシマムバンカー。

 

「どれだけタフなんだよ。こりゃ予想外だな、もう一連鎖入れておけば良かったか」

 

 リアリティアクセルに助けられたレヴォリューションが疲れたように愚痴る。

 

「動けるかレヴォリューション?」

 

「長いから【レヴォ】でいいぜアクセルの兄さん。悪いな俺のミスだ、もう少し回復出来たら今度こそ止めを刺す」

 

 進化のソウルギアで形成した小剣は未だ壊れていない。肉体が回復し疲労が取れれば先ほどの攻撃を再び繰り出すことが出来る。

 

「気にするな生きているなら次がある。ここから一度離れるのはどうだ?」

 

「いや、こいつ死にかけてるせいなのか知らないがこっちを正確に察知し始めてる」

 

【ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!】 

 

 再び起き上がったイレギュラーナンバー。

 

 片目が飛び出し、もう片方の目からは血が溢れているというのに、その目はしっかりとレヴォを睨みつけている。自分を殺し掛けた存在に強い怒りと憎しみを感じていた。それが脳を壊されていながらも敵だけを殺すと認識し、確実に捉えていた。

 

 既にそれ以外の思考は出来ていない。脳は壊され精神は既に壊れている。肉体は穿たれコアは潰され死ぬのも時間の問題だが、それでもそれはまだ生きている。そして生きている以上、自分をここまで追い込んだ人間を殺すまでは、と狂い壊れた頭の中、本能だけで動いている。

 

「あいつはどうやら俺を敵と認めたらしい。ありゃ完全に死ぬまで俺を狙うだろうな」

 

「こんな状態でもまた動こうってのか・・・!」

 

「それが緊急ミッションのモンスターって事だな。俺もまだまだ認識が甘かったよ」

 

「こんな化け物理解する方が難しいさ。なら、お前が回復するまではまた同じ事をするだけだな。その間に死んでくれれば最高だが」

 

「悪いなアクセルの兄さん、後5分あれば回復スキルで何とかなる。それまで耐えてもらえるかい?」

 

 レヴォの言葉にアクセルは頷く。

 

「二人とも大丈夫ですか!? この後はどうします!?」 

 

 同時にマキシマムバンカーが合流し指示を仰いできた。

 

「バンカー! 後5分だ! 後5分あの化け物からレヴォを護るぞ! そうすればもう一度さっきの攻撃が出来る!!」

 

「あれをもう一回・・・!?」

 

 先ほどの光景を思い出す。あの一撃をもう一度繰り出せるのなら流石に目の前の化け物も倒せるかもしれないだろう、と、再び希望が湧きあがるのを感じた。

 

「だがあいつは確実にレヴォを狙ってくる! 俺がこいつを庇いながら動くから、お前は隙が出来次第攻撃を頼む! あいつの動きを鈍らせてくれ!」

 

「わ、わかりました!」

 

【ギョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!】

 

 レヴォに向かい再び突撃してくるイレギュラーナンバーに三人は5分間の防衛戦を再び開始するのだった・・・

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「あれだけ食らって、まだ生きてるのかよ!?」

 

「ふ、不死身とかやだー!? それはずるだと思うよ!?」

 

 その様子を全て見ていた御堂達が恐れ慄いた表情で呟く。

 

 先ほどの少年の一撃は凄まじかった。完全に弱点を貫き動きを止めた瞬間は漸く勝てた、そう思った瞬間に再び起き上がってまた暴れだしている。

 

「いえ、もう恐らく半死半生です」

 

「そ、そうなのか?」

 

「そうなの!?」

 

 テルクシノエーの言葉に御堂とフェアリーズが同時に問う。

 

「ですが、ただ死ぬまで動き続けているだけですね。時間的に精神はもう崩壊してると思いますが」

 

 発狂の唄が発動してもう20分以上は過ぎ、解除されている様子はない。あれだけのダメージを受けていれば肉体的にも精神的にもほぼ死んでいるようなものだろうと当たりをつける。事実今暴れているイレギュラーナンバーは既にただ動いているようなものだった。ただ死ぬまで動き周りを破壊しているだけなのだろう。

 

 それでもその巨体と破壊力は変わらない。疲労で動けていないレヴォリューションを二人で庇いながら今も尚戦い続けている。完全に生命活動が止まるまで、たとえコアを穿たれたとしても生き続け破壊を繰り返す。

 

「あわわわ・・・そ、それじゃなんとかしないと!? そうだ! 妖精さんに助けを!」

 

「無理言うんじゃねぇ」

 

「あれにかてるとかゆめみるんじゃねー!」

 

「むかったところでなぎはらわれてげきちんだよー!」

 

 すげなく断る妖精達。

 

「行くしかないか・・・」

 

「マスター!? 流石に無理だよ!!」

 

 あの状態では全員まともに戦えないだろうと御堂が動こうとするがサイレーンが止めに入り、更にテルクシノエーが続ける。

 

「ご主人様、役割を違えてはなりません。私達の役目は彼女を護ることです」

 

「う、わ、悪い」

 

 自分の役目を思い出し思い留まる御堂。

 

「だが、あいつら大丈夫だろうか・・・」

 

「見てください急激に勢いが弱まってます、既にほぼ死んでいるのでしょう。あれならば後はほぼ放置でも勝てるかもしれません」

 

「あ、ほんとだ。さっきまではレヴォリューションって子を襲ってたのに、今はなんか暴れてるだけだね」

 

 先ほどまではレヴォだけを狙っていたが、徐々に動きが鈍くなりはじめ再びその場で暴れだし始めている様子が見えた。

 

 御堂達の場所からではわからないが既にほぼ終わっているのか、再びチャージの様なものを始めたレヴォとそれを護るようにバンカーが傍でいつでも動けるように構えている。

 

 そんな中一人アクセルだけが何処かに行こうとしている姿が見えた。

 

「な、なんとかなったのかな??」

 

「わからねぇが・・・もうそろそろ終わりそうなのは確かだな」

 

「よ、よかったぁ。何とか終わりそうで」

 

「やめろー!? それはふらぐだよー!!」

 

「なんでこうてきかくにふらぐをふむのか、ぼくにはそれがわからない」

 

「これだからますたーはだめなんだなぁ」

 

「なんでー!?」

 

 再び自分のソウルギアに弄られ始めるフェアリーズを御堂達は疲れた様子で見守っていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

―チッ、もうすこしかかりそうだな・・・・・

 

 

 

 

―24話了

 

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