異能大戦ソウルギア   作:あさねこ

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遅れてやってくるヒロイン枠は存在しない

 

 極大一閃、小柄な少女には不釣り合いな巨大な斧を用いて周囲の妖精達を全て薙ぎ払っていく。一部は攻撃を仕掛けるが意にも返さず全て返り討ちにした。

 

 完全戦闘系の彼女にとってこの程度の妖精達などレベル1のモンスターを相手にする方がまだ手強いと感じるほどだ。正直言って相手にもならない。サイレーンやテルクシノエーだからこそ苦境に立っていたが、それ以外のソウルギア使いや戦闘系であれば、同レベル帯なら妖精達に勝てる可能性はほぼない。

 

 スキルを使う事も無く、ただ力任せに虐殺する様子はバーサーカーの様だった。

 

「で? あそこで倒れてるのがプレイヤーキラーで合ってるかしら? これがミッションの敵じゃあないわよね?」

 

「う、うん。あの女がマスターで、ソウルギアに【使われてる】存在だね」

 

「へぇ・・・ソウルギアが主人に反乱を起こすとか初めて聞いたわねっと!」

 

 言いながら彼女は無造作に斧を振う。死角から襲ってきた妖精達がまた無惨に切り殺された。

 

「とりあえず皆殺しにするわ、そっちの子! 回復できるならしちゃいなさい!!」

 

「わ、わかった!」

 

 安全が確保されたサイレーンがバンカーとアクセルの回復にかかる。

 

 勿論悠長にそれを許す妖精達ではない、直ぐに襲い掛かるがその全てを斧使いのソウルギアが打ち払っていた。誰一匹とてサイレーン達に近づくことが出来ない。

 

「こ、こっちにこさせるなー!?」

 

「でも、あっちが回復されたらまずいよー!!」

 

「このままじゃ奴隷がまずいー! お願いされるまえにころされたらおわりだー!?」

 

「あつまれみんなー! ばりあをはるんだー!」

 

「あいつのうごきをとめろー!?」 

 

 妖精達が一か所に集まり彼女を封じ込めるようにしてスキルのバリアを展開させた。周囲を完全に多いドーム状になったバリアが身動きを封じるように張られる。

 

 すぐさま斧の一撃を叩き込むがあっさりと斧が弾かれてしまう。

 

 しかし彼女の表情は崩れる事はなく、寧ろ余裕の表情を浮かべている。

 

「へぇ、そこそこ硬いバリアじゃない。確かにこのバリアならそこのソウルギアの子達じゃ壊せそうにないわね」 

 

 斧をその場に投げ捨て彼女は本来のスタイルを取る。

 

 格闘の構えを取る彼女、彼女の本領は素手だったのだ。腕と足には格闘用の武具を装備し、軽くその場でジャンプする。

 

 斧を使っていたのは周囲の雑魚をいっぺんに薙ぎ払うには楽で単純に攻撃力も高かったからだ。このバリアを壊すのにも使えるがそうすれば装備が壊れる可能性がある。そうなれば要らぬ出費が発生して色々大変なので本気を出す。

 

「支援系ならともかく、完全攻撃型の私に――!!」

 

 補助スキル【極剛身点練】を発動。全身に力が漲り全てを穿つ力を与える。

 

「こんなちゃちなバリアが効く訳ないでしょおおおおおおおお!!」 

 

 地面を深く踏み込み、全身の力を一極集中させ渾身の一撃を放つ―!

 

「【恒星龍神脚】!! どっせえええええいっ!!!」

 

 カンフー映画などで見るような、もしくはメタルヒーローの必殺技の様な発光しながらの飛び蹴りがバリアをあっさりと貫き破壊した。

 

 同時に発生した余波で周囲のほぼすべての妖精が消し飛んでいく。妖精程度の防御力では彼女の攻撃に耐える事すら出来なかった。

 

「うわああああああああ!?」

 

「ど、どうしようー!? こっちにくるな――」

 

「たすけてー!?」

 

「ほら、次はどうするの? 何してきてもいいわよ? もう間に合わないし」

 

「!?」

 

 彼女の言葉に生き残っていた妖精達が周囲を把握する。

 

「マキシマムバンカー!!」 

 

「よくもやってくれたな! 妖精どもぉおおおお!!」

 

 サイレーンによって回復を連続でかけられた二人が完全に回復していた。直ぐに意識を取り戻した二人は直ぐに妖精達を駆逐していく。

 

 テルクシノエーも自由に動けるようになりフェアリーズが逃げられないように雷撃を放ち続けている姿が見えた。

 

 たった1体の乱入で全てが覆されてしまったのだ。

 

 再び斧を担いだソウルギアの少女がゆっくりとフェアリーズの傍に歩み寄る。襲ってくる妖精は彼女の歩みを一歩を止める事すら出来ない。

 

「あ―――」

 

 激痛と恐怖、その他諸々の感情で、絶望の表情になるフェアリーズ。

 

 状況は既に詰んでいた。

 

 そんな彼女を見たソウルギアの少女はいたって普通に問いかける。

 

「そんな【私は被害者です】みたいな顔してるけど、そいつらを御せなかったあんたが悪いわよ?」

 

「あ、あぁ・・・」

 

「それじゃ、せめて痛くないように殺してあげるわ」

 

 斧をゆっくりと振りかぶる。恐怖に怯えフェアリーズは恥も外聞もなく誰ともなく助けを求めた。

 

「や、やだぁ! おねがいです!! わたしを助けて!!」

 

 地獄の様な戦いに巻き込まれただけでも不幸なのに、自分のソウルギアが裏切ってやりたくもないプレイヤーキラーにならざるを得なかった事、寿命を対価にされることで何もしなくても死が近づいていることに納得など出来る訳がない。

 

 出来るならせめて普通のプレイヤーになりたかった。

 

 出来るならただのプレイヤーとして生きていたかった。

 

 これなら寧ろプレイヤーキラーに自分が殺された方がマシだったのではないかと思うほど、彼女はただ嘆き絶望するしか出来なかった。

 

 親元を離れ、一人暮らしを始め、普通の社会人として生きて、彼氏を作って、結婚して平凡な幸せを謳歌する。

 

 プレイヤーになった瞬間その全てが不可能になった。なりたくもなかったのに、死にたくなければ必死に生き延びるしかない世界に、心の弱い彼女では何もできなかったのだ。

 

 だがそんな彼女の想いなど、他の誰が知れようか。

 

「無理かな、うん」

 

 サイレーンが銃を突きつけながら言う。

 

「戦いに巻き込まれたのは同情する。クソみたいなソウルギアを掴まされた事にも同情する」

 

 回復したアクセルがさらに続ける。

 

「だが、どんな理由があれどプレイヤーキラー。ディザスター側についた時点であんたを助ける理由はない」

 

 更に続けてバンカーが悲しそうな表情で告げた。

 

「貴女は、進む道を間違えてしまったんですね。せめて、誰かが近くにいれば貴女ではなく、貴女のソウルギアの凶行を止められたかもしれないのに」

 

 少年は思う。彼女はただの被害者だと。彼女の本性は最初に出会った時のままで本当はプレイヤーキラーなんて大それたことなど出来る人間ではないと。

 

 ただ彼女が手に入れてしまったソウルギアが彼女の運命を狂わせてしまったのだと。

 

「すみません。僕には貴女を救う事は出来ない」

 

 彼女を許したとしてもソウルギアは残り続ける。それはまたいずれ妖精達が誰かを陥れ、彼女自身を苦しめる事になるだけだ。そしてソウルギアを取り外すことなどできはしない。フェアリーズというソウルギアを破壊しない限り、このような事が起こり続けるのだ。

 

 ソウルギアの破壊は魂の破壊。

 

 そうなれば最後、彼女の精神は破壊され永遠に戻ることは無い。

 

 そんな様子を見ていたテルクシノエーが今の気持ちを吐露する。

 

「ソウルギアが裏切るかもしれない。ご主人様が聞いていなくて良かったわ」

 

 心の底からほっとした表情のテルクシノエー。もし御堂にそういう風に少しでも思われてしまったら、信頼されなくなってしまったら、彼女は、彼女達は恐怖し絶望してしまう事だろう。

 

 マスターである御堂が愛おしい。その想いは言葉では言い表せないほどに。

 

 だからこそ、テルクシノエーは目の前にフェアリーズに驚いているのだ。

 

「貴女のソウルギアはどうして、そういう風になってしまったのかしらね」

 

 妖精達はもう残り数体程度になっていた。

 

 慌ててフェアリーズの場所に戻り焦り続けている。このままでは殺されてしまうと、先ほどまでの余裕を完全に失い彼女に怒鳴り散らしている。

 

「く、くそぉ! あんなよこいりのせいで!!」

 

「こ、こうなったらにげようー!!」

 

「そうだ! そうだー! そうおねがいしろー!」

 

「おまえだってしにたくねぇだろー!?」

 

 口々に自分たちの事だけしか考えていない妖精達の言葉に彼女は何も言う事が出来ない。

 

 どうしてこうなったのだろう、彼女は想いを馳せる。初めに出会った時の妖精達はとても優しく彼女を労わり護るために戦ってくれていた。

 

「はやくしやがれ! はやく!!」

 

「このままじゃ! 「おまえがのぞんだ」ぼくたちがしぬんだぞー!?」

 

「そうだー! 望めはやくー!!」

 

「私が、望んだ・・・? あ・・・」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「いつもありがとう妖精さん。でもいつも大変なお願いばかり聞いてくれて妖精さんがお願いしてほしい事とかない?」

 

「 私の為になるならそれでいい、かぁ」

 

「でも。私が感謝してるのは本当だよ? 弱い私を妖精さん達が助けてくれてるから何とか生きていけるんだし。あ、そうだ!」

 

「私の「おねがい」は妖精さん達に、「心」が芽生えますように、なんて」

 

「使う人と使われるソウルギアじゃあなくて、お互いにお願いできる、対等になれるように妖精さんが、もっと、私と仲良くなれる様に」

 

 

 

「たいとうにおねがいできるたちば、こころをもって、かんがえられるようにじぶん達の望みを持っていい」

 

「じゃあ――それを叶えるよー! 僕達とマスターはこれから願い願われ、頼り頼られるようになろうー!」

 

「マスター! 僕達はケーキがたべたいな! お菓子でもいいよ! 願いを叶える対価! 対等にようきゅうするよー!!」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 思い出す。

 

 それはお互いが幸せに生きていられると思った日。

 

 全てが崩れた日。

 

 今のような現実になってしまった日。

 

 お互いがすれ違ってしまった日。

 

「あぁ、そっか。私、あの時に間違えてたんだ」

 

 妖精がこうなったのは自分の所為だった。

 

 優しく頼りになる妖精が狂ってしまったのは、自分が自らそう願ってしまったからだった。たとえそれが目的と違っていたとしても、彼等を変えてしまったのは自分自身だったのだ。

 

 今になって、死ぬだろう直前になって彼女は気づく事が出来た。

 

 もっと前に気づいていれば、このような未来は待っていなかったかもしれない。

 

「くそ奴隷! はやくしろ! はやくー!!」

 

 もう元には戻れない妖精達。

 

 そんな妖精を見つめるフェアリーズの表情は絶望の表情から、悲しい笑顔になっていた。

 

「うん、これが【最後のお願い】です」

 

 先ほどまで感じていた恐怖はもうない。頭が割れそうな激痛も気が付けば感じていない。だから素直に言う事ができた。

 

「私の命全部あげるから―――」

 

 

― 一緒に死のう?

 

 

ソウルギア、フェアリーズは【願い】をかなえる妖精だ。対価を用いればその願いは叶えられる。そしてそれはお互いが望んでいない願いであろうとも、絶対に叶えてしまう。

 

「や、やめろおおおおおおおおおおおおおお!?」

 

「そんなお願いはかなえな―――」

 

 願いは叶えられる。

 

 妖精達がフェアリーズの心臓をそれぞれが突き刺していた。

 

 同時にゆっくりと消えていく妖精達。マスターの死亡はソウルギアの死である。

 

 死の間際、彼女は薄れゆく意識の中で考えていた。

 

──────────────────────────────────────

『あの時に、違う事をお願いしていれば

 

              こんなひどい終わり方しないで済んだのかな

 

妖精さん達は無邪気で、純真すぎたから・・・・

 

                   もっと違うやりようはあったのかな?

 

      ごめんね妖精さん、こんなのがマスターだったから

 

ごめんなさい、私のせいで死んでしまった人達

 

             せめて私が妖精さんを連れて地獄に行きますから』

──────────────────────────────────────

 

「きえる!? きえるううううううううううううううう!!」

 

「いやだあああああああ!!」

 

「じゆうに!! じゆうになったのにいいいいい!!」

 

「いやだあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 彼女が死亡すると同時に消えていく妖精達。

 

 だがその中でたった一匹、顔を伏せ何かを思い出したように、彼女のポケットからアプリの入っているスマホを取り出した。

 

 それをサイレーンの方に向かって投げ捨てる。

 

「人間とソウルギアども、家のアホの残りのポイントはそのけーたいに入ってる」

 

 妖精達の中で、少しだけいたある程度流暢に喋る事が出来る妖精、それが周りの人間に聞こえるように続けた。

 

「それをぜんぶやるので、そこの奴隷を、マスターを、墓にでもいれてやってほしい」

 

 彼女が死んだ時、例外としてこの妖精だけが昔の事を思い出していた。それは奇跡なのか単純に力が強かっただけなのか。

 

「ったく、自殺なんてするから僕も思い出しちゃったよ・・・まー、僕だけなんだけどねー。お互いにに間違いまくって、こうなったのかなー」

 

「貴方・・・」

 

 サイレーンが投げ捨てられたスマホを受け取り、今まさに消えようとしている妖精を見つめる。その表情は後悔に満ちていた。

 

「ソウルギアがこんな愚かな真似をしねーようもテメェらは気をつけやがれー?」

 

 顔だけになった妖精が最後に告げる。

 

「あっちに取り付いてた僕達も今死んだよー、緊急ミッションクリアおめでとう、死ね」

 

 最後にそんな罵倒をして妖精達は完全に消滅していった。

 

「今更遅いんだよ・・・。だが、俺が代わりに背負ってやる。あんたを巻き込んだ、ディザスターを、そしてそれに協力する奴等を俺が生きている限り皆殺しにしてやるさ」

 

「僕達のこの力が良くない方向に行くかもしれない。僕達はもっと自制心を強く持ち続けないとだめなんですね。結局僕は貴女を救えなかった、ごめんなさい」

 

 アクセルとバンカーが死んだフェアリーズに祈りを捧げる。

 

 一方理由が良く分かっていないソウルギアの少女は違う事を考えていた。

 

『途中乱入したから、何があったのかさっぱり過ぎるわね・・・!! てか、これクリア報酬貰えるのかしら?? 無理っぽい??』

 

 フェアリーズに対して思い入れも何もないので、寧ろこの後のクリアポイントが貰えるかの方が彼女にとって大事な事だった。貰えなければ来た意味もないし骨折り損のくたびれ儲けというものだ。

 

 静かになったこの場所でテルクシノエーは神妙な面持ちでサイレーンに告げる。

 

「私はご主人様を裏切らない、何があったとしても。でも万が一私がそうなったら、サイレーン、貴女が私を殺して?」

 

 御堂を傷つける位なら味方に殺される方がマシ、そう彼女は考えてサイレーンに頼んだが、サイレーンは「何言ってるの?」と言わんばかりの笑みで答える。

 

「ないない! そんな事ありえないから! 寧ろマスターを愛し過ぎてヤンデレにならないようにね?  基本人型で異性タイプは愛が重いってジェミニが言ってた! 勿論私も重いよ!!」

 

「貴女ねぇ、終わったからと言っても、せめて少しシリアスを―」

 

 言い切る前にサイレーンの持っていたスマホが振動する。

 

「あの子達にならないようにするそれだけで十分だよ、って! 緊急ミッションクリアって書いてる! やったねテルクシノエー!!」

 

 フェアリーズのスマホアプリにはまたも演出過多な感じで緊急ミッションがクリアされたと表示されていたのだった―

 

 

―29話了

 

 




プレイヤーキラー【フェアリーズ】撃破です。
最後はこのような形で終わりました。
良かれと思った願いが曲解されて伝わる恐怖という奴ですね。
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