異能大戦ソウルギア   作:あさねこ

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日々之修練ばかりしてたら世捨て人になる。

 

 ジェミニ二人と俺とソウルギア達全員での模擬戦闘が始まった。

 

 開幕の狼煙はテルクシノエーの雷撃魔法で切って落とされる。

 

 雷撃を二人は軽くいなし、少年が俺達、と言うか俺に向かって猛スピードで襲い掛かってきた。その後ろから少女が銃弾を巻き散らす。

 

 サイレーンのバフ効果で恐怖が軽減されていなかったら銃弾の雨の中を冷静でいられる自信はないが、今は頭部だけをカバーしながら少年を迎え撃つ。使っている武器と銃弾が低レベル用なので直撃しても今の俺達なら【痛い】で済むからこそ出来る芸当だ。

 

 笑みを浮かべながら鎌を俺に向かって振りかざす――

 

「へぇ――」

 

 その一撃をクレアがナイフを何本も投擲する事で防ぎ切る。その隙に俺が全力で少年の懐に入ろうとする、が。

 

「その程度じゃ甘いね」

 

「ちっ!!」

 

 雑技団みたいな跳躍で一瞬で距離を取られた。

 

 そこにサイレーンとショコラがすかさず銃撃。だが見えない速さで鎌が動いたと思えば全て無効化されていく。

 

 その間にも少女の放つ弾丸が俺達に降り注ぐ。

 

 頭部はガード出来ているものの、その全てを防ぐなんて無理な為、何発も全身に命中していた。一発一発が全力で殴られたような激痛が走るが、弾丸が肉を貫通することは無い。

 

 テルクシノエーは後列で銃撃に当たらないように場所を変えながら指揮と補助しつつ次に備えている。サイレーンとショコラは銃弾を防ぐ盾を使って防御しつつ時々射撃をしていた。

 

【全員、男を相手するように見せつつ少女を狙うわ、ご主人様暫くお願いします!】

 

【わかった! 俺はこいつを相手にすればいいんだな!】 

 

【その通りです!】

 

 魔法【念話】を使ったテルクシノエーからの指示が飛んできた。

 

 少年の方より先に少女の方を落とすことを優先する事にしたようだ。

 

 俺に出来る事は攻撃する事だけ、言われるままに痛みを堪えつつ少年に突撃する。

すぐ横ではいつの間にかナイフを補充したクレアが同じく並走していた。

 

「ふっ――!!」

 

 何本ものナイフを投擲し相手の動きを牽制しようとするが、銃撃と同じくナイフも簡単に鎌で弾かれてしまう。

 

「あーうざっ! それならこいつはどうよ――!!」

 

 更にスピードを上げクレアが少年に肉薄しスキルを発動する。

 

「【スティール】!!」

 

「ちょっ!? あぶなっ!?」

 

 スキル発動と同時にクレアの右手が青白く光り輝き少年に向かって振りかざされた。その光が少年の持っていた鎌に触れる瞬間、少年の姿がまた消えてその後ろに立っている。

 

 少年にしては珍しく焦りの表情をしていた。

 

「まさかスティールしてくるとか。あぶなかったぁ」

 

「ちっ! ごしゅっ!」

 

「おうよ! その隙逃さねぇ!! 【先手】!!」

 

 ほっとしてる隙を狙って今度は俺が少年に肉薄しスキル【先手】を発動させた。

一瞬軽く疲労がきたが、俺の身体はいつもより更に早く動き出す。

 

 その勢いのまま力任せに拳を叩きつけ――それも簡単に回避された。しかし俺は速度を緩めずに何度も攻撃を仕掛ける。隣ではナイフを投げつけ動きを阻害しているクレアが隙を伺っている。

 

「がんばれ~、私は銃を撃つだけのお仕事です♪」

 

 気楽な表情で歩く兵器と化しているジェミニの少女。そんなふわっとした感じとは裏腹に場を制圧する程の銃撃を一瞬たりとも休むことなく続けている。

 

 完全に気が緩んでいた。

 

【まだ、まだ、まだ、まだ、まだ―――――――今!!】

 

 テルクシノエーが念話で吠える。念話を受けたサイレーン達が一瞬で標的を少女に変更し総攻撃を掛けた―!

 

「ahhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh!!」

 

「スキル【ジャッジメント】!!」

 

「【闇槍魔破】!!」

 

 サイレーンの【サイレーンヴォイド】で発生した音の衝撃波が銃弾を全て弾き飛ばしながら少年と少女に襲い掛かる―

 

 少年は狙いが少女である事に気づいて少女の援護に向かうが、それを俺とクレアが必死に繋ぎとめる。

 

「させっか!」 

 

「【先手】!!」

 

「っ!!」

 

 銃弾が全て防がれると同時に必中の雷撃と漆黒の巨大な棒状の何かが少女に突き刺さ――らない。

 

【あの一瞬でスイッチも出来ると言うの・・・!?】 

 

 其処には何のダメージも受けていないジェミニの少女がいた。直撃寸前に銃器を全てその場に捨てて少年と同じ様な巨大な鎌を装備し、それを薙ぎ払う事で槍の一撃も雷撃も打ち消してしまったのだ。

 

 そのまま数回鎌を振り続けると、此方を、テルクシノエーに向かって笑みを浮かべる少女。

 

「甘いよ~? この程度なら簡単に防げ――」 

 

「【邪糸】!!」

 

 最後まで言い切らせずにショコラが邪魔法の【邪糸】を発動させていた。手のひらから振れたものを切断する凶悪な魔法の糸を飛ばす。

 

「下級、コモン魔法じゃ無意味だね♪」

 

 しかしそれも軽く払われてしまった。

 

「むっかつくぅ・・・!」

 

 魔法が簡単に防がれて怒り絶頂と言わんばかりのショコラ。

 

「けーけんが違うよ、おねーさん♪」

 

「うわメスガキうっざ!! ってうわわわわ!?」

 

 鎌から再び銃器にチェンジしなおしていた少女がまた銃を乱射する。

 

 サイレーンヴォイドの衝撃波である程度は打ち払っているが全部を打ち消す事は出来ず安全な場所まで撤退するショコラがいた。

 

【作戦を練り直します! 全員防御集中! ご主人様とクレアは少年を止めて下さい! サイレーンは歌を続けて! 相手の攻撃を抑えるの!】

 

【わかったぁ!】

 

 戦況は劣勢。

 

 分かっていた事だ、だからこそ――

 

「経験になるって事だよなぁ!!」

 

「うわ、お兄さん顔怖い」

 

「酷いなお前!?」

 

 こっちは真剣だが、あっちは余裕綽々過ぎてもうね。

 

 このままどこまでやれるかが俺達の勝負になりそうだ。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 あれから30分全力で戦ったが、結局俺達の全滅判定で模擬戦闘は終わった。

 

 結局あれから戦線は押し切れず、俺とクレアが少年に落とされたのを皮切りに全員のされて戦闘が終了した。

 

 一撃も与える事が出来なかったが、相手が手加減していたとはいえ30分も戦ってられたのは俺達もレベルアップで成長していたからだろう。

 

 レベル1~2だったら少女の銃撃を気合で耐えるなんて出来なかっただろうしな。

 

「―――――はぁっ! 疲れた」

 

 スポーツドリンクを一気に飲み干して一息つく。

 

「お疲れ様です。まだまだ動きが硬いですがうまく動けていたと思いますよ?」

 

「それはテルクシノエーのお陰だよ。俺じゃあ場を見て全員に命令なんて出来そうにねぇしな」

 

「御堂君は白兵特化ですしね、ですがいずれはそうも言ってられなくなります。テルクシノエーさんが指揮が出来なくなる可能性や分断される可能性も考慮すれば、マスターである御堂君が代わりに指揮する必要も出てきますからね」

 

 これは流川の言う通りなんだろうな。テルクシノエーが倒れてしまったら代わりが居ないのが現状だ。代わりに指揮が出来る様に練習しなくちゃならんのか、やる事が多すぎて大変だ。

 

 これに関してはサイレーンはそう言うの出来そうにないと言ってたし、俺と一緒に前衛に立っていたクレアも難しいのは無理とあらかじめ言っていた。となると残っているのは俺とショコラになる。

 

 ショコラは後衛で戦う方を好んでいるようなので、テルクシノエーに俺を含めて場の把握や指揮の仕方などを教えてもらうのも良いかもしれんな。

 

「にしても意外と耐えられるんだな。最初流川に銃弾もそのレベルなら痛いですむって言われてこいつ頭おかしくなったのかって思ったぞ」

 

「レベルの高い銃やスキルでカスタムした銃、ソウルギアの銃ならばともかく、安いポイントで買える程度の銃器ではレベル3もあれば痛いで済むんですよ、防御バフまで掛ければ目にでも当たらない限りはダメージは無いでしょうね」

 

 レベルアップする度に人間離れしていくって訳か。俺も全員からバフを貰えばただぶん殴るだけで岩とかぶち壊せるようになってたからな。それもこっちに痛みとかなかったし、感触で言えば折れやすい木を殴った程度の衝撃しかなかった。

 

 レベル3でこれなんだから高レベルになるほど超人になっていくんだろうなぁ。

 

「つか、こっちは合計5人なのに全く相手にならなかったな」

 

 レベルも1しか違わないのに、今回も前と同じく完敗した。ダメージとか以前に攻撃は当たらないしまともに近づけないし、その間に銃撃で疲弊していくし、正直勝てるビジョンが浮かばねぇ。

 

 テルクシノエーの策で少女を落とせればワンチャンあったかもだが、あっちも少年みたいに白兵も出来るとか冗談みたいな性能だっての。

 

「場数も踏んでますし、これはスキルと経験の差でしょうね」

 

「レベル4になっても経験が足りなきゃまともに戦えないって事か」

 

「御堂君は最近まで一般人だったんです、仕方のない事ですよ」

 

「だからって甘えてる訳にもいかねぇさ。今日も付き合ってくれて助かった」 

 

 既にショコラとクレアに名前を付けてから数日過ぎていた。その間流川も仕事があって此方に来られなかったので、その間は俺達だけで鍛錬などをしていたが、今日漸く時間の都合がついたので、模擬戦闘をしてもらう事になったのだ。

 

 戦う前に俺達の大体の役割も既に決まっていた。

 

 俺が前衛での白兵。

 

 サイレーンが後列で補助及び阻害。

 

 テルクシノエーが戦場把握と指揮命令、余裕が出来たら魔法攻撃。

 

 ショコラが後列での射撃や魔法攻撃。

 

 クレアが中衛での攻撃援護と補助だ。一応白兵も出来るが俺には劣るので基本は中衛になる。

 

 今回の模擬戦闘についてもあらかじめテルクシノエーが作戦を考えていた。少年を俺とクレアで抑え、その間に少女を油断させておいて超火力で落とし切る。

 

 成功すれば後は少年を削っていく――

 

 相手は強者なので必ず余裕と驕りが出るだろうから、それまでは相手の攻撃をわざと受け続け、此方が疲弊していると見せかけ油断させたら総攻撃して倒す。

 

 油断し隙を晒す所まではいけたが、それ以降は実力で押し切られてしまった。これは俺達の実力不足だ、そもそも勝てる相手でもないしワンチャン通れば程度だったけどな。

 

「スキルも使い方は慣れてきましたか?」

 

「あぁ、なんとかって所だな。使う度に疲労が半端ないんだが倒れるって程でもない」

 

「コモンやレアスキルならその程度で済みますね。SレアやSSレアの魔法や必殺技等は使い続ければ消費が激しすぎて命を落とす可能性もあります。便利だからと使い過ぎないようにしてくださいね」

 

 HPやMPが0になっても問答無用で消費するって事か。便利なものばかりだが使い方には注意が必要だな。

 

 漸く呼吸も落ち着いたので体を動かしつつ立ち上がる。

 

 比較的軽度の疲労だったサイレーン達は既に回復し、それぞれ今回の反省や改善点について話し合っていた。ジェミニの二人からのダメだしなどもついている。

 

「もう少し休んだらもう一回だな。時間は有限だし、出来る時に鍛錬しなくちゃなぁ」

 

「わかりました、後1時間食らい休んだらもう一度やりましょうか」

 

「頼むわ。所で次のミッションっていつ位に来そうだ?」

 

「多分、早くて明後日位でしょうね。覚悟だけはしておいてください」

 

 安心しろ流川。仕事を辞めた時に常に覚悟だけは完了してるからよ。

 

 大きく伸びをして体をほぐしながら次の鍛錬に備えつつ流川と談笑を続ける。

 

 次の模擬戦闘では一撃位何とか与えてやりたいもんだな。

 

 

―38話了

 

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