異能大戦ソウルギア   作:あさねこ

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新キャラ把握するのって、すごく大変ですよ?

 

―某所:ミッション開始地点(暫定)

 

 

 既に何人ものプレイヤーがその場に到着している。御堂と流川もやや遅れる事少し彼等に合流していた。見渡す限りレヴォは来ていないようだが、アクセルとバンカー、佐伯にそしてソウルギアの少女も来ている。勿論彼女のマスターは来ていなかったが。

 

 10名を超えるソウルギア使いが一斉に流川に視点を移す。その中には純粋な興味の他に尊敬の念やほっとした表情の他、一人神にでも出会ったかのように祈りを捧げている少女も居た。

 

「あ、ケーキ屋さんにジェミニさん! この前ぶりです!」 

 

 バンカーがいつものように礼儀正しく挨拶してきた。直ぐ近くではアクセルも軽くだが手を上げている様子も見える。ソウルギアの少女は他のプレイヤーと談笑中の様だ。

 

「おうバンカー。今日も頼りにしてるぞ」

 

「はい! 僕も漸くレベル3になれたのできっと役に立てると思います。所で・・・」

 

「ん、なんとなく視線の向きで分かるがなんだ?」

 

「あの女子高生みたいな二人ってもしかして」

 

「そのまさかでレベル3になったら増えたんだよな」

 

「そ、そうなんですね。凄いなぁ」

 

 バンカーも多感な時期の少年だ。サイレーン初め御堂のソウルギアはそれぞれが美女と美少女ばかり、更に増えたギャルっぽい二人を見てほぅと溜息をつく。

 

 マキシマムバンカーは頼りになる主力武器ではあるが、それでもあれだけのソウルギアが居ると人型も羨ましいと感じてしまうものだ。

 

「よ、おっさん。生きてて何よりだぜ」 

 

「おっさんはやめてくれ、ケーキ屋さんとでも呼んでくれよ」

 

「け、ケーキ屋?? ぶははははっ!? にっ! 似合わねぇ!?」

 

「よーし、お前には作ってやらん」

 

 最初のミッションの時に出会った御堂曰く佐伯少年。こう見えてレベル3のかなり強力なプレイヤーである。大体のプレイヤーがバトルネームを使用しているのに対し、「そんな物男らしくねぇ。流川さんの様に堂々と居られる漢になる」と頑なに本名で通している男だ。

 

 流川は単純に色々知られているプレイヤーが多く、名前など簡単に割れてしまったから開き直っているだけだったりするが、自分のせいで佐伯が妙な事に巻き込まれないかと少々心配もしている為、同じミッションで出会った場合は色々手助けをしていた。

 

 その度に信頼度を上げる佐伯という悪いスパイラルである。

 

「この中に防衛対象のプレイヤーは来ていませんよね?」

 

「みたいっスね。もしかしたら逃げ続けてる可能性もあるっスよ」

 

 防衛ミッション、特にプレイヤーが対象の防衛ミッションの厄介な所の一つがこれだ。ゲームの防衛対象ならば開始時にそこに集まっていればいいが、プレイヤーは生きている、更に言えば罰ゲームでほぼ死ぬのが確定しているミッションの対象ともなれば死にたくない為に逃げ回っている者も多くいるだろう。

 

 その場合、開始時にミッション開始地点に居らず防衛が出来ないという本末転倒な事も起きる事があった。

 

 一応その場合でも基本開始地点に来ているプレイヤーはちゃんと参加扱いになるのでそこは問題ない。襲ってくるモンスターも対象の近くで発生するのでただただ待ちぼうけを喰らいミッション失敗として終わるだけだ。

 

 ポイントも貰えずただの骨折り損のくたびれ儲けだが、確定して死なないので安心するプレイヤーも少なからずいる。

 

「後1時間で開始か、もしここに来なかったらどうする?」

 

「一応開始時にアプリで対象のプレイヤーがいる地点が表示されますので、近場ならば向かうのも可能ですが、その場合の成功率はほとんどありませんね」

 

「追いついた頃には手遅れと言う事ですね」

 

 バンカーも難しい表情をしつつ頷いている。

 

 周りのプレイヤーも防衛対象が居ない事で少し緊張感が薄れていた。彼等もポイントは欲しいが命には代えられない、どこかで勝手に死ぬのならどうぞ勝手に死んでくれ、そう思うのも仕方ないだろう。

 

 この中でアクセルだけは開始地点に向かうつもりではいるが、距離が離れすぎていれば流石に彼でも追いついた頃には終わっているだろう。また無理やり参加させられただけのプレイヤーが死ぬ、その事に憤りを隠せない。

 

 もう一人対象のプレイヤーがいない事に落胆している者がいた。

 

 先ほど流川に向かって祈りをポーズをとっていた少女、とある掲示板の名無しの一人だ。このミッションに流川が来ると言う事で張り切ってやってきたのにスレの>>1が此方に来るとか言って来ていない事に少々苛立っていた。

 

 彼がいればこのミッションの成功はほぼ約束されていると彼女は信じている、過去何度も彼と組んだ事があり、その度に彼に救われてきた彼女はこの地獄のような世界で光り輝く物を見たような気がした。単純に言えば厄介なファンになっている。

 

 自分で流川グッズとかまで作っているほどの凝りようだが、それを誰かに広める事はしていない。流川、危うく世界にその姿が公開される所だった。

 

 そしてそんな彼女だが、余りにも恐れ多くて流川に近づくことが出来ず、その場でファン心理で心の中で騒ぎまくる事しか出来ていない、彼女がヤンデレになった後が心配である。

 

 と言うよりも愛しのジェミニ様に近寄っているスキンヘッドのチンピラは何なのかと見えない所から威嚇していた。御堂、会った事も会話した事もない少女のプレイヤーに何故か勝手にライバル意識されている。

 

「なんか視線を感じるんだが・・・?」

 

「私がマスターを見てるからかな?」

 

「寧ろなんで見てるんだよ?」

 

「愛が溢れたからね、仕方ないね」

 

 嬉しそうにサイレーンが言う。

 

 彼女ももしかしたら安全に終われるかもと少々期待していた。そうなればポイントは貰えないが御堂の安全は確保される。

 

 今回の様なほぼ失敗する様なミッションではなく、もう少し安全で稼ぎやすい、且つサイレーンが役に立てるような一番初めの雑魚散らし様なミッションが来てほしいと考えていた。

 

 ほっとしているのはテルクシノエー達も実はそうなのだが、まだ開始までには時間もあるので、対象のプレイヤーが来る可能性は0ではない。寧ろ開始直前にプレイヤーが到着して慌ただしいままミッションが開始される可能性も考慮している。

 

 ミューズの二人は表面上はいつも通りに見える。時々御堂をからかったり、ジェミニの二人と会話などをしつつ、だが目は鋭く周囲を確認していた。

 

 軽い性格に見える彼女達二人だが、二人もまた御堂のソウルギア。彼を護るため、彼の役に立つためになら何でもするし、似合わない事もやってのける。

 

 そうこうしているうちに残り時間は20分を切っていた。

 

「こりゃ本格的にきそうにないな」

 

「困りましたね」

 

「流川さん、俺その辺り見てきますか?」

 

 既にソウルギアを展開しメタルヒーロー姿になっている佐伯が進言する。

 

「いえ、そこまではしなくて良いでしょう。佐伯君は貴重な主力です、離れた場所で襲われてダメージを受けられたも困りますからね」

 

「うっス!」

 

 流川に心配されている佐伯を見ている流川ファンの目が嫉妬に満ち溢れている。羨ましかったらしい。そのままねめつける事数秒、彼女の目が此方に走ってくる誰かの姿を捉えた―

 

「・・・来た」

 

 少女が小さく呟くと周りのプレイヤーが一斉にその方向を見ると、フルマラソンをして精魂尽き果て今にも死にそうな、と言った姿の「どこの未来世界の人ですか?」と言わんばかりのサイバーパンク姿の女性に目が留まった。

 

 ぜひゅーぜひゅーと今にも倒れそうな呼吸をしつつようやくたどり着いた彼女。途中で自転車のパンク直しておけば良かったと後悔しつつ、それでも目的地まで必死こいて走ってきたのだ。

 

 勿論ソウルギアを展開したままというこの姿で。結界も張られてない以上、彼女の姿は幾人ものに人間の目に留まったが、必死に走る謎のコスプレ人間に深く関わろうとする人間は流石にいなかった。

 

 警察のご厄介にならなかったのは単純に運である。もし捕まってミッションに巻き込まれたら警察の人達の大量虐殺が始まるのである意味助かっただろう、勿論お互いに。

 

 もう足も動きませんと言った様子で一歩一歩確実にこちらに歩いてくる姿は周りのプレイヤーも流石に動きが止まってしまう。漸く御堂達の近くまで歩いてくると、そのままパタリと倒れ込んでしまった。

 

 既に半死半生である。

 

 数か月家にこもりきりのニートがソウルギアの助けがあるとはいえ十数キロの距離を必死に走ってきたらこうもなろう、寧ろよく間に合った物である。

 

 途中でタクシー辺りでも呼べばよかったのだが、命の危機で慌てていた彼女はそこまで想い至らなかった。

 

 周りがそんな彼女の様子にドン引きしながらも、残り時間は後10分を切る。

 

 ようやく少しだけ呼吸も落ち着きゆっくりと体を起こし、そこで彼女は再び停止した。

 

 周りに沢山のプレイヤーが居たからショートしたのだ。

 

 特に近くにはケーキ屋さんという名前からは想像もできないスキンヘッドのチンピラにしか見えない御堂も立って此方を見下ろしている。

 

 まるで「テメェ何か文句でもあるのか、ぁあ!?」と言わんばかりの表情で見られガクガクと震えだす彼女。

 

 御堂自身は「大丈夫かこの人、もう既に襲われたのか?」と心配しているだけなのだが、見た目からはそんな様子は全く分からない為、コミュ障に追加して割と人間不信の彼女にとっては恐怖そのものの存在でしかなかった。

 

 そんな彼女はゆっくりと懐に手を伸ばし、ぷるぷると震えながらも胸ポケットから財布を取り出して御堂に差し出した

 

「み、みのがしてくださいぃぃぃ・・・!!」

 

「俺何もしてねぇよな!?」

 

「ひぃぃぃぃ!?」 

 

 周りから見れば完全にカツアゲである。ようやく現れた防衛対象に対してカツアゲする男という構図が広がってしまう。

 

 そんなプチ混乱を収めたのはやはり流川だった。

 

「まぁまぁ、み―ケーキ屋さんも落ち着いてください。貴女が今回の防衛対象ですね? 僕は流川、皆さんにはジェミニとして知られています。今日は全霊で貴女を護りますので、良かったら僕の指揮で動いてくれますか?」

 

 震えていた彼女が流川の言葉にハっと上向き、彼を見つめる。

 

 人の良さそうなナイスミドルになりつつあるイケメンがそこにいた。

 

 そしてジェミニと言う名前を聞いて漸く意識が再起動する。

 

「た、助けてください・・・!!」

 

「えぇ、どこまで出来るかわかりませんが全霊は尽くします」

 

 なだめるように言う流川をやはり奥の方で羨ましそうに見ている少女はともかくとして残り時間はあとわずか。流川は周りのプレイヤー全員にこれからの対処方法を改めて説明するのだった――

 

 

―41話了

 

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