異能大戦ソウルギア   作:あさねこ

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彼等には彼等なりの目的と生きる意味がある。

 

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◆防衛ミッション:プレイヤーをミッション終了まで防衛せよ―

 

◆クリア報酬:一律6000

 

◆防衛対象がプレイヤーの場合、そのプレイヤーはポイントを獲得できません。

 

◆防衛ミッションの為、通常モンスターが普段より強化されています。

 

◆モンスターは防衛対象の周りから出現しますので、気を付けて下さい。

 

◆防衛対象が死亡か破壊された場合自動的に失敗となります。

 

◆防衛対象が生き残った場合、1段階のみ緩和されます。

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 全員のソウルギアアプリに今回の情報が映し出された。

 

 ミッション開始まで出来うる限り流川が今回の戦い方について説明していたが、ほんの僅かな時間では全てを伝える事は出来ず、後は戦闘中に逐次指示を出す事になっている。

 

 それぞれがソウルギアを展開しながら防衛対象を中心に置きその瞬間に備える。

 

 各員がそれぞれ流川の言った言葉を思い出していた。

 

 ―雑魚討伐のポイントが集中しても良いなら、序盤から中盤にかけて雑魚はどうにか出来るかもしれないが、それに乗るか? という提案だった。

 

 全員一も二もなく頷いた為、これでサイレーンの即死スキルが開幕使用できるようになる。こういう雑魚モンスターもポイントが多い時の場合、一人で数多く倒すとかなりのヘイトが向けられる時もある。

 

 安全を考慮するならばサイレーンのスキルで序盤を乗り切り力を温存しなくてはならないが、これが断られたらかなり面倒だっただろう。

 

 プレイヤ―達もポイントは欲しいが一番は命が大事だ。今回のクリア報酬は6000と高い事もあり、即座に飛びついたのだった。

 

 そして、ついに時間はやってくる―――

 

 

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           【MISSION-START】

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 ミッション開始と同時に彼等の目の前に血のように赤い肉の塊が出現する。それはモンスターを出現させるコアだ。ゆっくりと血が滴るようにモンスターが地面に落ちていく。

 

 コアの総数は目視だけでも数十以上、下手すれば百を超えるのではないかと思うほどに浮かんでいた。それらから次々とモンスターが湧きだしてくる。

 

「くるぞ!! ジェミニ! 大丈夫なんだろうな!?」

 

 プレイヤーの一人があまりの数のコアにたじろぎながら叫ぶ。

 

「御堂君、行けますか?」

 

「あぁ、サイレーン頼む!!」

 

 その言葉に応える様に両手を胸の前に組んだサイレーンが大きく息を吸う。周辺には最初のミッションの時以上の数のモンスター達。だが前に見た事があるモンスターだった。

 

『マスターの為に、生き残る為に聞かせてあげる。サイレーンの唄を―!!』

 

「Aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

 サイレーンが高らかに歌い始めた。歌詞等は無い、ただ想いのままに願うままに大切な存在の為に、彼女は歌う。

 

 急に後列で叫ぶように声を上げたサイレーンを何人かのプレイヤーが何事かと彼女の方を見て、誰もがその姿に見惚れていた。

 

 その姿はまるで女神の様で、聖女の様で、このような場所に居ていい存在なのかと思わず誰もが思い、同時に周りから絶叫が響き渡った。

 

「な・・・!?」 

 

 此方に襲い掛かろうとしてきたモンスター達がその場でもがき苦しみ糸が切れた人形の様に倒れていく。しばし痙攣した後、そのままモンスターは完全に絶命していた。

 

 サイレーンが歌う度に周りのモンスターが苦しみだし、何もできずにそのまま死んでいく。あまりにも不可思議すぎる様子にこれが流川、ジェミニが言っていた事かとプレイヤー達は改めて気を取り直しいつでも動けるように待機した。

 

「これは一体・・・?」

 

 あまりの光景にバンカーが驚いている。自分もレベル3にはなったがここまで広範囲に全てを薙ぎ払う様な力はまだない。まるでモンスター達が即死しているようにしか見えなかった。

 

「バンカーもこっちにいるのか。あぁ、これはサイレーンのスキルでな、雑魚ならこれで何とかなるはずだ」

 

「ケーキ屋さんの。た、たしかあの人は支援系、レベル3になったからですか」

 

「その通りだな。にしても予想以上の効果だわ」

 

 開幕許可が取れたらサイレーンの【死へ誘う歌声】で周辺の雑魚を即死させる事で序盤と中盤、力を温存させると言う作戦をここに来る前に流川から聞かされていた。

 

 もしこれが効かない場合はジェミニ達が本気を出して周囲を薙ぎ払う事も考えていたらしいが、上手く行ってくれて御堂も一安心だった。

 

 ふとスマホを見るとすごい勢いでポイントが増えているのが見える。どうやら1体10ポイント弱ほど持っているらしく、既に1000ポイントを超え、更にどんどん増えていた。

 

「ケーキ屋のソウルギアか。ジェミニの知人と言うだけあるな」 

 

 此方にアクセルがいつの間に来ている。このモンスター虐殺がジェミニかケーキ屋さんのどちらかが行っている事だろうと思っていたようだ。

 

 武器を展開し周囲を険しい表情で見つめている。

 

「いつまで効果がある?」

 

「多分レベル2位のモンスターまでなら即死させられる筈だ。それ以上は多分無理だな。効果時間はサイレーンの喉がかすれるまでって所か」

 

「とんでもないスキルを手に入れたな。ますます敵に回したくない」

 

 前回の発狂と言い今回の即死と言い、御堂がもしプレイヤーキラーになったらと思うと寒気が走るアクセル。

 

 そんな事を話している間もモンスター達は近寄る事も出来ず次々に絶命していく。

 

 本来ならば新しいモンスターが生まれないようにコアを叩き潰していくのが戦いの定石だが、この状態なら近づく方が危ないので、それを行うのは遠距離攻撃が可能なプレイヤーのみ。

 

 既に幾つかのコアを破壊できているが、破壊した傍から新しいコアが形成され続けていく。一応ある程度まで増えるとコアはそれ以上増殖しないらしく、コアの破壊はポイントを稼ぐ程度にしか意味がない事を悟る。

 

 それが出来ない白兵系のプレイヤーはモンスターのリスキル(リスタートキル)を眺め次のフェイズまでに力を蓄えておくのみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 この状況を見てもしかしたら生き残れるかもしれないと防衛対象の女性が希望を持ち始めていた。

 

『す、すごい!? これ、もしかしたら生き残れるかも!』 

 

 傍にはメタルヒーロー姿の佐伯とテルクシノエー、ソウルギアの少女とプレイヤーの少女がカバーするように立っている。

 

 ソウルギアを纏っていない左手に輝く腕輪を見つめる。流川がミッションが始まる前に彼女に一つのアイテムを渡していた。それは彼女も知っている超強力な防具、一定レベル以下の攻撃をほぼ無効化してくれるという代物だ。

 

 万が一狙われた時の為にと言う事で渡されていた。

 

 これが彼女の最後の命綱だ。

 

 周辺ではサイレーンが歌う度にモンスター達がばたばたと倒れていく不思議な光景が広がっている。

 

「おいおい、これが少し前までレベル1のおっさんの力かよ」

 

「広範囲に歌って即死をばら撒くかぁ。仲良くしておいてよかったわね」

 

 佐伯とソウルギアの少女がサイレーンを見て改めて脅威を感じている。あれがもし敵に回れば、プレイヤーキラーになればこれほど厄介な相手は居ないだろうと。

 

 しかし佐伯は直ぐにその考えを破棄する。何故ならば御堂は佐伯が尊敬し憧れている流川をして【大切な友人】とまで言う男だ。そのような事をする奴ではないと確信を持って言える。

 

 御堂自身もそこそこ面白いおっさん。と言うのが佐伯の評価だ。恐らくそれはこれからも変わらないだろう。

 

「今の所は順調。ですが流川さんが言うにはこれが持続するのはあと30分あるかどうかって所ね」

 

 テルクシノエーは防衛ミッションについて流川から既にレクチャーを受けていた。

 

 このミッションはゲームのタワーディフェンスの様に【ウェーブ】の様なものが存在し、第一波、第二波と、徐々に難易度が上がっていくのだ。モンスターが強化されたりモンスターの総数が増えたり、ボスが出てきたりなど、枚挙に遑がない。

 

 ウェーブ自体も大体3~5回ほど発生し、大体30分前後で次のウェーブがやってくる感じらしい。

 

 サイレーンの即死スキルが効かなくなってからが本番。そこからが命を懸けた防衛戦の開始になる。

 

『皆さん聞こえますか? コアが少しずつ自壊していきます。恐らくこのウェーブはそろそろ終了でしょう。次の襲撃に備えてください』

 

 流川からの【念話】が全員に聞こえてきた。これも開始前に彼が念話を使って全員に指示を出すと言っていた事だ。

 

 更に彼のスキル効果で全員のステータス等が強化もされている。ともすればあまりの光景に心が折れそうになりそうだが、これもスキル【極大激励】を流川が発動する事で冷静で居る事が出来ていた。

 

 防衛対象の彼女が泣き叫んでいないのはその効果が関係している。

 

 もう一人の掲示板出身プレイヤーは流川からのバフ効果を受けてこっそり泣いていたが誰もそれを見る者はいなかった。

 

「貴女。防衛対象は良いけど、何かできないの?」

 

「はひっ!? わ、私・・・?」

 

「そう」

 

 感情の籠ってない瞳が彼女を射抜く。

 

「ただ守られているだけなら、せめてソウルギアで何かする位は出来ないの? それは飾り?」 

 

「こ、これは・・・」

 

 ソウルギア【マシン・オブ・リバティ】は装備者にある程度のスタータス上昇を与えるが、本当の効果は違う。

 

 その効果は――

 

「き、機械があの・・・」

 

「どこ見てるの?」

 

「はひっ!?」

 

 コミュ障発動。

 

 人形の様な表情をしているプレイヤーの少女に見つめられまともに会話することが出来ない。終始あわあわ言いながら、説明する事も出来ずぷるぷるしている。

 

 それに助け舟を出したのは佐伯だった。

 

「おいおい待てよ嬢ちゃん。あんまり虐めんなって」

 

「・・・別に虐めてない。ただ聞いただけ」

 

 ぷいっとそっぽを向く彼女。佐伯は彼女にとってあまり好ましくない存在だ。ジェミニ様に近いという嫉妬心でしかないが。

 

「大丈夫か?」

 

「は、はい!」

 

 極大激励の精神向上を受けて漸くこれなのだから、彼女の対人恐怖症とコミュ障の合併度は相当なものだろう。事実、彼女はコンビニの店員の「温めますか」にすら答える事が出来ないのだから。

 

 ゆっくりと呼吸を整え、勇気を振り絞って自分のソウルギアの効果を説明する。

 

「わ、私の【マシン・オブ・リバティ】は「機械」を限界以上に強化してそれが絶対に壊れなくなるって効果。き、機械に属するなら、それがソウルギアでもなんでも全部強化出来る」

 

 【機械】であるならばそれの限界を突破し性能を極限まで引き出す、それ以上の効果も発生させる。それが彼女、バトルネーム【リバティ】のソウルギアだ。

 

 機械を広義的に見れば、絡繰り仕掛けであろうともそれは機械になる。それの限界を簡単に突破させる事が出来る。

 

 銃や自転車なども機械と認識すれば強化可能だ。その場合、銃は絶対に壊れず全てを貫くような弾丸を反動無しで発射できる銃へと変化し、自転車は絶対にパンクせず、軽く漕ぐだけでバイク並みの速さと性能を持たせる事も可能だ。

 

「た、ただの数ポイントで買える銃でも、レベル1のモンスターを1発で倒せるように強化とか、出来る・・・よ? こ、効果時間は、い、今だと3時間かな・・・」 

 

 持続時間はソウルギアのレベル×1時間である。

 

「それ、初めに言うべき。知ってればジェミニさ、んがきっと作戦に入れてた」

 

「あぅぅぅ」

 

「その年でそんなことしても痛いだけ」

 

「ぐはぁっ!?」

 

 辛辣な彼女の言葉に今度こそ撃沈するリバティ。

 

 プレイヤーの少女からしてみれば、せめて何かジェミニ様の役に立てこの野郎と言う感じで聞いていただけなのだが、リバティの言葉は傍に居るテルクシノエーにも勿論聞こえており、既にそれを流川に伝えている。

 

『何かに使えると思いますか?』

 

『効果時間は3時間・・・使えますね。機械タイプのソウルギア持ちも幾人か見られます。全員強化してもらいましょう』

 

 心が満身創痍になっているリバティが、更に心がすり減るまで後3分――

 

 

―42話了

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