異能大戦ソウルギア   作:あさねこ

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ゆずってくれ! たのむ!

 

 

 目の前には土下座しているアクセルがいる。

 

 理由はまぁ簡単だ。「蘇生薬」を譲ってほしいって話だ。詳しい話を聞く限り、同時にプレイヤーになった二人は親友と恋人だったらしい。そして同時に二人とも失ってしまったという事だ。

 

 俺としては厄介の種にしかならなそうなアイテムだし渡してもいいとは思ってるが、佐伯少年除く全員が反対した。リバティも同じくだ。

 

「俺は別にいいんだがなぁ」  

 

「・・・ケーキ屋、流石にそれはだめ」

 

 スピネルが言う。

 

「アクセルにはそれを交換できるだけの対価がない。貴方が損するだけ」

 

 彼女の言う通りではある。用意できる対価として今すぐ渡せるのは1万ポイントと言われて流石に少なすぎるとなったのだ。一応それだけではなく、これから死ぬまでずっと手に入ったポイントの半分を俺に渡すという契約なのだが、それでも少ないそうだ。

 

「そうだぞケーキ屋ぁ? 流石にコモンあげるからレジェンドよこせって言ってんのと同じだぞ?」 

 

「んー、まぁそうなんだが」

 

 大切な人を失って、それを取り戻せるものが目の前にある。

 

 もし俺がその時、アクセルの立場だったら絶対同じ事をしていると思うんだよな。あの頃にこれがあったら・・・いや、これは流石に祖父母には使えないか。とはいえ仮定と考えるなら、きっと・・

 

 だからこそ俺はアクセルのこの行動を咎める事が出来なかった。

 

「あー・・・なんだ、アクセル。今は流石に渡す訳にはいかん」

 

「・・・・そうか、そうだよな。いや・・・無理を言っているのは俺だ」

 

「だが、今の所俺はこれを使う予定も誰かに売る予定もねぇ」

 

「ケーキ屋・・・」

 

「なぁ、流川? これポイントで売るとするならどれくらいになる?」

 

 腕を組んで難しい顔をしていた流川が俺に話を振られて考え出す。やや考えた後答えを出してくれた。

 

「正直な所、値段は付けられる代物ではないですね。最低でもレジェンドレアクラス。青天井ですよ」

 

「お前ならいくらで買う?」

 

「難しい所を突きますね・・・正直な所、相手をソウルギアに変えるというデメリットが面倒です。逆にそれが無かったら何百億という金は簡単に動くでしょうね」

 

 まぁ、動くだろうなぁ。対象が死んだプレイヤーとかソウルギアになるとかそんな制限が無かったら、俺だって譲らんわ。逆に言うとそういう制限があるから、使い所が俺にはないんだよな。

 

「最低でも50万ポイント、上は底知れませんね。それでも使いたいプレイヤーはそれこそ沢山いるでしょう」

 

「最低で50万ポイントか・・・」

 

 やっぱりそのレベルか。そりゃ1万とこの後ずっとポイントを半分じゃあ割に合わないって言うだろうなぁ。

 

「ん?」

 

 俺が考えているとつんつんとリバティが俺をつついていた。

 

「どうしたんだ?」

 

「あ、あのさ。少しいい考え浮かんだんだけど」

 

「いい考え??」

 

 リバティはニヤリと笑って、俺を連れてその場を離れた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー・・・アクセル。この条件を呑むのなら、手付け金1万ポイントで、この蘇生薬を渡してやる。後は貯まり次第49万ポイントの返済と、返済完了後も5年間のあいだ、ミッション毎に1000ポイントを俺に提供する事だ、どうする?」

 

「い、いいのか!?」

 

「御堂君? 流石にそれは・・・」

 

「まぁ、聞けって。この条件をまず飲んでもらう事になる」

 

「条件・・・」

 

「アクセル、お前さんが【蘇生薬】を持っていると大々的に公表する」 

 

「・・・・リバティ?」

 

 ギロリとリバティを見るスピネル。別に睨んでる感じはしないんだが、なんとなく眠そうな表情のせいでがっつりにらんでる感じに見える。

 

 その瞳に気圧される彼女だが、俺の背中に張り付いて答えていた。

 

「け、ケーキ屋は今すぐ、蘇生薬要らないし!? え、えと・・・これを持ってるだけでプレイヤーキラーとかそう言うのから狙われる可能性あるだろ??」

 

「確かに・・・ご主人様も現状使い道のないアイテムとはいえ、これがどこからか漏れれば狙われる可能性はある・・・か」

 

「こ、こういうのは直ぐにばれるんだ。多分今日明日には関連サイトやスレで蘇生薬の名前は出てくる・・! なら・・・狙われない様に譲ればいいんだよ!」

 

「・・・それが俺と言う事か」

 

 という訳だ。

 

 つまり俺はこのアイテムをそこまで欲っしていない、だがこれが掲示板とか色んな所から情報が漏れたら、これを欲しがっている奴らに狙われる可能性がある。

 

 それなら、アクセルにさっさと渡してこれから恒常的にポイントを貰い続ければ、レベル上げや色々な事に使えるし、最低でも50万は貰う事になるので損はしない。

 

 それが終わっても数年間はポイントを貰い続ける契約を取ればその間はアクセルも俺を無下には出来ない。こいつの性格ならば貰って逃げるなんて真似はしないだろうし、色々な契約とかも持ち込める。

 

 そしてこれをアクセルが同意すれば、リバティがあらゆるディザスター関連のサイトや掲示板などを使って「誰かがアクセルに蘇生薬を売った」という情報をばら撒くのだ。こうすれば俺ではなく「蘇生薬を持っているのはアクセル」という情報が産まれる。

 

 俺は厄介なアイテムを手渡して、ポイントを貰える上にアクセルという強い戦士をほぼずっと味方として扱う事が出来るし、俺が他の奴等から狙われるという可能性を大きく減らすことが出来る。まぁ、これは勿論0じゃあないらしいが、リバティ曰く、「あそこはちゃんとした情報とかも調べられるから信憑性は高く出来る」って事で、かなり安全になるって事だ。

 

 ちなみにこれにはリバティの技術が大いに必要なので、暫くの間一緒に戦ってほしいと持ち掛けられている。俺としても彼女をこのまま放置は流石に出来ないし、情報関連は彼女に勝てる気がしないので、寧ろ助かっている。

 

「・・・小賢しい事考える、リバティは」

 

「な、なんだよぅ。い、良いじゃないか、け、ケーキ屋は損してないぞ?」

 

「マスターが狙われなくなってポイントももらえて、彼が常時味方になる・・・意外と悪くはない?」

 

 意外と所か、アクセルに大いに恩を売れる事になるぞ? この条件を呑んでくれるなら、だが。

 

「どうする? あんたが矢面に立つ感じになるが? 無理なら無理と――」

 

「それで譲ってくれるなら、俺はあんたに従う」

 

 即答だった。

 

 これ以上無いほどの即答だった。悩む素振りすらなかったぞ。

 

「あー、だが。蘇生薬は1個しかないぞ? 二人は―」

 

「あともう一つは気合いで探すか手に入れる。例え俺のソウルギアとして存在する事になったとしても、俺は・・・二人を取り戻したい」

 

 拳をぎゅっと握りしめているアクセル。

 

「ケーキ屋。この条件飲ませてもらう。後5年等とは言わない。俺がディザスターを滅ぼすその時まで、もしくは俺が死ぬその時まで、ずっとポイントを支払う。そして、ミッションに行く時は必ず俺を呼んでくれ。あんたの行く場所に俺は必ず向かう」

 

 その表情は覚悟を決めた男の顔だった。

 

「あんたは俺が守る。絶対にだ、この恩に報いる為にも」

 

「あー・・・うんまぁ、あまり気負うなよ? 後悪いな流川、こういう感じになってよ」

 

「いえ、裏情報の事も考えていましたが、そちらは彼女が得意としてましたか。リバティさん、対処お願いしてもいいですか?」

 

「あ、えと・・・その・・・・・うん」

 

 俺以外だとコミュ障は直ってないらしく、俺の背中に隠れるリバティ。サイレーンが怒髪天を突くような顔になっておられる。

 

「うごごごごご・・・ずるい、ずるいよあの子・・・」

 

「はいはい、落ち着きなさいサイレーン」

 

 流石テルクシノエー、大人の対応だ。俺は信じていたぞテルクシノエー。流石だぜテルクシノエー。ただ握っている手が血の気引いてるのは気のせいで良いんですよね? 

 

「しっかし、蘇生薬って本当に効果あるんスかねぇ?」

 

「アイテムに関してディザスター側が虚偽の説明をすることは無いでしょう。ちゃんとしたデメリットや使用方法も書いてある以上、効果はちゃんとあると思います。どういう理屈で蘇生するのかまではわかりませんが」

 

「プレイヤー限定なのもそうだが、ソウルギアになるってのもよくわからねぇよな」

 

「け、ケーキ屋。多分それ、【一般人】には無意味にしたいからだと思うぞ?」

 

「一般人には・・・か?」

 

「うん、多分デメリットも何もなく蘇生できるとなったら、一般人・・・大金持ちとかに売るのが一番最適になるだろ? ツテの問題もあるかもだが」

 

 つらつらとリバティが俺に説明する。

 

 俺を見ながら喋ってるので流暢に会話出来ている、その為全員が彼女の言葉を聞いているが色々と的を得るような説明が続けられた。

 

 リバティが言う様にディザスターはプレイヤー以外はどうでもよく、プレイヤーになっていない一般人がその恩恵を得るのが嫌なのかもしれないと言っていた。

 

 ポイントに関してもそれが大いに出ているとのことだ。

 

 現金や物資に変換や交換は出来ても、その逆は出来ない。そういうルールなのだと思っていたが、金だけはある一般人がポイントを手に入れて~とかはさせたくないんだろうと彼女は言う。

 

 あくまでも参加者であるプレイヤーだけがアイテムや道具などの恩恵に与れる。

 

 それ以外は関係の無い存在として関わるつもりも恩恵を与えるつもりもないんじゃないかって話だった。

 

「そう考えると、ディザスターは一応プレイヤーを大事にしてるんだと思うぞ・・・? 私みたいに参加しない奴は見捨てられるんだろうけど」

 

「そこだけはきっちりしてるって事か・・・ま、とりあえずアイテムを渡すぞ? 直ぐに使うのか?」

 

「いや、俺が使う前にリバティが何か情報を流すんだろう? 使ってもOKになったら連絡してくれ。俺もその間にどちらを蘇生するか悩んでみるつもりだ」

 

「って事なんだが、どれくらいかかりそうだリバティ??」

 

「・・・モンブラン」

 

「おん?」

 

「美味しいモンブラン作ってくれたら。3日以内には全部終わらせるぞ?」

 

 俺の背中からにゅっと顔を出してくるリバティ。

 

 ちょっと言い過ぎたかなという表情と、作ってくれるのなら本気だぞという表情がないまぜになっている。

 

 美味しいモンブランを作ってくれ・・・か。

 

「覚悟しとけ? 俺の本気のモンブランを食べたら、もう市販品は二度と食べられないぞ?」

 

「そ、そんなに・・・!?」

 

「あ、マスターが燃えてる・・・リバティ、マスターの喜ぶポイントを上手く押してる・・・」

 

 そこまで言われたらやるしかないよな。

 

 見てろよリバティ? そして周りの全員にも最高のモンブランを作ってやろうじゃねぇか! ケーキ屋さんの名に賭けてな!!

 

―59話了

 

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