異能大戦ソウルギア   作:あさねこ

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ただ、悪意の狂った中で、そうしたいから

 

―【メールが1件届いています】

 

 

 

 【同類】を名乗るプレイヤーから一通の依頼メールが届いていた。

 

 内容は簡素に報酬と対象、どこに居るかまでだ。報酬額は10万ポイント。

 

 プレイヤー名は勿論書かれていない。

 

 依頼内容は【◎◎地区のプレイヤー【ジェミニ】レベル5を殺してほしい。期限は次のミッション開始前まで、確認出来次第ポイントを送る】

 

 プレイヤー殺しの依頼としては正直相場以上なのだが、ターゲットがレベル5だという。大体このような殺しの依頼は相手が強くてどうしようもないからと、頼んでくることが多いのだが、まさか自身に対してレベル5程度を殺せと依頼がくるのは彼もはじめてだった。

 

 それも10万ポイントも払ってだ、それだけ払えるプレイヤーキラーならばレベル6レベル程度にはなっているだろう。それなのに依頼をしてくるというのはなかなかないことだ。

 

 レベル5を一人殺せば10万ポイント。日本円で言えば丁度10億円。美味しい依頼ではあるが、男は乗り気ではなかった。

 

 彼がプレイヤー殺しの依頼を受けている一番の理由は【強敵と戦いたい】からだ。

 

 血沸き肉躍るような、決死の殺し合いがしたいがために彼はプレイヤーキラーになり、このような依頼を受けているのだ。決して弱い相手を甚振る為ではない。

 

 そして強者に殺されるのならば、それはそれで満足、それが彼の理念だ。

 

 最低でもレベル6の相手ならば考えたが、既にこの依頼は彼の興味から消え失せていたが、それを横からかっさらい見始めた者がいた。

 

「先生、何見てるんです?」

 

「・・・俺はお前の先生じゃあ無いと何度言えば」

 

「くしししし、でもこうして住ませてくれてる時点で、先生って優しいですよね」

 

「プレイヤーキラーに言う言葉ではないぞ」

 

「そりゃーそうなんですけど」

 

 メールをつらつらと流し読みしているのは、20代くらいの男性とも女性ともつかない体型の人間だった。着ている服は女物ではあるが、聞こえてくる声は中性的なので判別がつかない。

 

「レベル5を殺せかぁ・・・あ、このジェミニってスレに乗ってた奴じゃん。って事はプレイヤー防衛ミッションクリアした奴ですね」 

 

「そうなのか・・・俺はそういうものには疎くてな」

 

 彼? 彼女? がそう言うと男は少し反応する。

 

 レベル5程度の力量でプレイヤー防衛のミッションをクリアしたというのは奇跡に近い話だ。あれはほぼクリアできないようにできている。運が悪い時は高レベルのプレイヤーキラーを雇ってボスにする位悪辣だ。それを生き残ったではなく、クリアしたと言われれば、流石に気にもなる。

 

「で、このジェミニを殺せって奴かー。ははーん? これ依頼人は【リジェクション】ですね」 

 

 今回の依頼人についてアタリを付けた彼。

 

 プレイヤーキラーである彼を同類と言い、かなりのポイントを持ち込んで次のミッションまでにジェミニを殺せと言う依頼内容と言い、ある程度掲示板をみているプレイヤーなら大体予想がついた。

 

 他の可能性もある事にはあるが、10万も払って殺せと言うのは不可解である。

 

 男もそう思っていたが、それだけ払えるのなら自分で殺しに行けるだろう力量がある筈だ。支援型なら確かに依頼する可能性もあるが、破格の依頼内容、レベル5の男に執着する事、先日の防衛ミッションの事と、それに参加していたジェミニの事を考えれば、依頼者はほぼリジェクションで間違いないだろう。

 

「知っているのか?」

 

「レベル6になっていきってた雑魚ですよ、自分のソウルギアに嫌われてるんだから先がないでしょうね~」

 

「つまり小物か」

 

 身も蓋もない辛辣なセリフだが、彼に悪気はない。

 

「そですそです。恐らくこれ、逆恨みかなんかじゃないです?」

 

「成程な・・・更にやる気が失せた」

 

 その言葉で完全にやる気が消えた彼。寧ろレベル5の時点で小物とはいえレベル6を出し抜いて防衛ミッションをクリアしたような存在ともなれば。

 

「時を置けば、良き強敵になりそうだな」

 

「うわぁ、でた先生の悪癖。それじゃこれスルーするんです?」

 

「折角の種だ、水を撒いて育てねばな」

 

「なーるなるなる。あ、それじゃ僕が行って来てもいいですか?」

 

 そう軽く言い放つ。

 

「お前はレベル5だったな。構いはしないが助ける事はせんぞ?」

 

「大丈夫ですよ先生、ちょっとからかいに行くだけですし。最悪降参しますんで」

 

「それで見逃してくれる訳ないだろう」

 

「ふふり。僕にはリジェクションって言うネタがありますからね~。最悪これを売り渡して逃げちゃいますよ」

 

「好きにしろ」

 

「はい、好きにします♪ 少し出てきますから先生はちゃんとご飯食べてくださいね? ほっておくと鍛錬ばかりで御飯とか全く食べないんですから」

 

 目の前のこの男、強くなることだけを考えすぎているせいか、鍛錬に集中し過ぎると食事を全部スルーして鍛錬を続けるのだ。一応水は飲んでいるみたいだが、前は5日位ずっと絶食して鍛錬をしていてドン引きしていた。

 

「お前が用意してくれたバランス栄養食がある。あれをつまめば大丈夫だ」 

 

「先生。あれはお菓子なんですよ。あれだけで栄養取り切れると思わないで下さい」

 

「だが腹は膨れるぞ?」

 

「先生、鍛錬の事になるとIQ3位になりません??」

 

 きょとんとしている男を見て、「これがずるいんだよなぁ」と小さく呟く。

 

 その言葉は彼には聞こえなかった様で、相変わらずきょとんとしている彼に向かって出かける事を伝える。

 

「それじゃ行ってきますけど、カップラーメンとかも用意してますからちゃんと食べてくださいね? 戻ってきた時に食べてなかったら・・・」

 

「わかった、何にせよ気を付けていけ。そして忘れるな? 俺達はプレイヤーキラーではあるが、外道ではないという事を」

 

「大丈夫ですって、先生の弟子なんですから、そこが一番大事だってわかってます」

 

 彼等が殺すのは依頼を受けたプレイヤーだけ。

 

 ただの欲望で相手を殺す事はしない絶対にしない。

 

 但し己が認めた強敵との殺し合いは可とする。

 

 一般人、弱いプレイヤー、困窮しているプレイヤーには手を出さない。

 

 逆にそれを食い物にするプレイヤーキラーを刈り取れ。

 

 相手を甚振る事は禁止する。必ず敬意を持って戦え。

 

 外道に落ちるのならば、いっそその場で首を斬り落とせ。

 

「正義の味方じゃあなくて、あくまで仕事。それが僕達ですよね」 

 

「お前はまだ仕事をした事がないだろうに」

 

「せ、先生が止めるからでしょう!?」

 

「今のお前では返り討ちにしかあわないからな」

 

「うごふ・・・き、きびしいですよ先生。やっぱり指導してくださいよー」

 

「何度も言うが、お前を弟子に取った覚えないないからな」

 

 男はそう言うと鍛錬室に向かっていく。

 

 それを見送った彼は小さくため息をついた。

 

「ほんと先生は優しすぎるよ。僕にプレイヤーキラーをさせたくないんだろうなぁ」

 

 彼もまた一応はプレイヤーキラーではあるが、直接相手を殺したことは無い。先生と慕う彼の手伝いで相手を邪魔したりするのが主な仕事だった。間接的に殺しに関わってはいるが、その手はまだ汚れていない。

 

 彼はどうしてプレイヤーキラーになっているのか分からない存在だ。基本的に誰にでも優しく、困っている相手は見過ごせない、外道な真似をする存在を許せず、他のプレイヤーキラーをあまりよく思っていない。

 

 それでも彼は自分を他のプレイヤーキラーと同類だと言っていた。

 

 だが同時に、「外道には落ちるつもりはない」とも言っていた。

 

 あくまで彼は仕事で相手を殺す。

 

 殺し合いを楽しむがために、このような生き方をしている。

 

 刹那的な生き方。この現代日本では非適格者の様な存在ではあるが、それゆえにプレイヤーキラーとしては最良の存在だった。

 

「リジェクション、先生が大っ嫌いなタイプだなぁ。こういうのは何もしなくても自爆しそうだけど・・・」

 

 ニヤリと彼は笑う。

 

「こういう奴、先生が手を出すまでもないよね。という訳でちょっとちょっかいかけに行こう。ジェミニ、僕も掲示板で見てるけどどこまで持ち上げられてるのか・・・」

 

 同時に、先生の相手になれるのか、それを見極めに行きたいのだ。

 

「それにしても10万かぁ、こいつ本気で払えるのかな? 踏み倒して逃げそうな気がするけど、先生に依頼を出したって事は、多分先生の事知ってるんだろうなリジェクション」 

 

 彼は裏の世界、特にプレイヤーキラーの中ではかなりの有名人だ。

 

 彼を敵回す、彼の依頼対象になるイコール、絶対に死ぬと言われている。

 

 そして彼を騙そうとしたり、裏切った存在は必ず殺されている。

 

 バトルネーム【羅刹】 

 

 それが彼が先生と慕うプレイヤーだ。

 

「先生を騙せるとか考えない方が良いよリジェクション。まぁ? 先生はそもそも受けに行かないから意味のない話なんだけどね」

 

 依頼内容を見て零す彼。

 

「それにしてもそっかぁ・・・あの>>1生き残ったんだなぁ。ジェミニってやっぱりヤバいのかな」 

 

 実は彼もあの日にリバティが作った掲示板に書き込んでいたのだ。

 

 あの時の【名も無きプレイヤー ID:lmS4V5Ee】が彼だった。その日のミッションは絶対失敗すると睨んで非参加だったが、まさか成功させるとは思わなかったものである。

 

 今スレではジェミニが凄いという情報があちこちで出回っている程だ。

 

 同時にアクセルというプレイヤーが誰かから【蘇生薬】を購入したという情報も流れていてお祭り騒ぎになってもいる。

 

 そちらについては全く興味はないが、今回先生が興味を引いたジェミニに彼もまた興味が出てきたのだ。だからこそ、この依頼を代わりに受けに行っていいかと頼んだのだから。

 

「先生の敵になれるのか、見に行かせてもらうよジェミニさん。せめて僕位は簡単に倒してよね」

 

 不敵な笑みを見せ、彼は部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

―67話了

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