異能大戦ソウルギア   作:あさねこ

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アイドルって戦闘職でしたっけ?

 

「さぁ、いきま―――」

 

 ソウルギアを展開したディーヴァの後ろから巨大な鎌が振り下ろされた。

 

 寒気と恐怖を感じその場でマイクステッキを振り回したことで、鎌の一撃をギリギリ打ち払う事に成功するが、力では押し負けているようでその場を一瞬で離れた。

 

「うわぁ・・・そこは変身シーンを見て、「こ、これは!?」とかやる場所じゃないんですか!? 何普通に暗殺ムーブしようとしてらっしゃるの!? というかいつの間にソウルギア出したんですか!?」

 

「賑やかなプレイヤーキラーだなぁ、新しいタイプの人?」

 

「でもパワーは低いみたいだし何とかなりそうね」

 

 のんびりとした口調で会話しながらもいつの間にか現れたポルクスとカストロが怒涛の攻撃を開始する。先ほどディーヴァが色々と会話している間に流川が遠隔で二人を召喚していたのだ。

 

 ソウルギア展開中の一番隙が出来る瞬間に首を刈り取って暗殺しようと思ったのだが、流石はレベル5のプレイヤーキラー、とっさの判断でそれを何とか回避する。

 

 見た目が色物系ゴスロリアイドルになったディーヴァだが、身体能力が上がったようには見えない。そうなればあれは変身型のソウルギアではなく、装備型のソウルギアだろうと、集中攻撃を指示する流川。

 

 既に幾つかのアクションスキルも発動させており、二人はいつもの様に攻撃を開始する。

 

「わわわわ・・・こりゃ確かに強いですね、っと!? 【土壁】!!」

 

 カストロの斬撃を回避した所にピンポイントで射撃が来るが、地面からせりあがった魔法の壁が銃弾を吸収する。

 

 しかし【土壁】土属性防御魔法で一番弱いタイプの為、銃弾全てを防ぐ事は出来ずにまるで豆腐の様にあっという間に削られていく。

 

 だが、一瞬でも弱められれば十分とステッキマイクを握り、ディーヴァはいつもの様に攻撃を開始した。

 

「Let's party!!」

 

 ディーヴァがマイクに向かって開始の歌声を上げると、その背中からいくつもの魔法陣が展開され、そこから色とりどりな魔力の光玉が所狭しと周辺にばら撒かれていく。

 

 その数は数えるのも馬鹿らしくなるほどの数。シューティングゲームの画面全部をほぼ覆いつくすような敵の弾を想像すれば分かりやすいだろうか。

 

 それがこの結界内部を縦横無尽にばら撒かれていく。

 

 だが、これらの魔力の弾丸はどうやら物理的な破壊力は無いらしく、周囲に激突しても建物や地面などを壊す事は無かった。どうやら命中すれば生命力や精神力を奪うタイプの魔力弾の様だ。

 

 だがそれでも、流川にとって致命的なのは変わらない。

 

 襲い掛かってくる魔力弾を何とか回避しているが、このままでは命中するのも時間の問題だろう。何せ弾丸はどんどん増えているのだから。

 

「パパっ!?」

 

「こりゃあまずいね・・!」

 

 弾丸自体はジェミニの二人ならばまだ何とか躱せる速度と量だが、マスターである流川はそうはいかない。御堂がおかしいだけであって、本来召喚型はマスター自体はそこまで強くならないのだ。スキルや装備である程度ごり押せるとはいえ、それでも限度がある。他のソウルギア使いの様に超人的なスピードや回避力、防御力、攻撃力などを持たないのだ。

 

「まだまだ開始ですからね、かるーく行きますよ。それでは聞いてください!!【くらくらマインドブレイカー】!!」 

 

「くっ!? このっ!!」

 

 まるでアイドルの様にポーズをとりながら歌い始めるディーヴァ。これが彼女のソウルギア【ディーヴァ】の力らしい。歌う事、躍る事によって、様々な効果を持った魔力の弾丸を無数に生み出し敵を塵殺する、広範囲殲滅を得意とするソウルギアだった。

 

 その効果量は本人の歌や踊りの技量、魅力が関係する。故にディーヴァがセットしているスキルはその大部分が歌や踊りの強化、身体能力や魅力の上昇といった特殊なスキルばかりという構成ではあるが、だからこそここまでの脅威になっている。

 

 これ以上歌わせてなるものかとカストロが魔力の弾丸をディオスクロイで切り裂きながら突撃するが、数発の魔力弾を削り切った時に体に不調を感じた。

 

 まるで精神力を根こそぎ奪われていくような虚脱感が彼を襲う。直ぐに魔力弾の性質を理解し、切り裂いて進むのではなく全力で回避に切り替えた。

 

 それを謡いながら見ていたディーヴァが軽く心の中で舌打ちする。

 

『あ、やっぱりすぐばれた。あれはどんな形でも命中すれば相手の精神力とかを奪っていくんだよね。切り裂いても切り裂いた時の武器は握ってるし、結局本人にダメージがいく仕組みだから、避けるしかないんだけど』

 

 歌い踊り続ける事で巻き散らされる弾丸をカストロはアクロバティックに回避し、攻め込んでくる。どうしても当たりそうな弾丸は後ろでポルクスが銃撃して弾丸を相殺させる事が出来ていた。

 

『あ、こりゃ強いや。レベル4の実力じゃあないですよ先生。これじゃあ、確かにただイキってただけのリジェクションじゃ油断しまくってどうしようもなかっただろうなぁ』

 

 ディーヴァもレベル5ではあるが、スキル編成やソウルギアからして戦闘系とは言い辛い。身体能力もそこまで高くないので攻めてこられるのは結構辛いので、少しだけ本気を出す事にした。

 

 流川もこの弾丸の雨をなんとかかんとか避けているようなので、もうちょっと攻めてもいいだろうとにやりと笑う。

 

「ファンサービスの時間だよ! おいで僕のファンの皆!!」

 

「なっ!?」

 

 ディーヴァがそう叫ぶと彼女を中心として沢山の人影が現れた。

 

 それぞれがサイリウムを両手に持ってオタダンスを披露しているが、その姿は頭に巻き付けているバンダナ以外全身が真っ黒と言う、人型の姿をした何かだった。

 

「おさわり厳禁! ファンの皆! 僕の投げキッスが欲しかったら、悪い子を止めてくださーい!!」

 

【オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!】

 

「ちょっとふざけてんのこれ・・・!? とぉ!?」

 

 サイリウムをまるで光る剣の様に伸ばした、真っ黒なファン達が次々にカストロやポルクス向かって襲い掛かる。光るサイリウムをディオスクロイで受け止めたが、驚く程相手の力が高く、押し切られそうになる。

 

 相手の力を利用し押し切らせたと見せかけてくるりと回転しディオスクロイを横薙ぎすると、恐らく胴体部分を切断し、一体を倒す事に成功する。しかしディーヴァが言うファンの数は20以上を余裕で超え、同時に魔力弾も飛び交い圧倒的な物量が襲い掛かる。

 

「ちょっと。やばいねこれ・・・」

 

 思わず冷や汗が流れるカストロ。

 

 マスターも助けなくてはいけないが、自分自身がこのままでは押し切られる。指示を聞こうにも回避専念している流川では主だった指示が取れるような状態ではない。

 

「いつもの事でしょ! 怖気着いたの!?」

 

「っ! まさかっ! これからだよ!」

 

 後ろで乱射しまくりながら魔力弾や黒い人型を牽制しているポルクスが叱咤する。

 

「へぇ、流石ですねー。これも何とか凌ぎますか。それじゃ次の曲行ってみよう! ファンの皆に届け! 【ギガントマキア】!! 」

 

 次の曲をディーヴァが歌い始めた瞬間、黒い姿のファン達が更に一回り巨大化した。漆黒の姿は更に黒くなり、光を全て吸い込んでしまいそうなベンタブラックの様になっている。持っていたサイリウムが光る剣から七色に光る巨大な斧に変わっていった。

 

「ふざけてる、ふざけてるけど、この前のレベル6のソウルギアよりずっと強い・・・・!?」

 

「なんとかして巨人は抑えないと! パパが落ち着く時間を稼ぐのよ!!」

 

 この前の戦いでも冷静に戦っていた二人が久しぶりに焦りを感じていた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 襲い掛かってくる魔力弾を回避し、時々装備していた銃で撃ち落としながら、流川は全力で思考する。この場を抜け出す方法、もしくは相手を倒す方法を。

 

 だが、回避に意識を割かなければ直ぐにやられてしまうだろう、それゆえに回避に専念するしか出来ない。それでもどうにかする一手を考えていた。

 

 旗色は悪い。魔力弾はどうやら精神的なダメージを与えるものだろう、先ほど

掠った時に、一気にだるさが襲い掛かったのだ。直撃すれば一撃で昏倒は避けられない。レベル4にまで強化されているカストロたちでも回避を選ぶほどにはこの魔力弾は危険なものだ。

 

 しかし、それだけである。恐らくは物理的な破壊も出来る魔力弾も生成できるだろうが、依頼人から苦しめて殺せと言われているのと周囲に被害を与えたくはないとは相手も言っていたが故の攻撃方法なのだろう。

 

 それが仕事としての誇りなのかは分からないが、少なくとも直撃イコール死亡ではない所が唯一安心できる所か。直撃したら終わりなのは何も変わらないが。

 

 カストロ達も流石に攻めあぐねている。

 

 指示系統のスキルを使用したい所ではあるが、この調子ではまともに発動させる事も出来ない。今できるのは念話でのスキルをもちいない指示命令だけだ。

 

 ディーヴァは見た所まだ余裕がある。このままでは押し切られて負けるだろう。流石は依頼で殺しをするプレイヤーキラーといった所だろうか。

 

『参りましたね。どうすれば切り開けるか・・・』

 

 既に前回の時点で切り札の【極大幻惑陣】は使い切っている、相手を幻惑させ煙に巻き逃走と言う手段は取る事が出来ない。ならば残されている手段は相手を倒すか、この結界から抜け出すかのどちらかしかないのだが、そのどちらも難易度が高い。

 

 試しに結界まで逃げてみたが、張られた結界を通り抜ける事はやはり出来なかった。この形状の結界魔法はダメージを与え続ければ破壊できるのだが、流川の攻撃力では絶対的に威力が足りない。

 

 となればジェミニ二人に期待するしかない。既に指示でポルクスに敵全体を攻撃しつつ結界も攻撃するように命じてはいるが、ダメージが入っているかは判別できておらず、このままではいつ破壊できるかわからない。

 

「っ!! ふぅ・・」

 

 思考が深みに入りそうになったタイミングで魔力弾が一斉に襲ってきた為、全力で回避する。避けた魔力の弾丸はそのまま結界に命中し消滅した。やはり魔力弾自体に誘導性能は付いていないらしい。付いていたら秒で負けていたから助かったが。

 

 だがある程度のパターンや指向性がある事には流川も気づけていた。

 

 この発生している魔力弾は、彼女が歌ったり踊ったりするタイミングでばら撒かれ、一定量の弾丸が似たような感覚で飛んでくる。それはまるで弾除けゲームの弾に様にだ。だから慣れさえすれば何とか避けられるし、安全地帯みたいな場所も見つければそこから一手先に進めるかもしれない。

 

 そこにランダム性のある黒い人型が現れたのが更に面倒だ。今の所はカストロが対応してくれているが、あの数を弾丸を回避しながら捌き切るのは限界があるだろう。抜けられてきたらいよいよもってピンチである。

 

「・・・帰ったら、御堂君から御馳走のケーキ貰わないと、割にあいませんねこれは」

 

 このような状態でもその口調だけは余裕を崩さず、微かな可能性を手繰り寄せようとしていた。

 

 

 

―73話了

 

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