異能大戦ソウルギア   作:あさねこ

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煮詰まると元々の考えも茹ってくる

 

 男。リジェクションは荒れに荒れていた。

 

 ジェミニの殺害を依頼したプレイヤーキラーは彼が知る中で最強の殺し屋で成功率はほぼ100%だと言われている。あれなら情報さえ渡せば確実にジェミニを殺してくれるだろう。そう思っていたのに、つい先日帰ってきた返信にはこんなふざけたものが返ってきたのだ。

 

 

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■依頼人様へ

 

 先日ご依頼頂きましたジェミニの殺害依頼に対しての報告をさせて頂きます。

 

 まずは、此方へのご依頼誠に有難う御座いました。しかしながら捜索時に

 

 聊かの情報の抜け落ちがあった事を報告させて頂きます。

 

 次回からは必要最低限ではありますが、情報を提示して頂くと助かります。

 

 さて、今回の依頼、ジェミニの殺害の結果ですが――――

 

 先生がまったく興味ないんで依頼を受けない事になりました、

 

 本当に御愁傷様ですwwwwwwww

 

 後、対象のジェミニさんですが、暗殺依頼が来ている事を何処かで知ったらしく、どうやら表の仕事も捨てて隠れたみたいなので、探すの困難になったそうですので、次からはまず相手を探す所から始めてください。

 

 此方の方でもまずは情報確認と言う事で、ジェミニさんを調べてきたのですが、情報に書かれていたレベルと違った事を報告させてもらいます。

 

 ジェミニはレベル5ではなくて、レベル4でした。これは情報看破のスキルを用いての正確な情報なので間違いありません。流石にレベル4をレベル5と情報を盛るのはやめて頂きたいものです。

 

 もしかして相手がレベル4だった場合、ご自分の実力を疑われてしまうかもしれないと考えていたのかもしれませんが、流石に情けないかと愚考する所存であります。

 

 という訳で以上。こちらとしては一応依頼を頂いたので、先生の代わりに弟子の僕が代わりに返信しておきました。

 

 虚偽報告の依頼は良くないと思いますよ? 先生はこれ以降貴方の依頼は絶対に受けないそうです。情報はちゃんと調べて来てから伝えてくださいね?

 

 レベル4に負けた、雑魚さんへ♪

 

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 あまりにも此方を煽り倒しているメッセージが届いた。

 

 弟子と言っているが詳しい事は分からない。だがそれでも彼が激怒し当たり散らすほどには十分なものだった。

 

 レベル4に負けた雑魚。

 

 腸が煮えくり返る。あの時ジェミニはレベル5だった筈なのだ。スキルで確認してもレベル5だったのに、調べたらレベル4のままだったという。一時的なレベルブーストのスキルでもあるのかとも思ったが、今はそれよりもただただ怒りが収まらない。

 

 自分はレベル4の雑魚にも負け。

 

 依頼した相手にも馬鹿にされている。

 

 プレイヤーキラーとしての自負がある彼にとってそれは許せる許容範囲を超えていた。

 

「ぶち殺してやるっす・・・・!! この俺をここまでコケにしやがって!」

 

「家の中で騒がないで? 煩いから」

 

「てめぇは!? 俺のソウルギアの分際で生意気なんスよ!? 俺はお前のマスターだぞ!?」

 

「そうね。私は貴方のソウルギアで、貴方は私のマスター」

 

「わかってるんなら、俺を苛立たせるなよ!?」

 

 イライラが頂点に達したリジェクションがテーブルを足で踏み壊した。

 

 上に載っていた飲み物や菓子類がその衝撃で地面を汚していく。

 

 それを彼のソウルギアは冷めた目で見つめていた。

 

 彼女は思う。前はもう少しまともだったと。少なくともものに当たるような癇癪持ちでもなく、ソウルギアである自身には優しい所もあったのだ。

 

 だが今は違う。金や実力に物を言わせ、裏の世界であちこちでやりたい放題し続けている。ヤクザ等にも喧嘩を売り、楽しそうに壊滅させ気分で殺したり手に入れた女で遊んだりするほどだ。

 

 目の前の男に人生を破壊された人間はそろそろ両の指の数では足りない。裏の世界の人間ではない、表の何の罪もない一般人が、ただ目についたという理由だけで壊された。

 

 ある時は自分を馬鹿にした、と勝手に決めつけてギャルを一週間程監禁し、暴力や凌辱したあげくに致死量の薬物をどこまで飲ませば死ぬだろうかとチキンレースを称して複数人のそのギャルの友人を攫って、薬物を飲ませ続けて殺した。

 

 警察沙汰になりかけたが、それも全部金とポイントを使って何事もなく終わらせた。最近はこんなことばかりをやっている。

 

 自分より圧倒的に弱い相手を、思うが儘に痛めつけ悦に浸る。ミッションではプレイヤーキラーとして弱いプレイヤーを甚振って殺す。

 

 自分より強そうな相手、面倒臭そうな相手は一貫して無視する。彼は自分が楽しむのが好きなのだ、戦いでも人生でも、そこに苦労や苦戦なんてものは必要なく、ただただ楽しめればいい、楽しければいい、それ以外は全部いらないと言う、超自己中心的な人間に成り果てていた。

 

 だからこそ今回辛酸を嘗めさせられたジェミニを殺そうと依頼して、殺しが成功すればまた再び気分良く誰かを痛めつけようと考えた居たのだろう。

 

 あまりにも情けないを通り越して、呆れ果ててしまう存在。それが彼女のマスターだ。それでもいつかはそんな馬鹿な真似をやめると考えていた。

 

 プレイヤーキラーとしてでもいい、くだらない事をやめてまともに。

 

 少なくとも自分が初めの頃は好きだったあの頃に少しでもいいから戻ってほしいと。だが何も変わらない、一度おかしくなってしまったものは戻らないのだ。

 

「くそが・・・! 他の奴に依頼を・・・!」

 

「次のシーズンまで待てば自分で殺せるでしょう?」

 

「この次のミッションでレベル上がったらどうするんスか!?」

 

「・・・それでもレベル5なんでしょう? 私達はレベル6なのよ?」

 

「そのレベル4に封じ込まれてたテメェが言うなよクソ雑魚ソウルギアが!!」

 

「・・・・・・・」

 

 激昂している男に彼女の声は届かない。

 

 そして次のシーズンまでにジェミニが強くなった事まで危惧していると言う事は、相手が強くなることを恐れているのだろう。

 

「好きにしたら?」 

 

 ソウルギアはマスターを常に愛している。彼女も最初はそう思っていた。事実いつか目が覚めてくれると思っていた。いいや、正直な話彼の性根が腐ってようと、ゴミクズのままだろうと、それはそれで仕方ない。

 

 それでも、彼女を信用し、信頼し、愛してくれていたのならば、彼女は盲目的に彼の為に動こうと思っただろう。だが、目の前の男はソウルギアの人型は何をしても裏切らずにマスターを愛し続けるという話を信じ切っている。

 

 だから好き放題やるし、ソウルギアである彼女を馬鹿にする、それでも裏切らず自分を心の底では愛していると完全に思っているから。

 

 だが、既に彼女の中に彼を愛しいと思う心はほとんど残されていなかった。寧ろ最近は煩わしささえ感じる。その厭らしい目つきが気持ち悪く感じる時すらある。

 

 前は彼の全てが愛おしく、その全てに応えたかったのに、今は命令されなければ何もする気にならない。彼の為に役に立とうとすら思わない。それでも命令を受ければ動くのは、彼を愛しているからではなく、ソウルギアとして動かざるをえないからだ。

 

 もはや彼に男としての魅力も感じず、信頼も無い。いっそ殺してしまおうか、そんな思いすら頭の中に浮かぶが、こんな男でも自分のマスターで、自分はソウルギアである以上、この男が死ねば自分も消える。昔ならいざ知らず、今はこんな男と心中するのは御免だった。

 

「くそ・・・どうにか、どうにかして・・・いや、そもそも依頼なんてしたのが俺のミスだったんスよ、やはり自分で・・・」

 

「・・・何を言っているの? ディザスターにバレでもすればどうなるか」

 

「黙ってろ!!」

 

「・・・・っ」

 

 彼女が進言してもそれを怒鳴り散らして無視する男。既に何を言っても無意味になるほどに感情を止める事が出来ていない。

 

 ジェミニの事が憎い。あの時邪魔した御堂、鎧の雑魚が憎たらしい。前回の防衛ミッションの対象すら殺してやりたい。寧ろあの時参加した全員をぶちのめしたい、そんな感情に支配されている。

 

 先ほどまでならまだ我慢できたが、ギリギリではあるが、ジェミニを依頼通り殺してくれていたならば溜飲が下がり、これからのプレイヤーキルを改めて楽しもうと考えていた。その為にためていたポイントも使おうと思った所で、興味がないから依頼を受けないやら、その弟子を名乗る誰かには盛大に煽られるわ、そもそも我慢弱い彼にとって、それは止めになった。

 

 理性で抑える事が出来ない怒りと復讐心がまともな判断力を失わせる。

 

 そして彼は最悪な選択肢を取る事を選んだ。

 

「俺が殺してやるっス。なに、1回位ならこれだけディザスターに貢献してきたんだ、大目に見てくれる筈っすよ」

 

「何ばかなことを言ってるのよ・・・! そんな事ある訳ないじゃない!?」

 

「てめぇは黙ってろって聞こえなかったっスか?! 物が一丁前に喋ってんじゃねぇよ!」

 

「ます・・・・あぁ、そう。それが貴方の答えなのね」

 

「何度も言ってるっしょ!? だ! ま! れ! よ!」

 

「勝手にすれば。見下げ果てた、いいえ愛想が尽きたわ」

 

「は・・・? おいテメェ!?」

 

 ドアが悲鳴を上げる程に叩きつけて彼女は出て行った。自分のソウルギアが命令を聞かない事は何回かあったが、あそこまで底冷えする様な声を出して出ていくとは彼も思っていなかったらしく、流石に焦りが浮かんでいる。

 

 自分のソウルギアが自分を裏切るはずがない、あぁ見えて実は自分を愛しているから大丈夫だ、あれは単純に虫の居所が俺と同じく悪かっただけだと、己に言い聞かせる。すっと精神的に落ち着いた彼は直ぐに、彼女の行動に対して苛立ちが募ってきた。

 

「最初は使える奴だと思ってたのに・・・あぁ、畜生、なんで俺ばかりこんな目に。全部ジェミニのせいっす。何とか見つけ出してこの世の地獄を味合わせてから、泣いて懇願して殺してくださいって言わせてやるっすよ・・!」

 

 下卑た笑いを浮かべながら、望んだ未来を想像する。

 

 自分ならそれが出来ると確信していた。次は油断せずにとことんまで痛めつけてやろうと、気合を入れなおす。その為には使わなかったポイントで必要な物を買い集めなくてはと、既に自分のソウルギアの事など頭の片隅にも残すことなく、スキルや装備の設定について、あれこれと考えだすのだった。

 

 ソウルギアである彼女が帰ってこなくなった事に焦りを感じるまであと数日――

 

 

―77話了

 

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