異能大戦ソウルギア   作:あさねこ

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開幕化け物と戦える奴は特殊な訓練受けてる筈だ

「行き成り実戦でばばーっと俺が活躍するとかは?」

 

「漫画やアニメじゃないんですから、そんな上手く行くと思いますか?」

 

「無理だな!!」

 

 開幕盛大にダメ出しを喰らう俺。

 

 今俺達は郊外を離れ人がほとんど寄り付かないような森に来ている。俺が次のミッションで生き残るために鍛錬をする為だ。

 

 今週もフルで仕事に出た後の休日。まだミッションは開催されていないという事で

流川が家にやってきて指導と鍛錬をしてくれる事になった。

 

 俺もこうやって流川が来るまでも、ミッション直前に行き成り戦うのかと思って結構思案していたが、流石にそういう事はなさそうで助かった。

 

 俺はと言えばこの一週間はサイレーンのお陰でかなり充実した日々を過ごせている。考えても見てほしい、俺の事を大好きだと言って憚らない超絶美女が毎日朝から晩まで一緒に居てくれる生活を。たまらないね。

 

 かく言う俺もまるでなり立てのカップルが如くサイレーンと仲を深めていた。

 

 あぁ、子供が見ちゃいけないようなシーンは残念ながらない。

 

 そういうのはもっと親愛を深めてからっていうか、あれだろ? ガッついてくる男ってモテないだろ? だからちゃんと自重しているのだ。決して今の時点でもチェリーボーイだから怖気着いている訳ではない。ないったらない。

 

「今回の場合は僕達が御堂君をサポートできる状態ですからね。折角指導や心構えができる時間があるのにやらないのは愚か者の選択です。今日はみっちり扱きますので倒れないで下さいね?」

 

「えーと、私はどうすればいいのかな??」

 

 おずおずと手を上げて言うサイレーン。

 

「もちろん貴女もですよ。完全支援だからと、支援した後何もしない訳にも行かないでしょう? 戦えないなら戦えないなりに、戦場で生き抜く技術を身に着けないといけません。それに戦闘力がないだけで、銃器などを使えば最低限自衛は出来るのですから、後衛での戦い方やマスターのサポートの仕方を学んでください」

 

「うぐ、そ、そうだね。頑張る」

 

「ミッションはいくつかありますが一部フィールドを展開するものもあったり、街中全てがミッションのフィールドだったりと、多種多様です。どんな時でも二人が冷静に対処できるだけの判断力などを今日は鍛えていきます」

 

「な、成程な」

 

「あぁ、特に御堂君は変身型や装備型のソウルギアが無い状態で前衛として戦わなくてはいけないので、それについての戦い方も学んでもらいますね。まずはとにかく恐怖を克服する所からでしょうか」

 

 恐怖。

 

 あの時感じた恐怖はとんでもなかった。

 

 冷静に考える事すら満足に出来なくなり、体が震え何も思い浮かべなくなる。死ぬかもしれないという恐怖と未知の化け物に対する恐怖、これを無視して戦えたりする漫画やラノベの主人公たちは「だからこそ」主人公なのかもしれないな。 

 

 俺みたいな一般人は描写されないか1行で「薙ぎ払われて死んだ」とか雑に表記されるに違いない。

 

「恐怖か、克服出来るのか・・・?」

 

「完全に克服なんて出来ないでしょう。僕だって常に恐怖と戦ってますよ。要は【恐怖しつつも戦えればいい】んですよ。その位なら死ぬ気で必死にやればギリギリ行けるかもしれない、と言う所まではいけるでしょう」

 

「そこまでやって「いけるかもしれない」かよ」

 

「いざ実戦になって動けるかは御堂君次第ですからね」

 

「うぐ・・・流石に理不尽に死にたかねぇ、指導頼むぜ流川」

 

「わかりました。それじゃあ始めましょうか」

 

 そういうと流川のすぐそこに二人の少年少女―ジェミニ―が現れる。

 

 人型のソウルギアの特徴なのか知らないが、サイレーンを含めて基本的に彼等は美男美女ばかりだ。

 

 この二人もモデル雑誌の表紙を飾りそうなレベルなんだよな、勿論サイレーンはそれ以上に魅力的だが――

 

 そうだよ身内びいきだよ、俺のサイレーンしか勝たん。

 

「あ、おにーさん。ケーキ美味しかったよ~。今日は色々教えてあげるね♪」

 

「こんにちはおじさん。気を付けなよ? こいつ普通に容赦ないからさ」

 

「むむっ、そんな事ないもん! 美味しいケーキをくれる以上、優しくやさしーく教えてあげる事にしたから」

 

「可哀そうに・・・」

 

「可哀そうに!?」

 

 どうやら俺を鍛えてくれるのは少女の方らしいが、俺生き残れるのか不安になってきたぞ。

 

 前回みたいに銃器持たれたら御堂君のハチの巣が完成してしまう。流石にそこまではしないと思うが。

 

「僕がそっちのお姉さんの鍛錬に付き合えばいいんだねマスター?」

 

「えぇ、君なら手加減も得意ですからね。彼女には銃を持ってもらって、貴方はナイフ1本でお願いします」

 

「待て流川。俺の相手をしてくれるジェミニの方は手加減が得意じゃあないって事か?」

 

「御堂君は武器どうします?」

 

「聞こうぜ人の話!?」

 

 全スルーを決め込む流川に青筋を立てる俺だが、突っ込んでも無意味と諦め―俺はテービングを巻いた拳を握って見せた。

 

「素手で行くんですか?」

 

「銃とかも考えたんだがな――」

 

 貰ったポイントで武具を購入する時に、その中に銃なども普通にあった。

 

 その他にも剣や槍などのスタンダードな奴から、弓とかクロスボウとか銃があるのにこの辺使うのか? というものまで沢山だ。

 

 サイレーンには護身用に銃を買っておいた。流石に化け物と戦う力がなくても相手が人間なら牽制程度は出来るだろうと考えての事だ。

 

 ちなみに購入した後だが、誰かが運んでくるのかと思ったが、この辺は思いっきりファンタジーしていた。

 

 何と、購入したアイテムはアプリ―【ソウルギアGAMES】のアイテムインベントリ内にデジタルアイテムとして配布されるのだ。

 

 そのアイテム部分をチェックすると【展開しますか】というメッセージが出てOKすると現実にアイテムが出てくるっていう・・・

 

 この世界いつの間にオンラインゲームとかファンタジー世界になったんだ? 

と言わんばかりの仕様だった。

 

 便利っちゃ便利で助かるんだが、本当にこれでいいのかと声を大にして言いたい。

 

 話は逸れたが、サイレーンの武器は銃で決定したが、問題は俺の方だった。

 

 俺は確かにそれこどガタイは良い方だ。それなりに筋トレもしてきたし土木作業をやってれば嫌でも体が鍛えられるんだが、それはそれ。

 

 喧嘩などもたまにしかしたことない程度の俺が、武器やら銃やら持ってまともに

戦えるかと考えたんだが、答えは「絶対無理」だった。一応サイレーンの支援バフを掛けてもらった後、いくつか武器を購入して使ってみたんだが、どれもこれもぶんぶん振る程度しか扱えない。

 

「折角の戦闘訓練なんだろ? まずは素手から試して俺が使える武器を試していきたいんだよ」

 

「成程・・・そうですね、そうしましょう。使えない武器を使っても死ぬだけですからね」

 

「♪ 任せておにーさん、沢山練習させてあげるからね」

 

「頼むぞ? お手柔らかに頼む。ほんとマジで」

 

「サイレーン? もいるし手足が折れても大丈夫だよ♪」

 

 笑顔で恐ろしい事言うなこの少女・・・何はともあれ、俺達の訓練が始まった

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 油断はしていない。

 

 覚悟もしていた。

 

 必死に食らいつこうと考えていた。

 

 目の前に居るのは流川のソウルギアの少女だ。

 

 あの子憎たらしいが可愛らしい少女なのだ。

 

 まずは素手を試してみよう、そう思いお互いに距離を取って構えた瞬間に俺は一度死んだ―――

 

 いや、死んだと錯覚するほどの恐怖が俺の全身から血の気を奪い立つ気力すら失い

気が付いたら倒れていた。

 

 意識が徐々に回復していくと俺の頭はサイレーンの膝の上にあり、泣きそうな顔をした彼女が俺を介抱している様子が見えた。

 

「俺・・・どうなったんだ?」

 

「3分位気絶してました」

 

「マジかよ・・・何かされた覚えもないんだが」

 

「ご、ごめんねーおにーさん。ちょっとばかり本気で殺気飛ばしちゃった」

 

 あの死んだと思った瞬間に俺は少女から飛ばされてきた殺気をまともに受けて恐怖でぶっ倒れたらしい。急に倒れた俺を見て訓練開始前だったサイレーンが叫び声を上げて俺に駆け寄ってきて今のような状態になったという事だ。

 

「俺、殺気で人が気絶するなんて眉唾だと思ってたんだが、まさか自分が体験するなんてな」

 

 これに比べれば化け物達は気絶しなかった分まだ優しかったのかもしれない。

 

 あれはあれで怖かったし気持ち悪かったが、意識を落とすほどの恐怖では無かった。

 

「御堂君すみません。大丈夫でしたか?」

 

「頭の後ろが幸せな以外は大丈夫だ」

 

 そう言いながら俺はサイレーンの太ももからゆっくりと起き上がる。残念だが、何時までもこうしてる訳にもいかないしな。

 

「とんでもないな恐怖ってのは。だが次はもう少し優し目で頼むわ。常に気絶してたんじゃ鍛錬所の話じゃあないしな」

 

「うん、気を付けるね」

 

「いや、お陰で【そういう攻撃】もあるって事がわかった。恐怖だけで相手を気絶させるってのは十分攻撃だしな。ありがとうよ」

 

 今の俺に出来るとは思わないが、いつかは俺でも出来るようになるかもしれない。

 

 流川と同じレベル4になればここまではいかずとも似たような実力にはなれるかもしれないからな。

 

「こりゃ行き成り実戦なんてやってたら死んでたな。そう思うと流川はよく戦えたもんだよ」

 

「僕も初めは同じでしたよ。でも僕の場合は二人が居てくれましたからね、最悪僕が気絶してても何とかしてくれましたし」

 

 俺の場合は流川が居てくれれば助けてくれるかもしれないが。一人の場合は俺が何とかしなくてはならない。

 

 戦闘力が無いサイレーンでは俺が倒れたらそのまま殺されて終わってしまう。何が何でも俺が生き残って戦わなくてはならない。

 

 大きく一呼吸した後、頬を両手で強く叩く――

 

「よし、もう一度頼む!」

 

「うん、任せておにーさん、次こそ最初は軽く行くから♪」

 

 生き残るための鍛錬が改めて始まった――――

 

 

 

―8話了

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