異能大戦ソウルギア   作:あさねこ

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これってギャグな物語でしたか?? 割と。

 

 よくわからない寸劇が始まる事数分。漸く我に返ったプレイヤー達が好機とばかりに謎の物体・・・ではなくレイドボスを次々に攻撃していく。

 

 射撃や物理、魔法などの集中砲火を浴び面白い様に吹き飛んでいくが、倒した傍から同じボスがポコポコと生まれてくる。

 

 それ自体はいつもの事なのだが、出てきた瞬間どこからともなく気の抜けるようにBGMが鳴り響き、地面から回転しながらスポットライトを受けて現れたり、空からパラシュートを使っておりてきたりと、そろそろ突っ込み切れない領域に到達している。

 

「こいつら倒してもポイントにならないぞ!?」

 

 プレイヤーの一人が叫んだ。

 

 普通モンスターは倒せば多少ではあるがポイントが貰える。つまりポイントが増えるイコールモンスターを討伐したという事にもなるのだが、目の前のレイドボスはほぼ無抵抗で雑魚モンスター並みに蹴散らされていってはいるが、彼等のポイントは1ポイントも増えていない。

 

 それはつまり――

 

「こいつらは分身かなにかだ・・・! 本体を倒さないと終わらないタイプだぞ!」

 

「よく当てたセニョール。いかにも我が本体であるアバーーーー!!」

 

「本体その35782---!? 汝等なんてひどい事を!? 優しさをもたないのか!?」

 

「本体26472・・・我はもうだめだ。死ぬ前にコンビニの肉まんを・・・あんまんにすり替えてみたかった・・・がくり」

 

「本体その14141356----!?」

 

 がくりと倒れるレイドボスを他のレイドボスがしっかりと抱きしめ号泣している。漫画などで見るような横幅の太い涙を流している徹底さだ。

 

 あまりにもふざけているが、プレイヤー達がどれだけ倒しても倍々ゲームのように

増え続けている。最初は1体、すぐに数体程度の増えていたが、今は参加プレイヤーの数より多くなっている。

 

 とはいえ攻撃してくることはなく、常時寸劇モドキをしてはプレイヤー達に秒殺されているのだが、倒したレイドボスは倒した傍から直ぐに消えていっては、様々な場所からレイドボスが増えていく。

 

 それを見ていたリジェクションが心の中で舌打ちした。

 

 これだけボスが弱いとなると、他のプレイヤーが流川の邪魔をするのも難しい。何せほとんど動かなくても倒せる雑魚モンスターの様なレイドボスなのだ、彼等も彼等で流川が仲間たちに指示しつつあまり近づかない様に行動しているのが見える。

 

 その内、ソウルギアの女、サイレーンとテルクシノエーが全体を注視しているのが見えた。特に此方をずっと見ている。それ自体はいいのだが、あれでは他のプレイヤーが邪魔をするのはとても難しい。

 

 本来ならば大型だろうレイドボスに全霊を尽くして戦う事で注意力が散漫になるのを狙っていたのに、逆に気疲れするようなレイドボスが出てきたが、これでは流川をレイドボスなどを利用して間接的に殺すという手段がとれない。

 

『くそが・・・! なんでこういう時にかぎって!? というかこんなボス見た事ねぇっスよ!?』

 

 リジェクションもこのような気の抜けるレイドボスを見るのは初めてだった。と言うよりもこのようなモンスターやボスが出てきた事などこれまで一度たりとてない。バグったのか運営側の気でも触れたのかと思うレベルだ。

 

 これではただのボーナスゲームでしかない。一撃で斃せてしまう様な雑魚ボスをどれほど用意した所で負ける事等何もない、何せレベル6の自分が居るのだから。

 

『あぁ、本当にイラつく・・・・!!』 

 

 リジェクションの苛立ちはまだまだ収まりそうにない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハルペーが我が世の春とばかりに偃月型の衝撃波を発射しまくっている。役に立たないかもしれないと思っていたが、一撃一撃がほぼ確実にヒットしレイドボスを倒す事が出来ていた。 

 

「楽勝じゃねぇか・・・! これならレベル5とかも行けたんじゃないですかね!?」

 

「油断するなハルペー。悪辣なディザスターの事だ、見てくれに騙されると痛い目にあうぞ」

 

 接近戦ではなく銃器を用いてイルカ頭を打ちぬいて行くアクセル。確かに予想外のボスが現れたが、一切の油断をしていなかった。こういう弱そうに見えるボスの場合何かしらあると考えているからだ。

 

 それは全員に射撃での攻撃を指示した流川も感じている。

 

「攻撃してこないレイドボス。1体1体は弱い・・・」

 

「そのくせどんどん湧いてくるけどな!?」

 

 マシンガンで弾幕を張りながら御堂が答える。そう、目の前のボスたちは弱いし攻撃してくることは無いが、倒しても倒してもその数を増やしている。目算ではあるが、1体倒している間に2体か3体は増えている感じだった。

 

「ジェミニ殿」

 

「まだわかりません。ですが、調べてほしい事はあります」

 

 この中で攻撃に参加していなかった羅漢が流川に話しかける。あまりに容易いミッションだが、簡単すぎる。いや弱すぎるボスに流川も羅漢も違和感を覚えていた。他のプレイヤー達はこの違和感に気付いていないのか、気にせずギャグ満載のボスを退治し続けている。

 

「羅漢さん、すぐにミッションの外に出られるか試してみてください」 

 

「・・・承知した」

 

「どういうことだ流川?」

 

「とても厭らしい此方の殲滅方法を思いついてしまったんですよ・・・杞憂であればいいのですが。皆さん攻撃はし続けてください、ですが全力を出す必要はありません、近づいてくるレイドボスだけを払う感じでお願いします」 

 

「・・・・ん。任せてほしい」

 

 流川の指示にスピネルがこれ以上無いほどやる気をだしている。ソウルギアを展開し魔法少女の様な姿になった彼女が魔法のステッキを振るう。

 

 ステッキを振るった軌道から色とりどりの尖晶石―スピネルが現れ銃弾の様に巻き散らされる。彼女のソウルギアの力は宝石を生み出し弾丸の様に発射する事が出来る力だ。特に自身のバトルネームにもなっているスピネルはほぼコスト0で生み出し射出する事が出来る。

 

 これらの威力はマジックで上昇し、彼女のマジックで打ち出すそれらは下手な銃器所か戦車の砲やミサイルにすら見劣りしない。更にスキルを使用すれば火力においては御堂達以上の破壊力と範囲殲滅力を誇る。

 

 弱点は魔法特化の為近寄られれば弱い事と、魔力が尽きれば何もできない所だろう。ほぼコスト0のスピネル射出だけならばそれこそ一日中攻撃できるのだが。

 

 更には産み出す宝石によって多種多様な効果を発生させる事が出来るので、応用性も高くそれらを用いるのが彼女の戦い方だ。

 

 尖晶石の弾丸が周りに居るレイドボスたちを貫いて行く。

 

「うわあああああ! なんという悲劇!! このままではゼロカロリーを維持できないまま倒れる事になってしまうだろう・・・!」

 

「本体その67398475698375982よ!! 今我がぬわー! ほかほかの暖かさがおいしいかんじになってしまう!!」

 

「二人の仇はわれがごはぁあああ! や、やはり昨日食べたスフレチーズドリアンが効いてしまったようだ・・・」

 

 意味不明な断末魔の叫び声を上げて顔が劇画調のタッチになって消えていくレイドボスたち。

 

 そして消えた傍から待ってましたと言わんばかりに複数体のレイドボスが現れて寸劇を開始しはじめる。やはりというかなんというか此方に攻撃する事はせずわちゃわちゃと騒いでいるだけである。

 

 それを見ていた佐伯が流石に手を止めてしまう。

 

「て、敵なら問題なく倒せるんだけどよぉ・・・無抵抗な奴を倒すのはなんか気が引けるぜ・・・」

 

「そ、そうですよね。実は僕も・・・」

 

 一緒に参加しているバンカーもあまりに一方的に倒しているこの状況に少しばかり躊躇いが見える。普段のモンスター達ならば此方を殺しに来る以上問題なく倒せるのだが、一切攻撃してこない謎物体を倒すのは躊躇われていた。

 

「ええぃこなくそ! 気合入れなおすぞ! バンカー!」 

 

「わ、分かりました! 行きましょう!」

 

 躊躇った所で何かが変わる訳ではない。それにこのボス以外にも注意しなければいけないリジェクションというプレイヤーキラーも居る以上、油断せずにボスを倒し続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはりか・・・・」

 

 流川に言われてミッションフィールドの端までやってきた羅漢。流川達が居る場所からそう離れていない結界の端を調べて漸くこのミッションの恐ろしさに気付く。

 

【ジェミニ殿。予想通りだ】

 

【っ・・・やはりですか】

 

【あぁ・・・「結界の外」に出られない。恐らくこの結界を破壊しなければ出られないだろう】

 

【それは不可能ですね。レベル7や8まで行く超人なら可能性はあるかもしれませんが】

 

 念話で会話を続ける二人。彼等が予想した通りの事が今起きていた。羅漢が言う様に今回のミッションは終わるまで外に出られない形式のミッションの様だった。それ自体は割とある形式のミッションなので普段は気にならないが、今回の違和感に気付いた流川はその言葉を聞いて思考を深める。

 

 答えは直ぐに見つかった。

 

「まずい・・・! 御堂君、皆さん! 攻撃を中止してください!!」

 

 焦った様な流川の声に聞こえていた御堂達は攻撃を中止するが、周りのプレイヤー達は気にせず攻撃を続けている。

 

「どうしたんだ流川!? 攻撃したらやっぱりまずい系か!?」

 

「はい、このボスは倒せば増えるという矛盾を抱えたボスの様です。恐らくその限界量はないと思います」

 

「えーと・・・つ、つまりどういうこと?? 弱いし倒せばいいんじゃ・・・?」

 

 珍しく自分の攻撃でも簡単に敵を倒せていたリバティが不思議そうな表情で流川に問いただす。

 

「まずこのミッションですが、脱出が不可能です。先ほど羅漢さんに見て来てもらいました。脱出不可能なミッションは時々ありますが今回もそうだったようです」

 

「えーと・・・つまりどういうことなんだ? いや、ですか?」

 

 ハルペーの言葉に状況を理解できてないメンバーが一斉に流川を見る。

 

「このペースでボスを倒し続けていけば、何れボスの物量に押しつぶされます」

 

「はへ・・・・?」

 

「・・・そうか、そういうタイプか!?」 

 

 意味を理解できてないリバティと得心した様に目を見張るアクセル。周りの仲間達も流川の言った言葉を徐々に理解し始めると、サーっと背筋が寒くなっていくのを感じた。

 

「このボスは倒せば増えるタイプで、倒せば増えて、逃げ道が無いから何れは増えすぎたこいつらに押しつぶされて圧死するって事か・・・いや、流石にそれは」

 

「1体倒して2体増える程度ならば問題ないかもしれません、ですが、先ほどスピネルさんが1体倒した所6体増えていました、時間経過で倒す度にその数が増える様です」

 

「じゃ、じゃあこのまま倒し続けたら・・・」

 

「ミッションフィールド内をあのレイドボスで埋め尽くされるのも時間の問題・・・という訳ですね」

 

「そ、そんなもんどうすりゃいいってんだよ!? 倒しちゃだめって事は終われないって事じゃん!?」

 

 ハルペーの叫びが響き渡る。

 

「とりあえず今からプレイヤー達に攻撃停止を呼びかけます。手遅れになってしまう前に!」

 

「俺達も行くぞ! リジェクションがいる以上離れて行動するのはやばい!」

 

 今も尚増え続けるレイドボスを止めるために流川達は行動を開始するのだった――

 

 

 

―85話了

 

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