異能大戦ソウルギア   作:あさねこ

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ふえるはとめひと。きっと美味しくない

 

 ポルクスがカストロと別れレイドボスを探し数分が過ぎた。

 

 周囲を文字通り飛び回りながら本体を探しているが、やはりそう簡単にそれらしきものは見つからない。寧ろ分身体が徐々に増えつつあるので逆に探しづらい状況になっていた。

 

 フィールド内の民家の屋根の上に降り立った彼女は、周囲に怪しい気配が無いかを探しながら動き続けている。

 

 この近くにもどうやらボスを追い立ててきたプレイヤーがちらほらといるようだ。彼女や御堂達の知り合いのプレイヤーはどうやら今回は参加していないらしい。

 

 『厄介だ、限りなく厄介なミッションだ』と彼女が心の中で吐き捨てる。単純な力押しも出来ず、こういう場合に役に立つサイレーンの即死スキルにも対応済み。敵と戦っていけばその内狂乱状態になり、何もしなければ絶対に勝てないバケモノが現れる。

 

 かと言って倒し続ければ数を増やし、その内押しつぶされる。そんな状態でたった1体のボスを探すのは至難の業だった。

 

 周辺を鷹の目とも言わん鋭さでボスを探しているが、隠れているのか全く見つからない。そもそも目の前に湧いて出ているレイドボスと同じ姿、同じステータスなら探しようもない。

 

『逃げ道はないかぁ・・・私の攻撃力じゃ結界破壊できなかったし』

 

 試しに自身の全力で結界を破れるか試してみたが簡単に弾かれてしまった。恐らくはクリアするか全滅するまで逃げられないのだろう。

 

 少しでもおかしい気配を感じれられれば、と精神を集中させているがそんな簡単には見つかってくれないようだ。

 

『どんどん増えてく。あのプレイヤーキラー、後先考えてるのかなぁ?』

 

 流川を陥れる為に他のプレイヤーを扇動していたリジェクションに疑問がわく。此方をどうにかして殺すか殺せなくても邪魔をしたいらしいが、余りにもやり方が迂遠過ぎた。

 

 あの男ならば隠れて奇襲すればこちらも対応出来たか分からない。前回のゴスロリプレイヤーキラーと比べればまだ対応できる可能性もあるが、それは正面切って戦えばだ。

 

 あれだけの実力者に陰から攻撃されれば彼女とカストロとて間に合わない可能性もある。

 

 色々不思議なのだ。レベル6がどうしてこの低レベルに来たか。あの男はプライドが高い男だった、それは態度を見ていればよくわかる。そして弄ぶ事はしても殺すならば簡単に殺しに来るような男だ。

 

 何故かソウルギアも来ていないし、やっている事は他のプレイヤーを扇動し流川の邪魔をしたりしているだけ。

 

『パパを直接攻撃できない理由がある・・・?』

 

 プレイヤーキラー側の理由や制限等を彼女達が知る由も無く。彼方としても直接攻撃して殺せるならとっくにやっているのだが、そうもいかないのだ。

 

『ううん、それよりもボス探さないと――』

 

 スキル念話を発動させる。

 

【こっちは居ないわね、そっちはどう?】

 

【同じく。と言うかこの中からボス探すのって難しすぎるって】

 

【愚痴らないの! 愚痴ってどうにかなるもんでもないでしょ】

 

【ま、そうだけどね。さっきマスターに連絡を入れたけど、あっちも2パーティに別れて捜索開始したってさ。何かあれば連絡くれる筈だよ】

 

【パパだもん、私にもちゃんと連絡くれたわよ――】 

 

 言い切る前に奥の方を一人でリジェクションが動いているのが見えた。レイドボスを無視してプレイヤーが少ない所に向かっているようだ。

 

【後で連絡】

 

 念話を強制的に切り、目的をレイドボス探しからリジェクションに切り替える。運よくこちらには気付いていなかったので、今のうちに出来る限り情報を手に入れようと考えた。

 

『一人で逃げる気? それとも・・・』 

 

 屋根から屋根へ音もたてずに移動する。

 

 流石に隠密スキルは入れてないので少なからず音は出ているが、周辺ではそれ以上に大きな音が響き渡っているので問題はないとリジェクションを追跡し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 周辺に居るレイドボスを無視してフィールドの限界までやってきた。流石にこの辺りにはレイドボスもまだ集まっていないようだ。周辺に他のプレイヤーが居ない事を確認し、リジェクションがスキルを発動させる。

 

―SSスキル 【レディアントブレイカー】

 

 取り出した武器を代償に結界を全力で連続攻撃する。彼のパワーはブーストを入れて【15】だ。このスキルは自身のパワー+10回の連続攻撃を行うスキル。更には防御力を無視してダメージを叩き込める必殺の連撃になる。

 

 攻撃後はソウルギアですら破損状態になり、普通の武器ならば完全に壊れてしまうという重いデメリットがあるが、逆に言えば使い捨ての武器を使えば簡単に条件は達成できるので、攻撃スキルの中では割と使いやすい部類に入る。

 

 目視で捉え切れないほどの強力な連続攻撃が次々に結界に叩き込まれる。しかし彼のレベルとスタータスをもってしても結界に罅一つ入れる事が出来なかった。

 

 自分のソウルギアならば可能性はあるかもしれないが、今はここにはいない。楽勝だと高を括っていたが、現状を漸く理解し始めていた。プレイヤー達に流川に不信感を持たせ、上手く誘導して殺そうと考えていたが、そんな状況ではなくなっているのを今更になって気づいたのだ。

 

『冗談じゃねぇ・・・ここはレベル3~4のミッションだろうが。どういうことなんスか・・・!? このままじゃ流石に俺もやばい』

 

 流川達を孤立させる所までは上手く行っていた。ここが普通のレイドボスならばそれで大勝利とも言えただろう。しかし彼にとって誤算だったのは今回に限ってあまりにも特殊条件過ぎるボスだったという事だろう。

 

 レベル9のボスなど最上位陣がどうにかこうにか倒せるような存在だ。それもかなりの死者を出して倒したという事をスレで見た事がある程度だった。間違っても彼一人でどうにか出来るボスではない。

 

 となれば生き残る方法は二つ。

 

 ここから逃げだすか、本体のボスをこのフィールドが埋まり切る前に見つけて倒す事。だが彼も捜索系などのスキルなど一切持っていない。寧ろレイドボス相手にそのようなスキル設定で来るプレイヤーが居る訳が無いだろう。

 

 今回のミッション、実は既に他の場所は色々とクリアされている様だった。スマホで掲示板スレをちょくちょく覗いていたのだ。どうやら特殊なボスは彼がスレで見る限り今の所ここだけらしい。

 

 他の場所でも似たような場所があったとしてもまだクリアされていないか全滅しているかだ。攻略情報でもあればと必死に探しているが、彼では探し切れなかった。

 

『どうすりゃいい。こんな事なら素直に参加しなけりゃよかったっすよ・・・このままじゃ俺、死ぬ・・・?』

 

 久しく感じていなかった感覚に寒気を覚える。彼は直ぐに携帯を使い電話をし始めた。相手は勿論自分のソウルギアだ。

 

 コールはなっている、拒否はされていない以上出るまで待ち続けるしかない。自分のソウルギアさえくれば、彼女のスキルを使う事でここを脱出できる可能性がある。生き延びるためには是が非でも連絡を取る必要があった。

 

 無常にもコールはなり続けるだけ。一向に出るつもりもないらしくイライラが募る。ついスマホを地面に叩きつけたくなり大きく振りかぶったが、それでスマホを壊せば今必要な情報もソウルギアのアプリも、連絡も取れなくなるので気合で気持ちを押しとどめる。

 

「出ろ・・・! 出ろよ・・! 早く出やがれ!! お前は俺のソウルギアだろうが!? マスターがピンチなんスよ!? 助けに来るのが当然だろうが!!」

 

 苛立ちが限界になりつい叫んでしまう。

 

 はっと我に返り周囲を見渡すが奥の方にレイドボスが1体見えただけで他のプレイヤーは居ない様子だった。冷や汗を流す。他のプレイヤーはともかく自分のソウルギアがここに居ない事が流川達にバレた場合、報復される可能性がある。

 

 此方は制限で相手を殺しに行けない上に、相手はその気になればこちらを容赦なく殺しに来れる。そんな状態ではソウルギアも無い以上、彼が極端に不利になる。ソウルギア不在の情報を聞かれる訳にはいかなかった。

 

 大きく深呼吸し、何度も何度も電話をかけ続ける。

 

 切れては掛けなおし、再度切れては掛けなおし、怒りで結界を殴りつけ気分を紛らわせる事数分、ついにソウルギアが電話を受けた。

 

「っしゃあ! つながった! テメェいい加減にしろっす! 早く助けに来い! マスターの俺がやばいんすよ! データは送るから!!」 

 

『はぁ・・・なんで?』

 

「は?」

 

 ソウルギアのセリフの意味が一瞬彼には理解できなかった。しかし直ぐにその意味を理解すると怒髪冠を衝くか如く怒り狂い怒鳴りつける。

 

「テメェェエエ! てめぇは俺のソウルギアだろうが!? 俺が死んだらテメェも死ぬんだぞクソボケがぁ!? とっとと助けにこいや!! それがソウルギアの仕事だろうが!!」

 

『あんた・・・・もう、そこまで堕ちたのね』

 

「あぁ!?」

 

『死ねば?』 

 

「へ?」

 

『勝手に死ねばって言ってるの。なんで私が貴方を助けないといけないの?』

 

「え、いや・・・だってお前は俺のソウルギア・・・」

 

 背筋が氷柱を詰め込まれたように寒くなる。歯の根が合わなくなりガチガチと音を鳴らしていた。

 

 彼女の言う事が彼には理解できなかった。ソウルギアは自分に忠実で自分を愛する存在、そうだった筈だ。しかし電話越しに聞こえてくる自分のソウルギアの声は驚く程冷酷で無関心に等しかった。

 

『そうね。そうだったわね。ならこれで終わりね』

 

「じょ、冗談っすよね・・・? お、俺の事、愛してるっしょ? 今回はただの家出で・・・」

 

『死ぬ前に覚えて置いたらいいんじゃない? 愛ってのは与えて貰えなかったら醒めるのよ』

 

「・・・・え、え・・・?」

 

『私も死ぬ? あぁ、いいんじゃないそれで? 私もう生きてる意味もないしね。あんたと違う所で死ねるならそれは最高じゃない』

 

「ま、待てよ!? やばいんだって! このままじゃ本気で!!」

 

『最後まで、あんたは自分の事だけね。もう言うことは無いわ――たとえ生き残ってももう会う事はないから』 

 

―ツー・・・ツー・・・ツー・・・

 

「・・・・・・・・あああ!? あああああああああああ! ふざけんなああああああああああ!!」

 

 スマホを叩きつけ破壊しそれを踏みつける。

 

 プレイヤーキラー【リジェクション】恐らくこのゲームで初の「自分のソウルギアに見捨てられた」プレイヤーになった瞬間だった。

 

 

 

―88話了

 

 

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