異能大戦ソウルギア   作:あさねこ

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貰い過ぎてそれが当然になれば人は腐るそうな

 

 その言葉は彼女にも聞こえていた。

 

 同時にありえないと考え、冷静な部分が「そういう可能性もあるのか」と己の身を抱きしめる。ポルクスは焦って叫んでいたリジェクションのやり取りを近くで聞いていた。電話している相手の声も彼女にとっては何ら問題なく聞き取れる。

 

 余程焦っていたのだろう、一切の警戒をせずに電話相手に怒鳴り散らして最後には怒り狂って大事なスマホを叩き壊して尚癇癪を起し続けている。

 

 まさか目の前の男が自分のソウルギアに見捨てられた等と誰が信じられるだろうか。特に一番自分が信じられない。マスターであり父の様な存在であり、愛する男性である流川の事を、彼女は一度たりとて嫌悪した事も、命令を嫌がった事もない。

 

 常に優しく導いてくれる、自分と言う存在を頼りにして共に戦ってくれる、自らの主、魂の持ち主を嫌悪など出来ようものか。

 

 だがそれが現実にありえている。あの電話のやりとりを信用するのなら、リジェクションは初めからソウルギアと仲違いして一人でここにやってきて、今この場で自分のソウルギアに見捨てられた。

 

 彼が死ねば自分も死ぬだろうに、そんな事もどうでもいいと、まるでそれは他人に対する口調そのもので。

 

 【ソウルギアの人型は、マスターに対して永遠の愛を宿している】そんな基本的な事が根本から崩れていくような音が聞こえた。

 

 しかし直ぐに頭を振り、ポルクスは改めて自分の気持ちを確かめる。ありえない、ありえる訳がないと、この燃え上がるような想いが、愛が、消え去る訳がない。彼女は確信を持って言える。きっと自分がないがしろにされたとしてもそれは変わらないと彼女は信じている。

 

 それほどまでにソウルギアである自分がマスターを愛しているというのに、目の前の男は何をどうすれば、そんな自分のソウルギアに蛇蝎の如く嫌われたのだろうか。

 

『よほど人格が腐ってなかったら無理よね・・・うちはパパが素敵なパパでよかった。でも、こいつ・・・そんな状態だからここにきたんだ』

 

 男の癇癪が止まらない。ずっと怒鳴り散らしている姿が見える、あれが演技だというのならば俳優にでもなれるだろう。あまりにも怒りが止まらないのか自分のソウルギアの事を人格否定レベルで非難し続けている。

 

 こんな人間だから自分のソウルギアにも見捨てられたんだなと、呆れつつも見ていたが、男が頭を抱えて愚痴りだす。その中に彼女達が求めていた答えがあった。

 

「まずいまずいまずい・・・どうすりゃいい・・・!? 俺もレイドボスを探すしかねぇのか・・!? どうせ次のシーズンまではジェミニ達は殺せないっす、死にたくねぇし、今回だけは協力してやる感じで・・・」

 

『次のシーズンまで・・・パパ達を殺せない?? 何故・・・?』

 

「くそが・・! ディザスターも変なルール作るんじゃねぇっす! 俺達みたいなプレイヤーキラーを優遇してるくせに、どうして敵側として参加したら、そのミッションに参加したプレイヤーを次のシーズンまで殺しちゃだめなんだよ・・・! 殺せるなら依頼したり、他の奴にドサクサ紛れに殺させるなんて迂遠な手は・・・! 畜生が! 参加しなきゃよかった!!」

 

 余程腹に据えかねてるのか、周りに誰も居ないと思っているのかポルクスが居る事に気付かずリジェクションは苛立ちをぶつけまくっている。

 

 彼の自白でどうして彼が今回の様な真似をしたのか漸く理解できた、彼女は見下げ果てた男を尻目に見つつ流川に念話を通すのだった―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 流川達と別れて本体を捜索中の御堂達たったが、流川から届いた念話でリジェクションの目的と現状について話を聞いた彼等は複雑な表情で頭を抑えていた。

 

「ガキかよ・・・というかソウルギアに見捨てられたって・・」

 

「俺は人型ソウルギアの事はよくわからないが、ケーキ屋やジェミニを見ていれば特異なケースだというのはわかるぞ」

 

 アクセルは御堂達と共にセーフハウスに来てから、サイレーン達が常に御堂に対して愛情全開で応対しているのを何度も見て来て居る、少々辟易するレベルだが、人型ソウルギア、それも異性ならばそれが当然だと言う事は知っていたので、あえて気にしない様にしている。

 

 だからこそ、自分のソウルギアに見捨てられたという話を即座に信じるのは難しかったが、あの性質の悪い男ならあり得てしまうのではないかとも考える。

 

 ハルペーは「罰が当たったんだな、もったいねぇ」と単純にリジェクションに対してざまぁみろと言わんばかりに笑っているが。ここで笑えないのが主に4人ほどいた。

 

『私達が、マスターを嫌いになる・・・そんなこと、ありえるの??』

 

 ポルクスと同じくサイレーン達も話を聞いて衝撃を受けていた。レイドボスを探さなくてはならないのに、そんなのが頭から抜けてしまいそうな程のありえない話なのだ。

 

『私はマスターが好き。マスターの為なら死んでもいいって思えるほどに。それなのに、彼のソウルギアは彼を見捨てた・・・』

 

 自分のアイデンティティともいえるものに罅が入るのを感じたサイレーン。

 

「いやまぁ、流石に同情できねぇが、そこまで嫌いになるようなことしたんだろうよ」

 

「ご主人様・・・?」

 

「ソウルギアつっても、こうして生きてる以上は個人の意思も自我もあるもんだ。例え初めは愛してたとしても、ずっとおざなりに対応してたり物扱いばかりしてたら、何時かは醒めるもんさ」

 

「まーちゃん、ウチ等は・・・」

 

「心ってのは難しいもんだって。それに」

 

 何かを言いかけるショコラを遮って御堂は続ける。

 

「俺はお前等が大事だ、ソウルギアだからじゃない。家族だからな、だから嫌われない様に最善を尽くすし、見捨てられない様に頑張るんで宜しく頼むぜ?」

 

「っ・・・はい、ご主人様。私も、私達もご主人様にそう思われない様に頑張ります」

 

「ってか? リジェクションが特別あれなだけで? あーしらごしゅの事大好きだし? つーか一緒にしてほしくねぇよな?」

 

「わかりみー。寧ろどうやったらそこまで嫌われんの? 逆に聞いてみたいわ」

 

「う、うごごごご・・・ソウルギアとはいえ、美女が4人・・・4人とも・・・くそう、これがハーレムか! ゆるせねぇ! 俺も彼女が欲しい・・・!!」

 

「どんまいハルペーくん」

 

 ぽふぽふとハルペーの肩を叩くサイレーン。ふと彼女の顔を見つめるとテレビでもお目にかかれないレベルの美少女がそこにいた。

 

「あ、あざ・・・す」

 

「今ならリバティが余ってるから、どうぞ?」

 

「まてよぉ!? なんでそうなるんだよぉ!?」

 

 ぐわーっと怯えていたのがうその様にサイレーンに突撃するリバティ。

 

「彼、良い物件。養ってくれるかもしれない。どや?」

 

「どやじゃねぇし!? てかよく知らないし!?」

 

「うぐぁ!?」

 

 俺、前回のミッションの時に一緒にいたじゃん、と大ダメージを受けて蹲るハルペーだが、悲しいかな彼女の記憶の中には既にほとんどのプレイヤーの事は残っていない。

 

「お前達遊んでる場合か。どうするケーキ屋? リジェクションは恐らく此方を殺しに来れないみたいだが、うまくいけば戦力として扱えるかもしれんぞ?」

 

「そっちは既に流川が何とかするってよ。俺等はレイドボスを探す方に注力してくれって言われたわ」

 

「そうか、確かに俺達が考えるよりはあいつに任せた方がいいな」

 

「ううう、速くボス見つけてかえりてぇ・・癒しが足りねぇよ」

 

 リジェクションの対応は流川に任せ、御堂達は再びレイドボスの本体を探し始める。周りに居るレイドボス達は全て分身であり、本物は未だ見つからない。全部薙ぎ払いたい欲に駆られるが、倒してしまえばそれ以上に増えてしまうので逆に探索が困難になる為、地道に周囲を探すしかない。

 

「リバティ、なんかこう・・・調べられないか?」

 

「ケーキ屋? 私は何でも屋じゃあないぞ?? というか機械じゃないし無理だろ」

 

「だよなぁ・・・つってもどれが本体なのか分からねぇよ」

 

「こうしてる間にも増えるんだよな・・・やっぱりまずいよなこれ」

 

「愚痴っても仕方ない、怪しいものを探すだけだ」

 

 周囲をしらみつぶしに探していくが、やはり影も形も見つからない。というよりも普通のレイドボスがその辺を普通に闊歩しているせいで探すのも困難になってきていた。

 

「むむ、そこゆくパティーンたちよ、何か困りごとかな? ならば我を相手にすると言い。こう見えて我は親切だと名が通っている気がしない気がするが、それよりも見てくれ、最近育てていたしめじがまいたけになってしまったのだ。やはりあそこで買い替えたのも問題だったかもしれぬ」

 

「無視するぞー」

 

「らじゃー」

 

 またしても意味不明なセリフをマシンガンの様に繰り出してくるレイドボスを全力でスルーし、先に進もうとしたがなぜかこのレイドボスは他のボスと違い食い下がってきた。

 

「待ちたまえ。人生急がば磯部餅。そういうだろう? 決して後悔させないと誓おう、そういうスキル所持であるからして。公開はするかもしれんがね」

 

「くそうぜぇ・・・斬ったらだめですかねアクセルさん」

 

「スキルの影響を受けてるだけだ、耐えろ、気持ちは分かるが」

 

 ハルペーを握っている腕をぷるぷるさせながら言われた通りに気持ちを落ち着ける彼を尻目にボスは気にした風もなく、御堂に向かってまだ話し掛けてくる。

 

「精神耐性持ち、十分な能力ではあるな。だがこれは状態異常と言うよりは精神向上のバフに近い。故に汝にも効いたのだよ。今は認識が状態異常となっているから効いていないようだがね」

 

「・・・お前・・・?」

 

「どうせアテも無く探すしかないのであろう? ならば我の話に少々付き合いたまえ、なぁに先ほども言ったが公開はしても後悔はさせぬよ。なにせ我は女神であるからして」

 

「うっそだろお前・・・」

 

 そんなイルカ頭の電波巻き散らす謎存在が女神であってたまるかと突っ込む御堂。

 

「しかして事実である。我は事実しか話せないという制限がある故に。さて、少なくとも話を聞いてくれる態勢は整えてもらえたようだ」 

 

 一応御堂が止めている為、サイレーン達も攻撃などはせずにいつでも動けるような態勢で待機している。

 

 御堂も目の前のこれが他のレイドボスの分身体とは何かが違う様な気がしていたので話だけは聞く事にした。どのみちこのままでは見つかりそうもない、もしかしたらこれが攻略に繋がる何かがあるかもしれないと感じたのだ。

 

 ここまでやってくだらない話だったならば殺しはしないが地面に埋めてやろうとは考えつつも。

 

「はぁ・・・じゃあ何が言いたいんだ? どうでもいい事だったら埋めるからな?」

 

「埋める時は首だけが残る感じで頼む。怪奇! 地上にイルカ! が出来るやもしれぬからな。こうなるとイルカ人間より逆に怖い気がするのは気のせいではないだろう。地上でしゃべるイルカ。明日の新聞の片隅は我の物であるな。さて・・・・まず最初に言おう、信じる信じないは汝らに任せる」

 

 そう言うとイルカ頭の分身体は、信じられない事を言い始めた。

 

「まず、我は【ディザスター】側ではない――」

 

 

 

―89話了

 

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