異能大戦ソウルギア   作:あさねこ

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憎たらしい云々より命が大事。それが真理

 

 

 御堂からの念話を受けた流川。

 

 正直な話、それを信じてもいいのかと考えるが、普段から不思議な雰囲気を持つ御堂が相手ならば可能性はあるかもしれないと、一旦はその話を飲み込む事にしたようだ。

 

 女神ハトメヒト、流川も知らない神様なので情報を直ぐに調べてみたが、そこまで詳しい事は載っていない。ここから情報を得るのは彼と言えど無理があった。一応ハトメヒトが言っていた最後の言葉を覚えている限り教えてもらい、そこから答えの当たりをつける。

 

『頭部が違うハトメヒト、レイドボスが居ればそれが本体、という事になりますか。それこそ人海戦術が必要になりますね』

 

「・・・どうしますか??」

 

「僕たちだけで探すとなれば間に合わない可能性があります。となれば・・・」

 

 他のプレイヤー達に協力を頼むことが出来れば発見率は大きく上がる事になる。彼等が協力してくれるのなら、ハトメヒトの増殖も限界まで抑える事が出来るし、何十人もいればそれだけ見つかる可能性も増える。

 

 だが、その為にはリジェクションが与えた誤解、いや不信感を取り除かなくてはならない。

 

 それも早急にだ。時間を置けば置く程間に合わなくなる。

 

 とすればそれを可能にする方法は一つ、リジェクションを引き込む事だ。扇動した彼を使えば、混乱を収め一時的とはいえ協力体制を整える事が出来る。

 

 はっきり言えば無謀に近い案だが、ポルクスからの念話を聞き、もしかしたら上手くいくかもしれないと流川は考えていたのだ。如何にリジェクションが流川憎しとはいえ、命を懸けてまでそれをやり遂げるような男には見えなかった。

 

 自分のソウルギアに見捨てられたという信じられない状態になっている今の彼ならば説得すれば、このミッションをクリアするまでは協力できるかもと、全員に話す。

 

 難色を示したのはバンカーと羅漢。

 

 あの男が素直にこちらの話を聞き入れる訳がないと、あの男の性格を既に理解していた。よしんば受け入れたとしても何かしらの報酬を寄こせ云々は絶対にやってくる可能性があると、流川を止めようとする。

 

 逆にスピネルと佐伯は流川に賛成する。流川だから無条件・・というのも少しあるが、それが今出来うる最善手だと彼女も思ったからだ。

 

「流川サンが何の勝算も無しに言うとは思えねぇ。なら任せるのが最善だと俺は思うぜ」

 

「・・・あれを信用できないのもわかる。何を求めてくるかもわからない。でも、私達だけで探し切れると、貴方達は思うの?」

 

「そ、それは・・・」

 

「む、そう言われてしまうと何も言えぬが、ジェミニ殿、あれを引き込められると?」

 

「難しいですが、やらなければ始まりません。交渉については僕の得意分野ですし、なんとかして見せましょう。彼も僕を殺す為程度に自分の命まで賭けられるとは思いませんからね」

 

「わ、わかりました! それじゃ行きましょう!」

 

「いえ、ここは僕一人で行きます。羅漢さん皆さんを頼みます。御堂君と合流してください。」

 

「一人でなんて危険っスよ!? 相手はプレイヤーキラーなんだから俺もついて―」

 

「いえ、大人数で行けば相手は逆に断る可能性があります。プライドが高い人みたいですからね」

 

 リジェクションの様なタイプは押し込めば逆切れして襲い掛かってくる可能性もある。特に大人数で向かえば相手は必ず「自分を脅している」と考えると流川は既に把握していた。

 

 それならばジェミニを呼び戻し最低限の護衛を付けて自分一人だけで対応した方が成功率が高いと踏んだのだ。

 

「止めても無駄か。確かに君の言う通り時間が押している、ここで問答している時間すら惜しいか」 

 

「そういう訳です。なに、大丈夫ですよ。彼一人でソウルギアも居ないのなら襲われてもどうにでもできます」

 

「わかった。皆急ぐぞ! 念話を御堂君に繋げる!!」

 

 後ろ髪引かれる佐伯だったがスピネルに諭され、羅漢たちの後をついて行った。

 

「カストル、万が一の場合は頼みましたよ?」 

 

「了解マスター」

 

 いつの間にか後ろにいたカストロが一瞬驚いた表情になるが、自分達のマスターなのだからこの程度の気配察知など当然と微かな笑みを浮かべ頷く。

 

「リジェクションの様子は?」  

 

「あちこちに八つ当たりした後に呆然とその場で突っ立ってるってさ。いまだにポルクスにも気づいてないとか、本当にあれでレベル6なのかな?」

 

「人間、自暴自棄や絶望してしまえばそうなるのも仕方ありませんよ。ですが、その言葉で成功率が高くなったのを確信しました。急ぎましょう」

 

「わかった、こっちだよマスター」

 

 カストロに案内され流川もまた急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 所変わりリジェクションは自分がやらかしたことを既に後悔していた。

 

 怒り狂っていたとはいえ、自分のスマホを叩き壊してしまったのだ。こうなった以上、他の場所に連絡する事も出来ないし、ソウルギアアプリを使う事も出来ない。

 

 つまりスキルのセットも出来ないし、アイテムを取り出す事も不可能。アプリには数万以上のポイントがあるので、もしかしたら何か危機を回避できるスキルかアイテムがあったかもしれないと、今更どうしようと慌てているがこればかりはどうしようもない。

 

 他のプレイヤーからスマホを奪う手段もある事はあるが、相手のデータを削除して自分のデータを入れなおす、というだけでも時間がかかってしまう。もう少し冷静になるべきだったと精神的に不安定になりつつも、これからどうするかを考えていた。

 

 既に彼の頭の中には流川に対する復讐心など何処かに消え去り、どうにかして生き残る事、自分のソウルギアを探し出す事しか考えられない。このままではプレイヤーキラーとしても活動出来なくなる。

 

 電話越しにソウルギアの話を聞いたが、自分からは死ぬつもりはない様なので、どこかで自殺されて自分が死ぬという可能性は少なくなったが、彼はプレイヤーキラーとしてかなり知られている。このことが他のプレイヤーに漏れでもすれば、ここを脱出できたとしても、日々怯えて暮らさなくてはならない。

 

 プレイヤーキラーの自分が他のプレイヤーに怯えて逃げ回る等と愚痴りそうになったが、現実はどうしようもない。今はレイドボスの本体を探さなくてはと思うのだが、体が思うように動かない。今だ自分のソウルギアに見捨てられたショックが抜け切れていなかった。

 

「畜生・・・どうすりゃ、どうすりゃいいんだ・・・」 

 

「一緒に本体を探すのはどうでしょう?」

 

「!? ・・・・て、テメェ・・・!?」

 

 ふいに声を掛けられた方向を振り向くと、そこには不倶戴天と言わんばかりの存在であるジェミニがソウルギア二体を連れて立っていた。

 

 自分が最善の状態ならば、殺してはいけないという制限がなければ今すぐにでも縊り殺したい男ではあったが、前回の事や此方のソウルギア不在の事もありギリギリで押し留まる事に成功する。

 

「な、何の用っスか? 命乞いでもしに来たんすかねぇ?」

 

「簡潔に言います。ここをクリアするまで共闘しませんか? 貴方もこのような所で死にたくはないでしょう?」

 

「て、てめぇ・・・! 何様の――」

 

「貴方のソウルギアが不在だと言う事、他のプレイヤーには伝えない事を約束しますよ」

 

「っ!?」

 

 バレている。

 

 リジェクションは背筋が急激に寒くなったのを感じた。今まで感じた事も無い寒気と死ぬかもしれない恐怖が駆け抜けていく。

 

 周囲には彼なりに気を付けていた筈なのにどうしてバレたのかと焦りだすが、正直ポルクスにしてみれば隙だらけだっただけである。冷静な判断すら出来ていないのに周囲に気を配る事など碌に出来るものではない。

 

 リジェクションが考えを巡らせていく。

 

 戦いになれば負けない自信はある。だがソウルギアを入れての3体、レベル4とは思えない戦闘力、そしてこちらは殺せないのに、相手は此方を殺しに来れる。この時点で自分が不利な事を自覚する。

 

 戦えば高確率で負ける、そうなれば死ぬ。こんな所で自分は死んでいい存在ではないのだと、目の前の流川を見て相手は此方を殺すつもりはないと感じ、それならばと条件を付けて協力意見を飲む事にした。

 

「MVPはこっちに寄こせっす。それなら――」 

 

「確約は出来ません。ですが出来る限りは融通する事にしましょう」

 

「ちっ・・! ならポイントを――」

 

「スマホも無いのでしょう? どうです? 僕が万が一の為に持っているスマホの予備を差し上げます。貴方もアプリも何も使えないのは困るはず。かと言って他のプレイヤーから奪うとなれば、敵を作ってしまう、今の貴方にとってそれは悪手な筈です」

 

「ちっ・・・! な、ならそのスマホを寄こせよ! 畜生が・・・」

 

 言われた通りに予備として持っていたスマホをリジェクションに手渡す。必要最低限のデータは封入しており、ネットにもプリペイドSIMを渡す事で繋げることが可能だ。渡されたスマホを弄り直ぐにアプリを入れていく。

 

「ポイントは差し上げられませんが、それで最低限困ることは無い筈です」

 

「これで感謝するなんて思わない方がいいっスよ・・・?」

 

「もちろん。貴方にはやってもらいたい事があります、それさえこなしてくれれば十分です」

 

「あ? 何をさせるつもりっスか?」

 

「簡単ですよ。扇動した皆さんを再度扇動してください。【1体だけ頭の形が違うレイドボス】を見つけるように、と」

 

 リジェクションが驚いた表情で流川を見る。この短時間でボスの情報をどこで手に入れたのか、ここまでくるとこいつはもしかしたらディザスター側の人間なのではないかと思ってしまうほどだった。

 

「扇動後、レイドボスは最低限倒す事だけを命令してあげてください。後はそれぞれレイドボス探しです。誰が倒してもOK、簡単でしょう?」 

 

「・・・・わかったっスよ・・・」

 

 リジェクションとしてもここで死にたくはない。業腹ではあるがジェミニの話を飲むしかなかった。ここで下手に交渉しようものなら最悪「要らない」と殺される可能性もある。ソウルギアが居ない今の自分では流川を倒す自信が今一持てなくなっていた。

 

 そして流川を殺せたとしてもその次は御堂達が復讐しにやってくるだろう。この状況でそんな事になってしまえば生き残れる可能性は低い。今は協力して次回こいつらを殺せばいい、そう考える事にしたのだった。

 

 

―91話了

 

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